2016年05月25日

シンドバッド

[55点]@TジョイPRINCE品川(旧品川プリンスシネマ)

 うわぁぁぁ超もったいねぇぇぇ
 ラピュタ級のポテンシャルがある作品なのに! これが完成型とは!
 やっぱり宮下新平監督が亡くなったことは、致命的な痛手だったんだろうな……。トワノクオンもそうだったけど、せっかくのオリジナルシリーズがこういう不幸に見舞われるとやっぱ辛いやね……。
 本作はいくらでも言い訳してくれて構わないので、ぜひリベンジしていただきたく。

 第一部第二部
 今回、「第三部」の公開であるはずが、前半に第一部第二部のダイジェストを置いてまとめた、2時間の作品として公開されました。第三部単体だと、これまでの不入りに合わせた観客数しか見込めない、が理由かと思ったのですが、実際見てみてわかりました。最大の理由は別にあります。
 第二部の感想で「微妙、間延びしている」と書きました。しかし今回、いわば「第三部前半」として挿入された、サナの過去回想&「ランプの謎が解ける」の部分が、本来は「第二部終盤」だったとするとすごくスッキリするのです。各章いずれも「サナの立ち位置が変化する」で幕を閉じることになるから。
 おそらく、監督急逝の影響で制作体制が混乱、第二部は「制作可能な部分だけ」で体裁を整えるしかなかった。本来は編集でカットすべき冗長な部分も、全部入れ込んだ状態で公開せざるを得なかったのでしょう。

 そしてその影響が続いたか、先に進むほど見せ方が平板でうまくない印象(アニメーションの面白さは、最初のじゅうたん空中戦がピークと言うしかない)。結末に至っては、「第三部終盤」になるはずの部分がほぼセリフなしのダイジェストという有様に……。
 「サナとシンドバッドの関係」だけはどうにか整えた(ベタな演出だけど、「サナ>シンドバッドだった身長が、ラストでは同じ高さに並んでいる」はグッときた)ものの、他はかなりお粗末。
 特に、現代的でうまく作りこまれた悪役、ガリプの結末に、伏線も説明もないのは本当にもったいない。ていうか、あれだと「サナの魔力が途切れたから砂嵐を防御できなかった」という見方になりそうなんだけど、物語的には、「砂嵐の予兆の情報はあったが、『自分に都合のいい情報しか見なかったので』適切に対処できなかった」の方が因果応報なわけで、彼に本来はどういう結末を用意していたのか、すごく気になりますね。

 あと、シンドバッドの父親母親ともに魔法族とは結局無関係、ていうのが意外。ここも本当は何か入れるつもりだった気がして、その上でただ「帰る」というラストに、これまたもったいない感があふれるのです。


 それでも、意欲的なオリジナルアニメーションには違いないので、コレを単なる「失敗作」としてしまわないためにも、皆様にはぜひ劇場へ足を運んでいただきたく。Tジョイ品川、2週目にして朝一回の公開になってしまいましたが……。

 特に、ブラック企業にお勤めの方にオススメ。憎めない悪役ダールさんの、
 現場の人間なめんなー!」からの華麗なる転職成功にぜひ溜飲を下げてください。



シンドバッド 魔法のランプと動く島 -
シンドバッド 魔法のランプと動く島
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2016年05月24日

HK 変態仮面 -アブノーマル・クライシス-

[75点]@TOHOシネマズ川崎

 誰だ福田雄一にこんなにも予算を与えたのは!
 面白ぇじゃねーか!


 いやー、VFXにどんだけかけたんだコレ。CGの量が当社比300%くらいいってんじゃないの? それゆえ前作以上にアホが極まった、ツボ押さえまくりの良い「実写化」。
 福田雄一監督にやりたい放題やらせると、こういうことになるんだなぁ、と。予算安ければ安いなりに安いものを面白がって撮っちゃう人なので勘違いされがちだけど、以前「バクマン。」で書いた、邦画の生き残りに必要な「マンガ表現」のセンスが、独自かつパワフルな人なので、もっと「安くないもの」を撮らせてみてほしいと切に願います。

<追記 6/30>
 ……とか言ってたら「銀魂」に福田雄一かよぉぉぉぉぉ!



 いや、安いっていや、安いんですよ。どうしようもないシーンはいつもどおり山ほどあるし、「パロディだけやん、こんなん」とか言われたら返す言葉がないのも事実です。
 でもさ。
 いつもの尺稼ぎチックなムロツヨシの顔芸に、「メカニカルカニ歩き」が付加されるだけで、どんだけ破壊力が増すかッつー話よ。
 「主人公がニューヨークに行く」シーンがあるんだけど、福田雄一がニューヨークロケなんてやるわけないから、こちらは「どうやってごまかすんだろう……あー、やっぱごまかしたー、これのどこがニューヨークやねんケラケラケラ」と笑ったとたんにブッ込まれるあの衝撃よ!
 精神性最底辺レベルの下ネタコメディに「手のひらの上で転がされる」を味わわされる屈辱。くっくやしい! ビクンビクン

 この勢いの中核にいる鈴木亮平の筋肉美そしてマジっぷりは相変わらずすばらしい。柳楽優弥も見事に乗っかってアホをやらかしている。カンヌ俳優がカブリモノとか、今のカンヌの審査員が見たらきっと卒倒するだろうが、いいぞもっとやれ。


 だがこれだけは苦言を呈する!
 前回も書いたはずだぞ!
 最後の「脱いでからかぶる」はワンカットで撮れと!
 ていうか今回の場合、「そのまままたがってコスリつける」でよいではないか、何を生ぬるいことをしておるのか!

 ……へ、変態だー!



HK/変態仮面 -
HK/変態仮面
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2016年05月18日

ちはやふる -下の句-

[75点]@ヒューマントラストシネマ渋谷

 スゴイぞこれ。昨今の「邦画はor実写化はダメ」論争に一石を投じる問題作たりうると思う。邦画が「ダメな実写化」を作り続けた果てに「バクマン。」やコレができたのなら、決して無駄ではなかったのだ。

 映画に限らず日本の若者向け創作物に蔓延する「仲間」の連呼。かるたという題材の魅力を何一つ説明せず、代わりにテーマは全部セリフで説明。やたらと入る過去回想カットイン。ダメに思える部分がてんこ盛りだ。
 再撮影すべきミスを、たぶんスケジュールの都合で、セリフ調整だけでごまかしたとおぼしきヒドいシーンまである(しのぶちゃんが「着替える」シーンな)。

 でも面白いんだ。バクマン同様、「何を描くか」に迷いがない。

 上の句の感想で書いたとおり、本作はキャラ揃えた時点で横綱相撲だった。
 そして、手垢がついてようとおかまいなく、「仲間の大切さ」にテーマを絞って寄り切った。盤石である。

 満を持して登場する、「ライバル」にして孤高の存在である、しのぶちゃんの扱いが鮮やか。
 「なぜ千早がかるたの実力者なのか」原作には理由はあるんだけど、本作ではかるたのテクニカルな部分はほとんど描かれない。ゆえに、「しのぶちゃんが最年少クイーンである」事実にまったく凄みがなく、彼女には「開き直ったボッチ」以上の存在意義がない。
 しかし「仲間」を描く作品ならば、それでいいのだ。見事に、千早と鏡の表裏の位置に在るよう描かれている。過去回想も、仲間のいる千早にはあるが、いないしのぶにはないのだ。明確で力強い対比。実にわかりやすい。

 セリフ説明が過剰になる部分も、上の句で明確に「説教くさいキャラ」として登場し、実質的に「唯一の大人」である國村隼がまとめとして言う分には、納得のいく範疇だろう。むしろ、ターゲットたる顧客層の物語リテラシーを考えれば、これだけですませたのは立派、とさえいえるかも。

 というわけで、先から「邦画はダメ」論争でガタガタ言ってた奴らは、とりあえず上の句下の句合わせて本作を見るように!



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2016年05月17日

短評(亜人2/WAT/赤塚不二夫)


亜人 -衝突-
[70点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 すげぇ。ちょっと唸った。
 この「すげぇ」は話の面白さの観点とは少し違います。いや、面白いんだけどさ。
 この作品はテレビシリーズの総集編映画で、前作はテレビ放送前に、「1話〜6話」まで編集した内容を公開したわけです。なら本作は放送済みの「7話〜13話」の総集編だと思うじゃん? 否。その先、+2話分くらい、一気に「総集」してしまう。加えて、テレビシリーズでは忘れられた友人キャラのエピソードも織り込むという盛り沢山。
 それで2時間? そりゃあ端折りすぎでしょ! と思うじゃん? それも否。ほとんど端折ってません。
 ほぼ同じシナリオからスタートし、「テンポ優先で徹底的に刈り込んだバージョン」が本作で、「いろいろ重みをつけて盛り込んだバージョン」がテレビシリーズと考えるべきでしょう。映画とテレビ企画が同時進行していたとはいっても、ここまで潔く切り分けたのは、正直、未体験ゾーン。
 物語創作に携わる人は、いちど見比べてみると面白いかも。


WAT 世界のアニメーションシアター
[75点]
@トリウッド
 久々にトリウッドで短編アニメーション集。<いろいろな愛を描くアニメーション><社会的視点を持つアニメーション>の、約1時間ずつ2プログラム。

 小規模製作のアニメーションも、テクノロジーの進化でだいぶすごいことになってきました、というのが味わえます。
 「ホワイトテープ」「ブラックテープ」の連作が、単なる技術ひけらかしで、元となった実写見せてもらったほうがなんぼかええんちゃうん、という印象を受けるほかは、いずれも「アニメでこそ」という題材、かつ、実にエンタメしていて、とてもクオリティが高く楽しいです。
 「ビトイーン・タイムス」でパン屋の髪型がくるくる変わる小ネタとか、「ギータ」のキレッキレの手描きアニメーションとか。「真逆のふたり」ではサカサマのパテマの二人が倦怠期を迎えた続編(違)を見ることができます。
 「Otto」は短編アニメーションにしておくのがもったいないアイディアなので長編で見てみたく、また、「アフガニスタン -戦場の友情-」の作者が次に作るというヒーローものが凄く見たい。

 で、見どころのひとつは、作品の上映前に流れる監督さんたちの自撮りメッセージで、これがみなさん「え? マジ? 日本で上映されるの? ひゃっほーい!」てな感じで、日本てやっぱこの人らには「聖地」なんやろなぁと微笑ましくなること請け合い。
 トリウッドは5/29まで。夜の上映は20日まで。


マンガをはみ出した男 赤塚不二夫
[50点]
@渋谷アップリンク
 ヘンリー・ダーガーダニエル・ジョンストンと同じパターン。題材となるアーティストがすごい人でも、語るドキュメンタリー映像作家が凡庸なので(何せ本作の監督はコレの人だ!)、思い出語りの映像記録としてはテンポよくて面白いけど、それ以上の意味はなし。
 突っ込んで欲しかったのは、彼のあのエキセントリックな感覚の源泉はどこか、て部分だのに、「満州が原風景」でバッサリ。同じ満州出身のちばてつやにも語らせといて、それでまとめちゃうんだぜ? なら「ちばてつやと赤塚不二夫の芸風の違い」はなんでスルーよ?(個人的には新潟時代や、「これでいいのだ!」がウケた社会背景とかも、もっと掘り下げて欲しかった)
 どうも、あまり深く考えてなくて、「これだとみんな納得するキレイなまとめだよね。あ〜、スッキリ!」って喜んでる感じがあるんだよな。赤塚不二夫にそういうスッキリ感、誰も求めてないと思うんだ。

 ……それにしてもアップリンク久々だった……何年ぶりだオイ……たぶん「火星人メルカーノ」以来。このブログ始める前です……。



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2016年05月15日

短評(追憶の森/フィフスウェイブ/シビルウォー)


追憶の森
[70点]
@TOHOシネマズシャンテ
 マシュー・マコノヒーと渡辺謙、2大俳優競演……と身構えて見ると、肩透かしを食らいます。脚本は「リミット」の人だそうです。気負わずに見る安いシチュエーションサスペンスと思うのが吉。
 日本の青木ヶ原樹海が舞台(といっても撮影はアパラチア山中らしい)。道に迷った自殺志願者2名が、なんやかんやで生きて脱出するためサバイバルするという筋書きなんですが、何しろその道中が、真剣にやってんのにそこはかとなくコントなんです。
 そもそも青木ヶ原行くのに新幹線で静岡で降りてるとこから始まって、祠という人工物があっても何も気づかないし、死体見つけたらまず剥ぐし、川を見つけて辿って下ろうぜって話した次のシーンでまた山に分け入ってるし、崖から落ちる瞬間とか完全に笑いを取りに来たよねアレ?
 しかし、おそらくは無神論者であろう主人公が、日本的なスピリチュアル展開に触れていく流れは、日本人としてちょっと面白かったですし、最後のオチを知ったうえでそうしたコントみたいな道中を思い返してみると、いろいろ腑に落ちて暖かい気分になり、見て良かったという感想に至るのです。

 でもあの奥さんの死に方はない。あれはコント。


フィフス・ウェイヴ
[55点]
@109シネマズ川崎
 なんか壮大なSF超大作っぽい宣伝、ディストピア・サバイバルな序盤とは裏腹に、「クロエ・モレッツが大人の階段登っちゃうんですぅ!」がメインプロットな、「ジュピター」に並ぶ、SFでトワイライトサーガやりましょう的な、スウィーツな作品。
 なので男子は、オハナシは一切忘れてオトナになったクロエさんを堪能しましょう。映像はそんなにエロくないけど、シチュエーションがエロい。フトモモだけで、こう、何かかきたてられるヨ!
 そして、「階段登っちゃった」を知って、本来彼氏ポジションにいたはずのベン君が「えーーーっ」て表情をする一瞬が大爆笑かつ最大のクライマックス。リンガーちゃんに慰めてもらえよ! 続編出るのかどうかしらんけど、あの娘デレたらチョー可愛い系のはずだから!


シビル・ウォー キャプテン・アメリカ 
[60点]
@TOHOシネマズ渋谷
 アントマンとスパイダーマンを加えて、オレの素人考えなんかお見通しな、アベンジャーズ同士組んずほぐれつバトルロイヤルは面白かったですが、……ぶっちゃけそこだけ。
 その状況を作るためだけに四苦八苦している物語は、2時間半もかけておきながら、ちっともアガらない。「キャプテンアメリカ」がタイトルという点を考えると(自分、キャップの他の作品見てないんだよね……)、アゲアゲにせぇというのはムリかもしれないけども。
 脳天気な新入り両名を加え、さらにはアイアンマンを「政府の手先」チックな役回りにして道楽者で自由人なイメージを台無しにするくらいなら、ハルクとソーはバランスブレイカーだから出さない、って判断を下したのと同様の割り切りで、物語をもっと狭く絞るべきだったんではないかと思えてならないです。



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2016年05月09日

ズートピア

[75点]@チネチッタ

 ……。
 見終わって、ものすごく贅沢な感想を抱いてます。
 完璧すぎてつまらない。

 「人種の坩堝」である不平等な社会を、うまく「動物」へ置き換え、差別とその克服をさりげなく明るく、相棒ものの古典的なフォーマットに的確に乗せながら描いて、それでいて古びていない意外性のある展開、ここぞというところで鮮やかに回収される伏線……。
 もうね、これが「初めて見るストーリー映画」の子供は、この先何を見ても面白く感じられないんじゃないか、てくらい完璧。

 でも、世界が完璧に作りこまれているならば、そこに生きるキャラや起きるできごとは不完全で不合理な部分が少なからず含まれるはずなのです。現実がそうであるように。この作品はそこも完璧なので、手応えが変です。リアルなのにリアルじゃない。

 あるいは、「動物を人間ぽくアニメーション」という点が完璧で、まるで実写映画のように作っているので、マダガスカル3みたいな「リアルを超越したド肝を抜くアニメーション」はこの作品にはないのです。

 ホント、贅沢な感想ではあるのだけれど、もう少しスキがあってこそ魅力的になりそうな、そんな作品だったように思えます。



 ……まぁ、本音を言えばね。
 絶対激萌えキャラだと思っていたジュディが、あんまり萌えなかったかなー、と……そう、何が完璧でスキがないって、この娘だよ!
 「生まれがマイノリティ」以外に弱点がなくってさ。それでいて、「マイノリティ」であることの壁はわりとあっさりクリアして、彼女が得る最大の挫折は「差別を乗り越えるために行動した結果、別の差別の加害者になった→弱者だと思ってたら強者だった」という点なので、誰かが支えて救う話じゃないわけで。
 ある意味非常に現代的で、この点も実にリアル。なのだけれど、萌えはしない。強気ガールは、ここぞというとこで弱みを見せてこそ萌えるのだ(セレスティーヌを見習え!)。そういう視点で見るほうが間違ってんのはわかってるけど、惜しい実に惜しい。



↓コレ、マジで気になる……録音可能時間がもう少し長けりゃ……。
ディズニー ズートピア 録音再生! ジュディのニンジン型レコーダーペン -
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2016年05月04日

短評(スポットライト/ルーム/響けユーフォニアム)


スポットライト -世紀のスクープ-
[75点]
@チネチッタ
 実にサスペンスフルな傑作。息つく間もなく見せるテンポのよさが素晴らしいですが、その内に、決して善や倫理だけでない、報道の裏や限界もさりげに織り交ぜているところがニクい。
 この作品で一番怖いのは、本当にアメリカ人は行動規範や人格の成立を宗教に頼ってるんだなぁ、という点。でも作中でも示されるとおり、神を完璧なよりどころと認知していても、それを取り扱うのが、教会という必ずしも完璧でない人間の組織であるという不一致。これが、社会にとっても個人にとってもすべてを破壊してしまいかねない爆弾となる異常性、しかしそれを正すのもまた人間……というアイロニー。


ルーム
[70点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「世界が広がる一瞬」は筆舌に尽くせない素晴らしさでしたが、その後の「世界の受容」については個人的にはあまりピンとこなくて、展開の遅さにイラつきすら感じました。が、たぶん作品のせいじゃないです。作品自体があまりに真摯でウソがない作りであるために、人の親でなくかつ欧米人でない自分には、投げ込まれた直球が受け止めきれないんだと思います。あれっくらいの「部屋」に住んじゃってるしな!

 ところで、これで「アカデミー賞主演女優賞」はないでしょ、子役のジェイコブくんを主演男優賞にするか共同受賞と銘打つべき。


劇場版 響け! ユーフォニアム -北宇治高校吹奏楽部へようこそ-
[70点]
@新宿ピカデリー
 テレビシリーズの総集編ですが、「前年度何があったか」の話をほぼばっさりカット、久美子と麗奈の関係だけに絞って再構築しており、やや掘り下げの甘い感もあるも、これ単体で成立するくらい盤石の仕上がりになっています。演奏部分も大幅にグレードアップして、劇場で聞けて良かったと思えます。二期も楽しみ!



響け!ユーフォニアム 1 [Blu-ray] -
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posted by アッシュ at 20:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月02日

モヒカン、故郷に帰る

[70点]@テアトル新宿

 邦画はダメだダメだと言われる中、ストーリーコメディ路線において、安定した打率を誇る沖田修一監督の新作。
 今回は「里帰りで家族ドタバタ」という、わりとありきたりなシチュエーションでどうなるかと思いましたが、ある意味いっそうキレが増してました。
 ひとつひとつはクスリニヤリていどの薄い笑いで、それぞれの笑いの取り方は従前の作品と比べるといまひとつの感はあるのですが、その薄皮が積み上がって厚みを増していくにつれ、僕らの世代特に地方出身者にとっては、ちょっとシャレにならないくらい重くて分厚い「現実」となってぶつかってくるのです。
 主役の松田龍平が、モヒカンのまま腹を据えるさまが、見た目おんなじなのに、ちゃんとカッコいい。モヒカンがピンと立っている。

 難を言えば、柄本明はもっと若い人がよかったんじゃないかなぁ。ダメ親父演技はもちろん素晴らしいんだけど、「えーちゃんに憧れた」というには老けすぎなのよね。あの夫婦からなぜモヒカンの息子ができあがって断末魔を叫び出したのかが、ちょっと腑に落ちないです。

 あと、本作は沖田監督渾身の「メシ演出」が炸裂するから刮目して見よ! 例によって食事シーンが何度も出てくるわけですが、「メシがまずそうなシーン」と「メシがうまそうなシーン」が明確に分かれています。そしてそれは、食事の種類やデキとは関係ないのです。

 ……ところで、千葉雄大がふりかけてるアレはなんだろうか。



南極料理人 [DVD] -
南極料理人 [DVD]
posted by アッシュ at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする