2017年09月10日

関ヶ原

[70点]@Tジョイプリンス品川

 まず、本作において真っ先に褒められるべきところ。
 エンドロールの、役名を含めた和英併記。
 邦画を見る回数が多くないので、どれくらい浸透しているのかわからないけど、「邦画の大作」では初めて見たと思います。「海外で売る」ならやって当たり前の作業なのですが、日本のコンテンツ展開のガラパゴスっぷりはここにもあるのです。

 本当に久々に見た、人海戦術で描いた戦国大合戦もので、それだけで満足できるわけですが、つまりは海外に売れないとペイしないくらい予算突っ込んだってことでもありましょう。困ったことに、そもそも「海外でウケる内容か」という視点なしにその方針で突っ込んだように見えます。……司馬遼太郎時代小説を海外に売ろうとか考えたの、誰だよ?

 結果、何が起きたかというと。

 セリフの多くが聞き取れません。
 ……黒澤映画かよ! 字幕なら大丈夫ってか!

 合戦だけやる作品かと思ってたら、秀吉と三成の出会いから始まって、秀吉の後継をめぐる家康との確執を全部描いてから大合戦ですから、本来の時代劇の所作からかけ離れた超高速展開、飽和する情報量、必然的にセリフ回しも速くなります。全員超早口で、司馬遼ベースの堅苦しい雅語漢語を振り回すもんだから、歴史マニア以外はついていけません。例の「母衣がわかってない評論家」騒動も、問題の根源はここにあります。
 「ちくじょう」って何だよ! ……「竹杖」か!

 本格合戦活劇と、らちもないラブロマンスのどっちを描きたいのかよくわからないのも辛いところ。ただ、ラブロマンス削っちゃうと、歴史マニアでない観客(本作の場合外国人客も)を完全に放り出しちゃうので、ここは評価が難しいです。
 ただなー、こういうシリアスな話に、おたふくで童顔な有村架純をどうして連れてくるかなー。岡田准一の相手に全然合わない。タッパある分まだ榮倉奈々のがマシ。

 「真田丸」で多くの国民が、また「軍師官兵衛」によってジャニーズクラスタですらも、この物語の時代背景がわかる程度には「歴史マニア」側の観客であり、それが多数派であろうと思われるのが幸いです。いつ頃から本作の企画が始まっていたか知りませんが、これだけの規模だと1年とかじゃきかないでしょうから、本作関係者はNHKに足を向けて寝られませんね(笑。



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2017年09月09日

短評(ガンダムORIGIN5/スラッカー/スキップトレース/ザ・ウォール)

機動戦士ガンダム THE ORIGIN V -激突! ルウム会戦-
[評価不可]
@新宿ピカデリー
 第一章第二章第三章第四章

 なぜそこで終わった。

 そりゃないぜおいー。その先を見に来たんだよ俺らはー。こんなん、その先見なきゃ何か言えるわけないじゃんかよー。
 「コロニー落とし」も「シャアがいかに出世し赤い機体を得たか」あたりもあっさりすませて、ルウムでの対立に描写を注力するように見せて、わりと戦略面もきちっと説明して、……それでこれかぁ。
 次回のツカミに見せていただけるということで。



スラッカー
[70点]
@下北沢トリウッド
 リチャード・リンクレイター監督の、初期インディペンデント作品が日本初公開、ということで、気になって見に行きました。
 先に言っとくと、「スクール・オブ・ロック」でなく確実に「ウェイキング・ライフ」寄りの作品だと予測し、眠くならないよういろいろキメて見に行ってます。実際そうなので、レイトショーのみの本作、お仕事帰りの疲れた頭で見るのはオススメしません。冒頭から、リンクレイター監督ご本人が登場して、やくたいもない話をウゼェほど語りやがるので、下手をするとここだけで熟睡できます。

 しかし、揺れる画面でダラダラ喋るだけの「ウェイキング・ライフ」と異なり、次から次に「主人公」が切り替わって、ありとあらゆる立場の若者が、ありとあらゆる方向性の会話を繰り広げます。共通するのは、閉塞した街(1990年のテキサス州オースティン)で、誰一人建設的な「行動」を起こさず易きに流れていること。
 堂々巡りを繰り返すかのようなこの構成そのものが、若者の行き場のなさを端的に表現しており、快不快は別として異才の発露に違いありません。



スキップ・トレース
[60点]
@Tジョイプリンス品川
 ジャッキー・チェンとレニー・ハーリンという組み合わせでちょっと話題……なんだけど、見てみたら普通に香港アクション&バディもの映画。
 バディものとしては、中国大陸縦断を敢行する、馬鹿馬鹿しいほどのダイナミックさが楽しいです。アクションものとしては、ジャッキー衰えたし太ったし、そんなにすごくはないですが、かわいそうに最後まで付き合わされるロシアン・マフィアのみなさんがヨイ。いずれにせよ、脳みそ空にして、ただ楽しむタイプの作品。
 まぁ、今年のジャッキーは「カンフー・ヨガ」が本番ではないかと……予告編を見る限りでは、インドのテイストを再現するにはちょっと足りてない印象なのですが……。



ザ・ウォール
[50点]
@ユナイテッドシネマアクアシティお台場
 Netflixと並んで昨今コンテンツ増強に余念がないAmazonによる、ダグ・リーマン監督のシチュエーションサスペンス。イラクの砂漠で狙撃手に狙われた兵士、隔てるのはたった1枚の小さな石壁だけ、無線通信で繋がったふたりの駆け引き…て内容なんだけど、正直イマイチ。
 狙撃手と主人公に差がありすぎて、緊迫感と呼べるものになってないのです。狙撃手側から見ると、「いつでも殺せる主人公をわざと生かして情報を引き出したい」なのはすぐにわかります。この油断を突くのがこういう話の醍醐味ですが、本作に限っては、狙撃の能力と威力、武器や無線機の性能、距離の隔たり、何よりメンタルの強さ、どこをとっても狙撃手にスキがなく、イベントはあれこれ起きても、主人公が状況を覆す期待がいっこうに湧きません。……中盤に至る頃には、「これで主人公が勝ったら、状況無視のご都合主義以外にありえんやろなぁ」と諦めがついてしまいました。
 実際、終盤に至って「軍曹生きてた」だもの、完全にご都合主義であきれはてました。その展開(軍曹の救出)はこの物語の「最初の困難」以外にあり得ず、ラストシーンの「救援に来たヘリが撃墜される」が中盤で、それを利用(距離を詰める/道具・武器を手に入れる)して最後の逆転に賭ける、が妥当な展開だったかと。



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2017年08月31日

短評(ワンダーウーマン/エル/ベイビードライバー)


ワンダーウーマン
[65点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 戦うヒロインの超元祖。演じるガル・ガドットのエロカッコよさが最高です。戦う姿もいいけどロンドンでの秘書モードもいい。彼女を見るだけで見る価値あり。

 ……とはいえ、それだけのために2時間半はただただ長い。ビタイチ存在理由のない「仲間」を削るだけで2時間以内に収まるでしょうに。DCの作品は、どうしていつもこんな無駄に長いの?
 また、ストーリーも率直に言ってあんまり入り込めず。物語を「女性の自立」に振りたいのか「闘争の本質」に振りたいのか、ピントがボケていた印象。これこそ、最後に「女性参政権の獲得」で〆ればぐっと盛り上がった気がするんだけども。
 そういう主張は意識せずに、純粋にヒロインの活躍を楽しめれば……と思えど、そうすると、ぶっ飛ばされる敵が「ドイツ軍の一般兵」というのは、要は「連合軍側の理屈が正義」で行動するわけなので、見ててあんまり気持ち良くないです(時代背景説明セリフがいっさい出てこなかったのは、敵をナチスと誤認させるためって気がするんだよねぇ)。もちろん、その違和感はきちんと拾うストーリーなのですが……。


エル
[60点]
@TOHOシネマズ川崎
 ポール・バーホーヴェン監督というと「スターシップ・トゥルーパーズ」を真っ先に思い出します。娯楽畑の人と思っていたんですが、すっかり老成したんだなぁ……と思わされる、文芸的作品。
 というか、(いきなりレイプシーンから始まるものの)文芸作品としても起伏に欠け、淡々と事実を並べていく構成の映画とはつゆも思っていませんでした。その意味でチョイ辛い作品ではあります。

 殺人犯の娘という出自を持ちながら、ゲーム会社の社長になるほどに人生を築いた女性の、人間関係が集まって離れて、様々なくびきから解放されていく物語。
 主人公は、仕事も友人関係も家族関係も近所づきあいもきちんとこなしつつ、その端々でどこか「壊れて」います。そんなキャラクター性だけで作品一本持たせるって並大抵のことではありません。……ていうか、おそらくは、バーホーヴェン監督の自己投影であり、「壊れ」ながらも作品を作り続けてきたんだろうなぁ……と推察。


ベイビー・ドライバー
[55点]
@新宿バルト9
 エドガー・ライト監督の新作、なのですが……。うーん……。
 「ドライブ」が思い出されます。主人公は天才的なドライバー。ツカミのカーチェイスはもう、「これ以上凄い映画ないんじゃないか」と思えるほどのデキなのに……それ以降、主人公のドライビングテクニックが十全に発揮されるシーンは二度と出てきません。信じらんねぇだろ?
 主人公の設定上、ほぼ常に音楽が流れている作品なので、「音楽映画」と思って見る方が、たぶん損はしません。80年代?の洋楽が好きな方はどうぞ。しかし個人的には、ノリのいいところと悪いところの落差が激しすぎ、ノリがいい部分のザクザク画面が切り替わる快感が強すぎて、ノリの悪い部分は、たぶん作り手の想定以上に退屈でセリフが冗長に感じられ、「不快」の域まで達します。
 でもって、「殺し」には顔をしかめるのに、その幇助と盗み傷害は平気な主人公とヒロインを、「きれいなもの」と描く倫理観の乖離(罪の自覚はあると描かれはするが)にも、僕は結局なじめなかったです。



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2017年08月29日

短評(打ち上げ花火/キミコエ)


 短評と言うほど短くないけど、並べたい2作品なので。

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?
[60点]
@TOHOシネマズ新宿
 決して面白くないわけでも出来が悪いわけでもないんだけど、違和感が残る作品。何が問題か? ひとことでこう説明できます。「ターゲットが定まってない」

 去年「君の名は。」を大ヒットさせた川村元気Pが、今年も夏休みの終盤に放つ、見た目ジュブナイルSFアニメ。中高生向けと思うでしょ?
 しかし、かの作品ほどスピード感はなく、カタルシス少な目で考えオチのストーリー、そして中学生設定なのに無駄にセクシャルで生々しい描写。広瀬すずに「風俗働きも辞さないビッチ」を自称させ、松田聖子を歌わせる……脚本の大根仁と、何より制作したシャフトが、おっさん向け妄想を全力で具現化してる感アリアリでしてな。

 じゃあおっさんオタなら入りこめるかというと。
 考えオチと書きましたが、「球が破壊される=二度とループは発生しない」状況で、ふたり共通してレインボーブリッジにいる未来を見てるんだから、これ、ふつうに「駆け落ち成立エンド」の解釈でいいと思うのですよ。
 しかし、「よりよい選択」をしたつもりでその終幕に向かう主人公たちを、あまり応援する気になれません。絶対うまくいくわけない。「駆け落ち成立」したらハッピーエンドだ! と考えるおっさんは少なく、むしろ「ハァ? 無理ありすぎ」な即時却下エンディングではないでしょうか。
 誰かがそれを指摘して、「明示するとヤバい」という結論に至って、あぁなったんじゃないかと推察します。
 一方で、まだ自己の世界が狭い中高生ならば、「駆け落ち成立エンド」は一定のハッピーエンドたりうるでしょう。しかし曖昧にして明示しなかったので、彼らの物語リテラシーでは、「何コレ意味わからん」になってしまう。
 おっさんにも若者にも「理解不能」と判断される、どっちつかずで不満の残る結果に至ったようにみえます。

 この作品で一番印象に残るシーンは何と言っても、「親に引っ越しを強制されて連れ戻されるときの、広瀬すずのガチ悲鳴の不快極まりなさ」でしょう。彼女の熱演に罪はないのですが、「ラストどうまとめるか」にすべてがかかるタイプのストーリーを曖昧に終わらせてしまい、この不快を上回る「快」を提示できなかった以上、娯楽作品としては失格といわざるをえません。
 「初動から見ておそらく興行収入は15億くらい、本来オリジナルアニメはこれくらいが妥当」とか言ってる人がいましたが、本作は「『君の名は。』の翌年の東宝夏休みアニメ」という、二度と来ない巨大ゲタをはかせてもらってそれなんだから、本来は10億も行かないデキ、と認識すべき。

 ここまで書いてきて今さら気づいたんだけど、実写アニメ・若者年寄り関係なく、そもそも「原作岩井俊二/脚本大根仁」って時点で水と油過ぎたんでは……大根仁、「家出してきた中学生カップルが、歳をごまかしつつ安アパートに暮らし風俗で働く、でもコメディタッチ」な続編脚本を今頃ウキウキしながら書いてるんじゃないかしらん……。


きみの声をとどけたい
[70点]
@TOHOシネマズ新宿
 で、「打ち上げ花火」の陰で、ジュブナイルアニメがもう一本、ひっそりと公開が始まっています。「誰に向けたものかわからん」という意味ではこちらも似たり寄ったりなんですが、ラストが「快」である以上、僕は断然こちらを推します。

 女子高生6人がひょんなことから、休止していたミニFM局を再開させるひと夏の青春ストーリー、てな筋書きで、これこそ中高生向け。「文部省推薦」みたいな肩書きがついててもおかしくないくらいなのですが。
 実はこれ、キミコエプロジェクトという声優発掘企画の総仕上げとして作られたアニメ、なものですから、見にくるのは大半声優オタのおっさんでして、ポッピンQ」並みに観客の男性率と年齢層が高かったです。

 で、おそらくは1クールのアニメ(あるいは実写ドラマ?)企画の流用と推察され、2時間に納めるにはちょっと尺が足りません。
 イベントの発生やサブキャラの登場が唐突過ぎるとか、途中ナレーションでシーンをむりくりぶっ飛ばすとか、サブプロットが終わったセリフ直後にいきなりメインプロットの急展開が始まるとか、「まとまり・完成度」という意味では、率直に言って「打ち上げ花火」よりはるかに劣ります。もっとゆったりした展開で見たかったなぁ。

 しかしながら、主人公たちのキャラの置き方や知識レベルが適切で、イヤミな感じや不自然さがなく、とても感情移入度の高い物語空間が構築されています。
 また、開幕10分程度でラストに何が起きるかわかっちゃうんですが、中途に挫折やトラブルをきちんと配したうえでその終着点に向けてバリバリ邁進していき、完璧にそのクライマックスをこなし、きっちり感動にまとめきっている以上、鑑賞後の気分は「快」のひとこと。
 あの展開なら「住民(=元リスナー)全員のユニゾン」をクライマックスのトリガーにするのがベストだった気はしますが、まぁ、声優プロジェクトだからね。そこが妥協にみえたとしても納得感のある、良い歌声でした。

 知名度低すぎて、公開がすぐ終わっちゃうと思うんで、「打ち上げ花火」が不満だった人は早めにこれで口直しをしましょう。



君の名は。 -
君の名は。
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2017年08月17日

短評(ホームカミング/ファウンダー/スターシップ9/右目と左目で見る夢/裁き)


スパイダーマン ホームカミング
[80点]
@TOHOシネマズ渋谷
 言わずと知れたスパイダーマン。ソニーとマーベルが提携して、無事アベンジャーズ加入が成った、「シビル・ウォー」の直後から始まる再リブート。
 面白かったです。変な言い方だけど、今年の「君の名は。」たりうる作品。なんとなれば、めちゃくちゃテンポがいい。派手なシーンも地味なシーンも、細かいネタを入れつつ次へ次へまた次へと進めて、ちょっとやそっとのアラはさっさと押し流すと同時に、「先を知りたい」という渇きを的確に鎮めてくれます。若者層はこの速度でないとついてこないって、すごくわかってる作り。そのスピードの中に落とし込むあの「衝撃の真実」。それを超えた先の、苦みを含んだ少年の成長……。
 これでアメリカの学生のパーティー文化、なんてのがメインプロットでなければ、日本でももっとぐわーっと盛り上がるんだろうけどなぁ。

 ところで主演のトム・ホランドの Wiki 見てたら、映画初出演が「借りぐらしのアリエッティ」英語版の吹き替えだったってマジですか。


ファウンダー
[65点]
@角川シネマ新宿
 ホームカミングで悪役を演じたマイケル・キートン主演で、田舎のハンバーガー屋だったマクドナルドを世界最大のフランチャイズチェーンに築き上げた、レイ・クロックの一代記。……ていうか、彼が時代の変革をもたらす陰で貫いたえげつないまでの上昇志向を、余すところなく描いた作品。日本人的には後味悪いけど、アメさん的にはマクドナルド兄弟の方が固陋で愚かな敗者として、バランス取れて見えるんだろうなー。


スターシップ9
[65点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 スペイン・コロンビア合作のSF。移民のため旅立った宇宙船にトラブルで一人取り残された女性のもとへ、修復のため一人のエンジニアが現れる。規模的にもネタ的にも「月に囚われた男」を彷彿とさせる、宇宙の閉鎖空間を舞台にした小品、と思いきや……。
 凝った設定にも関わらず、説明セリフが要所要所にとどまり、雰囲気で理解させようとしている印象があり、個人的には物足りない印象があります。ただその「雰囲気」は絶妙で、少なくとも日本人には、こういう「暗さ」をまともに演出できる映画監督はいないよね。気鋭のスペイン人監督、とのことですが、これは一度大作を見てみたい感。


山村浩二アニメーション 右目と左目で見る夢
[55点]
@ユーロスペース
 久々の山村浩二短編集。今回は、「依頼を受けて」とか「共同制作で」という作品が大半で、山村作品の一番の魅力だと思う暴力的とも見えるイマジネーションは薄かった印象。縦長のビル向けのプロジェクションマッピング用映像を映画館で上映、ってのは斬新なのか苦渋の策なのか?


裁き
[70点]
@ユーロスペース
 インド発の法廷映画。といってもクライム・サスペンスではなく、またボリウッドスタイルも排して、ガチガチの固定カメラで、ある裁判の顛末とそれに携わる人々の日常を切り取っていく作品。インド映画も新たなステージのものが日本に入ってくるようになってきたようです。
 解説によるとカーストの問題もあるようですが、要は、民衆を歌でアジる扇動家をなんとか牢に入れたい検察側が、「おまえの歌の歌詞を真に受けて自殺した奴がいる、自殺幇助だ」と日本人的には無茶にも程がある難癖で逮捕、その無法と争う弁護士の物語。

 左翼さんたちはこの作品を、いわゆる共謀罪と絡めて権力の横暴うんぬんと喧伝するでしょうが、それ以前に日本は、国会を人民裁判所扱いしても誰も疑問視しない恐ろしい国で、まず先に「司法に対する信頼」を構築しないことには、この手の横暴は正されません。この作品の、判事も検察も人間であることをきちんと描写する誠実さこそ、見習いたいものです。



シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (字幕版) -
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (字幕版)
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2017年08月08日

ブレンダンとケルズの秘密

[80点]@恵比寿ガーデンシネマ

 「ソング・オブ・ザ・シー」のヒットを受けて、トム・ムーア監督の長編デビュー作が日本公開。中世アイルランドを舞台にしたファンタジー。

 見ての感想。

 ヤバい。「スゴい」を通り越して「ヤバい」。

 僕がこれまで見てきたアニメ映画の中で、最も絵画的で美しいアートアニメーションのひとつ。ユーリ・ノルシュティンやミッシェル・オスロ監督に比肩します。これを欧米公開当時に輸入できなかった日本の業界人の見識を疑います。
 「ソング・オブ・ザ・シー」も美しかったですが、ここまでの感慨はなかったですね。ただそれは、かの作品では兄妹の行く末に思わず手を握っちゃってそっちに意識が囚われていたせいでもあり、本作はストーリーにはそこまで引き込まれません。

 というか、「子供向け」にしようとしてか、ややチグハグな印象を受けます。
 キャッチコピーに反して、別に世界を救うとか救わないとかなくてヒロイックなカタルシスには欠け、その意味ではバッドエンドとしか言いようがない展開はどうなの……。
 一方で、あんなに恐ろしく描かれるバイキングたちが、最終的におじさんを生かし塔も破壊もしないあたり、ずいぶん優しい侵略だなぁと……。
 「ペンは剣よりも強し」的な意味合いもあるんだろうけど、あの人たちがやってるの、その意味での「ペン」ではないよね? 文化を守ろうとする行動は、おじさんの方が確実に正しいよね?


 なので本作は、ひたすら見惚れる作品となっております。ファンタジーに興味のある方は必見でありましょう。
 物語のモチーフとなっているアイルランドの国宝「ケルズの書」を範にした、徹底した細部までの描きこみ。そしてそれがアニメーションする脅威。
 ブレンダンとアシュリンが樫の実を探して森をゆくシークエンスが絶品です。うまく説明する語彙がなくて困るくらい「美しい」のひとことです。虫がいっせいに飛び立つシーンは鳥肌立つかと思いました。あと、クロム・クルワハの眼を奪う戦闘シーンも素晴らしかった。「ヴォルフィード」思い出した(笑。

 ともあれ「ソング・オブ・ザ・シー」と併せ、もう一度見てみたい、そして世界に溶け込みたいと思う作品です。


 あと思ったこと。
○仲間の修道士に明らかに黒人がいるのは、最低なポリコレ配慮かと思ったら、当時のアイルランドはキリスト教圏すべての地域から留学僧が集まってたそうで、本当にいたかもしれないらしい。

○「オオカミの妖精」がおめめくりくりなロリっ子という発想は、何から着想を得てそうしようと思ったのか、おじさん怒らないから言ってみ(笑?



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2017年08月03日

心が叫びたがってるんだ。(2017実写版)

[75点]@TOHOシネマズ新宿

 わりと早めに見ていたのですが、地上波放送されたアニメ版も再見しての感想。アニメ版の頃から実写で作るべき題材だと思っていましたが、当たりでした。
 アニメの方を高く評価しがちな当ブログですが、本作に限っては「実写>アニメ」。とはいえ、どちらも良いです。


○実写版の何がいいって、脚本の徹底したブラッシュアップ。アニメ版の感想で「『気持ちを言葉にすること』に徹底して突っ込んだ」と書き、とかく「言葉」の量がハンパなかったわけですが、実写版はその点でウザいところがありません。
 しかしちゃんと同じ内容になってる、それどころか、アニメ版でごちゃついたり勿体をつけた部分を、丁寧に解きほぐしてわかりやすくしており、理解がスムーズです。卵の妖精をオミットしたのはナイス判断。

 ただ、アニメ版の饒舌さこそがこの物語の本質、とも考えられ、そこを捨てて平板な青春群像劇にしてしまった、という見方もありそう。もともと起伏の浅いストーリーだけに、アニメ版を知らない人にはやや単調だったのでは? という印象もあるのですが、初見の方はどうだったのでしょう(てか、初見の方はあの「キャッチコピーでネタバレ」をどう思ったのか……全面的に「アニメ版見てるの前提」で作ってたのかもな……)
 また、タイトルの前後の時間経過に何の説明もないのはちょっとボーンヘッド過ぎて、序盤はどうなるかと思いましたぜ。

○アニメ版ではわちゃわちゃオーバーなボディランゲージをさせた部分を、芳根京子の演技力に全振りした点はやはり実写の良さ。
 →だからエンドロールの最初がなんで「中島健人」やねん、ちゅうの。
 →演技全振りなのに、なぜか容姿をアニメに寄せようとしすぎて髪型が変。あれじゃまるで太ってるのをごまかすAV女優じゃん?

○最近の実写では、主役級はキャラが立っててもサブキャラやモブが壊滅的で素人演技丸出し、というのがありがちですが、本作はそれがありません。野球部の山路くんの存在感がすごい。というか、野球部サブプロット全体に存在感が増してる。

○クライマックスのミュージカルシーン、アニメ版では過程にも内容にも、高校生にできるの? 的な不自然さがありますが、実写版にはあまりありません。むしろ、「田崎もっと真面目に踊れ!」みたいな生身ならではのリアリティがあって、親近感高いです。


 一長一短というか、アニメはアニメらしさ、実写は実写らしさを意識しているようで、どちらも良いので、比較して見るのオススメです。


 ……ところで、水瀬いのりはどこに出てたんでしょうか。



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2017年07月26日

怪盗グルーのミニオン大脱走

[80点]@ユナイテッドシネマアクアシティお台場

 月泥棒危機一髪ミニオンズ
 おなじみイルミネーションスタジオの最新作。今回は「泥棒を止めたグルーには実は泥棒志望の双子の弟がいて、ともに共通の敵に立ち向かう」……的な話、なんだけども。

 いやもう……今回の感想を一言で言うと、

 「中だるみが始まったと思ったらクライマックスだった」

 「危機一髪」に比べて断然面白く、テンポがいい。体感時間が短いのなんの。

 僕は、「伏線が収束していく」展開って大好きなのだけど、このシリーズに限っては例外。
 ストーリーと呼ぶべきものは、あるにはあり、例によってグルーと三姉妹の視点をまったく違えて進行していくのだけど、すこぶる浅いです。浅いので、もう「月泥棒」のような泣ける感覚はなく、「マーゴはこのままチョロインの道を歩むのか(笑」なんという反応くらいしか湧いてきません。

 しかして本作は、「ミニオンズ」同様、とにかくアホネタのラッシュラッシュ畳み込み。クライマックスに至って、話を畳もうとするがためにネタの勢いが止まり、中だるみに似た感覚を覚えるという。

 「大脱走」のシーンなんて、ストーリーにビタイチ関係しないのに面白いし、一方でグルーの方も、本シリーズ共通のネタである「敵アジト侵入」が、アホのドルーと二人三脚の展開にすることで寸断なく笑いを取る方向に作りこまれています。コントの原点とも言えそうなネタなのに、まだまだできるもんですねぇ。凄いわホント。


 声優陣のこと。松山ケンイチと生瀬勝久が「聞いても彼らとわからない」レベルのハマりぶり。すばらしかったです。芦田愛菜は相変わらずうまいけど、そろそろアグネスは卒業させてあげましょうよ。
 なので、主役夫婦の滑舌が悪いのがなんとも……。鶴瓶はもうアレが味なんでかまわないのですが、中島美嘉は切り捨てる勇気が必要だったんでは、と思います。ていうか、「続編が出て続投させなきゃいけないリスク」を、芸能人キャスティングする人たちによーっく考えていただきたい。

 ……あと、今回は宮野真守って何やってたっけ? ネタ枠でないのが残念だとても残念だ。



ミニオンズ (吹替版) -
ミニオンズ (吹替版)
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2017年07月20日

パワーレンジャー

[45点]@109シネマズ川崎

 本国アメリカではヒットしたものの、中国市場で大コケ、続編が作られるかは日本の興行成績にかかっている……てな話が伝わってきてるわけですが……。

 こりゃムリだよ。
 ポリコレに配慮されたキャラ配置、キャラ設定の根っ子にあるスクールカースト、とりあえず意味もなくカーチェイス、唐突なプロダクトプレイスメント、何やってんのか全くわからないCG戦闘、ひたすらグジグジ悩む主人公たちがヒーローとして活躍を始めるまでに1時間半! こんなの許容できるの、ハリウッドのお約束に理解のある&ヒーローのビギニングものがいつもこういうパターンになるって知ってるアメリカ人だけだって!

 ていうかさ、アメリカでもパワーレンジャーって子供向けの番組だべ? ディズニーアニメだったらもうエンドロールが始まる時間が経過してもまだパワーレンジャーが出てこない、この拷問みたいな内容にアメリカのキッズは耐えたの? 感心するわー……。
 そんで出てきたと思ったら、いちばん盛り上がる「パワーレンジャーのテーマ」が流れた時間が5秒あるかないか、とか馬鹿か?! どういう編集だよアレ!

 5体合体のシーンだけはちょっと面白かったけど、この映画全体に対しての相対的な良さとしか……歌舞伎の見栄が根底にある日本の特撮の方が、はるかにカッコよいキメかたを知ってると思います。つーか、「スーパー戦隊」輸出の中心人物たるプロデューサーのサバン氏がそこらへん一番わかってるはずなのに、どうしてこうなっちゃったんだ……?
 日本のコンテンツホルダーは自信を持って、「おれらのやり方の方が面白いんだ!」と主張しながら輸出すべき頃合いでしょう。


 109シネマズ川崎は吹き替え版のみだったけど、どうも字幕と吹き替えの公開数が館によってバラバラなのは、大人向けか子供向けかよくわかんないからでしょう。
 なお吹き替えは、ゲスト芸能人含めてほぼ問題なしでした。アレアレな勝地涼はともかく(笑、地雷かと思えた広瀬アリスが、平野文っぽい感じで意外に良かったです。

<追記>
うん、やっぱ本来はこうなんじゃないか! 映画だけなぜこうなった。



スーパー戦隊40作記念 TVサイズ主題歌集 - V.A.
スーパー戦隊40作記念 TVサイズ主題歌集 - V.A.
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2017年07月19日

銀魂 (2017実写版)

[65点]@109シネマズ川崎

 さて、これまで低予算をウリにして安いコメディを量産してきた、当たりはずれの甚だしい福田雄一監督に、待望のビッグバジェットが渡されての実写版「銀魂」です。
 アクションとVFXにめっちゃ金がかかってるようで、見目はすごくアップグレードされてるし、下手な尺引き延ばしや顔芸要素も薄くテンポよく進むので、面白いといえば面白いです、が。

 うーん……、これ、まるっきりアニメの「新訳紅桜編」じゃね?
 どこらへんがって、まずもってワーナーブラザーズのロゴ天丼」をやってる時点で、影響を受けてないなんて言わせねぇぞこの野郎、ってなもんで。

 もちろん、「銀魂」をネタにしておいて、「豪華なコスプレ大会」なんて批判が的外れなのはわかってます。が、キャラ再現性というだけでなく、構図とかデザインとか色彩とか演出の間の取り方とか、松陽先生の声が山寺宏一・定春の声が高橋美佳子とか橋本環奈が定春を呼ぶ時のイントネーションが釘宮理恵とか(いや、これはよかったんだけども)
 「原作」じゃなくて「アニメ」から、「リスペクト」を超えてまんま引っ張った「実写化」になってる気がするんですよね(当然サンライズに話は通ってるのでしょうが)。

 福田雄一オリジナル、といえるのは、序盤のメタネタを除けば、パロディ小ネタのみに見えました。それもシャアとかナウシカとか不発ばかりです。エリザベスをオバQネタでいじっても無価値ってわかってないのは致命的。今の若い人オバQ知らないよ! ドロンパもっと知らないよ!

 下手にいじって、オレサマ色に実写化されるよりはマシなんですけども。
 すでに型ができあがったアニメがあるこの作品に対し、「追従するしかない」って白旗揚げて安易に流れた感じがして、正直「福田作品」としてはデキの悪い部類に入ると思います。ビッグバジェットでも駄目なのか……面白い時と面白くない時の基準がホント見えんわこの人は。


 ただし、橋本環奈as神楽は絶品。ゲロインを再現してなお誇り咲く千年に一人のカワイさ、他のキャラが全部霞むレベル。もう一生チャイナでいてくれ!




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posted by アッシュ at 13:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月18日

短評(ノゲラゼロ/ジョンウィック2)


ノーゲームノーライフ・ゼロ
[55点]
@TOHOシネマズ川崎
 うーん、「ロボットが人間性を得ていく」タイプの話を初めて見る中高生ターゲットには、新鮮な経験ができたろうよくできた話だと思いますが……もともと「異世界チート」の走りであり、それも知略戦で無双するタイプの話を劇場版化するにあたり、誰がこの鬱展開を望んでおったのか、ニーズをよく確認すべきだったんではと思います。


ジョン・ウィック : Chapter 2
[80点]
@TOHOシネマズみゆき座
 前作で「アクションはこだわりすぎて地味」と書いたわけですが。
 ……振り切れてキター! 最高!
 とにかく無茶ぶりと猪突猛進にもほどがある笑うしかないアクション、サイッコーに面白くご都合主義をブン回す主人公補正ぶり、「シューテム・アップ」かよ! 闇と光のコントラストも美しい……。
 「世界中の殺し屋に狙われる」シチュエーション、世界中というからにはもう少し人数が欲しかったとこだけど……その絞り込まれた中に「スモウアサシン」とか……おまえらアホやろ! いいぞもっとやれ。
 そしてそのライバルたちの頂点にいて颯爽と立ちはだかる手話ねーちゃんの、カッコカワイイのなんのってめっちゃゾクゾクした。ルビー・ローズって女優さん、トリプルXXXにも出てたらしいけど、覚えておこう。



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 ……そっちじゃありません。

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posted by アッシュ at 17:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月13日

ライフ

[65点]@109シネマズ川崎

 ……えー……いい意味でひどい映画でした。

 ゼロ・グラビティはやはり各所に衝撃を与えたのでしょう。しかしそこで、あの設定と映像技術で「エイリアン」撮ったらウケるんじゃね? と考えるのがハリウッドクオリティ。
 実際には、無重力移動がゼロ・グラビティほど自然に見えなくて、技術的に少し劣る印象を受けましたが、アバンタイトルのISS内から見る無重力長回しなどは、決して負けてないです。あるいは、地球外生命をなんとか目覚めさせようとする序盤のシークエンスは理系的にゾクゾクしたので、ずっとそれで行ってくれたらどんなによかったか。「地球外生命よ、めざめよ!」だけで十分映画になるはずなのに……。

 で、全体的にキャラクターの掘り下げが淡泊で、かつイベントもかなりのご都合主義なのでカルビンあっさり再侵入のシーンは、いつ分裂したの? とワケがわからなかった)、エイリアン展開が始まって以降は結局、高度な知性をもつキャラクターがリアルなテクノロジーに沿った行動を取る設定のはずなのに、頭の悪いやつらが右往左往するヒャッハーなパニックムービー仕様でまとまっていて、「そーゆーのが好きなんだろオマエラ?」といわんばかりの……まったくハリウッドってヤツはー!


 あと、真田広之が出演してるのに話題になってないんで、最初に死ぬようなチョイ役かなと思っていたら、ほぼ最後まで出ずっぱりの重要役だったので驚きました。逆に主役級にクレジットされてるライアン・レイノルズが、そのポジションでした。



ゼロ・グラビティ(字幕版) -
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posted by アッシュ at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月11日

メアリと魔女の花

[75点]@新宿ピカデリー

 面白かったです。
 正直、あからさまに「自然原理主義・反原発」な思想には鼻白むし、前半でかっちり描いた「大学」が後半影も形もなくすあたり、モチーフの多くは借り物に過ぎず、掘り下げが浅いのにバランスが悪く、完璧さや凄みにはほど遠いものです。
 しかしながら、構成力というか、物語の盛り上げ盛り下げのタイミングと、宮崎駿のくびきから解放されて(?)弾けるアクションパートがうまく、見ごたえがあります。前二作と比してここは段違い。

 それにもまして素晴らしいのは、これもう僕はアリエッティのころから絶賛してるわけですが、米林宏昌監督が宮崎監督に圧倒的に勝るのは、「女の子の描き方」。宮崎駿はなんだかんだで古い時代の人で、女性キャラクターを「作品世界の秩序に従うおとなしい存在」として描くことが多く、殻を破り新たな世界へ導くストーリーの場合、男性主人公が牽引しているように思えます(ナウシカ/サンはおとなしくはないが、強く「作品世界の破壊」を試みるクシャナ/烏帽子様が対峙するという点が興味深い)

 本作は明確に「女の子の冒険」であり、(ささやかな表現だし、個人的には「それを目指してはいけない」のですが)様々な体験を経た女の子が、自らの判断で、世界の枠を破壊して次のステージへ至ります。
 ラピュタの性別逆転版……というより、ディズニーの最近の女の子向け映画にもそんな方向性があって、「女性の自立」云々を語るまでもなく本作はそうした現代の潮流に乗っている印象があります。ジブリの継承者としてだけでなく、面白くて売れる「女性もの」を、米林監督が自らの持ち味を発揮しつつ目指した結果と考えていいんじゃないでしょうか。

 ……えぇ、だからそう、ポッピンQが「プリキュア卒業後の女の子」を狙うのなら、こういうとこ目指さなきゃいけなかったんだよ!



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posted by アッシュ at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月07日

忍びの国

[60点]@チネチッタ

 リアリティライン、て言葉があるじゃないですか。
 この作品は、「忍者」を、「土豪が統括する傭兵集団」という史実に近いかたちで描きつつ、人間離れしたアクションやスキルを駆使するフィクショナルな超人像も併せ持たせています。原作の和田竜氏か中村義洋監督かわかりませんが、非常にユニークで面白い線を引いたなぁと感心します。
 なのに。
 冒頭のツカミ、忍者同士の白兵戦から始まるんですこの作品。「真っ昼間」「白く見えるほど乾いた砂地」の「集団戦」で、忍者が全員、全身黒ずくめの忍者装束。

 ギャグまんがだよね?

 そういうふうにツカまれた僕の、本作に対する総評は、「笑えないギャグ映画」です。
 そこで「忍者の服装」ごときでひっかかったりしない方にとっては、……いや自分も、アレがせめてカーキか焦げ茶くらいのカラーリングであったなら、史実の天正伊賀の乱を、娯楽アクションへと換骨奪胎した見事な作品として評価できるのではないでしょうか。



映画「のぼうの城」【TBSオンデマンド】 -
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posted by アッシュ at 14:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月03日

ジーサンズ -はじめての強盗-

[70点]@チネチッタ

 僕の好きなタイプの老人娯楽映画。マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、アラン・アーキンが強盗する話。
 動機が、「元勤め先が買収(実質倒産)、資産を銀行が押さえたために、年金の支給が停止された」なので、ラストベルトの悲惨な現況を表に出してくるかと思ったら、あるにはあるけど全然控え目。中盤以降はひたすらクライムコメディです。
 その割り切りが実に軽妙で面白いです。不要な情報がなく、すべて回収されます。巧みで気持ちよいオチを三段階くらいかぶせてくる、後味のいい作品。ラストシーンの出費の金の出どころを考えると、「年金以上の贅沢」してる感じで、探られるとかなりヤバいんじゃねぇかと思いますが、まぁ些細なことですかね。
 ただ、その割り切りには逆に弱みもあって、「クライム」の部分に老人が主役である必然性はあまりありません。ていうか70代には不可能でしょうアレ。「体を鍛えた」は免罪符にはならんよ、札束があまりにも軽すぎる……。

 ちょっと面白かったのが、スーパーの警備員が全員カラードなうえ、捜査に協力する見返りに「ばあちゃんが逮捕されたから釈放して」とか言い出す皮肉なシーン。警備員の身内が犯罪者なわけで、それでも社会が成り立っちゃうのはいいのか悪いのか?

 あと、1回だけ場違いなラップ調が入る以外、音楽がいかにも古き良き娯楽コメディ! って感じですごく良かったです。



RED/レッド(字幕版) -
RED/レッド(字幕版)
posted by アッシュ at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする