2016年10月28日

ペイ・ザ・ゴースト

[35点]@渋谷シネパレス

 僕は Twitter をやらんので、ツイート自体を引っ張って来れなくて申し訳ないのですが、新文芸座がこんなことをつぶやいたそうです。

 「いよいよ今週末は「顔圧!ニコケイナイト!」。チラシはもうはけてしまったというのに、チケットはさっぱり売れてないってなんなんですか!チラシをお持ちの皆さん、今一度胸に手を当ててご検討願います。ニコケイ飴の抽選プレゼントもあるから!!」

 思うにですね。「わぁいニコケイ特集だ!」と思ってチラシに手を伸ばすたぐいの人間は、だいたい公開時に全部見てるのよ! かつ、ヤツの映画で「もう一回見たい」と思えるのなんて皆無なんだよ!

 「バッド・ルーテナント」「キック・アス」「ゴーストライダー」「ゴーストライダー2」だったら行ったよ!
 つーか、グランド・ジョーは知らないけど、今回のラインナップに「ヤク中で狂ってるニコラス・ケイジ」いないよね。ニコケイはヤク中or極悪人で、周囲を省みずゲラゲラ笑うシーンこそ、その顔圧が輝くのに……。

 あと、つけてくれるおまけが「ニコラス・ケイジなりきりお面」なら行くよ! 渋谷シネパレスで入場者プレゼントがあるって言うから楽しみにしてたのに、29日からだっていうんだよ! 何それ!


 というわけで、プレゼントをもらい損ねた、ハロウィン合わせのニコケイ新作です。ニコケイが出てる以外に日本に入ってくる理由のない、ホントどうっでもいい一本でした。これをかけて許されるのは、日本じゃ新橋文化劇場だけだよ(泣!

 ニコケイが大学教授で息子絡みであれやこれや、って「ノウイング」みたいな設定ですが、もっとちっぽけな話です。
 息子の失踪事件が起きて5分も過ぎた頃には「あ、つまりハロウィンの時期だけ開くミステリーゲートがあるのね」とわかるのに、登場人物らがその結論に至るまでに、ひたすら遠回りしてうだうだ意味のない情報とイヤげな演出を並べるだけです。
 つーか、その「ゲート」の表現にビックリだよ! そんなクッキリした物理的な何かなら、途中の思わせぶりな「息子が近くにいるみたい」演出はいったい何だったのよ?!

 で、はじめのうちニコラス・ケイジはこれが怪異現象でなくペドフィリアによる誘拐だと思い込んでいて、でもいっこうに捜査が進展しないので、「ニューヨーク市警は怠慢だ!」と怒鳴り散らして黒人刑事をブチ切れさせたりします。
 しかし、後にわかる真実によれば、この物語におけるニューヨークでは、「300年間、毎年、ハロウィンの夜限定で、必ず子供が3人失踪している」わけで、その事実を現場から上層から街の噂レベルですらまったく情報を持ち合わせないニューヨーク市警は、怠慢どころか控え目に言って「無能」と呼んで差し支えないと思います。


 というわけで、これから見る方は今週末なら「ニコラス・ケイジなりきりお面」がもらえるよ! たぶん1800円払う価値はそれだけだよ!
 僕はもらえなかったから、今年もハロウィンはおうちにさっさと帰ることにします!



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2016年10月25日

奇蹟がくれた数式

[65点]@チネチッタ

 いやもう……この映画が公開されると聞いて、ほんとワクワクしてました。

 だって、「ラマヌジャンの伝記映画」だよ?!
 演じるは、インド系ならもはや任せて安心の名優と言っていいデヴ・パテル!

 ワクワクするでしょ? するよね?! しない? ……そうかしないのか……。

 まあ自分も、理系出身といっても数学寄りじゃないので、彼が具体的に何をした人なのかはよくわかっていないのですが。
 二〇世紀初頭、イギリスに招聘されて様々な定理の予想を打ち出した、著名なインド人数学者です。しかし彼には定理は出せてもその証明ができず、「神が教えてくれた」とか言い出して周囲が非常に迷惑した、という人物です。

 とはいえ、「映画にするほど『人生そのもの』にエピソードのある人だっけ?」という感は否めません。結局、「彼の業績自体を伝え切れてないままに感動路線」に走っており、少々期待はずれな結果になっています。
 「数学の細かいところに分け入っても、一般人はついて来れない」という判断だろうけど、かといって、完全に数学とは関係ない「奥さんの挿話」を入れられても、そういうありきたりな話見に来てんじゃねぇよ、という反応しかできない……。

 そして何より、出てくる登場人物がみな常識の範疇にいる、という造形が非常にもったいなかったように思います。
 だから、インド人に対する差別とか、第一次大戦などの社会背景を、「特異な事項」として取り上げないと、ストーリーにできなかった印象です。

 でも、ここにいる登場人物はあらかた「極まった数学者」なんだから、ハーディ、リトルウッド、ラッセルともども、人物像のほうをもっと特異に描いて、「奇人変人シアター」にしてくれても全然バチ当たらなかったんでは、というかそういうのを期待してたんだ僕は。
 ラマヌジャンにとっては数字や公式が「芸術」に見えていた、だから証明の必要を感じなかった、という解釈は確実に正しいと思うので、もっとアーティスティックに、一般人をおいてけぼりにする勢い、みたいなのが欲しかったです。


 あと、この作品については、邦題を何とかして欲しい。
 原題「The Man Who Knew Infinity」。原題直訳「無限を知っていた男」のほうが明らかにカッコいいし人も呼べそうだと思うんですが!



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2016年10月24日

金メダル男

[60点]@TOHOシネマズ渋谷

 内村光良監督第三作目。これまでの「ピーナッツ」「ボクたちの交換日記」がいずれも個人的には傑作だったので、急いで見に行きました。

 「一等賞」を目指す男の、50年以上に及ぶ人生物語、だけれど……僕の見立てでは、特に前半の知念くんパートは、「社会にコミットしきれず芸人を目指した若者」あるある話の集合体。内村監督だからこそわかる、痛々しい挫折の塊とあてどなく闇雲な希望を、うまくすくい上げ、ユーモアに包んで、いい意味で弄んでいます。
 今回は、そこから一歩進んで、紆余曲折の人生讃歌へとつないでいきます。「過去の栄光」からキレイに「切り離されて」からが本番。
 「秋田泉一とはそういう人物」なんだ。もう、狂おしいほどもどかしく、どうしょうもなく、だけど何かせずにはいられずに、挫折と再起を繰り返す。

 僕の記憶に間違いなければ、この作品では、「夢」も「希望」も、「挑戦」という言葉すら、印象づける言葉としては出てきません。このストーリーでそういう選択をして、それでこそ人生讃歌たりうるのが、内村監督らしいです。
 逆に「がんばれ」の使い方が素晴らしく印象的。そう、「がんばれ」はこういうときに使う言葉なの。自分にできないことを、誰かに託すときに。


 ただ、今回は、一人舞台の脚本が先にあるせいか、それともジャニーズの知念くんを連れてきて観客年齢層が下がることを見越してか、説明過多で「わかりやすすぎる」きらいがあり、個々の演出やモノローグにウザさが強いのが難点。特に「喝采」の表現があまりにわざとらしく、鼻白むものになっており、まったく感動できません。「ピーナッツ」と比べると雲泥の差です。
 また、モノローグは、「元の舞台の脚本から、『ここで入れるとさすがに邪魔だろう』というところだけ削除して、あとは全部残した」ようにみえます。しかしながら、映像で伝えればモノローグは要らないので、「ほぼ全部邪魔」が正解です。

 結果、コメディというより「児童向け」かってくらい拙い印象が強く、なのに昭和ノスタルジーてんこ盛りなので、「知念くん目当て」にどれだけ伝わったかは微妙という、すごくバランスの悪いことになっていました。アイディアは好ましいのに料理に失敗した、ちょっと残念な作品です。


<追記>
 書き忘れてた。めっちゃ細かいですが、本作は「鉄道警察」案件でもあります。
 1983年において中央本線が非電化だと? 長野県民は激怒してヨシ!
 まぁ、今なお非電化の、九州山間部出身の内村監督には譲れなかったのかもしれませんが……あれ撮ったの、何駅だよ……?



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2016年10月21日

短評(ベストセラー/チャーリー/ガンツO)


 「アイアン・ジャイアント」のリマスター版、劇場公開中止(延期?)の報。
 実は見てない作品だったから、ものすごく楽しみにしてたのに。



 ニュースとしては今さらなのでしょうが、知らぬうちにシネマメディアージュの閉館が決まっていました。
 都心ど真ん中のシネコンが潰れる、というのはMM横浜以来だと思うけど、別に競合する施設があったわけでなし、純粋に「需要(=人口)がまったく育たなかった」ってことでしょうか。
 アクアシティ自体をつぶすわけではなかろうに、あの構造で跡地をどうするつもりだろう。



ベストセラー -編集者パーキンズに捧ぐ-
[60点]
@TOHOシネマズシャンテ
 アメリカの作家トマス・ウルフと編集者マックス・パーキンズの交流を描く話。いい作品にするために推敲を重ねるシーンや、トムが「あんたは俺の文体のリズムがわかってねぇ!」つってジャズクラブに連れてくシーンなど、小気味よく語られる前半は、めっちゃ面白いです。で、二人は「疑似親子」になって相互に依存し始め、しかし「子」は自立するのだ……という話になるのですが、「親子モノ」って考えると面白味に欠け、後半はどんどん眠くなります。そんで、夭折は史実とはいえ、手紙だけ遺して唐突に死ぬ、って、それで泣けとか言われても僕はムリ。
 何でもかんでも「家族」で語りたがる、アメリカ映画の悪癖がまた出たようです。「トランボ」もそんなところがあったな、と思いつつ、かの作品のように本作も、「作家の矜持」的なところを突き詰めた方が、もっと面白くなったんではないでしょうか。


チャーリー
[60点
]@キネカ大森
 キネカ大森単館上映という珍しいパターンのインド映画。今年もインド映画祭は行けそうにないので、間もなく公開の「PK」と合わせインド分補充ということで。
 家のしがらみから逃げた自由人なヒロインが、得た新居。残されたガラクタや制作中のコミックに興味を持って、前住人を探し始める……という取っ掛かりはインド映画らしくなく、ちょっと面白かったのですが、結局は「そいつ」の活躍ぶりをひたすら並べる、いつも通りのインド映画に。「それはそれで」な感はあるもののちょっとフックに欠け、集中力が途中で切れてしまったのが本音。


GANTZ:O
[65点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 TOHOアニメーションが本気でフル3D映画に手を出してきたと考えると、今後も含めいろいろ楽しみなのですが、しかしながら本作は、相変わらず「マンガ表現の映像化の難しさ」を感じる作品でした。
 実写に近い情報量を流麗なCGで描き出しているのはすばらしいのですが、逆にコレが徒となっています。なんとなれば、「誰かがメインでアクションしている」ときに、背景にいる他のキャラが「突っ立ったまま」のシーンがあまりに多いのです。反射神経で、あるいは自分で何か考えて動くべきところでも、単に見てるだけです。すごく萎えます。これ、「平面でのコマ割り・カット割り」なら、あまり気にならない部分だと思うんですよ。
 で、今回の主役たる加藤が、なんかあるたびに「突っ立つ」のでいつまでもヘタレイメージがつきまといます。彼に「活躍」のイメージがないと、他のキャラもことごとくヘタレかカマセかウザイかというキツイ話なので、あんまり楽しめません。
 ただし、3DCGのレベルの向上により、GANTZならではのエロスーツと揺れるおっぱい見てればとりあえず時間は過ぎるので、絶対退屈はしません、そこは保証しますよ!



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2016年10月19日

映画館のCMのこと


 震源地はこの増田なのかな? また「映画館のCM」の話題が盛り上がっている様子なので、便乗します。


 映画館に行ったら映画だけ見たい、という欲求は自分もあるし、CMや予告編は少ないほうがうれしいのは確か。
 でもCM入るのは仕方ないと思う、というか、「映画」は「たくさんの目の人に触れる点で価値がある」と認められてるからこそなわけだし、悪いことじゃない気がします。テレビの少ない時代にゃ、幕間にニュース流してたわけで。

 で。
 それでも、思うところはいろいろあって。


○セブンイレブンはまだマシ! まとも!
 テレビ用のCMをそのまま流すのではなく、映画館向けにあまり声高でない内容にするとか、地域別のネタを入れるとか、工夫の余地はありそうですけど。

上映前CMでダントツにいいのは、やっぱりキューピー。福山雅治の穏やかなナレーションが聞こえると、あ、これからいよいよ映画だ、という気分になれます。

映画館でローカルなCMを見るの、けっこう好きだったりします。横浜の映画館で見られる、柳沢慎吾の万葉倶楽部とか。
 109クランベリー南町田で地元の小さい不動産屋のCMかけてんのとかは、むしろほほえましい。


 もちろん、こんなの映画見る前にかけるなと絶叫したくなるひどいものも少なくないわけで!

■TOHOシネマズがまず襟を正してほしい。最初期の鷹の爪団マナーCMは抜群によかったけども、気をよくしてチョーシこいていろいろ「上映前」をいじりだしたせいで、不快に思う人も増えてるのでは、と思わずにはいられません。

 →「映画のある生活」がいかにひどかったかは以前書いた。
 →今年映画館で見た、最もつまらない映像は「阿吽建設」。
 →シャンテの「行かないでハンケン」も、センスないから今すぐやめてほしい。

■他の追随を許さぬ酷さを誇るのが東京テアトル系。東京テアトルの映画以外の事業のCMは、「本当におまえら映像事業をやってる会社なのか?」と、企業価値を毀損するレベルでひどいのでCMの体をなしていない。一口とはいえ株主たる自分としては、いつか株主総会で糾弾するのがひとつの目標です(テアトル東京の株主優待はめっちゃ使えるので抜けられん……)。

 →以前 M@sterVision 氏が怒ってた状況は多少は改善されてるけど、今でも「予告編をカットしてでもTCGカードの勧誘はする」ってアレ意味わからん。
 →館によらず新宿や銀座の店舗のCMを見せるのって、間借りしてるビルから怒られねぇの? 特にシネリーブル池袋、東武百貨店のテナントなのになんで中の店のCMを流さない? 嫌われてるのハブられてるの?
 →ヒューマントラストシネマ渋谷で一時期流してた、黒地にカタカナの「ヒ」とだけスクリーン上に表示されるCMの絶望感といったらなかった。僕自身の「金払って映像見に来てんのに、なんでこんなもの見せられなきゃならんの?」という怒りはこれがピーク。コレを経験してたら、だいたいのことは許容できる(笑。

そんで、こないだ新宿ピカデリー行ったら、普通に松竹配給である「いきなり先生になった僕が彼女に恋をした」の予告編が、いちばん最初つまり「通常CM枠」でかかってたんだけど、あれは何だったんだろう?
 枠が安いってことか、それともあまりに絵面がショボいので、他のマジメに作ってる映画の予告編に混ぜちゃうとむしろ逆効果だと自分らでもわかってて、通常CMに混ぜ込むことで少しでもマシに見せようという深謀遠慮ですか?



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2016年10月18日

ゼーガペインADP

[65点]@新宿ピカデリー

 ゼーガペインはですね。僕、DVD全巻持ってるんですよ。棒読み花澤さん、いつでも堪能できるのですよ。いいでしょ。

 で。10周年記念の新作と銘打って公開された本作。
 開幕時点からいろいろおかしい。何かが変だ。知らないキャラは続々出てくるし、核の設定たるループはあっさりバラされる。何か変なのだ。井上麻里奈は登場したとたんキャラ崩壊してるし(笑、絶対変なんだ!
 その違和感の正体が、中盤になってわかる。この衝撃! 見た人に、どこで仕掛けに気づいたか、アンケート取ってみたいくらい(全話細部まできちんと記憶してた人は、「カノウ」の名前が出た時点で一発だったのかな……?)
 不覚、自分は「イェルに名をつける」まで気づかなかったよ! キスした瞬間ぐはっとなったよ! カミナギショックかよ! 

 完全に、全話どころか全設定を網羅してる人でないと完全には理解できないだろうし、そういう人が作ってる本気のファンサービス作品。
 少なくとも、僕はこれ見た後にもっかいDVD見返したいと思いましたから、その時点でこの作品は大成功ですよ。すばらしい10周年企画に感謝します。

 だから。
 積み重ねの足りないもう少し尺の欲しかった脚本とか、素人としか思えない編集ぶった切りとか、大スクリーンで見るに耐えない作画が執拗に繰り返されるとか、当時は技術が未熟で見栄えしなかったCG戦闘が10年経ってもあまり迫力が上がってないとか、そもそも長編映像作品としてのテクニカルな部分でやたら引っかかっちゃうのはちょっと悲しかったです。
 もーちょいカネ突っ込んでやってよサンライズ!



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2016年10月17日

日本アニメ(ーター)見本市

[80点]@新宿バルト9

 というか「PATLABOR REBOOT」
 いやぁ、すばらしい作品でした。押井版「NEXT GENERATION」がどれだけ関係者を激怒させたか、とてもよくわかります。
 「そもそもコレをやらなければ『パトレイバー』はコンテンツとしての独自性を持ち得ない」という内容を、10分間できっちりかっちり見せてくれるシンプルな作品で、「リブート」と呼称するにふさわしいものになっていました。何しろ抜擢された監督は、「ロボットで人情もの」を語れる吉浦康宏。押井守と対極に近い思想の持ち主といえましょう。

 劇パトが高評価だったのは、何度でも言いますけど、まずこの部分を直球として投げた後の、キレのいい変化球だったからです。「変化球だけでは勝てるわけない」この当たり前のことを、押井守は本気で理解していなかったという絶望が、「NEXT GENERATION」でした。

 本作が本当にリブートとして機能し、新たな展開の「パトレイバー」が作られる筋道となるのなら、その意味においてのみ、「NEXT GENERATION」には価値があったといえましょう。



 他の作品も少し。

○どの作品も各アニメーターが好き放題やっていてすばらしかったのですが、同時に「こいつらに好き放題やらせていてはいかんな……」とも思ってしまいました。「君の名は。」における新海誠がそうであったように、絶対誰かが手綱引かなきゃダメだ、と。
 だって半分は「メカと美少女」だもんなぁ。今脂が乗っている人たちが、それがどストライクな世代、ってのはわかるんですけども。
 個人的には、「アニメーター」を誇示するのであれば、「セリフなし」で勝負してもらいたいのですが、だいたいセリフが饒舌なのよね。

○そのセリフは、実績随一の山寺宏一と林原めぐみがすべて演じているので、至芸に酔える……のだけれど、さすがにここまで連続して聞かされると飽きますな。終盤に来て林原めぐみによる女子高生三人演じ分け、がぶっこまれた時には、それムリ、と思わずにはいられなかった……。

○一本いちばん好きなのを挙げるなら、「I can Friday by day!」。軽妙な動き、意外な内容、言葉より絵で伝えようという意志、いずれもステキ。



日本アニメ(ーター)見本市サウンドトラック第一弾 - V.A
日本アニメ(ーター)見本市サウンドトラック第一弾
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2016年10月07日

短評(ハドソン川の奇跡/超高速参勤交代R/RWBY2)


ハドソン川の奇跡
[65点]
@ムービル
 クリント・イーストウッド監督にしては起伏も少なく、無理にドラマ性を高めようとして「事故調査委員会」が悪役めいた描写になっており(あのシミュレーション、マジで公聴会でやったの? 頭悪すぎじゃん。それに、「フライト」みたいな行状でなきゃ、パイロットを悪しざまに処遇しても再発防止に繋がらないので無意味です)、映画としてはどうにも「弱い」と言わざるをえません。
 しかしながら、そうした弱い作品であればこそ、「当たり前のことを冷静に確実に当たり前にやりました」とだけ示す結末は、絶妙な意外性の面白さで、イーストウッド監督らしくもありアメリカ映画の懐の深さでもある、収まりのいい作品であったと思います。


超高速! 参勤交代リターンズ
[50点]
@TOHOシネマズ川崎
 つまんなかった。話にまったくノレませんでした。
 前作は、「ともかく江戸に到達しさえすれば何とでも面目が立つ」という一点突破のストーリーだったから、「無茶をする」ことに説得力がありコメディとしても成立したんでしょうに。
 で、前回が参勤で、今回は「交代」つまり帰路の話なわけだけど、発生する状況がもはや「笑えない」深刻さなのですよ。でも結局コントじみた芝居しかやらないので、「全然深刻に見えない」という意味で、ストーリーが破綻しています。
 また、前作でも忍びの連中は、主人公ズの苦労をあざ笑うごとくに時空間を超越してたけど、今回は忍びどころか、単なる行列が時空間を超越する演出がなされる(信祝が水戸からいわきまでを2日で踏破したように見えた)ので、もうどういう作品だったかわかりません。
 一方で、前回はクライマックスの乱闘以外ぴりっとしなかったチャンバラが、全体的にしっかりしていた印象。主人公ズが人間離れして強いのを前作でわからせていて、戦力差を無視できるのが前提ではあるのだけど、映画の時代劇が真剣な剣劇を見せる方向にシフトしている昨今、テレビ時代劇がかつて見せていた、やんやと斬り合う娯楽チャンバラをたっぷり入れた作品は久々な感じがしました。


RWBY -Volume 2-
[55点]
@シネリーブル池袋
 どうもピンと来ません。
 Volume 1 と比べると、今回はアクションのほうが、連携技や連続技にアイディアが盛られていて、こなれてるところはホント鮮やかでした。傘中ボスの技のキレといったら……。あとわんこミサイル。なんだありゃ(笑。
 けど全体的に、こなれてない印象が強すぎ。アクションもダメダメなとこが多いけど、ストーリーがもっとアレレな方向に。
 きれいにまとまったのは黄色による黒の説得、くらいで、進展や成長が見当たらず、起きるイベントの軽重がよくわかりません。「異民族」が単なるテロ集団に堕した現状、「何のために戦うか」みたいな問いが必要とは思えないんだけど、「オタアニメのフォロワー」的な感性で創作する海外勢には、それがルールか何かに見えてるのかしら。
 なお、豊口&下野ペアに期待してましたが、もしかしてアレで片づいたの? だとしたら、あのサブチーム自体に、噛ませ犬以外の存在価値が残ってないんですけど。つか、豊口は悪堕ち路線じゃないの?



グラン・トリノ [DVD] -
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2016年10月01日

短評(ある天文学者の恋文/高慢と偏見とゾンビ)&コラム


 東宝が公開5週目にして、最大のTOHO日劇1に「君の名は。」を移している。しかも易々と埋まる。ちなみに、「シン・ゴジラ」も遅れて日劇1で公開されており、これをどけての公開なので、今は「シャンテでゴジラ」という謎事態が発生中。そしてスカラ座と併せてソコソコ埋まる。
 じゃあ日劇2や3に入った、おそらくは1に入る予定だった新作がどうかというと、2すら埋められない。
 そんで、松竹系の丸の内ピカデリーは「聲の形」をやらないというね。ところが「High&Low」のライブ上映とかはやってるという……。

 銀座地区の映画館はそろそろ、オタ向け作品から目を背ける態度をあらためてほしい。その巨大なハコ、最初の1週にこそ使ってくれよ。想定外ヒットの「君の名は。」はともかく、「シン・ゴジラ」が日劇1使わなかったの、本当にビックリしたもん。そんで、松竹はいいかげん、屋台骨がアニメに移った現実を認めなさい。
 (今は日本橋があるし上野ももうすぐだけど、考えてみれば「秋葉原に最も近い映画街」でもあるわけでさ。)

 銀座はもうジジババの街、という事実はわかるけど、別に、平日と休日でかける作品を変えていけないわけでもなし。休日や夜は一番人が入る作品を、平日昼間は時代劇を、みたくやってもバチ当たらないでしょ? 「ハイブリッド刑事」の例もあるわけで。
 もっと柔軟にいこうよ。


ある天文学者の恋文
[55点]
@チネチッタ
 ジュゼッペ・トルナトーレ監督の新作は、巨匠と呼ばれる人とは思えないほど先進的な内容でした。つーか、ほんとオタク気質よなこのおっさん。
 死してなお恋人に「通信(原題:correspondence)」を試みる行為は、束縛にもみえて賛否ある気がしますが、嬉々としてチョーワガママな「客星システム」作りに没頭したおっさんの心情(それは死の恐怖や寂寥から逃れるためでもありましょう)は、察するに余りあります。
 ただ、作劇上必要なのはわかるのですが、時と場所を選ばず、観劇のシーンですら着信音が鳴りまくる演出は、さすがにやっちゃいけなかったのではと思います。また、ヒロインが「自分の命を軽んじているから」スタントになったという設定も、映画の作り手としてはすごく失礼な話に見えます。M@sterVision 氏が、「ニュー・シネマ・パラダイスは映画の敵だ!」と怒っていたのを思い出すなぁ。(リンク先ネタバレ注)


高慢と偏見とゾンビ
[60点]
@TOHOシネマズシャンテ
 名作のパロディもの。タイトルだけで一本勝ち感があります。セリフもどうやら原作からかなり引っ張っている様子、ただし銃の手入れや組手をしながら言う、みたいなアホ展開。
 さらに、「富める者は日本に、そうでなければ中国に学ぶ」のが今節イングランドの流儀らしく、ダーシーさんがサムライソードを振りかざしエリザベスは少林拳マスターという設定をぶん回されたときは、完全に持ってかれたかと思ったのですが。
 肝心の対ゾンビ戦がイマイチ冴えません。ゾンビって世俗文化の隠喩? だからあまり恐怖として描けないのか? と考えもしたのですが、どうも深く考えてないっぽい。
 あの伝統衣装でキレのある殺陣をせぇいうても無理筋とはいえ、カッコよく作ろうとしながら、どこも中途半端でつまらない。あの終盤のゾンビ群を見せといて、あのクライマックスは酷い。どうして「プロポーズ→お受けします→肩預け合っての無双展開」ではないのか?!



ニュー・シネマ・パラダイス[インターナショナル版] デジタル・レストア・バージョン Blu-ray -
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posted by アッシュ at 20:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする