2017年03月24日

シング

[70点]@ユナイテッドシネマ豊洲

 「ペット」が、昨年のシンゴジ君の名は。の連発に完全に飲み込まれたせいか、やたら宣伝がしつこい、イルミネーションスタジオの新作。
 とはいえ、思ってたよりずっと良かったです。ガース・ジェニングス監督を調べてみたら、「銀河ヒッチハイクガイド」の人って、マジですか。


 だって、ねぇ、題材的に、「動物カートゥーン」といちばん相性が悪そうな気がして。見る前の期待は低めでした。
 どう考えても、「人間が歌う」方が説得力があるでしょ。日本だと、それに足る役者や歌手を探すくらいならアニメでやっちゃえ、って話になるかもだけど、ハリウッドでそれはありえんし。実際、「歌のコンテスト」の映画としては、歌唱・演奏がすごいとは思えないのです。予選のシーン、予選通過するメインキャラの、どこが抜きん出ていたのかちっともわかりませんでした。

 ゴリラがギャングでクマがマフィアとか、動物にあてがわれるステレオタイプもありきたり。ズートピアの奥深さを見習え……というよりは、脚本がもともとアニメを想定してなかった、と考えた方が腑に落ちます。
 実写でやったら、3時間を超えてしまいそう。「脚本が長すぎるから刈り込め」と言われて、刈り込むくらいなら、ハイテンポの演出が可能なアニメ向けに改変した方がいいんじゃないか? となったのでは。

 アニメゆえのザクザク切っていくテンポのよさと、見た目のおもしろさだけで突っ切る潔さ、容赦なさ。
 演出が速いというだけでなく、「ジェバンニがやってくれました」級の、各キャラの行動の速さも小気味良い(ロジータは、あのピタゴラスイッチを一晩で作るスキルを生かした方が絶対いい人生になる・笑)。もちろんこれも、アニメだから許されるスピード。
 
 むろん一本調子でなく、巧みにギアチェンジもするわけで。
 なぜ主人公にコアラが選ばれたか、なぜ相棒がヒツジなのか、それがわかる瞬間の、あの泣けて笑えるシーンすっごい好き。


 十分面白かったから、映画終わったあとにまで、「吹き替え版も見よう」(←自分は字幕版で見た)とか宣伝入れるのやめれ。続編があるのも夏に怪盗グルー&ミニオンの新作やるのもわかった! わかったから!
 逆に、なぜあのアライグマ?ガールズを日本で宣伝に使わなかったのかがわからん……もしかして、吹き替えだと英日逆になってて、かえって使えなかった? あの「足が臭い」云々のシーンで、バスタームーンは本当は何と言おうとしてたのでしょうか……?



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2017年03月23日

短評(黒バス/ゆゆゆ1)&ゴニョゴニョ


アニメ2題。

劇場版黒子のバスケ -LAST GAME-
[70点]
109シネマズ二子玉川
 黒子のバスケの最終章が劇場版アニメ化。お約束通りの、キセキの世代再結成、ドリームチームで一戦、の話。先週の興行ランキング見てたら、3月のライオン・ひるね姫より上だったのでビックリしました。

 アメリカチームを、救いようのない悪役として配置。それも、白人リーダー1人がカラード4人を、エンペラーアイを超える能力で従える(しかも最後は赤石同様、俺1人いれば十分とか言い出す)とか、アメリカ人が見たらブチ切れそうな気がしますが、日本では少年ジャンプが正義です。実にわかりやすい少年誌展開。噛ませの人選も含めて(笑)、ほぼ完璧だったのでは。

 で、僕はこの作品について、バスケという球技だけで考えれば、最強は火神でも青峰でもなくて、「やる気出した紫原」じゃね? と思っていたんですが、まさしくそういう展開になったので満足感があります。


結城友奈は勇者である 鷲尾須美の章 -第一章 ともだち-
[50点]
@Tジョイプリンス品川
 えっと、この作品は基本まどマギフォロワーで、えげつない話なわけで、テレビシリーズ見てた人は今回の主人公鷲尾須美がどういうえげつない状況に至ったかみんな知ってるわけで、そんで今回の公開は、全三部構成なわけで、その第一部をこんな、いかにも導入! だけの内容にして大丈夫なんですか。
 ……率直に言って、もう少しヒキを意識しないと、自分みたいに「こりゃ秋のテレビ放映を待てば十分だわ」という反応になっちゃいますよ? てなわけで、本作はここから先は見ません。

 ところで、なぜ品川で公開しているんだ……新宿/川崎/横浜/日本橋でやってんのに、どうやったら品川に客が来ると……。



 例によって精神衛生上悪いから吐き出しとくけども。

 「ひるね姫」の感想で、「軽重を見誤っている」と書いたけど、あ、これ、森友問題もそういうことだなって。

 かの作品が、「ハードウェアとソフトウェアの対立」というメインの問題より、「メカ」「ファンタジー」「女子高生」みたいな、見た目派手なところを、まるでそれをメインのようにした結果、「どんだけ技術者をバカにしてんだ」と思えるほどグダらせてしまったように、
 森友問題も、「国有地の取引に不正があったか」というメインの問題より、「右翼教育」「安倍政権打倒」「道義的責任」みたいな、聞こえのいいところをメインのようにした結果、「どんだけ政治をバカにしてんだ」という末期的状況に至った、と。
 その国有地取引の問題すら、司法で論じるのが優先であるべきで、国会で責任追及云々は憶測と感情論がすぎる。国会はいつからスクープを披歴する場所になった?

 というわけで、森友問題でガタガタ言ってた(そのうえ今思い出したように共謀罪についてガタガタ言っている)輩は全員、「私は物事の軽重がわかりません」というプラカード掲げながら暮らしたほうがヨイ。真偽や善悪ではなく、軽重だ。たぶんそのほうが心安らかに生きられると思うよ?



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2017年03月22日

ひるね姫

[55点]@新宿ピカデリー

 破壊屋さんの誰映2016の結果が発表されてます!



 さて。
 ……。
 まぁ、うん、僕の場合、比較対象が「東のエデン」だから。「君の名は。」じゃないから。
 面白かったですよ?


 「話」としては、導入、進展、対立軸、クライマックスなど、きちんと形になっています。サイボーグ009のような念仏もなく(「セリフで説明してしまう」気になる部分はいくつか。たとえばココネが「心羽」であることは、名札なり通知表なりを出せばそれですむ話)、むしろ往時の子供向け冒険アニメ(未来少年コナンとか)の影響が感じられ、わかりやすく明るく、不快感はありません。
 映像的にもオーソドックスな面白さがあり、物語リテラシー低い中高生くらいまでならあれで十分楽しめるのかな、と思います。

 その意味では、「君の名は。」の直後に公開されたのは、注目度は上がったかもしれませんが、作品評価的には残念でした。


 ……今回の場合、神山監督が何を言いたかったのかも、なぜこういう表現にしたかも、なんとなくわかるのです。しかし、その表現をどう受け止めて欲しかったかがよくわかんない、というのが率直な感想です。
 よもや「眠ると強制的に夢の異世界に入り、リアルとは別の冒険行が始まる」という設定全般に、何の必然性もないとは思わなかったです。
 じゃあなぜ「異世界」があるのかというと、例によって監督がメカやガジェット描きたかっただけ、という結論に落ち着けるしかなさそうです。
 リアル側で描かれるハードウェアとソフトウェアの相克・融合、という話が主軸で、異世界側はあくまで比喩でしかない。しかしそれらテクノロジーを監督自身がどう咀嚼したらそういう構造になるのかが見えません。というか、某所で見た「トヨタ自動車によるエル・カンターレ映画」という評がけっこう的を射ているかもしれません。テクノロジーをリスペクトした比喩でなく、宗教思想的に捉えた結果なのかな、と。

 いずれにせよ、ソフトウェアをああいう魔法扱いしたら、ソフトウェア関係者は不快だろうし、序盤の「魔法を禁じた世界」の表現は、ハードウェア関係者にとって不快だと思います。
 そんでもって、リアルでは「オリジナルコード」ができて18年経っても、あの悪役どもはそれを超えるものを作れなかった、しかしそれさえ手に入ればたった2日で実用化してしまいます、とか言うてるわけで、それやっぱり「技術者をどんだけバカにしてんだ」てコトにしかならんと思うんですが。
 少なくとも、本作を見て、「自動運転車すごい! 僕は将来エンジニアになる!」と言う子供はいないでしょう、残念ながら。


 その他、キャラにせよイベントにせよ世界観にせよ、奥行きが浅いor婉曲すぎて何も伝わらないです。
 「お姫様=母親であって自分ではない」という最大の「謎」がまったく謎たりえてないです。学校にも友人にも町にも町の人々にも存在理由が薄く、悪役キャラは存在感はあるものの行動が軽すぎ、駆使する権限とのバランスが取れていません。
 終盤「祖父と母の対立」が明確化するシーンあたりまでは、どこにも重みがなく、それぞれにどんな意味がこめられているか考えても、「たいしたこと考えてないよね?」という回答しか見当たらないのです。
 で、逆にいちばん「重みのある」ことを伝えているのが「エンドロール」なんです。軽重を見誤っています。あの「母親」を女子高生年齢にまで下げて主人公設定して、才能ある彼女が親と確執しながら、メカニックの彼氏と出会い自動運転車を作り上げるまで、って映画にしたほうが、たぶん監督の思うことがストレートに伝わったのでは?

 こうした理解の浅さ、話の浅さ、そしてこれまでの神山監督の経歴を考えるに、やっぱりこの人も「娯楽を作る」という点に大きな欠落があって、押井守監督同様、「他人の世界を借りる」でないと持ち前の映像感覚を「映画」にまで昇華できないタイプの人だ、という判断に誤りはないと思います。
 つぎはどうぞ原作ありきでよろしくお願いします。



 ついでにいうと、もちろん「倉敷市」を名指しする必然性もありませんでした。絵面的に、「大きな橋のたもとの町」にしたかったのはわかりますが。聖地巡礼を当て込んで思いっきりタイアップした倉敷市のみなさんは残念でした。

 あと、すごく気になった点がひとつ。日テレがらみなのに、「バイクの運転時にヘルメットかぶらない」という、テレビで公開できないシーンがあるんだけど大丈夫なの?



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2017年03月17日

コクソン -哭声- & コラム

[50点]@チネチッタ

 前評判高かったし、國村隼の演技も素晴らしい、と聞いて見に行ったわけですが……苦手なタイプの話という以前に……ゴメン何をしたかったのかわかんない。
 序盤に「状況説明してるように見せて、実は夢でした」という展開を2回もやるので、あ、これもう話を理解させる気ねぇな難しいことやんないだろうな、と思ってたら、捏ねくり回すのなんの……えーっと、つまり最終的に「悪魔は祈祷師に擬態する」、ひいては「疑心暗鬼を生み地域社会を壊すのはオカルティズムである」ってとこに落とし込みたいのかな、あれは?
 にしても、相互にあまり関連しない断片を連ねていく作劇の中に、ホラーのシチュエーションを中途半端に、かつさも重要そうにいろいろ盛り込んでるせいで(「韓国社会の病理」的なことを指し示してるのだろうとは推察できるが)、逆に物語への吸引力が失われてしまったように思います。
 演技はよかった! 國村隼以上に、ヒジョンちゃんの熱演が……あんなに声を張り上げて、喉痛めてなきゃいいな、てのが、本作に対していちばん率直に出てくる感想です、ホントに。




 TOHOシネマズ行ったら、山崎紘菜タイムに、「ララランドがアカデミー賞作品賞を取るの前提」で作られたとおぼしき宣伝映像が流れて笑う。ヒラリー前提でいろいろやらかした米メディアみたい。これもハリウッドの逆襲か(笑?



 シネマメディアージュ、ユナイテッドシネマが買い取ったのか。
 職場からなら、豊洲より行くのラクなんだけど……交通費がな……。
 会員金曜1000円デーを踏襲してくれれば、何とか使えるかな? メディアージュ時代は、TOHOシネマズ系なのにサービスが共通化されてなかったから使いづらかったんだよねぇ。



 「心が叫びたがってるんだ」実写映画化のニュース。まったく想定の範囲内だし、むしろそうしたほうがいいと感想に書いたとおりだけども。
 なぜ「中島健人:主演」になるんだ。これだけで期待感がゼロになった。この作品の主人公は成瀬順で、どんな演技で彼女を表現するかにすべてがかかる作品なんだから。それを朝ドラヒロインがやるんなら、そっちが先だろ……。



 いやいやいやこういう話って、別に「日本が」問題なのと違うって、ナウシカやメガマンで僕ら知ってるはずだぞ。逆に、キングコングは日本のポスターが絶賛されたわけでしょ。
 元記事読むと、ちゃんと配給元の許可は取ってるそうだから、「元のデザイン無視して自由に作らせてもよい、そうさせてかまわない人材がいる」と認知されてるなら、くさすよりも、アドバンテージだと前向きに取るのが吉なのではないでしょうか。

 つまりは日本の慣習が悪いんじゃなくて、デキの悪いデザイナーと頭の悪い宣伝担当がいるとそうなる、というだけなんだ。クソ邦題とかクソ邦題とかクソキャッチコピーとかな。



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2017年03月16日

モアナと伝説の海

[50点]@TOHOシネマズ日劇

 えー……なんで評判いいの、コレ。
 アナ雪で、導入が豪速すぎるって書いたわけですが。だからってさ。
 ディズニーアニメで導入に30分かけるとか初めて見たわ! 逆に遅すぎるだろ! それも、「過去にどんな事情があり、現在どういう問題があり、それを踏まえて主人公がこれから何してどうする必要があるかってメインプロット」を、おばあちゃんの昔語りを使って1分足らずで全部説明し終えてから、そのメインプロットに入らないままグダグダ30分。
 マジでイライラして死にそうでした。

 だからマウイが登場して、一気にコメディに舵を切ったときは、「面白い」より「救われた」が先に来ました。マウイは、台詞回しといいキャラ立てといい歌といい刺青ネタといい、「ラスト直前で釣り針壊れるのいやがってひとりで逃げ出す」以外はすべて秀逸。ウォーボーイズとスマウグさん(笑)など、彼の絡むアクションシーンはすばらしく、実に溜飲を下げました。

 しかし、それらのアクションはどれも単発で、終盤にまったく繋がりません。
 「モアナは海のマッドマックス」ってネタがえらく話題になってるけど、「そこしか面白くない」って意味合いでもあるからね? 全然重要なシーンじゃないのに。

 結局、ストーリーが、「凡百」以外の表現がないところに落ち着くのでどうもこうも。
 あの展開で、ニワトリはおろか、「意志ある海」さえ単なるコミックリリーフの役にしか立たん(つまり、「海」さえ存在感が薄い=航海自体が冒険たりえてない)とか、真逆の方向に想像を絶したわ。
 (これさぁ……もしかして、「子供をひとりで行動させると虐待になる」ていうアレな主張に配慮してるのかな? マウイ登場以降は「マウイとモアナの同行を強制」してるのもそういうこと? つまり、この作品での「海」は、第一に「保護者」の役割でなくてはならなかった?)


 自分ならこの話、「おばあちゃん」を全部切り捨てます。えぇっおばあちゃんがいちばん涙腺攻撃してくるのに、とか思う人もいるでしょうが、「おばあちゃんが認めてくれるからオールOK」じゃ、この話なんも意味ネェじゃん。
 こういう「私は私!」な「アイデンティティ」ものはもう食傷気味です。ていうか本作の場合、「I am Moana」でなくて「I am Voyger」と違うの?

 「心」を手に入れたモアナは、海と意思疎通ができるようになる。しかし島外に出たことがなかった彼女ははじめ海を恐れているので、海も少ししか応えてくれない。そのため船を自由に動かせず危険に巻き込まれ、それが冒険行となる。
 マウイと出会い、操船とともに「自らの目的のため、何を考えどうすべきか」を教わるほどに、恐怖が消え「海」がよい反応を返すようになる。そして最後に海と完璧に意思疎通した結果として「海割り」を起こす……。
 ほらこれなら、ばあちゃんいらないから序盤がスッキリするし、彼女の成長&冒険の軌跡がそのままアイデンティティに直結するでしょ?

 万人向けを目指すのもいいですが、そのために「海洋もの」という最大の特色をつぶして元も子もなくしてしまった、そんな作品に思えます。



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2017年03月10日

短評(汚れたミルク/人類遺産/アニメーションの神様)


 「塔の上のラプンツェル」がこの時期に金曜ロードショーか……。
 震災と公開が重なってしまった不遇のタイトルだけに、ちょっと感慨深いな。


汚れたミルク あるセールスマンの告発
[70点]
@シネマカリテ
 よくできた「フィクション」である。と、述べておきます。自分が売り込んできだ商品が、実は有害であると知ったセールスマンが、怒りに燃えて逆にメーカーを告発する、社会正義の「フィクション」です。
 「社会派フィクション」に過ぎないにも関わらず、2014年に完成していたフィルムが、このたびのシネマカリテの上映をもって「世界初公開」なのだそうです。フィクションなのにやけに複雑な構成、やけに生々しい映像、そもそもなぜこれはフィクションなのか?
 面白いか面白くないか以前に「多くの人が見るべき」を望まれている作品と思うので、ともあれ自分からは、「めっちゃ面白いフィクションだから見てみ!」と言うに留めます。見てみて!

 でも正直、百パー共感はしないほうが……問題は「水道の質」「欧米信仰」がより大きい点は間違えたくないところ。



人類遺産
[65点]
@シアター・イメージフォーラム
 傑作「いのちのたべかた」のニコラス・ゲイハルター監督の新作。今回は世界中の廃墟を、ガチガチの固定カメラでひたすら撮っていきます。音楽も説明も一切なし、映像だけです。人っ子ひとりなく、時間が止まっているように見えて、画面のどこかで、雨なり風なり鳩なり蛙なり、何らかの自然が動いている、という趣向。

 タイトルの後に映し出されるのがいきなり「浪江町」で、日本人としてビビることうけあい。しかしその後、娯楽施設・医療施設・宗教施設……と、テーマのある章立てで廃墟の映像が連なる中、中盤で「戦車や戦艦の残骸」を次々映した後に来るのが「軍艦島」というのは……、日本人として醒めちゃったのがホンネ。そこからの映像に明確に退廃感が増し、「滅亡」のイメージになるので、外国人はアレ、空襲かなんかで吹っ飛んだと思うに違いないわけで。だとすれば「浪江町」も単に、「いちばん生活臭が残ってる絵面」だから最初に選ばれたんですね。
 この「ストーリー」には正直首をひねる、というか、砂漠を見て虚無や退廃を感じるより、「砂がいっぱいあるねー!byサーバルちゃん」と言える世界のほうが、たぶん今は求められていると思うのです。

 映像の切り取り方は見事なので、廃墟に限らずそうした印象派絵画的な映像に興味がある向きはどうぞ。単調には違いなく、カフェイン摂取しとくのが吉。



アニメーションの神様、その美しき世界
[80点]
@シアター・イメージフォーラム
 名匠ノルシュティンのアニメーションがデジタルリマスターされ、昨年末から特集公開中。少し余裕ができたので見に行きました。
 ほとんど見たことあるので書くこともないかと思ってたら、たぶん初見の「ケルジェネツの戦い」がすさまじかったです。古いフレスコ画を模写か写真に撮って、切り絵にしてのアニメーション。ガチで生きてる集団戦で斬り合ってる。恐ろしい迫力。平和になった後の麦打ちのシーンとかも、きちんと物理的な挙動を理解しての作り込み。
 50年近く前の作品(1971)ですがレベルが違いすぎる。「アリス・イン・ドリームランド」の作者がこれを見たら、羞恥と絶望で首をくくると思います。

 すぐ混同するので備忘。絵として一番有名な「ハリネズミのユジク」が主人公なのは「霧の中のハリネズミ」。タイトルが有名な「話の話」の主人公はつぶらな瞳の灰色オオカミの子供。



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2017年03月08日

ラビング -愛という名のふたり-

[80点]@TOHOシネマズシャンテ

 「テイク・シェルター」「MUD」のジェフ・ニコルズ監督新作。
 正直、あまり期待してませんでした。前2作は、ネガティブな何かを「隠れたところから暴き出す」手管に魅力がありましたが、本作は、異人種間の結婚が違法だった時代、それを覆す裁判を起こした夫婦の実話がベース。
 当時の人種差別は、何も隠れてない周知の事実。それをニコルズ監督がどう表現するか。ありきたりのお涙頂戴に堕してしまわないか、不安だったのです。


 やられた。
 傑作。必見。


 なんとなれば、この作品には、「不特定の黒人が迫害を受けている」シーンは、一秒たりともありません。
 物語の結論も、「人種差別が解消した」とは表現しません。
 もっと南部の州であればもう少し苛烈だったろうとは思いますが(本作の舞台はバージニア州)、「分離すれども平等」とされた当時の白人と黒人の関係が、現実にはあれくらいの距離感であったのだとすれば。


 差別の本質とはなんなのか。
 誰が、誰を侮り貶め、何をしたならば、「差別」となるのか。

 その意味では、「人種差別」なんてものはこの世に存在しません。
 そうラベルを貼りたい奴がいるだけなんだ。

よく差別を語る文言の中で、反差別を訴える人でさえ「黒人 or 女性を『劣ったものと決め付けて』見下す差別があった」とものすることがある。そのロジックだと、「劣っていれば差別してよい」と言っていることに気づかずに。
 この作品に登場する「被差別者」は「底辺労働者」であり、彼らは「劣ったものがのさばっている」とみなされているのだ。そして実際彼らの多くは愚かで、優れた者を「優れている」という理由で信用せず、いつも逃げ道を捜している。思い至るべきは、現代において、トランプに投票したのもそうした人々であること。


 この作品は、穏やかにしかし鮮烈にそれを暴いて、腹の底に何かずぅんと来るものをぶちこんできます。


 うん、これこそジェフ・ニコルズ監督の真骨頂! 一生ついていくって決めたよ僕は(「ミッドナイト・スペシャル」日本公開してくれー!)。
 でも彼は、たぶん一生、アカデミー賞を取れないでしょう。むしろケンカ売ってるからね。
 いちおう本作で、奥さん役のルース・ネッガが主演女優賞にノミネートされてるけど、この作品で評価すべきは、不器用で小心者で無学で、法律家もメディアも信用できない卑近な男にすばらしい輝きを与えた、ジョエル・エドガートンの方。

 相変わらず終盤がもたつくのが、玉にキズですけどね。この作品は(現実に裁判にめっちゃ時間がかかったのはわかるけど)、ACLUが絡んで以降は、一気呵成に描き切るべきだったんじゃないかと思います。



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2017年03月02日

アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発

[55点]@シネマカリテ

 実験のきっかけになったアイヒマン裁判の映像が少し出てきますが、本作はミルグラム博士の半生を綴る伝記もので、映画の内容にはナチスは関係ありません。原題は「Experimenter」。この題材で、「題名に偽りあり」を感じるのはどうなのかなぁ。

 「ミルグラム実験の映像化」が興味深くて見にいき、その部分は十分に興味深かったとはいえ、それ以外のシーンは、ほぼ中身がなくて面白くないのでキツイです。象を出したり書き割りで撮ったり、へんな表現をいろいろやってて、「何か心理実験が仕込まれてるのかな?」とも思えたのに、結局のところ何か驚くような仕掛けは最後まで出てきませんでした。
 それで、あの、第四の壁を越えて観客に話しかける演出は、今はデップーさん思い出して笑えてくるからやめてほしかったです。

 本作の中で最も重要と思うのは、「人間の行動を決定するのは、思想でも感情でもなく、状況という言葉です。これだけは、感情的に思想を訴える人々に、何度でも繰り返し伝えたく思えます。あなたにそれができるのは、それが許される「状況」があるからなのです。そしてその状況の多くは、自明自得ではないのです。
 「電気ショックを与える」実験の中で、その「状況」を破り、実験の中断を選択できた被験者の一人は、「電気技師」でした。彼は、与えるショックがどれほどの苦痛となるか、身につけた知識をよりどころに判断したのです。



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2017年02月27日

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち -第一章 嚆矢- &コラム

[65点]@新宿ピカデリー

 2199 に続いての新シリーズ開幕。
 一説にはスタッフが「復活編」寄りになったと言われ不安視されていましたが、まっとうな2199の続編でした。まずは一安心。
 ただ、オリジナルと2199との設定差を埋める注力が大きいようで、結果、今回の公開ではヤマトが発進すらしないのは寂しい。「できあがったとこまで出しました」感は否めず、今んとこは様子見ですね。
 なお、地球から離れたら見せにくくなるだろうから今のうちとはいえ、古代と森雪のイチャイチャが、髪色も近いしSAOのキリトとアスナにしか見えませんでした。爆発しろ。


短い感想になったのでもう少しゴニョゴニョ。



 超・邪推であることを承知の上で……。
 アカデミー賞のハプニングって、わざとやったんだろうなぁ……。
 今のハリウッドはたぶん、「白人同士が恋愛する古きよきタイプのミュージカル」に賞をあげたいと思ってないんだよ……。それこそが偏見なのにね……。



 オザケンが星野源をシメにきたのと同じように宮崎駿が新海誠をシメに来た、とか言われてるけど、新海誠をシメるには「耳をすませば」「コクリコ坂から」の路線を探らにゃならんわけで、それどっちも自分でやってねぇじゃん、ていう。



 森友なんちゃらの話は、そりゃ問題はあるんだろうけど、「それをなぜ国会で問題にするのか」感が日に日に高まっていって、バッカじゃねーのという感慨しか沸かない。「国会議員の仕事は総理大臣を引き摺り下ろすこと」としか考えてないやつらに、国会にいて欲しくない。
 安倍総理を下ろすのにスキャンダルなんかいらない。現代の基準でまじめに経済問題を論じて、軽視されている分野の自民党議員を味方に引き入れれば、すぐに辞任に追い込める。野党議員の勉強が足りてないだけなんだ。いつになったらわかる?



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2017年02月24日

短評(愚行録/ナイスガイズ/王様のためのホログラム)


愚行録
[70点]
@チネチッタ
 いやもう……こういう作品は、最近はなるべく避けるようにしてるんだけどさ……向井康介脚本のミステリだしさ……迷った末に見たんだけど……。
 感想を一言で言うなら「見るんじゃなかった」と……見た人全員首肯してくださると確信するけど、この作品の場合、それが褒め言葉ですから……。
 空気を作る山下敦弘監督とは違って、この石川慶という監督は……奥底の情を抜き出そうとしてらっしゃるようで、なおさらキツイわけで……。ポーランドで学んだ方だそうで、あぁ東欧の文芸映画ってこういう雰囲気だよねそれを日本のイヤミスに使うとこうなるのかーと思いつつ、ほっとくとやたらゲージツ方向に走りそうな気配もあって、向井脚本は合ってたと思います。
 それにしても、あれ満島ひかりかよ……言われてみれば確かにそうなんだけど、見てる間はもう……女優怖ぇっす。



ナイスガイズ!
[50点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 期待してたんだけどピンとこず。コントめいた個々のシーンは笑えるんですが、肝心の「事件」の情報の置き方が散漫な印象で、何が重要で何が重要でないのか、進展しているのかいないのかハッキリせず、面白くないというよりよくわからなかったです。最終的にはちゃんと形になるものの、その後味も悪いし、「社会派」的なまとめ部分は、単なるノスタルジーだよねとしか……。字幕の限界もあるのかな。
 加えて、アクションシーンがスタントに頼り過ぎで、何が起きてるのかどころか、誰が闘ってるのかすらわからない始末。共闘シーンもないとあっては、これをバディものとして評価するのは、自分は無理です。

 あと、当時の「フィルム」と「火」を重ねるシーンが何度もあったから、最後にライアン・ゴズリングがフィルム缶持ったままタバコ吸い始めた瞬間にオレ吹き出しちゃったんだけど、その後何も起きなかったのですごく恥ずかしかった。そこ、フィルムが燃え出してパニクるオチをつけなきゃダメでしょ!



王様のためのホログラム
[45点]
@TOHOシネマズ川崎
 予告編で期待した、「ITシステムをどう売り込むか」という話はほぼ俎上にありませんでした。実質は、イスラム教国家の現状を教えてさしあげる啓蒙映画です。最初から最後までイスラム国家が舞台なのは珍しく、メッカにカメラが入った(ように見せかけた)展開だけはすごいと思ったけど、「異文化交流もの」と考えると、平板すぎて全然盛り上がりません。
 「イスラム教徒なんてみんなテロリスト」とか思ってる欧米人はビックリするのかもしれんけど、日本人にとってはなぁ……しかも選ばれた国が比較的豊かなサウジアラビア、ラブロマンスのお相手はムスリムでも欧米思想寄りの異端女性なので、なんか首をひねりたい感じが否めず。
 登場する企業ロゴが全部アジア企業なのはちょっと面白かったです。あと、「閉じこもってる欧米国家」の代表にされたデンマークは怒っていい。

 そんで、「恐怖心が生んだ少数の癌を取り除けば、活力みなぎってハッピー!」というあからさまな比喩が出てきますが、それが「少数」どころか半分以上を占めているからトランプ大統領が生まれた現実、そしてその「少数でない」状態を作り出したのはこういう脳天気なグローバル思想の帰結であってもはや精神論ではどうにもならないことを、そろそろトム・ティクヴァ監督には理解していただきたいもんです。



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2017年02月23日

サバイバル・ファミリー

[55点]@ムービル

 震災を経てこういう物語が望まれたのはわかるし、矢口史靖監督らしからぬストイックな(でもディストピアにはなりきらず、コメディの線は踏み外さない)作り込みの好感度は高いのだけれど、細かい設定のガバガバ感が鼻についたので、どうも自分はこの話に向いてないようです。
 ロボジーの印象が近い……というか、僕の大好きな「スウィングガールズ」も、あれ本気でジャズやってる人には聞けたもんじゃないらしいんですよね。
 矢口監督にとって、「創作物とはどうあるべきか」の線引きはそういうもので、噛み合わないときはしかたないと理解するしかないのかもしれません。


 以下、ラストまでネタバレでツッコミの嵐。



映画「WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜」【TBSオンデマンド】 -
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2017年02月20日

劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-

[65点]@109シネマズ二子玉川

 ARをストーリーに持ち込んだのは、企画当時は革新的だったのでしょうが、完成前に「ポケモンGO」がヒットしてしまったのがよしあし。わかりやすくなった代わり、本来あるべきリアルへの影響───それを現実でやるといかに邪魔で迷惑な事態になるか───という観点が欠けてしまったのが痛いです。今さら初音ミクなキャラといい、ナーヴギア自体もそれっぽいのが普及し始めた昨今、先進的なイメージを持っていた作品が、時代に追いつかれ追い抜かれているのがちょっと悲しい。
 もはやフツーにゲームでしかないものに、ラノベ的な無茶と不意打ちのご都合主義で「新しさ」「面白さ」を作りこんでいて、そのデキは悪くないですが、肩透かしな感覚は否めません。

 ……いやそれより、忘れてたよ。この作品はさ。
 「夫婦モノ」なんだって。
 そんじょそこらの純愛モノなんて、軽く蹴飛ばすレベルの。

 泣いたり叫んだりの感情的なシーンはほとんどないのに、キリトとアスナがからむたびに熱いラブパワーが滲み出て、ニヤニヤどころかガチ赤面の域ですよ。
 全部わかっちゃいるけど納得しきれないリズベットのあの微妙な表情がね! こっちの気持ちを全部代弁してるようでね! ちくしょう爆発しろ。
 だからこの作品最大の爆笑ポイントは、エンドロールで一瞬映るアスナ母でしょ。え、違う?


 ときに、本作の一番すごいところは、「完全新作、といいつつよくあるサイドストーリーや延長戦」、にはならず、グランドストーリーにがっつり噛ませてるところ。「SAOの100層ボス」をここでラスボスに据えるとは、川原礫、このカードをよくここで切ってきた。こういうのが劇場版の本来の醍醐味とすら思えます。

 あとエイジ役の井上芳雄って、小野玄蕃か!



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2017年02月16日

x+y

[50点]@恵比寿ガーデンシネマ

 「僕と世界の方程式」という、書きたくもない絶望的な邦題で公開されている作品。

 原題が「x+y」。

 数学をテーマにした作品で、この究極にシンプルで美しい題名の価値がわからない人間なんて、言葉を扱う仕事から永久に消えてしまえ。


 ホント、「日本公開すべきでなかったのでは?」とすら思います。この作品のクライマックスは「親子の対話」で、あれはかーちゃん必死で「数学問題の表現で」愛について息子に説いているのです。字幕がそれを訳しきれていないため、感動のクライマックスなのにすごくのっぺりした印象になってしまっています。
 本作は2014年制作だそうで、それが今さらの日本公開なわけで、つまりは本作主演の(すっかりオトナになった)エイサ・バターフィールド君が、「ミス・ペレグリン」でも主演したので、それと同時期の公開なら何とか、という打算なんだろうな。


 理系映画なので興味深かったですし、個々のシーンは面白く見られるものの、正直、ちぐはぐな印象の強い作品です。どうしてこうなった。

 「数学オリンピックに挑む子供たちの物語」を主軸に作りこまれているので、母親と先生の関係のシーンがちょくちょく割り込むのが、話の腰を折りリズムを狂わせ、すごく苦痛でした。
 何しろこのかーちゃんが、「これまでの十ウン年間、息子をなんだと思っていたんだ」というレベルで息子を理解していないんで、物語からすぐフェイドアウトするとばかり思ってました。
 息子は単なる内向的な変人ではなく、はっきり ASD って診断を受けているんだから、それを関係者に周知するくらいはせぇよって話で。そんなだから、出会って2週間の中国女のハニトラに(笑)息子を持ってかれちゃうんだよ!

 ところが最終的には、主軸に見えた数学オリンピックを全部投げ捨て、かーちゃんにクライマックスを委ねます。話がちょくちょく割り込んでいたのはそのためだったのです。
 「十ウン年間何してたんだ」という疑念は晴れないものの、少なくともこの映画内では、「かーちゃんは死んだ父親と違い、落第レベルで数学がまったくできない人で、だから父親に理解できた息子が自分には理解できないと思い込んで苦しんでいた→先生と出会って数学を学び直したので、やっと息子と向き合えるようになった」という話なわけですね。
 で、そうして向き合った息子は「何も難しくない、ポテト鼻の穴に突っ込めばいい」と答える、と。

 ただその後、母に心を開いた息子の告白は、要するに「メイちゃんが好きになっちゃったみたい」、より的確には「あの女興奮する」でしかないわけで。
 結果、数学オリンピック自体に「メイに出会えた」以外の意味がなくなりました。彼を「異常者」「異端児」でなく「よくいるヤツ」と認識して接してくれた、物語の主軸にいると思っていたイギリスチームの仲間たちの存在は、どうでもいい何かに堕ちてしまいました。三角関係にすらならなかったレベッカちゃん。そしてリーダー格のアイザックくんてば、あの忘れもしないタレ目ではないですか。でも本作では存在感ナッシング。


 あれほど数学オリンピック合宿≒台湾ロケに重点が置かれたのは、もしかして、「中国市場を意識しただけなのかも」と考えると、余計に気が萎えます。この映画で、ちゃんと中国国内の公開枠に入れたんでしょうか……?



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2017年02月14日

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

[80点]@バルト9

 評価が二分しそうな作品。僕は「凄い」と思う派。

 まず凄いのは、予告編において、「奇妙なこどもたち」にのみフォーカスしてよくある異能譚と見せかけて、実は「日本で一番人気があるといってもいい定番ジャンル作品」であることを、いっさいバラさずに宣伝しきったことです。

 「定番ジャンル」であるにもかかわらず、従来の定石・常識を完璧にぶっ壊す、まったく斬新なパターン。そして誰が見ても「監督はティム・バートン」と一発でわかる個性。
 「懐かしいどこにでもある物語」と、「今までに見たことがない斬新な物語」とが違和感なく同居して、個性的な映像の中に織り込まれている。マジ衝撃。

 ただ、過不足なく説明されるとはいえ本当に複雑。かつ、日本映画なら間違いなく三部作にするであろう長い話を2時間に圧縮。微妙な矛盾は放置で進められるので、「何が起きてんのかわからないのが不快」という人は多いと思います。

 以下、超ネタバレ。



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2017年02月13日

虐殺器官

[60点]@TOHOシネマズ川崎

 ……うん、まあ、これまでの2作(「屍者の帝国」「ハーモニー」)に比べれば面白かったけど、物語が面白いところと映像が面白いところがまったくリンクしないあたり、伊藤計劃という作家は映像化には向かないしこの企画は失敗だったとしか。

 まして村瀬修功という監督は、本作同様マングローブの破産の影響をモロに受けたとはいえ、「ギャングスタ」を、救いようのない結末をすべての物語的説明をはしょって放り出すという、近年まれにみる最悪のエンディングを良しとしてしまった人。物語の咀嚼より、絵面のカッコよさを優先するんだと思います。人選間違えたんじゃないですかねぇ。
 軍事ギミック表現は、神山健治の攻殻を超えてそうなくらいカッコいいです(でも「ドローン・オブ・ウォー」「アイ・イン・ザ・スカイ」を見た後だと、標的の居場所もわからんのに歩兵で制圧ってのはいかにも古い)。しかしこの作品で重要なのはそこですか、と。
 物語がそういうことなら、この作品で執拗に描くべきは、アメリカ人の「平和な」市民生活でしょう。それを序盤の背景説明だけで終わらせてしまっているんだからねぇ……。



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