2016年06月15日

マネーモンスター

前半[75点]後半[35点]@TOHOシネマズ川崎

 いやぁ……なんと言おう。
 オレほんとジョージ・クルーニーと相性悪いな。「ゼロ・グラビティ」以外、当たりがない。

 ジョージ・クルーニーが司会を務める生放送の金融情報番組に、彼が推奨した銘柄の暴落にブチ切れた男が乱入、放送を継続しながらふたりの駆け引きが始まる……という導入は、傑作「テロ、ライブ」を彷彿とさせてひたすらアガったもんですが。
 面白かったのは「犯人の彼女の罵倒」により、どっちも人生で得たはずの何かの価値が吹っ飛んで、奇妙な協調が生まれるあたりまでかなー。

 そこから先、「真相」がヒドい。

 悪いのは脚本家か監督のジョディ・フォスターか製作のジョージ・クルーニー本人なのかわからんが、ダメなリベラルの典型で、批判したいものを感情論でしか理解せず、まるで勉強してないことだけはよくわかった(あるいは観客がそのレベルでしか見ないとたかをくくっている)。
 それではどんなに批判したって、ウォールストリートには「あぁ娯楽だねぇ」と鼻で笑われて終わりだ。こんなので溜飲を下げるから、いつまでも勝ち組負け組の構造が変わらないんだ。

 えーっと、問題となってるアイビスキャピタルは、アルゴリズムによる株の高速取引を売りにする「投機会社」なわけだ。株式の発行で資金調達、それをそのまま市場にぶっこみ、株売買益を配当として還元する仕組みだろう。
 ならば、この会社の価値は「アルゴリズムの信頼性」にあるはずだ。そこが投資対象だ。「アルゴリズムの誤動作で損失出しました」などと認めた瞬間に社運が尽きる。「原因不明」までついたらなおさらだ。この会社は、作品冒頭の時点で倒産するや否やの瀬戸際にある。
 ……という危機感が、あまり感じられないまま、まずはサスペンスが進む。ようやく主人公が、「暴落の原因を確かめよう」という方向に物語を誘導する。さぁ、ここからだ、となるわけだが。

 その上で「真相」があの通りであるならば、あのCEOは、馬鹿とか愚行とかそういう次元を超えている。やってること起きてることがあらかた理屈に合わず、どこからツッコんでいいのかわからない。
 あの「企み」は、天才にも馬鹿にも富豪にも貧者にも考えつかない。「どうにか話をまとめなくては」と追い詰められた作り手の頭の中以外では、絶対に成立しないロジックだ。そして彼らにとっての大前提は、「『アルゴリズムの誤動作』は、すべてを煙に巻ける無敵で魔法の言葉」なのだ。……ンなわけあるか!
 そんで、「金融アルゴリズム」を語るそばで、「ハッカーは万能、世界中の監視カメラにぜーんぶアクセスできてものの数分でなーんでもわかっちゃう! すげー!」な世界も確立されているという……。どういう思考回路があればこんな話が構築できるんだ……。狂ってる……。

 本作ではいちおう、民衆側の欲望や、すべてをネタ消費してフレームを起こす群集心理にもフォーカスしている。が、それらの点は、「テロ、ライブ」のようにスタジオ内だけで話を完結させるかに見せる手法が災いして、スタジオ外にある貧者の側の怒りや狂騒がよく伝わってこず、批判として成立しきっていない(3月6日に何が起きたのか、から始めるべきだったと思う)。
 それならそれで、POVっぽく作り込めば緊迫感だけは強まったはずなのに、あっちこっちフラフラするカメラのせいで魅力激減。特に、「警察の動き」を逐次描写するのは、語るべきテーマから乖離している。そのくせ、狙撃のチャンスなんぼでもあったのに実行しないし、犯人の素性はあっさり突き止めるわりに、「遠隔爆弾を手に入れるコネやスキルがあるか」は想像もしないし、総じてアホで邪魔。

 そしてラストシーンだ。
 お・ま・え・も詐欺の片棒担いだんじゃろがボケぇーーーっ! 何でちょっと幸せそうにしてんねん!
 ジョージ・クルーニーはあの世界ズッポリの「富める1%」の側やから、それでも抜け出せない、の結論でしゃあない。でもジュリア・ロバーツは「二度とこんなのはゴメン、向かいの局へ行く」
結論と違うの……?


 とりあえず、投資は自己責任で。
 自分がオカネについていろいろ見聞して得た最大の教訓は、「人生を賭けた勝負は必ず負ける」だ。勝てるのは、「たった六万ドル」と言ってのける余裕が、精神的にも資金にもある側だけ。そういう世界。
 それが理解できない人は、手を出しちゃダメです。損しても自業自得です。



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posted by アッシュ at 17:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする