2015年07月31日

短評(インサイドヘッド/シンドバッド1)

インサイド・ヘッド
[65点]
@チネチッタ
 アイディアは素晴らしいし、映像表現も心地よいのに、どうにも入り込みづらい作品。理由は単純、とにかく「ヨロコビ」がウザい。オープニングのドリカムPVよりもウザい。
 ……わかるよ、思春期前の子供(まして女子)から喜びだけを抽出したらああなるってのはさ!
 でもこれ、「ディズニーアニメ」のくくりではあるけれど、「その年齢」を過ぎた人にしか絶対わからない作品で、つまり親をターゲットにした作品なわけでさ。もう少しマイルドにしてくれてもよかったんでは。

 ところで、エンドロールに
 Dedicated to our kids. Please don't glow up,ever.
 って出てきたけど、どういう意味合いだろう? 字面通りなら、おまえら自分の作った作品のテーマわかってんのか、てことになるけど……。


シンドバッド -空飛ぶ姫と魔法の島-
[70点]
@品川プリンスシネマ
 ジブリが抜けた穴を埋めるべく制作された(?)、極めてラピュタ的な冒険アニメ。とはいえ作ったのは、40周年記念アニメと銘打つ日本アニメーション。そのジャンルはもともと俺らの庭じゃい、てなもんでしょう。
 でもそれなら、ちゃんと「映画」で作ったほうがよかったんじゃない? 6話分のOVAを2話ずつで3部作、とかやらないで。

 内容は、船乗りを夢見る少年シンドバッドが、悪者に追われる魔法使い一族のお姫様を偶然助けて……まあこれだけで十分だと思うけど、基本に忠実なボーイミーツガールです。でもその「基本に忠実」をここ十年くらいまったく見かけてなかったので、とても新鮮な気分で楽しめました。
 気になったのは、旅立ちの前に母に別れを告げるシーンがやや冗長だったことくらい。でもたぶんあのお母さん、魔法族となんか関係あるよね。



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2015年07月26日

ルック・オブ・サイレンス

[採点せず]@シアター・イメージフォーラム

 見ないと精神衛生上悪そうだったので、見た。

 前作「アクト・オブ・キリング」をこのように評している自分から見ると、要するにこれは、あの爺さまのお許しにより差し出されたスケープゴートでしかない。
 前作に比べて、狭い地域に収まる取材範囲。出てくる虐殺者たちは、例外なく「自分の責任じゃない」「過去をほじくり返すな」と主張し、主人公たる弟氏も、「真実を暴きたい」と口にはするものの結局は謝罪や悔恨の言葉を求めているだけで、問題の深奥には踏み込まず、そして「家族」のありようを経て「赦す」という結末。「絵に描いたような」とはこのことだなぁと思うわけだけども、そのへんをあげつらうのはここまでにしよう。
 「絵に描いたような」であろうとも、「赦す」で終わったことに、僕は少なからず安堵している。被害者側から語るこの作品が、無意識のうちに「憎悪の連鎖」を描く結果になりはしないかと危惧していたから。


 ゆえにこの作品は、極めてシンプルな「末端の虐殺実行者の論理」を示すのみだ。「敵は殺していい」のだ。「殺せば英雄になれた」のだ。逆に「敵」と名指しされたら、逃げるか縮こまるしかないのだ。

 本作では、虐殺の裏に軍がいて、「赤狩り」を指導していたことが当事者の口から語られる。軍が直接やると国際的批判を受けるので、市民に「共産主義者は危険な敵だから殺さなくてはいけない」と教え込んで、(軍の監視の下)自分らでやらせたのである。
 (そうした「表向きは反共運動」を、アメリカが歓迎したことまで描写される。結果的に、アメリカ公認のイスラム武闘派が粛清の果てに政権を握るという、ISIS 等が出てきた現在ではありえない事態が発生した。制作者たちの本来のターゲットはここではないか、と思う。)

 その結果、たぶん平和な世であったなら、村の祭の余興で並んで漫才やってそうな脳天気なおっさんがふたり、並んで他人のペニスを切り取る所業に手を染めた。当時はそれが正義であり、良心だった。
 かつての彼らに「どうして殺人が許されるのか」は考えるまでもないことで、それによって成り立った政権が続く限り彼らの正義は保証され、考えを変える必要のない話なのだ。たとえもう、「敵」がいない時代に変わったとしても。
 だから彼らはかつての自分の行動が英雄的行為だと信じ、今なお英雄のままだと思っていて、自分が罪人のように糾弾されることに不快しか感じない。

 「ウェイヴ」を思い出した。かの作品は独裁政治の話であるが、それに限ったことではないだろう。
 理由さえつければ、末端ではその「理由」を盾に自己正当化を始めるのだ。上層にどんな高邁な理念や正義があったとしても、どこかで曲解が始まり、都合のいいストーリーが提示されて、それを信じた末端の者たちがあらゆる行動を正当化する。

 (この映画の制作者たちが、そうした「曲解の過程」を詳らかにするまで取材を進められるなら率直にすごいと思うが、どうだろうか。その過程にいる者たちこそ糾弾されるべきなのは明白で、かつ、「虐殺の論理」を後世に残すため本心を明かしてほしいと思うのだが、国際世論の変化を理解できる賢い加害者は、アクトを決め込んだ前作の爺様は例外として、彼らのカメラの前には登場しないであろう。)

 自己正当化による思考停止こそが危険なのである。あのおっさんどもを人倫にもとる邪悪と決めつけた瞬間に、糾弾者も同じ罠にはまることに気をつけたい。
 自分自身も、物事を自分に都合よく解釈して正当化する末端に違いないけれど、せめて、社会的対立を煽り立てるような言動を正当化して悦に入ることだけは、厳として慎みたいと思う。どんなに正義と信じても、さらに末端にいる未来の誰かが虐殺の糧にするような(「あんな思想を持っている奴らは危険だ! 殺せ!」にも、逆に「あの思想はすばらしい! 信じないやつは殺せ!」にもなりうる)、そんな社会の流れに参加してしまわないように。



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2015年07月18日

短評(ゾンビーバー/昔々、アナトリアで/アベンジャーズ2)


ゾンビーバー
[70点]
@新宿武蔵野館
 出オチどころかタイトルでオチがついている、ビーバーがゾンビになって襲い来る映画。人里離れた湖畔でキャビンでおっぱいで(香椎由宇似)、と、B級ホラーのお約束を揃えたいとき、水陸両用のビーバーだといろいろ都合よくね? という慧眼に基づいて、想像通りあるいはそれ以上の展開で楽しませてくれます。くだらなく安っぽく、しかしこの世の需要をよく理解して実に正しく作り込まれた、77分のヒマつぶし。笑い飛ばす映画だから笑え!


昔々、アナトリアで
[55点]
@シネマカリテ
 トルコ人監督ヌリ・ビルゲ・ジェイランによるパルムドール受賞作「雪の轍」が3時間17分の大作と知り、見るべきか悩んでいたら、2011年に同じくパルムドールとなった2時間37分の本作がワンコインのオトカリテで公開されるというので、こちらをまず見てみました。
 結論。……ごめん、オレこれよりさらに40分も長い作品なんてちょっと無理。
 雄大な自然を背景にした映像美と、起きた出来事を省略せずすべて描写しつつ細かい所作や表情で各キャラの心情を映し出して物語を固めていく(その結果、表にある事件の陰で別の事件まで解決してしまう)、という作劇手法は確かに素晴らしく、価値ある作品だと理解はするのですが、……いちいち長ェ。カンヌの選者はやっぱり老いてるんだと思います。
 クライマックスに「検死」を持ってきたのはすごいと思えど、そこで担当医のどうでもいい愚痴が始まった時はもう、発狂させる気かと思いました。


アヴェンジャーズ -エイジ・オブ・ウルトロン-
[50点]
@ムービル
 つまんなかった。
 今回は各キャラを掘り下げて描いている、てことは、それぞれをよく知るアメコミファン以外はどうにもならんわけです。それでも前作では、とにかく迫力のあるバトルでねじ伏せてくれたわけですが、今回はボスキャラ一名以外、全部同じ形状かつ、キャップやブラックウィドウが普通に壊せるレベルのザコです。
 で、一番の迫力で作り込まれているバトルシーンは「同士討ち」です。それも、何か信念のぶつかり合いとかなら赦せるんですが、「暴走するハルクをアイアンマンが止める」です。話になりません。




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2015年07月10日

「バケモノの子」の2週目

 「ラブライブ」の動員が初週で「海街diary」を破り、2週目で「マッドマックス」を破ったことが話題になったわけですが、自分がいま気になっているのは、「バケモノの子」の興行成績。
 初週は楽勝だと思うんですよ、シュワちゃんもさすがにこれには勝てますまい。
 問題は2週目。ここで「HERO」とどっちが上か。
 ポイントは、「ポケモン」と「インサイドヘッド」も同日だということ。一方、実写映画だけを見れば、「HERO」に敵はいません。
 この状況で、バケモノの子が2週目でさえ上を行くとしたら、一時代の終焉の象徴となりそうで、日本の芸能界とか興行界がちょっとは性根を入れ替える気を起こすんじゃないかなと思うのです。
posted by アッシュ at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月08日

短評(コードギアス第四章/悪党に粛清を/オンザハイウェイ/レフトビハインド)


 ……個人的には超ありがたいんだけど、いつまで続けるんだムービル。


コードギアス 亡国のアキト -第四章 憎しみの記憶から-
[55点]
@チネチッタ
 第一章第二章第三章
 ……あれ? なんか手応えが変だぞ? 分割された分、わりとゆっくり尺を取って、シンプルなテーマを乗せたよくあるストーリーがアクションたっぷりで構築されている、と理解はできるのに、なんでこう「超展開感」が激しいんだ?
 レイラのセリフが上滑りしているのが一因だと思います。「そういうジュヴナイル的な話にまとめる」のはしかたないとしても、レイラって、周囲の仲間や知人に対してならともかく、マクロな政治や軍略のレベルで、こんな感情的な主張をするキャラではないはずです。
 分割前、高速展開を求められていた時点では、核心のセリフを抽出するしかなかった。しかし二話に分割した後、シナリオの調整を怠った。そんなふうにみえますね。


悪党に粛清を
[60点]
@チネチッタ
 デンマーク人のマッツ・ミケルセン主演でアメリカ西部劇という異色の作品。ウェスタンノワールと銘打って、様々に濃い「悪」が描かれるのですが、立場にせよ行動にせよ「魅力ある悪党キャラ」という一線を越えてゲスな奴らがそろいすぎてて、不快の方が強かったのが本音。
 最後の銃撃戦はいろいろアイディアに満ちてて面白かったです。タバコ吸いながら銃を撃っちゃダメなんだぜ!


オン・ザ・ハイウェイ
[60点]
@恵比寿ガーデンシネマ
 「マッドマックス」のトム・ハーディ主演で、ドラマがすべて車上の電話だけで進められ、画面に映る人物はずっと彼一人だけ、というアイディアの、ワンシチュエーションサスペンス。

 まだ見てない人に言っておきたいこと。
 主人公はビル建設現場の監督で、これから生コン流し込んで基礎を固める、という時点から物語がスタートしますが、何も埋めてません(笑。遺体隠蔽も証拠隠滅もありません。物語の最後に意外な真実バラし、というのもありませんので、述べられる状況は、そのまま事実として受け止めて大丈夫です。……ここ早めにきちんとエクスキューズして欲しかったなー、て思うのはワガママか?

 主人公は、「過ちを正す」ため、ロンドンへ向けひたすら車を走らせます。彼には、仕事と家庭、二つ抱える重い責任をなげうってでも、信念に基づいて筋を通さねばならぬ事情があるのです。でもそれらはなげうってはいけないし、本人もなげうちたくはないので、なんとか事態を好転させられないか電話越しに四苦八苦する……それらがすべて一本の高速道路上をひた走る過程で進められていく。一本の時間軸、人生の道筋、そうしたものを象徴させているのでしょう。
 そんなドラマの進め方はものすごいんですが、先にも述べたとおり「何か大きな事件が背後に隠されているのではないか?」という疑念を払拭しないまま進められることと、逆にそうでないとわかると、主人公の「過ち」のあまりのうかつっぷり&その結果、本作の事態が最悪のタイミングで発生するあまりの間の悪さ(というかご都合主義)を、すんなり受け止められなかったのが正直なところ。


レフト・ビハインド
[50点]
@チネチッタ
 しまった、「こういう映画」だったのか! Wikipedia を見ると、この作品は続き物で、原作小説はこれから先、もっと酷いことになる模様。……そういや幸福の科学はまたアニメ映画作るんだっけ?
 人間集団消失というアイディアをよくもここまでちっぽけに映像化したものだ、と嘆くべきなのか、都心でよく街宣車が喚く「イエスを信じない人は地獄にオチマース」てヨタをよくもここまで見事に映像化したものだ、と褒めるべきなのか、ともかく無節操俳優ニコラス・ケイジの存在感が実に映える一本。
 「事件」が起きたあと、即座に「略奪開始!」になっちゃうあたり、TheGod様だけがおわす世界で生きる罪深き方々は大変ですなぁ。なお、宗教的な意図で「この状況」を描いた映画としては「トゥモロー・ワールド」という傑作がすでにあるので、そっちを見たほうがいいと思うんだ僕は。



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posted by アッシュ at 13:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする