2015年11月10日

短評(顔のないヒトラーたち/ヒトラー暗殺/ロシアンスナイパー/ミケランジェロプロジェクト)

 短評、ていうほど短くないけど、ナチスがらみを立て続けに見たので、まとめてドン。

顔のないヒトラーたち
[50点]
@ヒューマントラストシネマ有楽町
ヒトラー暗殺、13分の誤算
[65点]
@TOHOシネマズシャンテ

 どちらも、主人公にどうも「超人」を感じてしまい、イマイチでした。ここで「超人」と言っているのは、調査能力や爆弾製造能力を言っているのではなく、「ナチスを徹底して邪悪視する、後世の史観を知っているとしか思えない行動様式のキャラクター像」、という意味です。

 前者は「アウシュビッツにおける殺人行為」のみが裁く対象であるはずで、そこを突き詰めていく前半はいいのですが、だんだんそれとナチス全体との線引きがあいまいになっていきます。だからさ、ナチスはいちおう選挙で選ばれた政権なんだから、(そりゃ表立って党員でしたと言う人はいないだろうけど)党員も支持者もいて当たり前で、この案件も「一部の人間の暴走」に収斂させていきたいと望むのがノーマルな思考じゃないの?
 後者はもっとひどく、客観的に見れば、主人公はやけっぱちの爆弾テロリスト以上の評価をしてはいけない人物でしょう。彼が「ヒトラーを暗殺すれば事態が好転しうる」となぜ判断できたのか、まったくわかりません。また、当時田舎町で映画を公開したら、持ち込んだのが誰であってもみんな熱狂したに決まっています。それをおぞましい全体主義の発露のように見据える主人公の姿は、もっとおぞましいです。

 ただ、それでも後者の方が優れた作品だと思います。
 前者は、中盤から終盤にかけて、「実は○○でした!」「実は○○でした!」主人公「そ、そんなバカな……うわぁぁぁ!」というわざとらしく不快な描写で、魅力的な主人公をどん底に突き落とす、というバカをやっちゃうんです。
 「それでもボクはやってない」の感想で、「真実と事実は異なる。裁判にかけて、勝った方の言い分が事実である」と書きましたが、本作は「なかったことにされているアウシュビッツ問題を事実にする」、という内容の物語のはずです。
 それに愁嘆場なんて付加したら、ただ感傷を呼びたいフィクションに……ていうか、この題材に限っていえば、アウシュビッツ自体があのユダヤ人検事総長さんのしかけたプロパガンダ、って示唆しているようにも見えてくるんだけど、そういう解釈されてもえぇの?

 一方で後者は、終盤に一気に視点を変え、監督の前作「ヒトラー最期の12日間」で「人間くさいヒトラー」を描いたごとくに、最後に「人間」を描きます。
 見た後であわてて調べました。あの展開、史実なんですね。ドイツの観衆にとってはこの結末は常識で、それに至るまでの物語、という認識で見直すと、違ったものがみえるのかもしれません。


ロシアン・スナイパー
[70点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 アメスパに対抗して作られた(?)第二次大戦時に実在しナチスドイツ兵を300人以上撃ったソ連の女性スナイパー、リュドミラ・パヴリチェンコの足跡を描くロシア製戦争映画。制作時期から言って、クリミア半島は俺らのもんだ! というロシアの意地もあるのかも。
 ロシアらしく、戦争を重苦しくもドライに描く描写は僕好みですが、物語は、人類史でトップクラスに「強い女」が、「誰を愛し誰に愛されたいと願ったか」というラブロマンスが中心だったりします。そこらへん、日本のマンガやアニメにおける「強い女」なんてメじゃないです。
 あと、とても穏やかに見えて全然ハッピーエンドじゃない、強烈に米ソ関係を皮肉るラストシーンが笑えます。あの二人、全然理解し合ってなんかねーじゃん!


ミケランジェロ・プロジェクト
[40点]
@TOHOシネマズシャンテ
 主演のジョージ・クルーニーが監督も務めている作品ですが、とにかく作劇がひどいです。
 キャラがまともに立ちきらず、誰が登場したかさえよくつかめないうちに、プロジェクトのメンバーの行動が分散してしまいます。誰が何をしているのか、まったくわかりません。
 しかも個々のイベントは、起きたできごとをきちんと説明せず、次のイベントとのつながりもはっきりさせない、無駄に散文調で中途半端なものばかり。
 さらに、コメディにするにはナイーブすぎる題材をコメディ調にしたわりに、くすりとも笑えないのは、もはや「ぶざま」の域。歯医者のシーンなんか、笑いを取りに来てるつもりのようですが、イライラしてぶん殴りたくなりました。

 終盤、ジョージ・クルーニーが、ナチスの大佐を前にしてカッコいいセリフを言うシーンがあるんですが、ほんとに「言うだけ」であることにぞっとします。その大佐は、その言葉に何も反応しませんし、そもそも彼は物語上で何もしてませんし、その後まったく登場しません。「ナチス兵は存在自体が邪悪」、という認識のもと、見せ場を作るためだけに用意されたキャラです。
 そんでラストシーン! 30年後に時間が飛ぶんですが、登場して締めのセリフを言うのが誰なのかまったくわかりません。エンドロールで、「Old Stokes / Nick Clooney」とクレジットされてようやくわかりました。あぁ、「30年後の自分」を「自分の父親」に演じさせたわけね。 ……単なる私物化じゃねーか!



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posted by アッシュ at 16:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする