2018年04月18日

パシフィック・リム アップライジング

[75点]@ユナイテッドシネマアクアシティお台場

 いやはや今回は、バトルシーンの見映えが段違い。凄かった。
 前作と異なり、ほぼすべて陽光の下なのが素晴らしい。これだけでホント、「ごまかしがない」感じで、没入感が格段に上がった感じがします。
 バトルのパターンも多彩で、かつロボットもののツボを押さえていて、「無人機作ったら敵に乗っ取られた」「敵が合体して巨大化」みたいな王道展開が次々来るのでアガるのなんの。
 総じて「バトルの映像」に関しては、ここまでやられたら日本のアニメ・特撮かたなしだよね、という良い意味での絶望感がさわやかです。


 ただストーリーはな……前作と比べて、設定の練り上げ、伏線とその回収、どんでん返しといろいろ工夫はありますが、面白いと感じた部分はほぼすべて、前作でサブだった博士両名のパート(というかあの中国人社長か。レジェンダリーいま中国資本だもんな)にあって完全にメインを食っており、肝心の主人公の成長がイマイチくっきりしません。
 ジョン・ボイエガの過去の蹉跌も、ちゃんと映像で作り込むべきだったと思うなぁ。


 そしていちばん問題と思うのは、「キャラ増やしすぎて全員に目配せができない」という現代日本アニメの悪癖も踏襲してること。
 キャラの属性を増やしたいだけのアニメと違い、本作の場合、純粋に国籍・人種の多様性を確保したい事情はなんとなくわかるのですが、さすがにあの投げっぱなし候補生どもは擁護できない。せめてあのロシアっ娘には、きちんとサブプロットと見せ場を与えて欲しかった。
 ロボットも複数登場してるけど、中国とロシアが噛ませだった前作同様、本作もジプシー・アベンジャー1体(とスクラッパー)だけで、物語上は事足りてしまってます。

 ラストの怪獣3体に、見た目にも「性能差」をきっちり出して表現し、味方ロボット側も、それに対応する性能を持つ機体で対決する、というのがセオリーのはずなのに、そこが伝わらず双方「単に数増やしただけ」になっているのはいただけない。
 ネトフリかアマゾン行けば個別に活躍するスピンオフが用意されてるのかもしれませんが、本編のクライマックスを見ながら「そういうの作ってるんだろうなぁ」とよそごとを思わされるのは、ちょっとね……


 なお、「東京が東京に見えない」「東京と富士山近すぎィ!」という意見が散見されますが、本来の東京は芦田愛菜のときに壊滅しているはずなので、「あれは第三新東京市」という見解を自分も支持します。


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2018年04月17日

ダンガル -きっと、つよくなる-

[75点]@渋谷シネパレス

 「きっと、うまくいく」のアーミル・カーンの新作。便乗だけど、いいタイトル。
 インドの女子レスリング第一人者であるギータ/バビータ姉妹と、ふたりをスパルタで育て上げた父親の話。
 物語は英連邦限定のコモンウェルスゲームスまでを描きますが、ギータは後にインド女性初のオリンピック代表となります。「女子レスリング初」でなく「女性初」です。ふたりの活躍が、どれだけインドの女性社会とスポーツ振興に勇気と影響を与えたかって話ですね。

 序盤のスパルタは、先進国基準では「完全に虐待」なのでちょっと引いちゃうのが難点なんですが、しかしそれですら、道具扱いされるインドの農村女性にとっては「父親がそこまで娘に入れ込むこと自体がレアで、愛情のなせる行為」と明らかにして、衝撃を与えてきます。


 表現規制が厳しいインドでも、レスリングならあそこまで「男女組んずほぐれつ」を描写してもいい、というのはちょっと意外でした。史実ではあの「甥」にあたる人物は「姪」だったそうなので、これアーミル・カーンは、意図的に表現上のチャレンジとしてやってるんじゃないでしょうか(チャレンジと言えば、アーミル自身の肉体改造も凄い)

 もっとも、そのレスリング描写が迫真にして圧巻で、有無を言わせない感が素晴らしいです。投げるシーンとかホント美しく撮り上げられています。日本レスリング協会が全面的に推してるのもわかる気がする。


 姉妹が袂を分かってからの展開が、また激アツ。わかりやすく悪役に仕立てられたナショナルチームのコーチはちょっとかわいそうですが、娯楽としては実に正しい。
 逆に、「とーちゃんに頼らなくてもやれる」結論が必要だったとはいえ、ラスト直前、とーちゃんが引き離される展開は、娯楽にしてもちょっと雑だった印象。あれは騙されて閉じ込めるのでなく、本当にインドのレスリング協会の偉い人と会い、今後の振興について激論を戦わせる、というのがよかったと思います。
 遠くから「国歌が聞こえる」で勝利を知るのはうまかったですが……。




 ところで、渋谷シネパレスが閉館だそうです。あぁ、また渋谷の映画館の灯が……と思ったら、いったん閉館したシネクイントが移転してくる(つまりパルコによる買収)だそうです。シネクイントが再開する話は聞いてたけど、まさかこういう形とは。



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2018年04月11日

短評(ヴァレリアン/ジュマンジ)


ヴァレリアン -千の惑星の救世主-
[70点]
@TOHOシネマズ日比谷
 フランスでは著名な古典バンド・デ・シネSFの、リュック・ベッソンによる映像化。
 ストーリー的には変にややこしいというかツッコミどころが多いというか、特に「なぜアレが政府資産てことになってて、かつヴァレリアンが事情を理解した後になっても政府の依頼を優先しようとするのか」がまったくわからんです。ここのやりとりをクライマックスにやるので、ちょっと後味が悪いですね。
 もっとも、本作ではそれは些末で、「イマジネーションの洪水」と呼ぶべきめくるめく冒険行を楽しむタイプの作品。ここらへん、ベッソン流のハッタリの効いた映像美はまさしく円熟の域です。冒頭のいかにもアートな惑星に始まり、VR世界、宇宙空間、果ては海にも潜る縦横無尽な感覚は「ワンピース」っぽくもあります。

 あと、ヒロインのローレリーヌちゃんの絶対的ヒロイン感もすばらしい。アレは口説く。口説かなきゃ始まらない。ベッソンさん好きなんだからもう。



ジュマンジ -ウェルカム・トゥ・ジャングル-
[75点]
@109シネマズ二子玉川
 いいね! 本当に、面白いとか傑作とかそういう言葉より、「いいね!」ハートがピコーンとつくのが似合いそうな、そんな作品。
 4人の高校生が閉じ込められる「ゲーム」が、ゲームに徹しているのが良いです。最初に大雑把なゲームシステムと、各キャラの「スキル」と「弱点」が提示され、それらがいつどんな状況で使われるかがストーリーの肝で、大げさな中身はありません(それが逆に物足りない人もいるとは思いますが)。
 テキトーな導入でいきなりゲームスタート、ライフが3つ、ミスったらライフひとつ減る、復活時無敵(これ重要!)、3回ミスったらゲームオーバー、そんなファミコン時代のゲームでも、プレイを通して、僕ら確かにちょっとだけ成長できるはずなんです。そこを無邪気に信じてる感じがとても良い。
 この作品でも、4人の関係は少しだけ、物語としてはごく単純な変化をとげます。過剰な説明や深読みする部分は一切ありません。これくらいシンプルなお話こそ今は求められていると思えます。

 そしてその「高校生の初々しい変化」を、ロック様やジャック・ブラックがマジ顔でやらかすので笑えるったら。
 ホントに、ジャック・ブラックの怪演はスゴすぎですよ! あの巨体がマジで女子高生に見えてくるんだから。冗談でもなんでもなく、かの演技が賞レースに加わっていないのは、ちょっとおかしいと思えるレベル。



スクール・オブ・ロック (字幕版) -
スクール・オブ・ロック (字幕版)
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2018年04月06日

ウィンストン・チャーチル -ヒトラーから世界を救った男-

[85点]@TOHOシネマズシャンテ

 ジョー・ライト監督、渾身の大傑作。

 ……が、いかに傑作かは「解説が必要」で、必ずしも万人向けではないのは確かです。そこらへん、触れてくれるかと思ってパンフも買ったのだけど、全然書いてなかったですね。
 だとすると、「美化されすぎじゃね?」と思う人が多数派じゃないかと、少し悔しいです。


 ……ちょっとネタバレ多めなので、少し離します。



ヒトラー 〜最期の12日間〜 (字幕版) -
ヒトラー 〜最期の12日間〜 (字幕版)

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2018年04月02日

トレイン・ミッション

[65点]@TOHOシネマズ日比谷

 リーアム・ニーソン演じる主人公は、電車通勤のサラリーマン、リストラされたことを女房に言えずに毎日出勤してるフリ。そこから始まる通勤電車内限定シチュエーションサスペンス……って、これがなぜ日本映画じゃないんだよ! と叫びたくなる一本。新感染といいこれといい、日本が真っ先にやらなきゃいけないネタをよそに持ってかれるのは、どうなんだろう?(もしかしたら60年代くらいの刑事物でやってそうにも思うんですけどね)
 ……といっても、そこで「元警官、だからターゲットにされた」という設定がついちゃうのがハリウッドなんだけども。

 んで、ハリウッドなら面白くなるかというと、ストーリー的にはムリありすぎです。犯人側がなんであんな七面倒くさいことをしてるのか、またFBI側がなんであんな場所を使うのか、さっぱりわかりません。
 「ことを絶対荒立てたくないんだ!」みたいな強い意志があるならともかく、ヴェラ・ファーミガさんは「ほーらあなたのせいで人が死んだのよぉ」とかサイコなことおっしゃるわけでな……。
 「外部と連絡を取らせない」理由付けが、シンプルだけど、この限定状況にあってはなんかわざとらしいので、原作とかあるなら80年代なのかも? それくらいの古いセンスだとしたらなんとなくわかります。

 結局、電車暴走(複線ドリフト!)、黒人車掌の無駄死に、車中籠城からのSWAT登場……と、いかにもアメリカンな展開で絵面が派手になってからの方が、断然緊迫感があって面白いです。うむ、やっぱアメリカ人に「通勤電車」をネタにするのは無理なのだ、日本でリメイクしろ!

 日本なら、「Maxたにがわ」あたりを使うと、かなり似た話がつくれそうに思います。最終的なドンパチはガーラ湯沢でやるわけさ!



新感染 ファイナル・エクスプレス(字幕版) -
新感染 ファイナル・エクスプレス(字幕版)
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2018年03月30日

TOHOシネマズ日比谷


 満を持してオープンしたTOHOシネマズの新旗艦、TOHOシネマズ日比谷。初日に行ってきました。

 4階がすべてTOHOシネマズ。多層構造ではなく、1フロアで11スクリーンに行ける作りです。
 1000人収容のホール作ればいいのに、的なことを以前書きましたが、新宿もそうですが、高層ビルの下層で、複数階分の高さを使ってシネコンにする、という構造だと、「高さ的に」1000人規模のホールは作りにくい、ってことに気づきました。そう考えると、500人程度で最大、というのは、限られたスペースにきちっと収めるひとつの解なわけですね。

 そう考えると、東京ミッドタウン日比谷の4・5階をすべて使い、6階より上層への道筋も使って作り込まれたロビーは、広く、休憩場所も多く、スクリーンへの行き来もしやすく、開場案内のディスプレイもわかりやすく、超快適。
 プレミアシートとかあるスクリーン1は見てないけど、館内に限っていえば、さすがに本気で作り込んだベストオブTOHOシネマズではないかと。


 ……4・5階のTOHOシネマズフロア内に限っていえば、
な!


 それ以外の率直な印象は、出入りが最も難解なシネコンである日本橋と、最初期のダメ構造シネコンとして名高い(?)109シネマズ木場のダメさを兼ね備えており、「何も進歩していない……」と安西先生のごとき嘆きばかりです。

 何しろ、東京ミッドタウン日比谷のビルを外から見たときに、「TOHOシネマズ」の看板がない。外から見ていちばんわかりやすい大きな看板は元「スカラ座・みゆき座」側にあるので、土地勘ない人はそっち行っちゃうと思います。

 館内の案内板にはだいたいTOHOシネマズの文字があり、「チケットカウンターは4Fです」とことごとく併記されているので、日本橋みたいに「たどり着けないのでは?」と思うことはないですが、1階から4階へ向かう「いちばんわかりやすいルートがいちばん遠回り」です。
 行ってみマジで。衝撃受けるから。なんでこんなぐーるぐーる回らなあかんねんて思うから。
 で、そのぐーるぐーる回った先にエスカレータ3基も連ねた超豪華なエントランスがあるのですが、どう考えてもそこから入る人いないよね。どちらかというと、見終わった後に、レストラン街を回遊させたい、という意図だよね豪華にする必要ないよね?


 いちばん出入りしやすいのは、3基あるエレベーターで1階か地下1階から上がるルートですが、1階にも地下1階にも「エレベーターホール」と呼ぶべき空間がありません。また、他の店・料理屋と完全に共用で、直通とかありませんので映画の客が一気に乗ると超邪魔です。

 なのに、逆に4階には十分な空間があるので、「お帰りの方はこちら」状態。え、「レストラン街に回遊させたい」んじゃねぇの?
 (これは、元スカラ座・みゆき座へ行きやすいという意味では正しいです。ちょっと遠くてフードコート的なエリアを突っ切る必要がありますが、地下で直結しており、案内は比較的わかりやすく、ここはギリ及第点です。)

 地下鉄の駅は地下2階です。ミッドタウン全体として、地下2階の駅コンコース的な部分から地下1階のビル本体部分に入るルートがわかりにくいです。というか、なぜエレベーターを乗り換える構造になってるのか、意味がわかりません。
 もちろん、地下にも、「TOHOシネマズ」がある! とわかる看板は、見易いところにはありません。


 で、最大のウリのスクリーン1でこけら落としにかかってるのが、もう旬を過ぎた「グレイテスト・ショーマン」という時点で、腰砕けるわけですよ。「ミュージカルってゲージツっぽいから」以外に理由が思いつかないんですよ。

 何度か書いてますが、ショッピングセンター併設のシネコンって、だいたい出入口がわかりにくいです。
 が、ここの場合、構造がわかりにくいというより、全体の設計思想において「映画とは本来クッソダサイもの」で、今回作り上げられたオシャレスポットにそぐわないので可能な限り隔離した、としか思えないんですよ。

 「ハイソでソフィスティケイトで意識高い何かを維持すべし」みたいな強迫観念がまずあって、「デートで来て、ショッピングして、お食事して、<ついでに>映画でも見てくのがオッシャレーですよー」というコンセプトで、この建物全体が構築されているのだと確信します。
 「TOHOシネマズ日比谷ありき」が前提でこの設計なのだとしたら、設計者頭おかしいです。

 日本の映画館の象徴的存在であったTOHO日劇、その後継と信じて訪れると、ショックを受けますよ。シャンテの拡張だと思った方がいいですよ。いやマジで。



 でも自分、定期券が新橋までなので、ここがいちばん使いやすいシネコンになるの確定なんです。どうしたものか。



音楽ホール・劇場・映画館 (建築計画・設計シリーズ) -
音楽ホール・劇場・映画館 (建築計画・設計シリーズ)
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2018年03月25日

短評(ちはやふる結び/トゥームレイダー/ボスベイビー)


ちはやふる -結び-
[75点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 前2作同様、盤石。
 真島がどんな一線を越えたか全然わからんあたりとか、粗を言い出せばなんぼでも出てくるんだろうけど、例によってキャラの立ちっぷりが激強です。彼らがわちゃわちゃなんかやってるってだけでコメディが成立して、かつ画面が締まる。
 新キャラのすみれちゃんとつくばくんも、すんなり入ってさらっと成長して。部員それぞれに確かに何かを得て前へ進んでいるのが実感できるのに、見ているこちらにはノーストレスという、シリーズ通して現代娯楽のお手本のような作品でした。

 あと、サブタイトルが「結び」だけどその文字はいっさい表示されず、水引だけで表現したのすごく美しかったです。



トゥームレイダー ファースト・ミッション
[70点]
@新宿バルト9
 トゥームレイダーって、いま権利を持ってるのスクエニ海外支社なのね。だからか(いちおう)日本が舞台なんだけど、それを宣伝で隠したのなんでだろ? 戦争がらみのハクソーリッジじゃあるまいし。卑弥呼が悪の女王っていうのを嫌ったのかな? そんなのみんな鋼鉄ジーグで知ってるから(笑)、気にせんでいいのに。
 ただ、「古代日本」というのはアジア市場を考える上ではうまいな、と思えました。当時の記録や文化はあらかた中国由来なので、日本・中国両方に目配せしつつ映像表現はすべて中国風でOKという、ハリウッドにはありがたいパターンでは。

 で、作品ですが、ストーリー的には腰砕けますよ、魔の海域を越ねばたどり着けない絶海の孤島→空路ならフツーにヘリが入れて悪党側は自由自在、っていうんだから。そもそも日本の領空領海をバリバリ侵犯してんじゃネェ! というね。
 でもまぁこれは、細かいこといっても始まらない破天荒なゲームが原作なんだし、基本的に、主演のアリシア・ヴィキャンデルちゃんの超健康的肉体美と、あの手この手で彼女をイジめたおすほぼノースタントのアクションのカッコかわいさを愛でる作品です。そこはもうめっちゃエェ感じに撮っていただいてますので、我々は観音様を拝むがごとくそれらを堪能すればいいのであります。若き日のアンジェリーナ・ジョリー版も見てみたいねぇ。



ボス・ベイビー
[70点]
@チネチッタ
 FOXに見限られた(?)ドリームワークスが、ユニバーサルと組んでの久々の大作日本公開。ユニバーサルになって何が良かったって、どうやらローカライズのスタッフがイルミネーションスタジオ作品と同じになったらしく、安定の宮野真守芸」が復活したってことですかね。……アレ全部宮野真守かよ(笑)!

 で、作品なんですが、アニメーションとしてはホントすごい。超ハイテンポなのに、一部のスキもない。物語上、「リアルと空想を行き来する」シーンがたびたびあるのですが、まったく混乱しません。
 しかし、子供が喜びそうなめくるめくアニメーションなのに、物語としては、明らかに「親の世代」がターゲット……それどころかもっと狭い範囲=人の親か、「弟妹が生まれたときを振り返る余裕のある年齢の兄姉」でないと入ってこないと思うのです(自分はそのどちらでもない)。
 しかも「ボス」という愛らしいキャラに、孤独感や労働観がかなり複雑に織り込まれていて、それらを咀嚼して観賞するにはあまりに忙しい内容です。

 あと、「犬の大量生産と販売」が否定のニュアンスなしに存在していて、かつ、「それを赤ちゃんだけが敵視する」という根幹の設定に、忌避感があるのは僕だけでしょうか。



トゥームレイダー (字幕版) -
トゥームレイダー (字幕版)
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2018年03月22日

リメンバー・ミー

[80点]@ユナイテッドシネマ豊洲

 予告でやたら聞かされた、主人公ミゲルの声が甲高くてどうもピンと来ず、字幕版の鑑賞。そのほか、音楽主体かつメキシコ独自の文化から構築されたストーリーということで、いまひとつ期待値が上がらないまま見たのですが、その期待値を完全に上回ってきた快作です。
 隅々まで目が行き届いた、進展の丁寧なストーリーで、わかっててもラストには泣かされる盤石なデキ。

 先に難を挙げるなら、序盤の設定説明が例によって豪速で詰め込み感がある、そのわりに長い(それでもメキシコ独自の「死者の国」概念をきっちり説明できてると思う)ことと、音楽主体なのであえて抑えたのだろうけど、魅せるためのダイナミックなアニメーションには欠ける点、あとラストがアレなら、ヘクターとの交流と、逆にデラクルスとの間に生じる齟齬に、もう少し重みのあるイベントが欲しかったですね。


 「トイ・ストーリー3」のチームの最新作、という触れ込みだったけど、やっぱここのストーリーチームは一味違います。
 無駄なシーンがないのよ一個も。なので、画面に対しての集中力が切れません。

 主人公に課題を与える→結果が生じる、その結果にひねりを加え新たな情報を付加して次の課題へ……という流れの繰り返しだけで作られていると言っても、過言ではないです。かといって単調にならぬよう、別視点をうまく織り込み、その別視点でも課題とそのクリアが課せられているので、捨てられるキャラがいません。
 そのうえで、ちりばめられた伏線をビシバシあてはめてのどんでん返しとクライマックス。

 面白い、というよりは、ストーリー、音楽、美術それぞれが、スムースに体の中に取り込まれていくような、コレが本来、大衆芸術の向かうべき方向ではないかと思うような、美しい映画だったと思います。


 同時上映のアナ雪の短編についてもひとこと。単なるサイドストーリーかと思ったら、それが本編にほしかったと心底思うストーリーの補足がなされていて驚きました。そうそう、姉妹の関係にこういう描写があればもっと評価できたと思うよ!
 あと、あの話は明確に「キリスト教圏の話」としてOKなのね。クリスマスという単語を普通に出して、それに関する多様な風習の説明をする、という流れになっています。



トイ・ストーリー3(吹替版) -
トイ・ストーリー3(吹替版)
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2018年03月20日

村瀬智泰特集 夢の記憶装置

[70点]@シアター・イメージフォーラム

 ミスチルの PV 「Hero」等(YouTubeにあったんだけど、公式ではなかったのでリンクは避けます)にストップモーションアニメを制作している、村瀬智泰監督の短編集。
 ストップモーションアニメとしては、最近の「ちえりとチェリー」や「KUBO」に比べると動きがやや粗い(逆に言えば、本当に手で一つ一つ動かしている温かみが実感できる)作りです。
 また、ストーリー的には観念的な描写が多く、やや退屈な部分があり、そこはかなり大きなマイナス。「天地」とか、凄いけど猛烈に眠かった。

 でもいちばん注目したのはそこでなくて。

 先述のミスチルの PV は、今回上映された作品のひとつ「白の路」を編集しています。北国の荒野で育った子供が長じて故郷に戻ってくる……という、堺雅人視点での「北の桜守」な筋立てで。

 アニメより背景美術が発狂レベル。そこまでやるのか、という。
 ハッキリ言って、同じ「北国」を描いていながら、「北の桜守」2時間分のすべての「美の表現」を足し算しても、「白の路」の冒頭、数秒の白樺林の表現にかないません。圧倒的な寂寥感。孤独。冷え切った空気……。
 予算数百万がせいぜいであろうストップモーションアニメが、日本屈指の映画会社の社運を賭けるレベルの大作を、少なくとも背景美術という観点では軽く凌駕するんです。

 アニメーションと実写は違うなんて言い訳は、通用しない格差です。これは純粋な志の問題、あるいは「光」に対する感性の問題と思います。冗談でもなんでもなく、村瀬監督を撮影班に呼んでアドバイスを請うだけで、日本映画はあっという間にジョー・ライト作品級に生まれ変わりますよ。

 何度も書いてますが、日本では、ビジュアルに関する才能のある人材が、マンガやアニメに向かう土壌が完全にできあがっているという、これもまたひとつの証左ではないかと。



HERO (通常盤) - Mr.Children
HERO (通常盤) - Mr.Children
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2018年03月19日

北の桜守

[45点]@TOHOシネマズ日本橋

 「さよならの朝に約束の花をかざろう」を見て、実写映画にすればいい、な感想を書いたとき、頭に浮かんだのは吉永小百合でした。それで少し気になって、怖いもの見たさもあって、吉永小百合最新作にトライ。


 ……「里見浩太朗が吉永小百合の父親」をやらかした「北のカナリアたち」に比べれば、若作りはさほど気にならないし、ストーリーはだいぶんマシでお年寄りの琴線を打つように作ってあると思います。
 というか、「昔めっちゃ苦労かけた母親が今は半分ボケてます」って役どころをあの吉永小百合がやってるって時点で、なんかすごい存在感で、それだけで泣ける感じするくらい見ごたえあるんです。
 そこ追及してくれるだけで良かったんですよ。つーか、吉永小百合ごり押しな東映の社長も、そういうの望んでるんじゃないんですか。
 何を間違ったら、あらゆる側面で「オカネのかけ方を間違えている」こんなのが出てくるんですか。


 その意味でのツッコミどころを、ざっくり抜粋。ホントはもっと長文書いてたけど、削ってコレ。

○北海道オールロケって宣伝してなかったっけ、オールロケって単語は「全編が」ロケシーンって意味と違うの?

○実際はセットもCGもありで、極め付きはあの「舞台演出(ケラリーノ・サンドロヴィッチ!)なんだけど、その演出をなされるシーンの一貫性がない。ラストだけは意図的としても、それ以外はおそらく、本気で撮ると予算・人員的に難しいシーンが選ばれている。例えば、「1000人単位の引揚民が港に押し寄せる」を稚内で撮影するのは人口的に不可能だから。

○この映画で一番インパクトのある映像、最も迫力のあるCGは、文句なく「全日空機」である。もちろん、内容的には何の意味もないCM。……それでいて、いちばんのキモのシーンたる「小笠原丸」は、昭和かよと思うレベルの特撮。

○この映画で一番お金がかかってるのは「70年代狸小路(札幌の繁華街)の再現」じゃないかと思うのだけれど、わざわざそこを舞台に脚色する必然性は全くない(モデルと思われるセイコーマートの1号店は、狸小路に作られていない)。むしろ郊外に作って「車の列」ができた方が、インパクトがでかいし北海道らしいだろうに。

○小笠原丸は、史実では「稚内に無事到着している。ソ連軍に撃沈されるのはその後小樽への航海中」。だったら別に小樽方面から鉄道で網走へ向かって白滝で佐藤浩市に会う、でいいじゃん! なんで紋別と網走の間なんて北海道でも僻地中の僻地で、あの親子は徒歩でうろうろしてんだよ!


 思うに、この作品、全面的に「北海道の広さ舐めてる」案件で、せっかく北海道が舞台なのに、制作陣の頭の中の東京中心主義な「一般的常識」に合わせてアレンジされ、その「狭い常識」におもねってひたすら金がかけられるという、実写デビルマンにも近いみみっちさなのです。あ、もちろん脚本は那須真知子な!
 このへんは、木村大作が冬の北海道をガチ撮りした「北のカナリアたち」の方がずっと優れていたと思います。「北の3部作」とか言っておいて、「北海道感」が退化しているのは問題なのでは?


 なお、この作品で個人的に一番面白かったところは、篠原涼子の「シン・ゴジラにおける石原さとみのモノマネ」みたいな演技。なんだかんだで彼女が、この作品世界のヘンな常識になじめない観客の気持ちに一番寄り添ってくれて、それでいて最後には吉永小百合の境遇を最も理解する、という味があったと思います。



北のカナリアたち [DVD] -
北のカナリアたち [DVD]
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2018年03月13日

ダウンサイズ

[75点]@Tジョイプリンス品川

 これは予想外の大当たり。もっと話題になっていいのに。

 マット・デイモン演じる主人公が、「人体を小さくできれば、食糧問題とか環境問題とか全部解決じゃね?」という理屈で開発された、「人体縮小社会」に入っていく近未来SF。
 肯定否定あるにせよ、途方もなく話をぶん回して既成の価値観を揺さぶってくる作品を久々に見た気がして、すごく満足しました。予想通りの展開をするところと、まったく予想もつかない方向へ裏切る展開が交互に来る感じで、面白いです。こういうのをハリウッドには期待してるんですよ。


 個人的には、「縮小社会」がどういうふうに実現されるか、という理系的興味あるいはアントマン的な期待をしながら行ったのですが、その点は、アバンタイトルで出てきた「実験装置」のテキトーさの時点で全部打ち砕かれます。というか、「縮小した」という根本を、中盤辺りで忘れ去ります。
 体の大きさ関係なく、「まったく新しい社会に入っていく(総移民社会であるアメリカのメタファでしょう)」という観点から、ハリウッドリベラル的な多様性思想をことあげするとどうなるか、という展開です。
 (ただし、知的労働で成る縮小社会は、非縮小社会での肉体労働の助けがなければ成立しないわけで、そういういわば南北問題は無視して「国内問題」のみに終始するあたりは、ハリウッドの限界かもしれませんが。)

 これ、ラストの展開の意味が把握できるかで、かなり評価が変わる気がするんですよね。なぜマット・デイモンは「引き返す」のか。
 そして彼を、「享楽的な資本主義者」と「清貧に生きる人道主義者」が、同じ方向を見つめながら待っているわけです。二元論で語ってると絶対にわからないでしょうが、この二者は両立できるんです。そこから、「ダウンサイズ」というタイトルにまったく別の意味を与えるラストカットがうなります。


 ただそういうテーマに走っちゃったせいか、映像的なウリである「縮小社会」は、「ミニチュア感」を出そうと気を遣ってはいるものの、完全に統一はしきれずいまひとつだった感。
 携帯電話が不格好なのは、あれ「電波の波長を考えたとき、アンテナには最低限あのサイズが必要」とか考証した結果じゃないかと思うんだけど、なのに普通にPC使ってるのなんかヘンだよね。
 あと、フィヨルドっていちおう海なんだからさ? あんなに波がない表現でいいのかな?



アントマン (字幕版) -
アントマン (字幕版)
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2018年03月10日

短評(シェイプオブウォーター/スリービルボード/ヒューマンハンター)


 アカデミー賞を争った2作品を見てみました。
 去年争った2作品「ラ・ラ・ランド」「ムーンライト」は結局見ていないままなのですが。
 

シェイプ・オブ・ウォーター
[65点]
@シネリーブル池袋
 パンズ・ラビリンスでもパシフィック・リムでも思ったけど、僕はデルトロ監督があまり好きではないです。ストーリーテリングに長ける人とは言いづらいんですよね。
 本作も、取り立てて欠点は見あたらないのに、ぐいぐい引き込まれるものもない。むしろあからさまなキャラ設定が、逆方向へ引いちゃう感じがします。というか、いちばんの魅力として用意されてるのは「'60sノスタルジー」なので、正直、反応しづらいです。

 ……で、これが、アカデミー賞ねぇ……つまり、来年はもうガチで「ブラックパンサー」で決まりですか?
 デルトロ監督本人は実のところたいして意識せんと、「怪獣のロマンス」を描くにあたってウケる方向を目指した結果の、ごく補助的な要素に違いないのだけれど、「古きよきアメリカ映画っぽいスタイルと多数のオマージュ」で「古きよきアメリカ映画価値観をバッサリ否定」したことが受賞の理由であり、そこに内容もテーマもキャラ造形も一切関係ないとしか思えなくて、んで町山智宏がドヤ顔で解説を始めそうなのがすごくモヤります。

 まぁ、これでデルトロ監督の知名度が上がったので、パシリムが「芦田愛菜のハリウッドデビュー作」なんて紹介にならなくなるのはいいことだと思います。……大丈夫だよね?



スリー・ビルボード
[前半80点][後半50点]
@109シネマズ二子玉川
 えっ、これ、「収束」せずに終わっちゃうんだ! 「解決」はしないかもなとは思いつつ見てたけど、「収束」もしないんだ! むしろこの「やり場のなさ」を「拡散」するんだ! そういう結論か……。
 でもそれじゃ、「俺の死を利用して次の一手を打ってくれ」と言った署長さんの意地が、完全にだいなしになってる気がするよ。あんまりだよ。

 フランシス・マクドーマンドの怒りと苦悩の目力は、主演女優賞もむべなるかなという素晴らしさだったけれど、彼女に一分の理があると思えばこそ共感できる、そんなキャラクターに作り込まれていたと思うのです(というか「広告を出す」という行動を選択する時点で、誰もが「理で動くキャラ」と認識するはずなんだ)。
 「署長の死」を境に彼女の理は崩れ逆にディクスンが理を得て二人がつながる……という流れは理解するけど納得はいきません。ビルボードの放火に対し火炎瓶で報復するシーンは、積み上げてきたものをすべて壊す「豹変」にしか見えませんでした。



ヒューマン・ハンター
[40点]
@ユナイテッドシネマ豊洲
 アカデミー賞とは何の関係もなくついでに、とりまニコケイ。ただし、善人であまり味のない方のニコラス・ケイジ。
 なんやかんやあってアメリカが国を壁で覆った……という導入なので、トランプ揶揄かと思ったら、できあがってる管理社会は共産主義チックでやってることはナチスな、前時代的ディストピアもの。
 ほぼ理由なしに管理社会の秘密を知っちゃったニコケイが、出会った母子とともにただただ逃亡する筋立て。逃亡過程の大半はアメリカ北西部の荒野で、見た目に安いのなんの。例によってニコケイ印以外に日本に入ってくる理由のない、時間つぶし用の映画でした。
 ひとつだけ、壁がない逃亡経路は「原発事故で放射能汚染された地帯を突っ切るしかない」という展開があって、まーたヤンキーどもは被爆被害を安く見積もってんなぁ、と思ってたら、「壁作んのメンドいから放射能汚染したことにしちゃおう、そしたらビビって誰も近づかんやろ」というオチだったのはちょっと笑えました。



パンズ・ラビリンス (字幕版) -
パンズ・ラビリンス (字幕版)
posted by アッシュ at 02:55| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月03日

短評(blank13/ブラックパンサー/15:17パリ行き)


 「ぶらんくさーてぃーん」と「ぶらっくぱんさー」ってなんか似てる。


blank13
[30点]
@ムービル
 予告編詐欺。けっこう期待値高かったんですが。
 ストーリー的にはある意味予告編通りで、それを裏切る期待感だけ持たせつつ何も裏切りません。そして、ひたすらリリー・フランキーのダメ親父ぶりを描く前半と、失踪していた13年間に何があったか示す後半。ここを「どう切り替えてくるか」が、予告編から見えたこの作品のウリだった、のですが。
 何も変わらないの。リズムも語り口もわりと特徴的なライティングも、ずーっと変化なく平板なまんま。そもそもリリー・フランキーが最初から「いい人フラグ」出しまくりなんで、落差もクソもねぇわ。
 いつも通りどうでもいいツッコミをアドリブっぽく入れてくる佐藤二朗が、作品の救いといえるレベルの最高のアクセントって、格安モードの福田雄一でもそんなことならんぞ!

 「マジック」の後に松岡茉優がちっちゃく拍手したとこだけクスリと来たけど、それ以外で笑えるシーンはひとつもなし。ひとりだけほぼ全編にわたってケラケラ笑ってた観客いたけど、幸せな人やなぁと心底思ったよ……。



ブラックパンサー
[65点]
@チネチッタ
 うーむ、例によってキレよくソツのない、マーベルらしい整った映画で、「女の子がひたすら強い(オコエさん最高)」のも好感度が高く、見て損することはない、とはいえるけど……。

 従来のハリウッド映画に比べ、白人と有色人種の、比率はおろかポジションさえも逆転させてる点は、このご時世にウケがよいとは思うものの、結局は最近の「悩めるヒーロー」で、最終的に「内紛」となってダイナミックさに欠ける展開は、正直僕の好みではないです。
 「国家を背負う」話にしては、対決する二人の思想もやや直球に過ぎる。トランプが出てきたからグローバリズムをめざそう、ではなくて、グローバリズムに疲れたからトランプなんだってば。逆だ逆。
 アクションははっきり言って、ブラックパンサーの活躍より、王座争奪儀式の方が緊迫感があってよかったです。けどそこで、一敗地にまみれるのはしかたないにせよ、「そんだけなの?!」と腰砕けるほど安易なリカバリーでだいなし。そこで「ブラックパンサーの力を抜く」をやらないと、正当な王位奪還ではない。この決着だと、手前勝手な詭弁でクーデターを起こせって言ってるのも同然じゃないか。

 あと、英語と現地語が「混乱」といえるレベルで混在しているのも「だいなし」感が強いです。なんだよ「ワカンダフォーエバー」って。また、チャクラムとハヌマンってアフリカじゃなくてインドだと思うんですが、それっていわゆる「文化盗用!」だよね?
 向こうのポリティカルな方々の、ホントはよく知らないしどうでもいい、というホンネが透けて見えます。これで喜んでいてはいけないと思うよ。



15時17分、パリ行き
[45点]
@ムービル
 よもや……よもやクリント・イーストウッド作品で、退屈のあまり席を立ちたくなるとは……。
 「事件の当事者が演じる」というセミドキュメンタリーな趣向は、もはやtrueのかけらもないような「based on true story」の跋扈に対するイーストウッド流の挑戦のようで、それ自体はよかったのですが、結果的には、俳優じゃないので演技力以前に「芝居の型」を作り込めず、全体的に薄っぺらく構成が雑な印象に。
 また、はじめからクライマックスしか大きなイベントを作れない「一発芸としかいえない題材」である、とわかってしまっているのが痛い。ハドソン川の奇跡」同様、「できることを冷静に当たり前にやる」ことをより突き詰め、そこに「人生万事塞翁が馬」な奥行きを加えた意図はわかるのです、でも、そのためにとても90分の尺が持たない内容になり、中盤が完全に「ヨーロッパ観光案内」に……あ、これ「ARIA」で観た奴や! とか、あー、「帰ってきたヒトラー」こんな感じやったわー、って違う違う違うイーストウッドにそんなのビタイチ期待しとらんちゅーねん!



ハドソン川の奇跡(字幕版) -
ハドソン川の奇跡(字幕版)
posted by アッシュ at 08:07| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月01日

さよならの朝に約束の花をかざろう

[75点]@立川シネマシティ

 「あの花」「ここさけ」脚本で名を上げた岡田磨里初監督のアニメ。


 ……これ、子供を持ったことのない人がおおげさに語っちゃいけない作品だと思うので、内容についてはあんまり突っ込まないでおきます。それくらい「母性」というテーマと作家性が強い作品です。あるいは、「女の業」というか……。

 岡田磨里的には、がっつり描きたかったのは「母親という女の枷」から飛んで逃げた、レイリアさんの方のような気がします。と「母と子」を描きたいだけならあのラストは異様ですし、レイリア自体登場させる意味がないので。
 レイリア主役でその対比としてマキアを出す話が初期稿で、プロデューサーが羽交い締めにしてぶん殴って止めて、どうにか主客逆転を承諾させたんじゃないかと推測しますが、違うでしょうか。

 いずれにせよ、率直に「スゴイ」のでアニメファンと言わず観てもらいたい作品です。というか、「オタク向けに」「ファンタジーで」描く、という選択の方が誤りだったと思えます。あの花ここさけが実写化に耐えたのだから、この際はじめから実写邦画に仕立てた方がよかったんではないでしょうか。
 最終的に大坂夏の陣や第二次大戦がくるようにすれば、現実の日本に置き換えが効く内容であると確信します。



 アニメーションとしては、岡田磨里初監督というより、岡田磨里&篠原俊哉という「凪のあすから」コンビの再挑戦、という意味合いもありそうです。
 かの作品で描ききれなかった「世代差」というテーマの深堀りリベンジであると同時に、アニメよりも背景美術による世界の作り込みに印象的なシーンが多いあたり、むしろ篠原俊哉もかなりやりたいようにやってる感じですね。

 ただ、そこらへんが生きてたかっていうと微妙な部分もあって、ドラゴンが本当に見栄えのためだけの存在だし、キャラが「年を取る」ことに無頓着なのも惜しいです。時間経過はたぶん5年ごとに区切ってると思うんだけど、全然はっきりしないのはちょっとまずかった。
 ここらへんも、史実を組み込める実写の方が、うまく描けたんじゃないかと思うんですよね……。


 あと最後に、主役に抜擢された石見舞菜香、19歳で母親役は大変だったかと思いますが素晴らしかったと思います。ポスト花澤香菜として、これからぐいぐいくるんではないでしょうか。



劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(フジテレビオンデマンド) -
劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
posted by アッシュ at 12:31| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月28日

空海 −KU-KAI− 美しき王妃の謎

[70点]@立川シネマシティ

 「カンフー・ヨガ」が、中国とインドの交流の歴史を活かして両国の良いところを引き出した作品だったのに対し、本作は日本と中国の歴史を活かした両国合作作品。
 邦題はこんなことになってるけど、中国での題は「妖猫伝」。玄宗皇帝の飼っていたという猫の呪いを巡って、その妻楊貴妃の死の謎に、遣唐使空海と、同時期に生きた詩人白居易(白楽天)が迫るというバディものかつ歴史伝奇ものサスペンスです。

 中国でヒットしたという話ですが、そもそも中国ではこの「伝奇ミステリー」というジャンル自体、ほとんどなかったのではないかと推測します。白楽天代表作の「長恨歌」が重要なファクターでありながら、本作の原作は日本人の夢枕獏。
 最近、「中国人に何か中国について知ってるかと聞かれて『国破山河在』と答えたら驚かれた」、というツイートが話題になりました。要は「漢詩」自体がインテリの象徴であり、それを題材に大衆娯楽に落とし込むという発想が中国人になかったのではないでしょうか。
 日本人はなんでも娯楽に落とし込むのが得意なので、どんどんこういう「原作輸出国」になってきゃいいと思います。フランス映画のベルばらとか、イギリス映画のエマとか、ノルウェー映画のヴィンランド・サガとか。それを後押しするのがクール・ジャパンじゃないかな。
 もたもたしてると当の中国が、特にラノベ方面から追い上げてきてるようですので、逆転されやしないかヒヤヒヤです。


 で、本作なんですが、ストーリーはそんなに面白くないです。
 空海ぶっちゃけ探偵役でしかないからね。白楽天はワトソンだからね。情報を追いかけていったら騒ぎが起き、次の情報をたぐるとまた何か起き、の繰り返しで、キャラクター自体の味付けは薄めです。
 「長恨歌」を深く知ってると、白楽天の側はもっと面白味があるのかもしれませんが、空海の方は、なんでこの物語が密教を学ぶこととつながるのかよくわかりません。

 しかし内容より、背景美術の質と量に圧倒されます。アレほとんどセット撮影だよおい! 日本だったら一つ作るにも大河ドラマ級の企画規模で、通年使用してやっとペイしそうなセットを、いったいいくつ作ってるんでしょうか。10や20できかんでしょ?
 中国の宮廷ものあまり見ないから過去がどうかわからんし、中国にも太秦映画村みたいなのがあるんだと思いますが、それにしてもあらゆる面で豪華絢爛。バブルやなぁと思いつつも、日本映画はバブル期にどうカネを使ったかと考えると……。

 そして世界三代美女に数えられる楊貴妃を、いかに美しく描くかというあたりの気合いの入れようったら……。ホント、展開だけなら凡庸でたいしたことないのに、あの気高い美貌の描写によって、「祟ってでも無念を晴らしたい」思いに説得力が乗る、っていう、これこそ映画の・映像表現の極致ってもんだよねぇ。


 なお、原語&字幕で観たかったのですが。吹替版しか見当たらないので吹替で見ています。高橋一生が声を当ててる白楽天が、見た目も高橋一生なんでちょっと笑えます(w



さらば、わが愛 覇王別姫(字幕版) -
さらば、わが愛 覇王別姫(字幕版)
posted by アッシュ at 12:52| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする