2020年01月20日

短評(音楽/ラストパニッシャー/ロバマン/はいふり)


音楽
[70点]@新宿武蔵野館
 大橋裕之のコミック原作を、7年の歳月をかけてたったひとりで作画したことで話題のアニメーション。竹中直人を始めゲスト声優&ミュージシャンが微妙に豪華です。

 3人のボンクラ不良どもが、唐突に音楽を始める話。それも、かき鳴らすだけぶったたくだけ、音が出たら気持ちいい、というところから始まります。
 そしてそれはアニメーションも同じで、シンプルな絵柄でひたすら歩くシーンを繰り返し、絵が動いたら気持ちいい、というところから始まるのです。

 典型的な「考えるな、感じろ」タイプ、原初的なアート礼賛の作品で、ロジックはあまりありません。個人的には、物語には一定の理屈が欲しいタチなので、高い評価は与えにくいです(「実はリコーダーがうまい」というあれはどういう理屈で……そらまぁ、練習しなくても扱い方を知っている楽器なんて、それしかないけども)

 ただ、その「考えず感じる」のほとんどを占めるのが、「感性そのもの」は関係なく、下妻物語的な田舎不良のダメなユルさがもたらす、そこはかとないおかしさなのです。「こんなアプローチでアートに関わっていいんだ」という限りない赦し、というべきでしょうか。この感覚は、嫌いではないです。
 そういうアプローチとからか、アニメーションも様々な技法がゆるく試されているのが面白い。特に、「古武術」に触れて衝撃を受けたモリタくんの変遷がよかったです。最後の演奏のロトスコープは、ちょい蛇足感があったかな。



ラスト・パニッシャー
[70点]@ヒューマントラストシネマ渋谷
 今回のニコラス・ケイジは、19年間の刑務所暮らしから解放された囚人。成長した息子と家族の絆の再構築を図りつつ、元ボスに復讐を企てる……という筋書きなのですが。
 復讐の動機がいつまでも曖昧なままの上、説明される時系列もおかしいな、と訝っていたら、そういうことかよ、というオチにたどりつきます。有名な先駆者がいるトリックですが、ミスリードがうまく効いていて、思い返してみるとそういえば……と納得させられます。
 昨今のニコケイ映画の例に漏れず安い映画でありながら、本作は脚本、映像、脇役の演技、すべてにおいてその安さ以上の内容で、満足感高かったです。



ロバマン
[45点]@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「老人主人公のヒーロー映画」ということでいちおう見てみたものの、いうても河崎実監督
 しかも主演が、最近はただのラッパ左翼と化した吉田照美とあっては、期待した方向にはいかず、彼がルサンチマンを垂れ流すだけでした。「暴力で解決していいのか」という当然出てくる疑問に、まったく答えず(事実上肯定して)終わります。これで憲法9条がどうとか言ってるんですから、ヘソで茶が沸騰しますよ。
 あとは、深夜放送が栄華を誇った時代を懐かしむ、同窓会の価値しかないです(ラスボスが鶴光)。

 ……でも困ったことに、今まで観た河崎実映画の中でいちばんスッキリまとまってて、見やすかったのも事実だったりします。上映時間自体短く、どうでもいいシーンが控えめな上、「素人老人の自撮り」的なエクスキューズもつくので、映像のテキトーさがあまり不快ではありません。
 河崎実監督が老成してきた? うーん、それはいいのか悪いのか……。

 あと、どうでもいい政府批判を入れてくるのは予想してましたが、それだけのために東京オリンピックのロゴを無許可で画面に出したのは、さすがにルール違反ではないですか。反省して欲しい。



劇場版ハイスクール・フリート
[45点]@TOHOシネマズ新宿
 女子高生が艦船で戦う、いわば海戦ガルパンの、テレビシリーズから4年も過ぎての劇場版。……つまりは、見るからに「2期崩れ」。

 ハンコ絵の美少女キャラが百人くらい、わちゃわちゃ総出演しますが、主役ふたり以外は深堀しない割り切ったつくり。他のキャラは「顔見せor話の流れで登場しただけ」です。
 もしこれが本当にテレビシリーズ2期なら(かつ脚本家がテレビ同様吉田玲子であったなら)、ちゃんと描写されたであろう奥行きはいっさいカットされ、その登場にほぼ意味は与えられません。それよりも「横須賀観光案内」が優先される酷い作り込みで、酷使されたキャラデザイナーがかわいそうです(あの世界、男の船乗りがいたのか!という衝撃はありましたが)
 さらに、キャラだけでなく、登場するオブジェクトがやたら多いにも関わらず、俯瞰で個の説明をしないため、陸上・海戦ともに、誰が何をやっているのかが極めてわかりにくいです。本当に艦船を描写したかったのか、理解に苦しむレベル。

 冒頭、わりと長尺をかける入港シーンを受けて、「港の入口に爆破テロで障害物が生じてブルーマーメイドは作戦に参加できない」と言われたら、全観客がそれをどう排除するかという流れを想定したと思うのですが、主人公たち普通に出港してる超展開。あれ、「学校は別の場所」らしいです。……わかるかバカ!

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2020年01月16日

パラサイト -半地下の家族-

[70点]@TOHOシネマズ川崎

 韓国に初のパルムドールをもたらした、ポン・ジュノ監督の新作。
 貧乏な一家が、富裕な一家に言葉巧みに近づいてその家に入り込む一顛末。



 面白かった……のですが。
 カンヌ映画祭の審査員は相変わらず頭悪いな、とも思うわけです。というか、「カンヌ審査員すら騙したスーパー詐欺師映画」という発想に至ると、凄く興味深い。

 この作品の何が面白いって、「ボーグマン」みたく不審さを印象づけるのかと思ったら全然普通の話で、中盤までは、「韓国映画ではありふれた、チーム詐欺師ものの一パターン」に過ぎないという点です。
 韓国映画見てる人はわかると思いますが、そしてカンヌ審査員は知らなかったのだと思いますが、韓国では富豪や権力者に対する詐欺は、やって当然、むしろ正義の行為です。
 この作品は、少なくとも序盤は娯楽ヒーロー映画であって、「格差社会に耐えかねた貧者がやむにやまれず悪事に手を染めた」なんてヒューマニズムではありません。

 しかしそこはベテランにして社会派で名を馳せるポン・ジュノ監督、韓国の世相をガッシガシに織り込んで、リアリティを極限まで上げた「詐欺師映画」を構築します。
 そして、(例によって「なんでそんなのに引っかかるんだよ」感のある手際ですが)詐欺がサクサクハマっていく展開を楽しんでいくと、中盤以降とんでもないカウンターを食らわせてきます。このあたりはシビれるほど面白いです。

 詐欺なんて行為の現実は、結局は貧乏人の足の引っ張り合いで破綻し、終盤のソン・ガンホに「計画を立てたって何もうまくいかない。計画を立てないことが計画」と言わしめる、悲惨な末路を迎えるのです。……というのが、この物語の本来の解釈だと自分は理解します。

 本作はいわば、シャマラン監督が「ミスター・ガラス」や「ヴィジット」を作ったのと似た視点で、韓国の詐欺師映画に新風を吹き込むために作ったと考えると、非常に腑に落ちるんです。
 そこに、「経済格差を鋭く描く」みたいな付加価値を勝手につける評論家たちにこそ、本作におけるパク家の滑稽さが垣間見えてなりません。



 何しろ、自分がこの映画に対して思う最大の難点は、評論家たちが「そこがいい」と絶賛する部分です。
 「匂い」の表現です。
 しょせん彼らは(制作者も評論家も)、「下水に浸った体の臭さ」を、メタファとしてしか理解できないのです。

 最終局面、「匂い」はマックス状態になっていたはずですが、気づきもしない富豪たち。
 あれほど無感覚に描かれるとドン引きレベルの不自然さで、起こる悲劇に何も心が動きませんでした(娘だけは、「匂いなど気にしない」だったと理解しますが)。そこから、やたらだらだらと続くエピローグに至るので、かなり萎えた状態で劇場を後にすることになりました。

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2020年01月14日

短評(フォードフェラーリ/ダウントンアビー/巨蟲列島/マニカルニカ)


フォードvs.フェラーリ
[80点]@ムービル
 1960年代、カーレース界を席巻したフォードGT40のカーデザイナー(マット・デイモン)と、ドライバー(クリスチャン・ベイル)の友情と、ル・マン24時間耐久レースへの挑戦を描いた実話もの。
 彼らを支えるフォードの重役が、経営哲学で知られるリー・アイアコッカ。この時代の人だったのね。

 車にまったく興味がないというのは以前も書いたけど、これは面白かったです。男の友情ものとして、ほぼ完璧ではないでしょうか。
 どこが、というより全体的に隙がありません。性格の違うふたりが、認め合い、同じ目標へ邁進していく姿を、軽妙にそして着実に描き出していきます。
 当たり前に努力を積み重ねるだけの姿が、それゆえに説得力があってすこぶる面白く、さながら攻め将棋の一手一手の盤面の変化を見ているよう
 車に関係なく楽しめると思います。クリスチャン・ベイルってバットマンの印象が強かったので、こういうやさぐれ男の役もできるんだってちょっと意外でした。

 そうそう、この作品、賞レースはまったく取れず後日の評価は一切ないから、応援する人は今のうちにな。
 時代劇として誠実なんだろうけど、こんなことしてイマドキ大丈夫? 黒人がひとりも登場しなかったんですよ。



ダウントン・アビー
[評価せず]@ヒューマントラストシネマ渋谷
 配信をあまり利用しないこともあって、洋ドラとはほぼご縁がないのですが、一本見たいのを選べといわれたら「ダウントン・アビー」です。
 20世紀初頭のイギリス貴族屋敷の日常もの。貴族だけでなく裏方の執事メイドやキッチンメイドにもスポットを当てる群像劇が、めちゃくちゃリアルだとかねてより話題でした。それが劇場版化。
 国王(ジョージ五世)夫妻の滞在が決まり、てんやわんやになるお屋敷の一顛末。

 劇前に簡単な人物紹介をしてくれますが、今回の物語で一家と相まみえる国王一行(つまりはゲストキャラ)にもかなりの人数がいて、その全員が組み合わさって、細かいカット割りでシーンを移動しながら見せ場を作る作り。あぁ〜これは、ドラマを見て地元キャラだけでも把握してないと、理解がとても追っ付かない!

 わかってなくても美術面は素晴らしいし、裏方組の「造反」や、イミテーション・ゲームにもあった当時のゲイ事情とか、楽しめるところもありましたが、半分もつかめてない悔しさの方が強かったです。いつかドラマ版を全部制覇してからリベンジします。
 ……とはいえ、本作は「最後の締めに劇場版化」でなく、「今後の仕込み」ががっつり仕込まれてもいるので、ドラマの制覇も大変そう……。



巨蟲列島
[50点]@チネチッタ
 墜落事故で無人島に流れ着いた高校生ズ(女子比率高め)。そこに生息する虫はなぜか怪物級に巨大化していた───という、あーなるほど触手でグチョグロな性癖の人向けのパニックものね、安っぽいけど海外ウケ良さそうな稼げる企画かも……とか思っていたら、実はガチ昆虫生態ものの側面も持つ、香川照之がすごいぜ!って出てきそうな内容のアニメでした。

 生物学系以外の説明・考証がほぼゼロで、事前の状況とか墜落の経緯とかほぼなしにアニマルパニックに突入する割り切った作りは、個人的には好きませんが正しい選択だと思います。
 ただ割り切りが過ぎる部分は少なくなく、特に委員長さんがジガバチに麻酔針打たれるシーン、刺創の出血だけで即死級に見えたのに、最終的には無傷で復活はさすがにやりすぎ。「実は既に卵を産みつけられてる」で、この先ヤバいことになるとは推測しますが……。
 それも含め、完全に物語の途中で終わる「続編前提の作り」なんですが(特に「研究室」になにがあったか? は気になりすぎる)続きを作るめどは立っているんでしょうね?

 あと、この作品の最大の謎。なぜPG-12にしたのか。R-18でいいじゃないの。
 映画館で「謎の怪光線」を見るという希有な経験ができます。衝撃です。



マニカルニカ -ジャーンシーの女王-
[55点]@チネチッタ
 かつて「セポイの乱」と呼ばれた歴史上の事件は、実際にはセポイ(イギリス統治下でのインドの現地採用兵)だけでなく、インド全土を巻き込んだ民族独立闘争であることから、今では「インド大反乱」と呼ぶのが正しいのだそうで。
 その反乱の先頭に立ち、インドのジャンヌダルクと呼ばれた、ジャーンシー王国の女王マニカルニカ(ラクシュミー・バーイー)の史実に基づくインド時代劇。

 ……日本でも、「映画に江戸時代はない、『時代劇時代』があるだけだ」という話がありますが、カリスマ主人公を壮麗美術とド派手剣劇で持ち上げる(バーフバリパドマーワトのような)インド時代劇のノリで描くには、19世紀はさすがに新しすぎた印象です。

 客観的に見ると、(史実的にもその傾向はあるのでしょうが)明らかな負け戦に精神論で突っ込んでくヒロインが痛々しすぎます。インドの観客はこれで偉大な英雄視できるんでしょうか。正直いって、神風特攻を美化礼賛する日本の右翼と同レベルなので、あまり誉められないなぁ。


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2020年01月08日

エクストリーム・ジョブ

[70点]@シネマート新宿

 今年になってからの公開作で、最初に見たのは韓国映画。……内容的にキッツそうな「パラサイト」の前に、あちらで最高の興行収入を得たという軽めのコメディで馴らし運転です。

 ボンクラ麻薬捜査班が、張り込み捜査の拠点にしていたチキン屋が閉店。それは困ると退職金の前借りまでして店を買い取り、自分らで経営したところ、捜査に手が回らないほどの大繁盛に。正義を全うするか利潤を追求するか彼らの明日はどっちだ……という筋立て。



 韓国映画では珍しい警察活躍もの……というより、この不況下、チキンorダイとも称されるかの地のチキン屋業界の理想を見せたからヒットしたんじゃないかと思います。
 ちょっとした飯テロもので、チキンがうまそう。空腹時に見るのは避けましょう。

 警察かチキン屋かどっちの態度を取るかフラフラし、先に進むほどにチキン屋の自覚に目覚めていって警察の本分を忘れる描写を中心に随所で笑いを取る展開はなかなかよく、序盤〜中盤までは笑いっぱなしでした。
 ビジネスマンの口車に乗ってチェーン展開したら、その支店を麻薬組織の流通網に悪用されてしまうところ、警察としての捜査ではなくQCの観点で調べていってその事実に気づくというあたりは最高にアガります。



 惜しむらくは、終盤のまとめに失敗します。彼らが実は警察官としてめっちゃ優秀な素質を秘めていた……というのは、全然表現できてないし(鈍足の武闘派、腰の浮いてる柔道家に肘を使わぬムエタイチャンプ)、もう少し伏線が必要だったでしょう。「ゾンビ」と言われたキャラが最後に噛みつくあたりは何をかいわんや。

 そもそもこの話、「警察が活躍」でなく「チキン屋が活躍」だから面白いのだと自分には思えるので、「警察官として表彰されて終わり」というラストカットは違和感が強かったのが正直なところです。
 奥さんも娘さんもいいキャラだったのに、忘れ去られるのは残念。

 正直、アクションいらないからお仕事もので完結してほしかったです。あの一味には経営者として大成してもらいたい(笑



韓国のアクションコメディと言えばやっぱこれが好きですね。

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2020年01月07日

2019年ベスト&ワースト


 当ブログの各エントリにこっそり「ソーシャルボタン」をつけました。
 何を今さらですが、設定自体気づいてなくてつけてなかった、という話です。ブログ始めた当初は、SNSがまだ広まってなかったから機能自体がなかったはずです。で、機能が付加されたとき、デフォルトがオフだったのだと思われます。

 ……なんだかんだで15年目、1000エントリ以上になりました。自分の感想文・備忘録代わりに書き散らしてるだけですが、それでもまぁ積もりに積もったものです。

 そういうわけで、2019年のベスト&ワーストです。



ベスト10

1位/ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん
文句なくダントツの1位。
テン年代ベストテンでも書きましたが、実写とかアニメとか関係なく、「構成の無理のなさ表現の無駄のなさ」において、10年に1度のずば抜けた1本です。
「必要な絵」だけで作られたシンプルにして完璧な作品ですから、世の映画評論家はこの作品を基準にしてものを語って欲しい。「見てない」なんて恥ずかしいことを言わないで欲しい。そういう作品。

2位/プロメア
逆にこっちは、構成とかムリヤリにもほどがあるけど勢いだけで持ってきました。
これはこれでいいんです。英語吹替版、見に行きます。海外に堺雅人はいるや否や。


 ……2019年はもう、
 ロング・ウェイ・ノース>>>>>プロメア>(越えられない壁)>>>その他
ってのが正直なところで、これ以降は順位付けしなくてもいいんじゃないか感あるんですけど、それでもどうにかやっていきます。


3位/カスリコ
「自分だけは評価する」枠をまず入れます。
何しろ、この作品をちゃんと見て、ちゃんと終盤の駆け引き理解して映画評論なり感想なり書いてる人って、いったい何人いるのかっていう話ですからね……。




……カスリコ関連の商品は Amazon にひとつもないっ!




4位/天気の子
なんだかんだでこれは入れなきゃしゃーないや。「君の名は。」ほどの衝撃はなくとも、今後新海誠を中心にアニメ界が回ることを確定させた感。

5位/アクアマン
ハリウッドの極大バジェットを用いて、世のボンクラB級映画を10本創ってすべて圧縮して詰め込んだ、といえばこの作品の魅力が伝わるでしょうか。

6位/グリーンブック
「差別」の問題について、正しい解釈と対応を示した好作品。「ダンボ」もそうだったけど、ハリウッドはエセリベラリズムときっちり戦う作品を作り続けて欲しい。
ロング・ウェイ・ノースだけでなく、2019年は海外アニメが積極的に国内に持ち込まれた年でした。
岩波ホールには今後もアニメに触手を伸ばしてもらって、そうした良作海外アニメの拠点となってくれると嬉しいです。

8位/ある女優の不在
年末に飛び込んできた傑作。2019年はインド映画を中心に、「イスラム女性もの」を多く見ましたが、本家イスラム主義国からの強烈な告発が全部かっさらいました。

9位/スパイダーマン ファー・フロム・ホーム
2019年はMCUが終わる終わると見せかけて、終わらせるつもりがないとわかった1年でもありました。20作品見ててナンボのエンドゲームよりは、単体で十分面白いこちらをチョイス。

同率10位/
えいがのおそ松さん
シークレット・スーパースター
……なんだその同率って→「2019年最も泣けた映画」を選ぼうとして、あんまりに方向性が違うので選びきれなかったってことです。




ワースト5

2019年は例年になく「これはどうなんだ」と思う作品が多かった1年でした。何しろアナ雪2がヤバかったくらいですからね。とはいえ、作品としては十分見られるものを入れてしまうと収拾がつかなくなる状況なので、例年通り5本に絞ります。

↓の2本に、プロの作品だのにクオリティで勝てないレベルで世に出た恐怖。映画制作を根元から馬鹿にしている。本作のプロデューサー陣は全員、二度と業界に関わらないで欲しい。

2位/サンタ・カンパニー
3位/絶望の怪物
 新海誠以降「個人制作アニメ」の青田買い的なことが各所で起きているのかもしらんのですが、買い付ける人は「営業能力より先に内容」を見てね? と言いたい2本。センコロールはワーストから抜け出したけども。
 その意味で期待大なのは今週末公開の「音楽」で、予告編だけでこの2作をぶっちぎってます。

4位/大脱出2
9月に公開された3は多少マシだったようですが、さすがに劇場に行く気になれなかったのでアマプラ待ちです。

5位/ウィーアーリトルゾンビーズ
これを作った電通が、ちゃんと映画制作について考え直してくれればいいけど、「やっぱ有名人出てないとダメなんだ」的に歪んだ方向にいくだろうなぁ、という絶望感。


あと、相変わらずキノシネマのウェブサイト問題点を把握してない様子です。



それでは今年もグダグダ書いていきます。どうぞよろしく。

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2020年01月06日

男はつらいよ おかえり寅さん

[65点]@109シネマズ四日市

 あけましておめでとうございます。

 新年一発目は、恒例のベスト&ワーストの前に、言わずと知れた、「男はつらいよ」の新作です。
 ……ていうか、12月第4週〜最終週に、見る予定の作品がここまで集中したら、とても追っつかないよ!
 週2本に絞りたいと常々思っているのですが、なかなかうまくいきません。



 さて、自分が見た「寅さん」はせいぜい4〜5作くらいで、詳しいとはとてもいえないのですが。

 最初に書いておくと、本作において、山田洋次監督は一線を守っていて、「寅さんのイメージを新しく作らない」と自制しています。メカ寅さんや未来寅さんは、出てきません。それどころか、生死についてすら言及しません(雰囲気としては死んだものとして扱われている)。

 その上で、寅さん最後期、ほぼ吉岡秀隆が主役となり、晩年の渥美清がちょっと人生のアドバイスをするだけになった頃の「男はつらいよ」の新編、という体をとっています。制作に多くの縛りがあったであろう事情を考えると、本当に「寅さん」の新作を目指したことがうかがえて、好感度は高いです。
 ゴクミをわざわざジュネーヴから引っ張って来た甲斐はありました。



 突然話変わりますけど、自分、岩井俊二監督の新作「ラストレター」は見ません。「好きな人にラブレターを直接渡す勇気がなくその妹を経由して届けたつもりになってた」という筋書きだけで、クソチキンなクズ野郎以外の表現がないでしょうに、そんな話を「美しい青春」みたいに修飾されて見たい奴の気が知れません。
 閑話休題、この作品には30年の隔絶があって、過去を神木隆之介&森七菜、現代を福山雅治&松たか子で演じるわけです。

 この「おかえり寅さん」の何が凄いって、その30年の隔絶を、同じ人間が演じるってことですよ。渥美清の過去映像だけでなく、吉岡秀隆&後藤久美子が30年前に繰り広げた恋模様もふんだんに回想として取り込まれ、その上で現在のストーリーが進行するのです。

 ここにきっちり目をつけて、吉岡秀隆と後藤久美子がなぜ別れ、別の相手と結婚したのかというところもきっちり構築したラブストーリーであったなら、再現不能な空前絶後の作劇ができたはずなのです。「ラストレター」を鼻毛で蹴飛ばすどころか、「6歳の僕が、大人になるまで」のリンクレイター監督をはじめ、世界中の映画関係者がほぞをかんで泣くであろう、可能性の塊のような条件です。

 しかし残念ながら山田洋次監督にそれを活かす機微は期待できず、あくまで寅さんノスタルジーの一本となったのでした。
 その期待には十分応えていると思いますが、二度とめぐってこないチャンスをものにできなかった、非常にもったいない作品ではないでしょうか。

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2019年12月31日

短評(誰もが愛しいチャンピオン/燃えよスーリヤ/絶望の怪物)


誰もが愛しいチャンピオン
[75点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 昨年のスペイン・ゴヤ賞を獲得した、「リンガー!」に類する、障害者スポーツが題材の作品。実在の知的障害者バスケットボールチームに着想を得て、落ちぶれたプロチームのコーチが、障害者チームのコーチになって全国優勝を目指すストーリー。

 選手役も全員障害者からオーディションで選んだという触れ込みなんですが、それどころじゃありません。敵チーム、その補欠選手、観客に至るまで、全く違和感なく明らかに障害者とその家族のみなさんがいて、「障害者チームの試合」が作り込まれ、それに不快感や過剰な主張がまったくない凄い作りこみ。
 最初は障害者のドモリで笑ってた周囲の観客が、やがてそういうシーンでは笑わず、きちんと笑いどころで笑うようになっていったんです。これが真の啓蒙というものではないですか。
 なお、監督は「モルタデロとフィレモン」の人だとか! あれもう一度見たいんですよねぇ。

 主人公はプロチームでトラブルを起こし、ヤケ酒を飲んで飲酒運転→社会奉仕を命じられて渋々障害者チームのコーチになる、という導入がまずスッキリ(ちゃんとチェックしなかったんだけど、最後の試合に「判事殿」っていました?)。
 話が進むうちに、主人公の身体的・精神的な屈折が少しずつ露わになっていき、何にも屈せずスポーツに励む障害者の生き様の方が美しく見えてくる仕掛けが鮮やかです。まったくブッサイクなのに、コジャンテスちゃんのキレッぷりに惚れちゃいそう。
 さらに、父親になる自信がなく子作りをためらう主人公に、「僕だって僕らみたいな子供は欲しくないよ、でも父親はコーチみたいな人が欲しいよ」と障害者の側に言わせる凄み。

 試合の描写のしかたとか、どうでもいいギャグが入るとか(母親のロマンスはさすがにいらなかったろう)、難点もありますが、まずもってこのユニークかつセンシティブで難易度高い題材を、快感すらあるコメディで描ききったことが素晴らしいです。
 日本の、人権を標榜して映画を作ってる連中、マネできるもんならやってみろって言いたくなりますね。

 ところで、日本人にこそ見てもらいたいシーンがひとつ。
 チームは勝ち進むものの、最終決戦の会場が何とカナリヤ諸島。旅費をどうやって工面しようか? となったときに主人公が採った手段は何でしょう?



燃えよスーリヤ!!
[45点]@ヒューマントラストシネマ渋谷
 先天的無痛症の少年がカンフー映画に触れてヒーローへと覚醒していく……という筋だと聞いていたけど全然期待と違ったインド映画。
 「無痛」は結局「打たれ強い」くらいの意味しかなく、「片足」も見た目のインパクトがすごいだけに終わってる。織り込まれる記号が、ストーリーやアクションにほぼ生きません。
 それ以上に苦痛だったのは、「カットをつなげてひとつのシーンにする」という意思が希薄な、断片のままの映像がやたら多いことです。
 苦手な時系列の切り刻みに加え、主人公の妄想・非妄想も切り刻まれるとっちらかりよう。また、あるイベントが始まってそれにケリがつくまでに、主にどうでもいい情報を長々と積み上げ、肝心なことは後回しにするひどい組立て。
 最後のアクションはよかったですが、「最強の敵=サムライ」って、どこかで事前に出てましたっけ?!
 ともかく見ててイライラするばかりで、全然のめり込めませんでした。



絶望の怪物
[40点]@下北沢トリウッド
 完全に個人で制作したアニメーション。音楽以外は全部ご本人。
 しかも本業はマンガ家で、アニメーションは全く未経験からのチャレンジという話。

 ある意味、凄い作品。あまり良くない意味で。
 ……このシリアスなストーリーの嗜好とこの画力の組み合わせでは、マンガ家としての大成は不可能と見切りをつけて、新たな分野に挑んだこと。
 そして、個々のカットや背景は個人制作なりに出来上がっているのですが、「アニメーション演出」「映画制作の技術」という観点では、まだ見よう見まねの発展途上、というレベルで売り込みをかけたこと。
 ……それらをやってのけるくらい図太くないとダメなんですかね、やっぱり。でも、「完成の理想」をもっと高く置くことも必要だと思うよ……。



 というわけでぎりぎりとなりましたが今年の更新はこれでおしまい。
 今年の映画はあと寅さんを見ていない(実はシンカリオンも気になっている)ので来年はそこから。
 よいお年をお迎えください。 


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2019年12月30日

スター・ウォーズ -スカイウォーカーの夜明け-

[65点]@ムービル

 ……しかし正月興行にスター・ウォーズと寅さんが並ぶってどんな昭和やねんという。



 これまでの2作の感想→


 前回よりはだいぶんマシだった最終章でした。
 ……で、いいよね? まだ続ける、とか言わないよね?

 序盤で手早く状況説明を進め、マクガフィンを定めて、それを求めて星々を渡り歩く探索行にさっさと移行→カイロレンがつけねらう、という手際は素晴らしかったです。
 ……そこからはアクションに次ぐアクションで、星巡りしつつ家族が敵味方入り乱れるスター・ウォーズらしい旅路
 あれだけの内容が16時間?という疑問はありますが、単純に娯楽を突き詰めた、という意味では、十分よくできてたと思います。



 ……「十分よくできてた」くらいのために───そしてレイ姉さん、最後のジェダイだっていうのに、ギリギリまで憎悪とヘタレから抜け出せないという、凡庸なアメコミヒーローみたいなことやらかすので、そんなビギニングものみたいな展開のために、45612378全部見て全体像つかんでおいてください、というのは、かなり苦行を要求してる気はしますが。
 何しろ、レイとカイロレン以外の、7以降に登場したキャラやオブジェクト、結局すべて特定の意味はなく、別にいなくてもいいし誰がやっても影響ないという……。

 つーか、本作において最大のネタであろう、「○○の孫!」って展開、そのこと自体より、「○○、家族いたの?!」という反応しかできませんでしたが。
 なんだろう、456の旧三部作において「家族」というのは、「ビックリな最後のオチ」だったはずなのですが、今のアメリカ映画ではそれがすべての前提といういびつさが、どうにも噛み合ってない気がします。



 ときに、二つあるという「ウェイファインダー」なるアイテムは、最序盤カイロレンが見つけたのがひとつ、中盤レイがデススターの残骸で見つけたのがひとつ、と思っていたので、3個目が出てきてびっくりしました。つまりカイロレンがデススターにしまっておいた(1個目と2個目は同一)、ってこと?



 ともあれ、苦行につきあったみなさま、お疲れさまでした。フォースがともにあらんことを。

 ……スター・ウォーズって、もう少し爽快感のあるお話じゃなかったのかなぁ……というのが、今回のシリーズ通しての本音。今後、「負債」になりかねない物語にしてしまった、ディズニーの明日はどっちだ。

 ジョージ・ルーカスが生きているうちに、彼は本当はどういう終わり方を目指していたか、映画ジャーナリストの人たちは何としてでも聞き出しておかなあかんで……。(個人的には、「Long Long Agoで始まる」のだから、「地球の歴史につながる形で終わる」のが、彼の構想だったと確信しています)

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2019年12月29日

ブレッドウィナー

[60点]@恵比寿ガーデンシネマ

 「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー」を制作したカートゥーンサルーンによる新作。監督は「ブレンダン」でトム・ムーアと共同監督を務めたノラ・トゥーミー。

 女性の人権が抑圧され、自由に出歩くこともできない、タリバン支配下のアフガニスタン・カブール。唯一の男手であった父を逮捕された家の娘パヴァーナは、男装して家庭を守り始める……。



 うーん、アニメーションのデキ自体はすんばらしく、その一点をもって見るべき作品と言っていいんですが、なにぶん内容が深刻すぎる。
 この物語は、「カートゥーンサルーンの絵柄」で見たくなかったな、というのが本音です。

 監督は、おそらく自分の描きたいと思ったテーマを、今自分の使えるリソースならば描ける! と思って踏み切ったのだろうけど、このファンタジーな絵柄では、真実味が薄れる感が否めません。

 中途で挟まれる「物語」の方は、ファンタジーなアニメーションが活きるのですが、こちらは変に「死んだ兄」につなげたために、「辛いときでも物語を紡ぐこと」の意味が大幅に薄れてしまいました。
 それとも何か、「巨大な悪意」に、兄の死について切々と訴えれば、本当に「なだめられる」とでも? お花畑過ぎて腰が砕けるわ。



 そして深刻なわりに薄っぺらい。

 全編「英語」ってのも凄く違和感なんですよ。つまり欧米の子供たちに見せたいんだよね?
 けど、制作側にとってタリバンが人権蹂躙する極悪な何かでも、子供らにとっては、世界地図のどこかの歴史表の何かでしかないでしょ? ていうか「アフガニスタン」の認知度から考えようぜ、この作り込みが正解だったか?
 これほど、「子供向け」でなく、現地の言葉と役者を使って現地向けの啓蒙につなげるべき題材って、ないと思うんだけど。

 もうひとつ重大なのは、タリバン側の行為を「とにかく女性をいじめる悪いヤツら」という印象でしか描かず、イスラムにとっては聖戦の過程にある正当な行為という観点にはならないこと。
 自分、「戦争」を伝染病のように描く作品が多いことを常々批判してますが、この作品では「デウスエクスマキナ」にまで落ちぶれました。
 「アメリカが戦争を仕掛けて彼らを退場させる」が、良くも悪くも解決のトリガーで、「主人公や身近な人たちには、状況を変える手立てがない」が、この作品世界が否応なく突きつける現実です。

 主人公一家を窮地に陥れるタリバンの男性、いたじゃないですか。せめて「彼の状況が悪くなる(自爆テロで突っ込んでいくとか)」を描けていれば、相対的に主人公側の顛末に光が射すのですが、それすらもなし。



 で、僕がもしタリバン側の人間で、この作品を見せられたら、「荒唐無稽」と笑い飛ばすと思います。
 どこが、って? 女性しかいない(しかも2人未婚の)家庭を放置するワケないでしょ、イスラムの常識で考えて。
 良い意味か悪い意味になるかはわからないけどな。

 イスラムというのは個人でなく「コミュニティの宗教」なんですよね。だから、戒律のうちにいる限りは、「孤立する家庭」自体に説明が必要です。コミュニティからフォローまたはバッシングがなぜなされないのか?
 本作はそこを無視して、「近隣の住人」を空気にし、まるで先進国の核家族みたいな「家庭内の問題」として本作の主人公を描いてしまう。無知というほかない。



 「イスラム圏では古い慣習が根強く、女性の人権が守られない」ことを批判し、回復のための啓蒙を行う映画作品は昨今増えていて、今年何本も見ましたが、残念ながらそういう映画の中で、最底辺といわざるをえません。これの前に「ある女優の不在」の力強さを見てるせいもあって、落差が際立ちます。

 活動家でもあるアンジェリーナ・ジョリー(そういや「アンブロークン」も、日本軍の行状はどうでも良くて、キリスト教価値観でしか作らなかったっけね)がプロデューサーに名を連ねているせいもあってか、そういう人たちの自己満足感しか見えてこない残念な作品でした。

posted by アッシュ at 23:42| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月25日

ある女優の不在

[80点]@ヒューマントラストシネマ渋谷

 ようやく見ました。イランの名匠、ジャファール・パナヒ監督の新作。
 20年映画制作禁止のはずですが、もはやなし崩しなのか、それともこれ「人命に関わるアクシデントなんだからしかたないだろ!」で通したんですかね? いずれにせよ、それでも撮るクリエーター魂、まことに頭が下がります。(出国禁止処分は変わっていないようです)



 ある現役女優の元に「携帯の動画」が届く。それは固陋な親に女優志望を反対された少女が、将来に絶望して自殺をほのめかすものだった。驚いた女優は既知の映画監督ジャファール・パナヒとともに、送信元である山村に赴いた……というところから始まる、パナヒ監督にしてはオドロキのワンシチュエーションサスペンス仕立て。
 少女は本当に自殺を決行したのか……というフックで完璧に観客を引っかけたうえで、いつものようにゆっくりと人物像や日常風景をカメラで追っていきます。(ただ、本当にスローで、ひたすら車の中で「女優」が語り続ける序盤は、流儀を理解してないとかなりしんどいとは正直思います。)



 するとそれは、やがてイラン社会の縮図として切り取られ、それに翻弄される過去、現在、未来の3人の女優の姿を露わにしていくのです。
 市民生活の基軸となる「たったひとつのルール」でさえ、まともに定まらない社会で、何かを生み出そうとして苦闘する女性たち。

 「携帯動画」を組み込んだ映画なんて、現代にはいくらもあるでしょうが、これを「過去」との対比としてきちんと映し出した作品がどれほどあるでしょうか。
 自撮りで自顔を大画面にさらし、危険なやり方でも踏み出そうとする若い未来、背中を向けた姿を小さく晒し、絵を描き続ける苦い過去。それでも、何かを創り出そうとしていることには違いなく。
 終盤に至り、そうして、過去、現在、未来が出会うその姿を、「私は見ることができない」という描写は、ある種の諦念か、それとも賛辞か。うーん、深い。



 結局は恨みつらみを吐き出しただけの「ペルセポリス」や、パナヒ監督の前作「人生タクシー」もかなり直截的でしたが、固陋な社会を啓くというならば、この方がよほどスマートなやり方だと思います。僕は感服しましたが、一般的には、婉曲すぎる、ちっともわからん、とか言われてしまうのかな。どうなのでしょう。


posted by アッシュ at 17:04| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月24日

短評(ヒロアカHR/ヒクドラ3/さらにいくつもの/ジュマンジNL)


 「前作」がある作品、まとめて4本。

僕のヒーローアカデミア THE MOVIE -ヒーローズ:ライジング-
[80点]@ユナイテッドシネマ豊洲
 そうよ。そうよ。そうそうそうそうそう! ヒロアカの劇場版ってなぁこーゆーの待ってたのよ!
 クラス全員が一致団結して戦い、とりわけデクと爆豪が中心にあって友でありライバルである関係を高めあう展開。前回のと比べて、段違いにアガるよこれ!

 と思ってワクワクしながら見進めるうちに。
 クライマックスに至り。

 え、え、え、そんなとこまでやるの、それやったらヒロアカワールド壊れるでしょ、チョーカッコいいけど! スーパー激アツだけど! そんなことやっていいのえええええぇーっ!
 ……いやもうすんげーモノ見ました。言葉がない。

 難点をいくつか挙げると、
○その「ワールドが壊れるレベル」の展開になった後、本当に壊れちゃいけないのでリセットがかかるのですが、やり方がスマートでない。
○ヴィラン全員が武闘派であり、知恵や機転で戦う展開がないため、隠密系キャラの立つ瀬がない。葉隠さんの活躍はいつ見られますかぁー?! そしてそれは、ゲストキャラ特にお姉ちゃんの個性もまたバトルに生かされなかったという意味でもあります。派手な個性なのにもったいない。
○地味なシーンの作画があからさまに手抜きなのは、他のシーンがスゴいのでしかたないとして、背景特に建物がテキトーなのは印象が悪かったです。

 でもまぁ、些細なことですよ。
 こんだけ話もアニメも高熱量で、全力でぶん回して叩きつけられたら、ハハァってかしこまるしかないです。
 ジャンプバトルアニメの劇場版として、ドラゴンボール超:ブロリーのインパクトはデカかったのだと推察します。ワンピース・ヒロアカと立て続けに、「わかりやすい単純な悪役」を据えて、アニメーションの迫力でぶちのめしてくる路線で来たわけですから。正直、こんなにハードル上げて大丈夫かよって気もしますね……。



ヒックとドラゴン -聖地への冒険-
[70点]@ユナイテッドシネマ豊洲
 一作目の感想。第二作が日本では劇場未公開という憂き目に遭っての、三作目。
 第二作はアマプラで補完しましたが、「父親が死んでバイキングのリーダーをヒックが継ぐ」だけ知ってれば問題ありません。本作の冒頭でも、「これまでのあらすじ」を入れてくれる親切設計なので何も知らずに見に行って大丈夫です……でも、「トゥースは尾をケガしていて、ヒックお手製の補助尾羽がないとうまく飛べない」がちゃんと説明されなかったような……。
 そういや、「ヒックの兜は母親の乳当て」ってネタ、どこに消えたんだろう。

 さて、この第三作も、ストーリーはピリッとしません。悪役(松重豊!)にイマイチ存在理由が見えず、人間側がやらかす闘争にあまり意味がないのです。しかし人間側があれやこれやするせいで至るエンディングは、「異物との共生」がテーマであったはずのこの作品で選び取るべきだったのか……と疑問に感じます。
 「ドラゴンの聖地」が、すべてのドラゴンが生まれる場所であるならば、そもそも外にいるドラゴンは巣立ち変化した存在のはずで、そこに戻れ、というのは人間のエゴが過ぎませんかね?

 ただその「人間」を無視すれば、徹頭徹尾「ドラゴンの」描写にリキが入っていて爽快です。
 圧倒的な飛翔感は今回も健在。そして、ものすごい尺をかけて、なぜそこまで! と思うほど丁寧に進める、ドラゴンという架空生物の「求愛行動」! 可愛いし楽しいし、これを「野生動物カメラマン」になりきって作ったであろう人たちの思い入れを考えると、ニヤニヤできます。
 極めつけは、「ドラゴンの聖地」の、言葉にできない美しさ……ずっといてもいいと思えるあの空間の映像美を見るだけでも、価値があると思います。



この世界のさらにいくつもの片隅に
[75点]@テアトル新宿
 前作
 思ったよりも「リンさん」の深堀りはなく、その部分に関しては物語が濃くなったというより(この作品は、「戦時の日常」を描いたところに意味があると思っているので)視点がブレてわかりづらくなった印象です。「居場所」がどうとか、他の作品でもごちゃごちゃ言い繕う話を、この作品でやることはないんです。

 ただ、前作から丁寧な補足がなされているのはありがたいです。
 「妊娠」シーンがはっきりしたとか、「小林さん」の登場がはっきりしたとか、細かい描写が増えています。そして、本作で付加された部分で最も秀逸なのは、「終戦後」がさりげなく厚みを増していて、無理なく「原爆の被害」を重くしている点でしょう。
 3時間近い上映時間は正直辛いので、そこらへんだけ含めて、もう少し編集し直してくれないかなぁ、というのが本音。



ジュマンジ ネクスト・レベル
[60点]@ユナイテッドシネマアクアシティお台場
 楽しめたとは思いますが、前作ほどの感動はなし。
 「より面白く」とヒネリを入れたつもりが複雑化してしまい、つまらなくなるよくあるパターンの続編。単純明快さがウリだった本作では、かなり致命的です。

 特に「キャラクターチェンジ」のシステムは、最初のマーサ・フリッジ間はよかったですが、まさかそれが物語の「主役変更」にまでなってしまうとさすがにやり過ぎで、没入感が大幅に薄れてしまいました。この話、誰がスペンサーの活躍を期待したかね!
 ただしそのシステムは、俳優陣の好演を見せつける、という意味ではなかなかハマっていたから悩ましいところです。

 あと、凄いマイナス点として、予告にあった「ゲームがバグる」シーンは本編にありません。さすがにこれは詐欺のレベル。



 ところで今回、時間がちょうど合ったので初めてScreenXで見たのですが、これ全編広角なわけではなく、ここぞってシーンだけ広がるんですね。
 視野が広く狭くと切り替わるのでせわしなく、これもむしろ没入感を下げていた印象です。
 クライマックスの飛翔シーンは最高だったけど、それだけに+700円はよう払わんなぁ。
 「全編ScreenXを前提に撮影しました!」ていう作品でないと効果的でない気がします。

posted by アッシュ at 16:35| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月20日

屍人荘の殺人

[70点]@109シネマズ川崎

 えー、ネタバレなしに感想を書くのが非常に難しい、密室殺人ミステリーもの。「舞台設定」が前代未聞のユニークさで、衝撃的です。

 ただ個人的には、「前代未聞」を連呼する宣伝と、「タイトル」から、あの舞台設定は、原作知らずとも漠然と予測がついてしまってまして。
 むしろその「前代未聞の舞台設定」の方をどう収拾つけるかに関心がいってしまって、まさかあそこまで「舞台装置のみの存在」とは思っていなかったので、少し拍子抜け感があります。



 なんでも、原作は「続編前提」の終わり方をするらしく、「舞台設定」に関する答えは出さないようで、この映画はそれを踏襲していると思われますが。

 謎解きがメインとなるミステリーで、「意味のない行動」を描写するのは御法度です。であれば、物語序盤、「鐘を鳴らす」という行動の意味は何だったのかと考えると、そこの答えは、もう出てるんですよね。
 ラストシーンで明智さんが一瞬何か言おうとしたのもそれを補強します。

 ……自分の中では答えが出ている最も肝心なポイントについて、答え合わせがないまま終わってしまうので、この映画単体で見るとなんかモヤッとする後味なのがちょっと残念。



 しかしながら、その「舞台設定」自体はまったくもって前代未聞で、トンデモ感がそのままミステリーに直結する構造は感動すら覚えます。これは見ておかないと損。
 舞台装置を最大限生かした「エレベーターのトリック」は秀逸すぎて涙が出ます。トリックのネタというのは尽きぬものなのですなぁ(どう考えても何らかの予行演習が絶対必要で、その場の思いつきでできるはずはないんだけど、それでも!)

 その突飛で技ありなミステリーを、木村ひさし監督は「任侠学園」に引き続き、笑えるコメディ仕立てを「テンポよく丁寧に」で作り込んでいて、爽快感のある映像に仕上げています。今後も期待大です。
 ……長編映画デビューが「劇場版ATARU」だったってマジですか。



 浜辺美波は、「クール美少女」の役どころならその端正取れた顔立ちを遺憾なく発揮できるので、本作では水を得た魚でしたが、感情が入ると違和感が出る短所は改善しきれていないようにみえました。完全に役に入り込めている神木君との落差は大きかった感。

 本作の場合、「単に何の感情も抱いていない」ところは問題ないのですが、「普通の人なら感情が出るところ、彼女の場合は感情を表に出さない」だとそれを隠しきれず、演技に恥じらいが混ざる印象がありました。また、「舞台設定に関する真相」はたぶん教わらずに演じたのでしょう、もしそこがわかっていたら、単なるコメディにとどまらない、もう少し奥行きのある演技がヒルコというキャラには必要だったはずです。

 ただ、「スマホ見られて怒る」のシーンは素でビビってる感じで超可愛かったので、成長しているのは認めます。もうちょっとだ頑張れ。


posted by アッシュ at 17:05| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月19日

ぼくらの7日間戦争(2019)

[65点]@TOHOシネマズ日比谷

 かつての宮沢りえ版は未見。
 少年少女が大人たちに反乱を起こす傑作ジュブナイル、三〇年ぶりのリメイク……だけど、今回のって内容的には、「七人のおたく」に近いような?



 いいところと悪いところがせめぎ合ってる感じの一本でした。

 中高生にわかる範囲での、現実のヤバさ厳しさをガチガチにてんこ盛り。その苦しい現実の中で生まれる暗いホンネを、「主人公のラブ告白」という明るいホンネで書き換える展開は技ありでした。

 鉱山の廃工場を舞台にし、電気・水道が通じていて設備が現役で動くことに現実的な設定がなされ、機械やネットの力を借りれば子供でも戦えると無理なく作り込まれているのもいい感じです。
 (寄せ手は「電気を止める」という対抗手段をなぜ誰も思いつかなかったのか、というツッコミはなしにしておこう)



 しかしながら、そこらへん盛り盛りすぎて、全部奥が浅い印象も否めず。

 アバンタイトル数分で主人公とヒロインの関係を描き、素早く「7日間」に突入する手際は素晴らしかったのですが、これが裏目。この描写のため、主人公とヒロイン以外のキャラの存在感が希薄なまま本筋に突入してしまい、きちんと積み立てきらないままにクライマックスの「告白大会」に突っ込んでしまうのです。

 もう少しアバンタイトルを長くとり、彼らの日常と裏事情について、チラ見せでいいので伏線を張っておくべきでした。
 「イベントが発生してから過去回想」する構成は、DAY1〜DAY7とテロップを入れてリアルタイム感を出すこの作品には、不向きといわざるをえません。少年たちの暴れっぷりがこの物語の主眼のはずで、「回想などどうでもいい」と思ってたらそれがクライマックスにそのままつながっちゃうんだもんなぁ。


 また、この作品で示される「価値観」がちょっと奇妙に感じました。

 様々な「大人の事情」に翻弄される子供たちのリアリティに比して、ヒロインの父親があまりに「型通り」の悪役で、乖離しています。あのキャラこそ、(建設会社社長みたいに)現実と理想の板挟みにいる設定の方がよかった。ていうか、あの親父さん、娘のこと方向は間違ってても愛してはいるんだよね?

 その一方で、この作品で最も酷い悪事を働いたリアルな悪役って、文句なく「櫻井孝宏キャラ」でしょうよ? 悪意をネットにバラまきプライバシーを晒す行動を採る人物は、今の少年少女社会では直接的な暴力よりも危険です。あんなさわやかな反抗でカッコ良く終わってはいけないでしょう。



 価値観といえば、最後のヒロインの「告白」と、それを驚きもせず流しちゃう主人公という一連の流れも、一般層向けジュブナイルアニメに持ち込むのは、「まだ早すぎる世界」のような気がします。
 そしてその展開にするのであれば、髪飾りごときで性別を特定するオチは完全に真逆を向いてるんだけど、あれを誰がよしとしたのか、怒らないから言うてみ?



 ここらへんの、価値観が現代的なのか古いままなのかよくわからないところが、「価値観がさまざまであることこそ多様性」と見切って作っているのならいいのですが、何にも考えずにお約束を組み込んだ、としか見えないんですよねぇ。

posted by アッシュ at 15:05| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月13日

「STAND BY ME ドラえもん2」が決定したそうな


「STAND BY ME ドラえもん」再び映画化!3歳ののび太と亡きおばあちゃんの物語


マジでおばあちゃんやんのかよ!


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2019年12月12日

テン年代ベストテン

 今年も企画に参加します。
 今年は「テン年代ベストテン」。2010〜2019まで10年間でのベストテンです。

 過去の参加リスト。


 まずはリスト。


  • トイ・ストーリー3(2010/リー・アンクリッチ)
  • これは映画ではない(2012/ジャファール・パナヒ)
  • ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(2019/レミ・シャイエ)
  • バーフバリ 伝説誕生(2017/S・S・ラージャマウリ)
  • バーフバリ 王の凱旋(2017/S・S・ラージャマウリ)
  • シン・ゴジラ(2016/庵野秀明)
  • 君の名は。(2016/新海誠)
  • この世界の片隅に(2016/片渕須直)
  • マイ・バック・ページ(2011/山下敦弘)
  • 月に囚われた男(2010/ダンカン・ジョーンズ)


○いずれも数字は「日本公開年」です。
 なお、「月に囚われた男」は、欧米の公開は2009年なので、
 これがアウトの場合は、
 ボーグマン(2014/アレックス・ファン・ヴァーメルダム)
 に差し替わります。

2016年の3強を筆頭に、順位付けの難易度が高すぎるので、「順不同」です。
 いちおう上の方が評価高いです。

○「マイ・バック・ページ」の世間の評価が低いのがホント悩ましいですが、いま日本で幅を利かせてる自称リベラルな映画評論家どもが世を去ってから、初めて評価されるのでしょうね。20年後の再評価を待ちましょう。

○「ロング・ウェイ・ノース」は、実写/アニメ関係なく、娯楽映画としての作り込み(構成の無理のなさ表現の無駄のなさ)において、ここ十年でずば抜けた一本と評価しています。
 文芸映画恋愛映画またはグロホラーしか受けつけない、といった偏食でないかぎり、本作を見ずに「今年も映画は楽しかった」と軽々しく言わないでほしい、それくらいの一本です。
 東京都写真美術館ホール及びユジク阿佐ヶ谷で再上映決定です。今からでも遅くない、是非見て!


posted by アッシュ at 15:54| Comment(0) | 映画コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする