2015年12月22日

独裁者と小さな孫

[70点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 亡命したイラン人監督がジョージア(旧称グルジア)で作った、政権を追われた独裁者とその孫の逃避行を描いた作品。

 中盤、釈放された政治犯たちと合流するまでは、ピリッとしません。というのは、この作品、主人公がいかにして独裁者になったか、独裁者としてどんな非道をしたか、「それを受けた側の発言」以外に具体的に描写しないのです。主人公目線に立てば、「戦争のせいですってんてんになった世間知らずの富豪」でも同じ話になりそうなのに、周囲はただただ「独裁者と呼ばれる人間は必ず悪い奴」というレッテルをベッタリ貼って、ストーリーを進めてしまいます。正直不快でなりませんでした。
 でもそれは、自分が日本人だからなんだ、と気づきました。これを見るであろうジョージアの、あるいはヨーロッパ各地の観客には、リアルで見てきた「独裁者」がいるわけで、そのイメージに重ねてくれればいい、という作りなのだと思います。

 ラスト10分は圧巻。結局のところ感情でしか動けないあの烏合の衆をまとめるには、やっぱり強圧的な力が必要なのであり、同時にそのゆきどころのない感情を作り出したのも力であったわけで、どうしようもなく答えの出ない結末が苦いです。

 (うん、そういう意味では、本当に日本は平和なわけでねぇ……純粋に「知識」「理屈」「有権者の票」を固めれば「戦える」国のはずなんだけどねぇ……それを放棄した人間ばかりがでかい声を出して、その声に酔って「何か変えられる」って期待する連中はなんなんだろう……その先にはカリスマ押し立てての暴力革命しかない、ってことが見えてないのか、見えててあえて[それに行き着くのを期待して、それが楽しみで]やってるのか)



なぜ独裁はなくならないのか―世界の動きと独裁者インタビュー -
なぜ独裁はなくならないのか―世界の動きと独裁者インタビュー
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2015年12月21日

短評(スペクター/ハイスピード/WUG2/スヌーピー)


 時間がないので超短評で。
 スターウォーズは地上波でやるの見てから。なので来年回しです。
 JJエイブラムスが、僕が感動するような作品を作るとは思わないので、年間ベスト/ワーストに影響はないでしょう。たぶん。


007 -スペクター-
[75点]
@109シネマズ二子玉川
 前作スカイフォールが変に文芸調?にいってしまった反動か、おそろしく様式美な内容だったと思います。これぞ007シリーズ。もはやイングランド歌舞伎。


ハイ☆スピード! -Free! Starting Days-
[55点]
@チネチッタ
 内容より、テレビ版監督の内海紘子と本作監督の武本康弘との目線の違い、特に「学校」という空間の扱いの違いが面白いです。「隙あらば女生徒が画面内にいる」武本氏の作劇を、たぶんターゲットたる腐女子のみなさんは誰も望んでいなかったと思いますが。


Wake up Girls! -Beyond the Bottom-
[50点]
@TOHOシネマズ川崎
 前作。
 終盤一気に盛り上げての、クライマックスのライブシーンは、この作品にしては中途半端な感じがなく、短時間なりにすばらしいものを見せてくれるんですが、それ以外は……あらゆる意味で「足りてない」。
 現実には尺や予算なんでしょうけど、どちらかというと、スタッフが「力尽きた」とか「心が折れた」とか形容したくなる不足で……。一瞬で終わる予選とか、唐突に心変わりするななみんエピソードとか、別の意味で涙なくしては見られない……。
 決して嫌いな作品ではないです。最後まで一生懸命だった彼女たちと、がんばったスタッフのみなさま、本当にお疲れ様でした。


I Love スヌーピー -ピーナッツ ザ ムービー-
[55点]
@TOHOシネマズ渋谷
 原作に忠実に丁寧に子供に愛されるように、という方針は、残念ながらもはや現代の物語としてはつかみづらく、人生訓的な読み物としても機能不全を起こしていたように思います。
 また、時代背景が古いうえに文化的な差異がほぼ無説明で、日本でこれが子供向けといえるかどうか。「パートナーと組んで読書感想文を書く」とか、子供たちには意味不明だったろうなぁ。まぁ、TOHOシネマズによる去年からのゴリ押しに、鈴木福と芦田愛菜でカップル、なんて組み合わせの時点で、日本の関係者の認識は推して知るべし。




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2015年12月10日

短評(コンテンダー/紅殻のパンドラ/アウターマン)


 スター・ウォーズが盛り上がってる印象がなくて、このままだと、スクリーン比からいくと軽く爆死な予感。
 妖怪ウォッチのブームが去年くらい残っていたら……、スター・ウォーズがアニメに負けるという記録的な事態を見られたのかもしれないなぁとか思ってます。

 (12/21追記・週末動員、妖怪ウォッチが1位? マジで?!


コンテンダー
[50点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 今回のニコラス・ケイジは、ルイジアナ州で黒人票を得て下院議員になり、油田事故処理で貧しい漁民の補償のため奔走する政治家。スキャンダルを起こして辞職するハメになったところからの失地回復の物語……ってことで、社会派ニコケイにわりと期待していたのですが。
 主人公が最後の選択に至る決め手が、政治の駆け引きも人種問題も関係なく「プライベートがごたついたから」というのはいくらなんでも……誰がこのシナリオを面白いと思ったんでしょうか。
 あと、原題が「Runner」というわかりやすい英語なのに、邦題でわかりにくくかつキャッチーでもない単語にした意味がわからない。原題は、そうして「何もかもから逃げ出したらあぁなった」って意味も含んでると思うんだけど、Contend じゃ意味通らないじゃん。


紅殻のパンドラ
[40点]
@角川シネマ新宿
 一言で、「1話切り」。来年1月期のアニメはすぐ切れるのが少なかったので、時間の無駄が最小限で済んで助かりました。
 攻殻機動隊から切り離され、「六道神士寄り」になってるのは十分理解したけど、それにしたって演出のセンスが緩くて古い。どれくらい古いかというと、これが「エクセルサーガ」の後番組ですと三石琴乃に高速次回予告で言ってもらえれば許せる、てくらい。……いつの話だよ!


アウターマン
[55点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 長年シリーズ化してる特撮ヒーロー(要はウルトラマン)が実在ししかも実は侵略者で、いつも負けてる悪役宇宙人(要はバルタン星人)が立ち向かう……という内容にちょっと心惹かれるものがあり、普段は見ない河崎実映画にトライ。「いかレスラー」以来じゃないかな。(地球防衛未亡人を見ようと思って忘れてたんだよなぁ)

 覚悟していた以上に映像は安っぽかったですが、バトルシーンは、彼の原点であろう懐かしの特撮テイストを、低予算なりに丁寧に模しており好感触。饒舌な説明がなくともキャラ同士のかみ合わせできちんと伝わってくる、泣かせあり成長ありの物語には現代批判も込められていて、わりと面白かったなぁと感じる……のは、序盤のモキュメンタリーっぽい作りが目を開けているのも苦痛なほどヒドイ出来だったことの揺り戻しのような気がするんですが、まあ、河崎実なので、これはこれでで評価すべきか。



いかレスラー [DVD] -
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2015年12月07日

短評(亜人1/ガルパン/たまゆら3)


 ヒューマントラストシネマ渋谷で「国際理系映画祭」ってイベントやるんですけど、全然理系じゃないじゃん、と落胆してます。博士と彼女のセオリーはラブロマンスで、ゼロの未来はブラック企業をファンタジー化しただけですがな。
 つーか、「すべてはFになる」が主なら、そこで選択すべきは、絶対「イミテーション・ゲーム」でしょうが!


亜人 -衝動-
[65点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 物語の登場人物としては「感情の見せ方」が変化球なタイプのキャラが主人公で、その心情変化自体が面白そうな感じなのに、単なるホラー的な導入で亜人化してしまうため、うまく入り込めず。「田中」の過去を先に描いて、「亜人は本来どういう存在なのか、どんな目に遭うのか」をはっきりさせた上で本題に入るべきでした。そのあたり、構成が最適ではなかった印象です。

 とはいえ、「シドニアの騎士」のポリゴンピクチュアズが送り出す3D映像は、特に「別種」のバトルシーンの凄みはちょっと別格。今後はこういうのが主流になっていくんだろうなぁ。


ガールズ&パンツァー 劇場版
[75点]
@シネマサンシャイン池袋
 屋上屋を架すという言葉があります。あまりいい意味ではありませんし、他の多くのアニメ劇場版はだいたいその意味のとおりの結果になります。しかし、屋上屋を架しまくって五重塔になるまで築き上げて、これ文化なり文句あっか! と言い放つ、そこまで突っ走った作品といえましょう。クールジャパンの極致だと思うので、ぜひ海外に輸出していただきたいです。
 戦車戦が婦女のたしなみ、という、もともとが無茶にも程がある設定に、いかにしてさらなる無茶を押し込むか。戦車戦のフィールドが「遊園地跡」という時点で無茶なのに、画面に観覧車やジェットコースターが映った瞬間、「まさかそこまでは」と思うことがやっぱり起きてしまう無茶っぷり。水島努の本領発揮でしょう。

 また、まったくもってとってつけたストーリーしかない内容ながら、町を破壊し尽くされる大洗町民が劇中でもリアルでも歓喜するように、これは「ゴジラ」を失った日本人が新たに見出した新次元のカタストロフ娯楽ですので、同じパターンの繰り返しで各地をぶっ壊しつつ、あと5、6本作っちゃっていいと思います。


たまゆら 〜卒業写真〜 第3部 憧 -あこがれ-
[60点]
@新宿ピカデリー
 前半の麻音まとめ回と、後半のぽってまとめ回との落差がひどく、微妙。
 前半は、その結論に至るには無理筋の展開、「夢」連呼の醜悪なセリフ回し、そして崩壊作画と、「平野文キャラが古川登志夫キャラに怒りの電撃出す」サービスシーン以外は壊滅的です。
 翻って後半は、ぽっての感じる不安を、いつものカメラを手放す身近なところから物語全体へとうまく広げていて好感触。友達との距離が遠く感じてしまうのは、彼女の世界そのものが広がったからなんだけど、まだ気づけないってことでしょうねぇ。



ガールズ&パンツァー 劇場版 オリジナルサウンドトラック - ARRAY(0xdffce50)
ガールズ&パンツァー 劇場版 オリジナルサウンドトラック
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2015年12月03日

ハッピーエンドの選び方

[80点]@チネチッタ

 舞台は高級老人ホーム。夫婦でホームに住まう元機械技師の主人公は、寝たきりの親友を見かねて秘密裏に「安楽死装置」を製作、望み通り永眠させるが、その噂はホーム中に広まってしまう。一方で主人公の妻は認知症を患い、次第に悪化していき……という内容のコメディ。
 ……冗談でも何でもなく、この内容で超笑えるコメディ

 これ、今年ベストかも。どうしよう。
 またかよ! おまえ老人映画好きだな! と言われそうだけど、ちょっとこれは、「傑作」とか「面白い」より先にヤバい・シャレになってない
 「泣いて笑って」という喜劇映画の常套句がありますが、この作品における「泣いて」は感傷的な何かではなく、老いが、病が、死別が、本当に辛く悲しくて涙がこぼれるのです。それでも「泣いて笑って」を、生命倫理ギリギリの線で成立させた、こんな「背筋に寒気が走るコメディ」を、僕は他に知りません。まったく新しい感覚だわ、コレ。

 なんと、「イスラエル」の映画。
 高齢化社会の悩みを持つ先進国なら、どこでもこういう「暴発」を起こしてよさそうなのに、他の国でなくイスラエル映画なのは、彼らがユダヤ教だからでしょうか。
 個人の倫理観において許容できない人もいそうだけど、終末医療とか認知症とかの、先行き必ず向かい合わねばならぬ事柄に真摯に取り組んだ作品に興味のある向きは……そうね、日本なら「明日の記憶」を見て思うところあった人なんかは、本作も是非。

 といっても、僕はこの手の作品を誉めるとき「実際にその世代の人が見たら」がどうとか書くけれど、本作に限っていえば、その世代の人にはちょっと実感がありすぎるように思えます。しかもそこに老い・生死をネタにしたジョークをガンガンぶっこんで笑いを取りにくる胆力に触れるのは、ブラック通り越して軽くホラーなんじゃないでしょうか。
 白バイのあんちゃんのシーンなんか、もはや「笑ってはいけない24時」な気分。絶対笑っていいタイミングじゃない。でも笑わなきゃしょうがない。


 惜しいのはラスト。「そこ」で終わることは中盤あたりからわかってくるので、もう少し厚みを持たせてくれてもよかった気がします。かの面々がその後どうなるのか(先生とその彼氏との関係やいかに?)、キャラが魅力的だけにもっと知りたかった。

 あと、この作品が「ハッピー」だといって宣伝している連中の正気は疑っていいと思います。



明日の記憶 [DVD] -
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posted by アッシュ at 16:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする