2016年03月14日

マネー・ショート -華麗なる大逆転-

[80点]@チネチッタ

 破壊屋さんの誰映2015の結果発表ですね!



 さて。

 自分は2005年から投資を始め、知識もあまりないままに、本作で示される状況に突っ込み、ぶっちゃけ大損こきました。
 ならば知識をつければいいのか、というとそれも違って、「個人の予想できる範疇で値が動くことなど絶対にありえない」という理解に至っています。今は決まったパターンでしか売り買いしません。

 相場とは、経済学ではなく群集心理で動きます。カオスな生き物です。
 本作に示されるように、経済指標において明らかにマイナスな情報が出回っても、相場はプラスになるような、因果関係の成立しない現象が当たり前に生じます。

 本作は2006年〜2008年の期間を描いてますが、僕の記憶にある限り、サブプライムローンがヤバイ、いつ崩壊するかわからん、というのは2007年頃にはある程度、一般投資家に流布してました。

 ところが、カネというのは、一部がヘタレても「逃げ出す」ができます。そうすると、別のところで「見かけだけの活況」が起き、それを見て、経済学者やアナリストたちは、「ほら活況ですよ」と言い募り、「全体がヤバイ」情報は捨て置かれます。
 本作では、「最初期に仕掛けた人」「最終的に大勝ちした人」しか取り上げないわけだけど、早い段階で、できる範囲で「破綻」に張った投資家は山ほどおるんですよ。しかし本質的にヤバい状況がいつまでもダラダラと続く中、正しく時流を見越していた人々が、本作で言えば CDS の保険金に耐えきれない状況に陥って、次々に敗者としてこぼれ落ちていったのが現実でしょう。

 結局、カタストロフが起きるまで止まらないのです。ていうか、「起きても止まらない」が正しい。彼らは誰も責任を取らない。税金ジャブジャブ突っ込むか現金ジャブジャブ刷って今ある金銭の価値を薄める=インフレ以外の対処を、彼らは認めません。自分の身を削るなんて脳みその片鱗にすら存在しない。
 経済学とは、過去の動きにいかにして後追いで理屈をつけるか、という学問であり、決してよき未来を願っていない。僕はもう、そう諦観してます。



 ちゅうことで、映画のほうなんですけど。
 あの当時、市場がどういう挙動をしていたか、把握していない方にはかなり辛い内容のような気はしますが、逆にわかってるともう、なんか胃が痛い。この胃に穴が開きそうな感覚は「エンロン」見たときに近いな。

 この作品が上手いのは、序盤から、「いかにもデキの悪い、人を煙に巻くタイプのドキュメンタリー、みたいな映像演出」を頻出させることです。
 正直、これヤバイんじゃね? と思ったのですが、次第に、あの時期の狂騒をユーモアのオブラートに包んで描く狙いが見えてきます。そうでなきゃ、「金融用語をマーゴット・ロビーがバスルームで解説」みたいな、人を食った演出するわけがない。

 描かれた勝者の陰に、どれだけの敗北者がいるのか。作品内でブラピが指摘するように、どれだけ一般市民に押しつけられたのか。そこに思いを致すと、本当に絶望しかない物語なのです。
 けれど、勝者の歓喜と世界の絶望、恐怖と隣り合わせの好奇心と欲望、そのあたりのさじ加減が絶妙で、先ほど書いた胃の痛さをエンタメに昇華して、実におもしろく仕上がっていると思います。



 ところで、直近の経済状況。
 「株を買ってください。売らないでください」と金融庁長官クラスの幹部官僚が直接保有者に懇願するような中国の株式市場が、まだ普通に売買成立してる、というホラーな状況がありますよ。
 どうなるんでしょうね。怖い怖い。

 あと、これも酷い邦題なんですよね。
 ここでも指摘されてるけど、これだと金融用語としては「資金枯渇」のニュアンスになり、題材と全然意味合いが違ってきます。



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posted by アッシュ at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする