2015年09月28日

アントマン

[85点]@チネチッタ

 素晴らしい。
 まさしく、新時代のヒーロー像……というか、「ヒーローの既成概念をぶっ壊すヒーロー」です。こんなヒーローを見たかったんです。

 なお、最初に書いておくと、予告編にはまったく出てきませんでしたが、本作のヒーロー・アントマンは、超人的戦闘力以外に「アリを操る」という能力があり、ホラー映画かって勢いで(クリープショーみたく)虫が画面にあふれるシーンがあるので、苦手な人は超注意のこと。


 さて、アントマンの何が新時代かっていうと。

 もともとアメリカンヒーローというのは、「強い・速い・マッチョ」な、軍人的素養と同時にセックスシンボルであったわけです。ところが時代が変わって、戦争が起きずむしろ否定すべきものになると、そうしたことは美点とされなくなりました。
 その結果、ここしばらくの強くてマッチョなアメリカンヒーローは、「苦悩する時代」を続けていました。敵とは何か? 強さとは何か? 自分は本当に必要とされているのか?
 そういう「苦悩するヒーロー」、僕はあんまり好きじゃないんですよね。カッコ悪いじゃん。

 そしてまた、義賊、というのも成立させづらくなりました。「敵が奪って厳重に保管しているものを取り返す」というフィーチャーでヒロイックな活躍を見せたくても、テクノロジーが進化して、一昔前の人たちが思いついた方法論は現代ではほぼ無効化されており、映画に出てくると陳腐にしか見えません。未だに「換気ダクト通って侵入/脱出」とか、もう笑いも起きないです(まぁ、本作でも「レーザー防護壁の通過」という陳腐なネタはやるんですが)。
 現代だと「監視カメラの書き換え」とか「セキュリティシステムのハッキング」とか(ここをうまく描いた快作を見たばっかりではあるけれど)でがんばってるけど、どうも地味ですよね。「ヒーロー」がそんなんに助けられていては、やっぱりカッコ悪い。


 そこでアントマンだよ!
 現代において「強くあらねばならないもの」「その強さを人間が扱うにあたっては善意をもってなさねばならず、敵に回すと脅威であるもの」それはもう、武力じゃないんだ。ズバリ「セキュリティ」だよ!
 論理的な話(ウィルスや巨大システムと戦う、みたいな)なら、攻殻機動隊を嚆矢にいくつも出てきてますが、こういう物理的な切り口もあるのかと、そして、こう扱えばアメリカンヒーローにもなりうるのか、と思わず膝を打ちました。

 日本語では「蟻の這い入る隙間もない」なんて表現があるけど、文字通り「蟻さえ入れれば」たどりつけない場所が存在しない、「侵入」に特化したスーパーヒーローの登場。いくら換気口をふさごうと、人間が存在する建造物である限り、絶対に給水管はふさげない、とはやってくれます。
 そして、同じ能力を悪意もて扱う「敵」が現れたなら、危険すぎるから倒さねばならぬのです。いやマジで、このトンデモ能力を、着るだけで発揮できるのは怖すぎ。悪用超厳禁だぜアントマンスーツ!

 単に極小に縮んだ状態で冒険したりバトルしたり、という話も、思い返せばいろいろあります。しかし、使い古されているように見えて、「自在に拡大縮小して現れたり消えたりできる」というのは新機軸で、このアイディアを生かしたアクションや、縮小世界の表現が、楽しくてカッコよくてとても新鮮です。
 しかも、通常必殺技と超必殺技、2種類の「コンピュータ物理破壊スキル」を持っているのも新鮮。まさしく現代ヒーローバトルの申し子といっていいでしょう。
 ていうか、これはつまり、アメリカ人が考えた「オレたちの新しいニンジャ」なんじゃないかな!


 科学的にはもう、「柳田理科雄が解説し始めたら大変なことになりそう」としか思えないけどな!
 「原子間距離を縮める」とか、たぶん核爆発級のエネルギーがあっても科学的には無理だけど! あれだけのサイズに縮むと、物理的に比率で扱えない話が多くなりすぎて、機械もコンピュータもまともに動かないんじゃないかと思うけど!
 最終的な展開に至ってはもう、概念というか哲学というか、やりすぎ感あって受容しづらいのが惜しい(「開発者の奥さん」で解決すれば、精神論になるとはいえすっきりまとまったのにそうしなかったのは、次回作でと絡ませるためか?)けど、まぁ細かいことは気にすんな、ヤツはヒーローだ!



 ところで、この作品は、いわゆるマーベルユニバース(アベンジャーズ)と地続きになっており、アントマンの開発者はシールドの元研究者です。で、ラストシーンにキャプテンアメリカが出てきて続編の引きにしていて、次のアベンジャーズに登場するんじゃないか、とか言われてるんですが、……どうすんだろ。
 既述の通り、アントマンはこれまでのヒーローと一線を画しており、いろんな意味で他のヒーローとなじませづらいように思うのですが。

 何せ、神であるマイティソーはともかく、「見なくても他者を知覚・攻撃できる能力」がない限り、あらゆる超人はアントマンに勝てません。
 人間以上の攻撃力がないので逆にアントマンが勝つこともないですが、メカの補助を受けて活躍するヒーローは例外で、すべて中から破壊しちゃえます。何しろ、「鳥の能力」を持つマーベルヒーロー・ファルコンと戦って勝つ、というシーンまで出てくるんだから!
 一番やばいのがアイアンマンで、アントマンは天敵って言っていいレベル。トニー・スタークの性格的に、こんな危険キャラクターの加入を認めなさそうな気がするんだけど、そこらへんちゃんと処理してくるかな?



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2015年09月25日

ピエロがお前を嘲笑う

[75点]@新宿武蔵野館

 ある殺人事件に関与したと言って、ハッカー集団「クレイ」の一員と名乗る若者が警察に出頭してくる。彼の回想・陳述により、彼らハッカー集団がこれまで何を企て、何を引き起こしてきたか、物語られていく。彼が出頭した目的は? そして事件の真相やいかに?

 ……えぇと、「100%騙される」がウリのトリックものなんで、どこから書いてもネタバレになっちゃいそうなんですが、確かにこれは読めません。
 というか、主軸となる「ハッキング」が、ハッカー心理の移ろいやソーシャルエンジニアリングの手管を含めて、きちんとわかりやすく、そしてカッコよくスピーディに、見惚れちゃうくらい見事に描かれているため、「謎が仕掛けられている」ことがどうでもよくなるんです(笑。
 「ターゲットのセキュリティエリア内に物理的に侵入できるか、が最大の障壁である」という観点で「ハッキング」を描写した作品って、初めて見たかもしれません。

 「ソーシャル・ネットワーク」「ピクセル」もその一種といえそうだけど、いよいよ増えてきた、「ナードやギークをリアルに描きつつもスタイリッシュでカッコいい」作品のひとつの到達点だと思います。同時に、これが新たな基準点となって、また増えてゆくのでしょう。世に物語の種は尽きまじ。


 後から考えると、主人公ズのキレ具合に比べて周囲がアホ過ぎるので(MRX氏がまさかあんなあっけなく退場するとは……)、トリック&結末にはどうも納得がいかない部分もあるんですが、実は冒頭で全部答えを提示してるというのは鮮やかでしたね。



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2015年09月24日

ピクセル

前半[90点]後半[60点]@TOHOシネマズ渋谷

 言わずと知れた、80年代レトロゲームがリアルに地球に襲い来る、「ゲームセンターあらし」の実写化(違。パンフレット買うと、ちゃんとすがやみつる先生インタビューが載ってます。わかってますなぁ。
 でも、日本人が作るべきだよなぁ、こういうの。「ど根性ガエル」が実写化される時代だし、冗談でもなんでもなく、ゲームセンターあらしも実写化しよーぜ!


 何しろ、冒頭のゲーセンシーンで「ディフェンダーだぁっ! 最新鋭のゲームだぜ!」と叫びたくなったほどには「ゲームセンターあらし」世代なもので(といっても、よいこはゲーセン禁止な時代でもあって、コロコロでしか知らんわけですが)、ここなナードなダメ男が、それなりにカッコよい主人公として説得力を持って描き出されていくのがとてもうれしく、気持ちよく感情移入できました。彼が巻き込まれつつも活躍を始める序盤は、年間ベスト級の興奮を味わいましたとも。
 ……センチピードあたりまではね……。センチピードは「ゲームを攻略」してるんだけど、それ以降はゲーマーでなくてもいい話になっていくので、尻すぼみ感が強いのが非常に残念。

 パックマンは何しろ「パックマンが敵」なので攻略というには弱いし(モンスターの性格づけをなぜ利用できなかったのか……)、ラストのドンキーコングに至っては、直前に「チートはダメだよね」という話をしておきながら、ゲームシステムに存在しない、チートとしか表現できない方法で倒してしまうのは、さすがに拍子抜け。あれをちゃんと「面クリア」で終わらせるだけでだいぶ印象が違ったはずなのに……。
 ラドローがらみのシーンがことごとくつまんなくて、彼の話が割り込むと滑って盛り下がるのも難点。これは、せっかく作ったオリジナルゲーム「DojoQuest」の存在感が皆無なのも大きいです。ちゃんとゲーム画面を出して、レディ・リサは魅力あるキャラなんだってことを表現してほしかったです。

 でもまぁ、たいへんにゲーム愛にあふれた作品には違いないので、当時のゲーマーは礼儀として必ず見に行くこと。
 続編があるなら、今度は格闘ゲーム時代の話でお願いしまっす!


 なお、字幕/吹き替えの両方を見てみたのですが、個人的には吹き替えをおススメ。
 吹き替えだと、岩谷教授に会った時にラドローが日本語で挨拶するネタが意味不明になるんだけど、それ以外のネタの翻訳の程度は、字幕と吹き替えに大差なかった印象で、そうなると表現の色のつけ方に勝る吹き替えの方が面白いかと。
 柳沢慎吾は、やや感情の乗せ方が微妙な部分が散見されるも、アダム・サンドラーの声質にバッチリはまってる感。アダム・サンドラーのコメディは今後、全部柳沢慎吾に任せるくらいでいいと思います。さらに、エディ役の神谷明が、あちこちで80年代の彼の持ちネタをぶっこんでくれます。狙いすぎかもしれんけど、80年代ノスタルジーネタもバンバン織り込まれてる本作では、これくらいやってくれてちょうどいい。

 また、エンディングテーマを日本だけ差し替え、とかやると普通の作品ではたいていドハズレになりますが、本作に限っては、吹き替え版エンディングの方が断然いいです。中田ヤスタカ謹製のチップチューンですぜ!



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2015年09月21日

心が叫びたがってるんだ。

[75点]@TOHOシネマズ渋谷

 「あの花」の制作スタッフが送る、新たな青春群像劇、という触れ込みの作品。「あの花」は「鈍器で頭殴って泣かせるような作品だったが、今回はそうではない」との監督の弁でしたが、さて。

 ……なるほど。これは「泣く」とか「感動」とか、そういう次元の話ではないようです。では何かというと。
 邦画は最近、このように揶揄されることが多くなりました。
 気持ちを全部言葉で表現してしまうので、映像化した意味がない、と。
 けど、はたしてほんとにそれは悪なのか?
 と言わんばかりにそこを突き詰め、「気持ちを言葉にすること」に徹底して突っ込んでいった、チャレンジャーな作品。

 「言葉を発することがトラウマになった女の子」を主軸にしたこの物語は、あらゆる手段を用いて───わたわたとかわいらしいボディランゲージで、モノローグで、書き文字で、メールで、歌詞で、歌声で、やがてはっきりと誰かに向かって、少しずつ「言葉」を発していきます。
 映像やアクション、そして構築されていく周囲との人間関係もまた隙なく組み合わせ、彼女の言葉をこれでもかと引っ張り出す手管は、セリフ以外であってもものすごく饒舌で、正直疲れました。
 僕の苦手なフォント表現もふんだんですし、また、提示されるミュージカル知識がややわざとらしく、この作品世界における高校生の域から逸脱してる感じがするのもマイナスで、手放しでは喜べないのですが。
 しかし、建て前と本音を自然体で使い分けながら、ここぞで劇的な本音のセリフを爆発させずにはおかない、岡田麿里脚本の真骨頂といえましょう。

 この、演じるにあたっては恐ろしく面倒くさい「成瀬順」というキャラクターに、全霊を乗せきった水瀬いのりはお見事でした。でも、真面目にやれば日本の役者もこれくらいできる人はナンボもいるでしょうから、「あの花」も実写化したことだし、これこそ実写化して、日本の映画界は「言葉」について映画評論家どもに逆襲してやったらどうでしょうか。


 それにしても……岡田麿里といえば残酷なリアリズムに走って「鬼畜」と表現されることもありますが、この作品は冒頭に「鬼畜」のすべてが凝縮されてる気がします。悪いの全部父親じゃんかよぅ。
 この作品は「あの花」に続いての秩父聖地な作品(内容が濃いので舞台背景を気にしてる暇があまりないんですが)……あの「山のお城」にモデルがあって聖地化したら笑えるな。



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2015年09月20日

進撃の巨人 後編 -エンドオブザワールド-

[60点]@109シネマズ港北

 な? 本質は何も解決してないのに、海見てラストシーンだったろ?


 ……いやぁ、ある意味スゴいもんを見ました。ネタバレ隠さないから、見てない人は注意。

 後編に入り、序盤で「世界の真実」的なものを全部ネタバレして、社会体制の話を持ち込み、人間同士の対立の方向へ物語をシフトしていったのは(あそこまで一気にバラすとは思わなかったけど)、わりと予想通り、だったのだけれど。
 予告編に出てきた、エヴァみたいな謎の白い部屋とその出口以外、新しい「場所」がまったく登場しないのです。新しい「キャラ」に至ってはひとりも登場しないのです。なのに社会の二項対立の物語がものすごい勢いでぶん回され、キャラが次々無駄死にしていくのです!
 よくもまあ、あのダイナミズムと複雑な関係性を内包する「進撃の巨人」を、ここまでデビルマン並みにコンパクトな世界に落とし込んだものです。「テーマに沿ってまとめた」という意味では、凄まじい技量の発露のように見えてくるから不思議。ある意味感服した。……コンパクトさを誰が望んでたか、ちゅう話だけどね!
 超巨大巨人の正体に至ってはもう、……とりあえず、君の目的がそれなら、まず壁完全にぶっ壊したらよかったんちゃう? 前編で登場したとき、なんであんなちっちゃな穴ひとつで満足したん?

 本作では、立体機動のアクションはほぼ巨人エレンの露払いみたいな扱いで、ちょっとカッコ悪いのですが、樋口監督としては、やりたかったのは立体機動よりもウルトラマンであって、それは存分にやらかしたので満足したでしょう。映像はホントよくできてました。特撮担当のみなさまに率直な賞賛を。


 ところで、タイミングの問題もあって、公開初日(真昼)に見たのだけれど……会員1100円デーなのに20人くらいしか客いなかったぞ、109シネマズ港北……いやこれ、「進撃の巨人がヒットしてない」よりも、「109シネマズ港北がヤバい」んではないのか? 二子玉川とららぽーと横浜に挟まれた今、あのエリアにシネコン2つって明らかに過剰だもんな……。



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2015年09月18日

短評(ヴィンセントが教えてくれたこと/キングスマン/ギヴァー)


 学歴でどうこう言いたくはないけど、「学生運動の首魁」が「明治学院大生」というのは、他の大学の現在の学生運動家がどう考えているのか、あるいは彼を国会にまで祭り上げた過去の学生運動家たちが何を思ってそうしたのか(「安保」という単語に血が滾っただけにしか見えないんだよなぁ……)、とりあえずはマイ・バック・ページ」を全員で正座して鑑賞してから反省会を開いてもらいたいと思う。
 理屈はどうあれ、反対派のやり方はすべてにおいて稚拙に過ぎて、哀れみすら覚えたよ。


ヴィンセントが教えてくれたこと
[75点]
@TOHOシネマズシャンテ
 ビル・マーレイがちょい悪、どころかかなりダメなジジィに扮し、シッターを押し付けられた少年と友情を結ぶ話。個々のイベントは、今のアメリカ映画ならわりとよくある家族問題や貧困の問題ばかりで、これといってすごい展開はないのですが、不良ジジィなヴィンセントとこまっしゃくれたオリヴァーの凸凹コンビっぷりがただただ楽しく、そしてなんだかんだで泣かせてくれる、いい話なのです。競馬が的中した時の喜びようが素晴らしいね!

 ところでこの作品、中盤まではヴィンセントがいかに金にだらしないか、という話を延々とするんだけど、劇中のある転換点以降、ぷっつりと語られず沙汰止みとなります。そこまでで彼はほぼ破産しており、かつそれ以降にかかる費用のほうがよほど高額のはずなのに、そこを手当する描写がないのが非常に惜しい。
 退役軍人向けの医療保険てどんだけすごいんやー、と思っていたのですが、こちらの情報によれば、死んだ奥さんが彼を受取人に生命保険をかけてたらしい……うーん、さりげなくでいいからひとこと説明が欲しかった。


キングスマン
[50点]
@109シネマズ川崎
 ……期待したよりもノレなかったなぁ。
 キック・アスのマシュー・ボーン監督によるスパイアクションもの。……なんだけど、お約束のギミックとかは従来のスパイものをなぞってるのに、話の持ってき方や作り込みについては、そうした先達をなぞるまいと試みて、面白くない方へ自滅してる感じがします。映像やキャラ造形はスタイリッシュなのに、なんか、やることなすことカッコ悪い。師匠が死ぬシーン、あれ、カッコいいと思って作ったんだろうなぁ。クライマックスの「威風堂々」も、あれをケッサクとかいう人はいるんだろうけど、僕には悪趣味にしか見えなかったなぁ。
 敵ボス・ガゼルさんのアクションだけは、心の底から見惚れる美しさ。なればこそ、あれを「即死毒」で終わらせるなんて、もったいないにもほどがあるよ。彼女を倒すのが傘! それもボロボロになったあとの骨! そんでヴァレンタイン氏は靴で軽く蹴っ飛ばすだけで終わり! それが様式美というものです。


ギヴァー 記憶を注ぐ者
[35点]
@109シネマズ川崎
 アイディアがすごく面白そうだったので見てみたのですが(実際、映像的にはいろいろ面白い工夫はあったのですが)、原作が児童文学というだけあって、さすがにちょっと辛かったです。大人の鑑賞に堪えない、という意味で。
 ここにある「無感情な平等社会」は単純化と抽象性が過ぎる(というか、抽象的、と好意的に解釈しなければ成立しないレベルで構築が甘すぎる)し、クライマックスに起きるその「打破」に至っては、「え、それで本当に全部解決にしちゃうの?!」と絶望します。
 つぅか、ジェフ・ブリッジスがやってんのは、「真実の伝達」っていうより、「洗脳」そのものじゃんかさ。たったひとりからの教唆をすべて信じて、「自分だけが真実を知っていて、他人が全員間違っている」という認識に至った子供……そのほうが怖いっての! しかもそこからの行動も感情論でしかないという……ヤバイよこれ。子供しか面白がらないだろうけど、子供に見せたくない。
 いやマジで、「自分だけは特別!」と思ってる思春期少年以外で、この作品を「面白い」とか「愛って素晴らしい」とか言い出す人がいたら……うん、そういう人らが、安倍政権さえ倒れれば世界は全部バラ色! とか思い込んで、最低限の現状認識も理論武装もなしに国会まで行っちゃったりするんだろうなぁ……。



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2015年09月17日

字幕か吹き替えか

 最近、またぞろ字幕か吹き替えか、てな議論が映画ブログ界隈で話題になりましたが、自分は、

 ・ディズニー映画は原則吹き替え。
 ・その他「子供向け映画」は、おおむね吹き替えを選択肢に入れてよい。
 ・あとは原則字幕。

でみてます。
 なお自分、「ピクセル」をとりあえず字幕で見てみたんですが、固有名詞をうまく翻訳できてない印象だったので、吹き替え版で見直す予定です。

 話の流れの中で、某所で「ディズニーはタレントを声優に起用するから」みたいな批判を見かけたけど、いやいやいやディズニーがいちばんマシだよ!? ディズニーの芸能人起用は、ホントに見事なまでに役柄に合わせてくるから驚くくらいです。
 ディズニーが起用するまで、木梨憲武や田中裕二が声優たりうるって誰が想像したかね? 「雰囲気だけで決めたんじゃねぇの?」と思うかもしれませんが、それで通ると思ってテキトーに配役すると、「ザ・シンプソンズ(20世紀FOX)」みたいな惨状が生まれます。そういった、知名度と雰囲気と技量をうまく組み合わせられる(ついでに、芸能事務所のゴリ押しに屈しないパワーを有する)、ローカライズに対するスキルや意識の高さは、やっぱディズニーがダントツだと思うんだけどなぁ。
 「Mr.インクレディブル」の宮迫博之なんて、プロ声優すら裸足で逃げ出す級の凄みがあったし、近いところだと、「アナ雪」に神田沙也加が出るって話になったとき、みんな「あぁ……」て反応してなかった? 実際見てみてどうよ?


 なお、破壊屋さんにひとつ反論しておくと、「ミニオンズ」は吹き替えでないと、「日本語版スタッフ紹介」で笑いを取りに行く努力が無になるからダメです(笑。

 字幕版はみてませんが、オリジナルキャストにちゃんとスティーブ・カレルがクレジットされているので、まず間違いなく字幕でもあそこはおっさん声で、それを踏襲した吹き替えです。幕引きにあたり、「新ご主人様、キター!」ってファンに反応させるのが目的の、意図した演出だと思います。自分も「キター!」てアガったもん!
 彼がそもそも怪盗グルー=スティーブ・カレルの吹き替えにふさわしいか、てのは、「月泥棒」から言われてる別問題。個人的には嫌いじゃないし、彼くらい「聞けばわかる」級の個性がある声の方が向く役柄だと思います。
 少なくとも、60年代の雰囲気に合ってないからぶち壊し、っていうのは筋違いかと。この作品の場合、別に何時代でやってもいい話だけど「グルーとの出会いを描くのなら60年代にしないと辻褄が合わない」からそうしたのであって、優先順位は「グルー」>「60年代」でしょう。



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2015年09月04日

テッド2

[65点]@チネチッタ

 前作でいちばん衝撃的だったのは、あのボンクラのジョンと、ヒロインのロリーが4年もの間交際できていた、という点でした。ヒロインの交代にどういう都合があったのかしらんけど、そこであっさり「離婚します、つぎアマンダ・セイフライドとイチャつきます」とか……。

 で、今回はテッドが結婚し、子供がほしくなって養子を取ろうとする、という展開から、「人権」という重いテーマに移行していくわけだけど(テッドに人権はあるやなしや、という着眼点は実に面白い)、そうするってぇと万人が抱く疑問「そもそもおまえらどうやって婚姻届を受理してもらったん?」は当然のようにぶん投げ。


 セス・マクファーレンという監督個人の気質がそうなんだろうとは思うんだけど、「物語」に重要なそもそも論を全部あっさりと放置して、「小ネタぶっこむ」に全力集中するってのはどうなんかなぁ。最近の日本のオタ向け作品もそういうの多いけど、おおむね大成はしないですよね。
 前作は内容も軽くて、小ネタ連打は美点だった気がするけど、本作はいささか空回り感が否めません。


 人権話については、「ルーツ」の映像まで持ち出し、行政側の主張がまるっきり黒人差別当時のそれをなぞっているわけですから、当時の苦闘をもう少し尊重する解決であるべきだったのではないでしょうか。―――ていうか、テッドによるキング牧師ばりの大演説、をクライマックスに予想していたので、ちょっと期待しすぎた感があります。
 モーガン・フリーマンによる「解決」は、最初は市民権と基本的人権を混同してるし、その後「愛があるからOK」になり、法廷においては、あまりに当然、というか最低限の「人間とは何か」論をぶつけて終わり(あれだけ調査する描写をしておいて、この程度の主張をなぜアマンダ・セイフライドはできなかったのだ?)なのはどうも腑に落ちないです。つか、モーガン・フリーマンの主張が人権の保障ってことなら、認知症老人にはもう人権がないことになっちゃわない?


 コミコンへの突入を含め、オタ系小ネタは存分に楽しめたので、セス・マクファーレン監督には今後もあまり間口を広げないコメディを期待。とりあえず、この作品におけるハズブロ社の懐の深さは感動的です。

 あと、アマンダ・セイフライドとゴラムはソックリだ!



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2015年09月01日

短評(クーキー/劇場版弱ペダ/たまゆら2/さよなら、人類)


クーキー
[70点]
@新宿武蔵野館
 チェコ発の人形アニメーション。ストップモーションではなく、マリオネットに演技させ、吊り糸をCGで消す、という体裁。
 先に難点をあげておくと、人形劇なので口が動かず誰がセリフを発しているかわかりにくいところへ持ってきて、字幕に「物語を成立させる」意図が見えません。村長&クーキーとアヌシュカ&ゴミ部隊の二軸対立が明確な中盤を除いて、どういう話が進行しているのかイマイチつかみづらかったです。
 しかし、人形劇にしてほぼ全編野外ロケ撮影というアイディアはすばらしく、自然美を見事に切り取っています。また、チェコの映画といえばアニメーションですが、「エキセントリックな展開」という特徴もあると思います。本作でも、森の中の人形劇なのに迫真のカーチェイスとか、車上スタントの構図でのアクションシーンとか、おまえらアホやろというキレっキレの映像が次々編み出されており、ある意味「映画」という芸術の新たな境地を開拓しているスゲぇ作品です。


劇場版弱虫ペダル
[70点]
@TOHOシネマズ新宿
 期待通りにアツく作りこまれた、完全新作のファン向けムービー。アニメ追っかけてた人は見逃すこと能わず。
 作品内時間で3日間にほぼ1年かけたテレビ版に対し、キャラそれぞれに見所作って2日間で90分、なので、展開が忙しく、手段が先で目的が後回しなご都合主義感は否めませんが、まぁ、少年マンガなんだから硬いこと言いっこなし。サイドストーリーとして十分な出来だと思います。
 ていうか、ね。
 ポスターに、主人公より巻島東堂コンビがでかく描かれてる時点で。
 そして、公開直前のチャンピオンの連載において、青八木・鏑木コンビのとった行動及び過去回想で。
 いやホント、何がクライマックスに来て結果がどうなるか、だいたい展開読めちゃいまして、そのとおりの内容になったので満足です。田村ゆかりは偉大だね!
 そんで、登場はするけど次の瞬間には忘れ去られてる綾ちゃんとか委員長とか。総北・箱学以外は、たとえ宮野真守をあてた新オリキャラであろうと、蹴散らされる引き立て役のザコである、とか。まあ、うん、硬いこと言いっこなしだ。
 意外だったのは、御堂筋が顔見せのみだったことくらいです。でも、彼はこういう一発勝負に連れてくるにはバランスブレイカーってことだろうなー。


たまゆら 〜卒業写真〜 第2部 響 -ひびき-
[65点]
@新宿ピカデリー
 第一部
 今回は、のりえちゃんとかおたんの進路確定話。もとより派手さのない作品がさらに小ぢんまりしてますが、変わらず安定して良いデキです。井口裕香のハイテンション芸を堪能できます。ついでに、前回唯一登場しなかった、ほぼろ組もオチがつきました。でも中の人の心境を察すると素直に喜べない(笑
 夏の話ということもあって各キャラが薄着で、このシリーズにしては、描画がややセクシャルなシーン多めで眼福でした。のりえちゃんが「あの花」のあなるに見えてしょうがなかったョ!


さよなら、人類
[45点]
@恵比寿ガーデンシネマ
 全編セット撮影、かつカメラ固定という、演劇あるいは「動く絵画」といえる手法で撮影されたスウェーデン映画。
 シーンそれぞれに工夫をこらした、奥行きある画面のレイアウトは素晴らしいし、あるシーンと次のシーンでちょっとした関わりをもたせてる序盤は面白いです。しかし先に進むにつれ、関連もクソもなくなって、コント的な面白さも消え、ただ固定画面で何かがもっさり動いているだけの眠い映像になり、結局轟沈。あーよく寝た。



弱虫ペダル TVアニメ公式ファンブック (少年チャンピオン・コミックス) -
弱虫ペダル TVアニメ公式ファンブック (少年チャンピオン・コミックス)
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