2016年03月24日

アーロと少年


 なんか TAAF がえらいことになってるらしいけど、大丈夫か……。


[80点]@チネチッタ

 ……なんかすげぇもん見た。

 いやね、序盤と終盤だけ切り取ったら、どこにでもある「勇気!」「家族!」なアメリカ映画です。それも、かなりトラウマ級のイベントを放り込んでくる、これホントに子供に見せていいの? 的な。
 すごくオリジナルな発想に見える「恐竜と人間の組み合わせ」にも、ほとんど意味はありません。「人間と犬」でもほぼ同じ話にできるでしょう。ぶっちゃけ、はじめのうちはつまんなくて、短編アニメの「僕のスーパーチーム」の方が面白いんじゃないかと思ったくらい(これガチ傑作! というか、この題材を世界規模の公開に組み込む勇気!)。

 しかし、話が進むにつれ、本作が何をしたいのかが、だんだん見えてきます。
 本作には、ここまで来たか! と思うくらい、実写と変わらぬ超写実的な背景映像が使われています。それにいかにもカートゥーンな、常時骨折してるみたく見えるデフォルメ恐竜が乗っかっているのはいささか奇妙滑稽ではあるのですが、ともあれ、その壮麗な背景で、おそらく現代ではアメリカでも撮り辛くなっているであろう、「大自然ロードムービーやろうぜ!」が本作の趣向です。
 ……うーん、それはどう考えてもイマドキ子供向けじゃないのが、この作品の辛いところですが。

 アーロと少年が大自然の中に放り出され、ぶつかり翻弄され手を携え、心を通わせていく。それも、「少年」は意味のあるセリフを発しませんので、ただただ映像でもって表現されます。それだけの内容が、なんとも沁みるし、なんかとにかくスゴかった。圧倒された。
 ホントに、「言葉で説明できない」という感想は、この作品ならば許してもらえると思う。つーか、言葉で説明すると、最初に述べたとおり「どこにでもある映画」になっちゃう。「感じる」タイプの作品だと思うのです。

 どうも世間的にはあんまり評価されてない感じで、本命は次の「ズートピア」みたいな扱われ方をしている印象ですが、僕は好きですコレ。



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posted by アッシュ at 17:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月20日

マジカル・ガール

[60点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 年に四ヶ月は日本にいるという日本ヲタのスペイン人、カルロス・ベルムト監督の長編デビュー作。だそうで。

 アニメの魔法少女に憧れる病弱な少女の願いをかなえたい……というイノセントなきっかけから、とんでもない方向へ話が転がっていくサスペンス。マジカルってそっちかよ、と。
 その意気やよし、と言いたいところなのだけれど、どうやら撮影スタイルはアニメではなく、古い日本映画を範にしているとみえて、ガッチガチの固定カメラで超スローテンポに話を進めていくので、サスペンスとしては(ましてスペイン人が作ったと考えると)かなりキツいです。
 それで話が鮮烈ならよいのですが、発生する犯罪の構造とか、先生とバルバラの関係とか、思わせぶりに引っ張ったわりには興味を惹かれなかったのが正直なところ。過去に何があったのか明確にしなかったことに、あまり意味も感じませんし……。

 ただ監督さん、インタビューでは「ドラゴンボール」や「ナルト」のファンとか答えてるみたいだけど、この作品に最も影響を与えてるアニメは絶対「まどか☆マギカ」。
 ああいうのが海外から見てアイコンになるってのも、善し悪しやねぇ。



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posted by アッシュ at 03:14| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月14日

マネー・ショート -華麗なる大逆転-

[80点]@チネチッタ

 破壊屋さんの誰映2015の結果発表ですね!



 さて。

 自分は2005年から投資を始め、知識もあまりないままに、本作で示される状況に突っ込み、ぶっちゃけ大損こきました。
 ならば知識をつければいいのか、というとそれも違って、「個人の予想できる範疇で値が動くことなど絶対にありえない」という理解に至っています。今は決まったパターンでしか売り買いしません。

 相場とは、経済学ではなく群集心理で動きます。カオスな生き物です。
 本作に示されるように、経済指標において明らかにマイナスな情報が出回っても、相場はプラスになるような、因果関係の成立しない現象が当たり前に生じます。

 本作は2006年〜2008年の期間を描いてますが、僕の記憶にある限り、サブプライムローンがヤバイ、いつ崩壊するかわからん、というのは2007年頃にはある程度、一般投資家に流布してました。

 ところが、カネというのは、一部がヘタレても「逃げ出す」ができます。そうすると、別のところで「見かけだけの活況」が起き、それを見て、経済学者やアナリストたちは、「ほら活況ですよ」と言い募り、「全体がヤバイ」情報は捨て置かれます。
 本作では、「最初期に仕掛けた人」「最終的に大勝ちした人」しか取り上げないわけだけど、早い段階で、できる範囲で「破綻」に張った投資家は山ほどおるんですよ。しかし本質的にヤバい状況がいつまでもダラダラと続く中、正しく時流を見越していた人々が、本作で言えば CDS の保険金に耐えきれない状況に陥って、次々に敗者としてこぼれ落ちていったのが現実でしょう。

 結局、カタストロフが起きるまで止まらないのです。ていうか、「起きても止まらない」が正しい。彼らは誰も責任を取らない。税金ジャブジャブ突っ込むか現金ジャブジャブ刷って今ある金銭の価値を薄める=インフレ以外の対処を、彼らは認めません。自分の身を削るなんて脳みその片鱗にすら存在しない。
 経済学とは、過去の動きにいかにして後追いで理屈をつけるか、という学問であり、決してよき未来を願っていない。僕はもう、そう諦観してます。



 ちゅうことで、映画のほうなんですけど。
 あの当時、市場がどういう挙動をしていたか、把握していない方にはかなり辛い内容のような気はしますが、逆にわかってるともう、なんか胃が痛い。この胃に穴が開きそうな感覚は「エンロン」見たときに近いな。

 この作品が上手いのは、序盤から、「いかにもデキの悪い、人を煙に巻くタイプのドキュメンタリー、みたいな映像演出」を頻出させることです。
 正直、これヤバイんじゃね? と思ったのですが、次第に、あの時期の狂騒をユーモアのオブラートに包んで描く狙いが見えてきます。そうでなきゃ、「金融用語をマーゴット・ロビーがバスルームで解説」みたいな、人を食った演出するわけがない。

 描かれた勝者の陰に、どれだけの敗北者がいるのか。作品内でブラピが指摘するように、どれだけ一般市民に押しつけられたのか。そこに思いを致すと、本当に絶望しかない物語なのです。
 けれど、勝者の歓喜と世界の絶望、恐怖と隣り合わせの好奇心と欲望、そのあたりのさじ加減が絶妙で、先ほど書いた胃の痛さをエンタメに昇華して、実におもしろく仕上がっていると思います。



 ところで、直近の経済状況。
 「株を買ってください。売らないでください」と金融庁長官クラスの幹部官僚が直接保有者に懇願するような中国の株式市場が、まだ普通に売買成立してる、というホラーな状況がありますよ。
 どうなるんでしょうね。怖い怖い。

 あと、これも酷い邦題なんですよね。
 ここでも指摘されてるけど、これだと金融用語としては「資金枯渇」のニュアンスになり、題材と全然意味合いが違ってきます。



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posted by アッシュ at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月09日

IMAX栄枯盛衰


 ……このニュースに、なんともいえない気分になったのは僕だけでしょうか。

 品川プリンスシネマが Tジョイ系になる、というのもひとつ感慨深いわけですが……。
 あそこは、都心で最後まで「従来の」IMAX シアターでがんばってたとこでもあるわけでさ。
 新技術キター! 大迫力キター! と鳴り物入りで導入されたにもかかわらず、まったくぱっとしなかった当時の IMAX。その跡地を、ずっとシアター ZERO っつって無駄に維持してたわけで。
 それが復活ですよ。他に使い道もなかったのだろうけど、もしかして「IMAX は必ずまた脚光を浴びる!」みたいな意地もあったんかなぁと。
posted by アッシュ at 17:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月02日

ヘイトフル・エイト

[65点]@丸の内ピカデリー

 率直な感想。……この内容で167分は長ェよ! タランティーノ監督にそれを言うても無理筋なのはわかるけど、それでも、序盤1時間くらいは「情報の提示」しかしなくって、本筋である8人揃って丁々発止、になるまでに、寝落ちするレベルで時間かかり過ぎなのは辛い。
 遠回りするにしても、もう少しメリハリや緊張感のある作劇をする人だと思うのですが……。最後の銃撃戦だけぐわーっとアガるけど、それ以外の中身はない、みたいな、一昔前の西部劇の悪いところもそのままやっちゃった、てことかな。

 だから中盤以降、ワルどもがゲタゲタ嗤い合う展開になってくると、加速度的に面白くなるんだけどね!
 白人黒人メキシコ人、南軍北軍、法を執行する側される側が、クソミソに絡んでヘイトし合って、どのセリフがホントでどれがウソかわかんない世界をくんずほぐれつ、みたいな。実に醜い現代アメリカの縮図のメタファーですな。
 そんな世界で、やっぱり虚実はわからないままに、一筋の光として、「リンカーンの手紙」がきっちり居場所を作ってる。

 ヘイトスピーチがどうこうわめき合ってる人たちは、ぜひ見てください。そして「善人はみんな井戸の中」って現実を自分から作ろうとしていないか、よく考えるこった。



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posted by アッシュ at 17:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする