2017年01月30日

沈黙 -サイレンス-

[80点]@ムービル

 凄かった。何がどこがと言われると、たぶん詳しく言えるのは実際にカトリックの人だけなんだろうけど。この作品は本当に、実際の宗教家の反応を知りたいですね。

 まず、映画が始まってタイトルが出るまでの表現にゾクッとします。「虫の声」なんですよ。一説には虫の「声」と認識できるのは日本人とインドネシア人だけで、それ以外の民族には単なるノイズなんだとか。つまり欧米人は、スコセッシ監督はおそらく「SILENCE」を表現しているのだろうと思うはず。でも、違う。

 正月にNHKでこの作品に関するドキュメンタリーをやってて(NHKが事実上の映画の宣伝やるのどうなんと思ったけど)、そこで述べられていたのは、原作小説が欧米で驚きをもって迎えられたのは、「棄教/Apostasy」という訳語が使われたからだそうです。
 でもそれに対する日本語は実は「転ぶ」だった。日本語の「転ぶ」には「起き上がれる」「一時的に主張を変える」というニュアンスがある。でも「Apostasy」には「二度と戻れない」ニュアンスがある。その違いを、スコセッシ監督はきちんと織り込んで作品を作っています。

 溝口健二等日本映画のオマージュもあり、映像も美しいです。「創造主」が「八百万」を超えられないと語るフェレイラが「大日」を説明するとき一瞬映る太陽が、本当に焼きついて離れない。

 よくいわれるような、「キリスト教弾圧の苦難の歴史」だけを語る物語にはなっておらず、自然とともに生きてきた日本の宗教観、ひいてはキリスト教だけを見ていると伝わらない宗教観の多様性、統治の方便としての宗教の役割など、「宗教」と「信仰」が含むすべてを、丁寧に咀嚼して美しく撮り上げた、まさしく入魂の一作。



 ちょっとだけ気になるのは、キリシタンはむろん、奉行から番人のレベルまで英語を使いこなしてたり、「キリシタン/Christian」「パライソ/Paradise」が会話に普通に混ざったりする、「ポルトガル人と日本人の関係」を英語に置き換えるにあたっての言語周りが、滑稽に見えないか……という点。少なくとも僕は不自然に思いました。

 あと、多くの人が言ってるけど、日本国内で撮れず台湾での撮影となったのはとても恥ずかしいと思うべきですね。



タクシードライバー (字幕版) -
タクシードライバー (字幕版)
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2017年01月26日

短評(ザ・コンサルタント/アラビアの女王)


 荒井晴彦氏のコメントが話題になってるけど、あの手合いを黙らせ、業界を刷新するために、映画界はいちど金を出し合って、「君の名は。」や「この世界の片隅に」を実写化すればいいと思います。
 その際ポイントなのは、手がけるスタッフが何をわめこうと、「そのまま再現する」こと。両作とも、アニメにもかかわらず「人体に不可能なデフォルメ」はほぼありませんので、そのまま実写にできます。
 そうすれば、制作過程できっと、「絵」「実写」の別ではない映像の根本的な部分、たとえば演出の理念や編集の技術についた彼我の差が、あらわになると思うんです。
 

ザ・コンサルタント
[65点]
@チネチッタ
 序盤から中盤にかけて、視点を切り替えつつ「謎」を積み上げていく手際は神がかってます。主人公のキャラクターが非常にユニークで、彼の存在自体がどーんとミステリアスで、それを解き明かしていこうと、登場人物も観客の視点からも、あの手この手で謎に近づいていく感じがすごくよいです。
 ……それだけに、「各視点がきれいに収束しない」のがすごくもったいないです。FBIチームの結末がアレで、過去の秘密をべらべら喋り倒してそのままフェイドアウトってのはあんまりです。
 あと、弟の方も相当ヤバイ橋を渡ってるはずなのに、あの終わり方でええのん……? もう少し因果応報があったほうが僕はよいと思うのですが、まぁメリケンの「家族絶対主義」は宗教みたいなものだからなぁ……。


アラビアの女王 -愛と宿命の日々-
[40点]
@シネマカリテ
 ……死ぬかと思った。
 いやさ、アラビアのロレンスと同時期にアラブで活躍した女性の伝記映画……と聞いて、あなたどんなの想像するよ。……前半1時間くらいずーっと、益体もない色恋沙汰で引っ張ると、誰が思うかね! もうアラフィフのニコール・キッドマンに10代みたいな演技させてさ! しかも彼女の高身長とスタイルの良さが仇となって、英国貴族の娘に見えなくて、吉田沙保里がマウントしてるような印象しかないよ! そんでこの色恋部分、物語的には「ヒロインが砂漠に踏み込むきっかけになったようななってないような」くらいしか意味がない、というね!
 そこを過ぎて、彼女が砂漠に踏み込み、砂漠の民と交流していく過程は興味深く、また、いろいろ手を尽くして砂漠の自然美を撮影している印象はあるのですが、結局は「砂漠を行く」「話し合う」のひたすら繰り返しで、ドラマ性が乏しくって……キツかった。



アラビアのロレンス (字幕版) -
アラビアのロレンス (字幕版)
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2017年01月19日

短評(UTOPIA/パシフィックウォー/鮫の惑星/ナーヴ/ホワイトバレット)

いろいろ一気に。

UTOPIA
[45点]
@下北沢トリウッド
 「カラフル忍者いろまき」に続く、アニメたまご2016からのシングルカット公開(「風の又三郎」見たいんだけどなぁ……2017はちゃんと一般公開がある模様)。

 連続ものの1話だけを抜き出した体なんだけど、キャラの魅力が全く出ておらず微妙。あのやかましいだけの猫娘は何がしたかったのか。対象年齢低めとはいえ、スタジオ4℃特有のスピード感が削ぎ落とされアニメーションの魅力も薄く、「見たかったのはコレジャナイ」感が強いです。

 なお、トリウッドでは本作公開に合わせスタジオ4℃特集をしてて、片渕須直監督の旧作「アリーテ姫」や、今週末には特別上映で「アニマトリックス」とかやるので、興味のある向きはどうぞ。


パシフィック・ウォー
[60点]
@シネマサンシャイン池袋
 ニコラス・ケイジ主演で、第二次大戦末期のインディアナポリス号撃沈のエピソードを映画化。遺族がお金を出し合って作った?らしく、日本映画並みの安っぽさだけど内容は真剣。ただし、向こうでは「ジョーズの原型」な話でもあるせいか、サメがやたらリアルなのが嘘っぽくて少し損をしてる印象。あと沈没時の構図、やたら「タイタニック」に寄せてたような?
 ハリウッド映画が、旧日本軍の潜水艦かつ人間魚雷「回天」をきっちり描写する、というのもレアだと思うので、そういうクラスタの方は、公開規模小さいですが是非。


Planet of the Sharks -鮫の惑星-
[40点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「パシフィック・ウォー」がサメ映画の原型とすれば、アサイラムといえばサメ映画の現在進行形。……だと思っていたのですが。
 ……あれ? おかしいぞ? アサイラムのサメ映画といったら、サメが宇宙に行ったり巨大ロボットと戦ったりするんじゃないの? 本作なんてこのタイトルで、これみよがしにオープニングに自由の女神出したりするから、てっきりサメが人間を拷問したりサメの大軍が銛振りかざして襲ってくるもんだと思ってたのに。
 フツーだった。
 …………いやいやいや、アサイラムはただでさえ絵面が安いんだから、彼ら流の無茶振りと、それを強引に納得させる畳み込みを捨てたら、それ単にヌルくて説明的で、似たようなシーン何度も繰り返すケチくさい駄作なだけじゃん。

 ちなみにこの作品で最も衝撃的なシーンは、サスペンス映画のセオリーなら、「真っ先に死ぬか最後までしぶとく生き残るかの二択」としか思えないキャラが、なんのタメも感傷もなく、あっさり普通に食われて死ぬところです。


NERVE -世界で一番危険なゲーム-
[60点]
@TOHOシネマズ川崎
 うーんうーん、評価難しいな。
 各チャレンジの撮り方はドキドキさせられたし、コンピュータ周りのリアリティラインの作り方も割と好きです。不特定多数参加のゲームの話なのに世界観狭すぎるのは、スクールカーストの打破というよくあるパターンを持ち込むためだろうから、理解はできます。
 ただなぁ……あの彼氏が「盛り上げるための仕込み」なの、初手からあまりにあからさま過ぎて、その時点で「このゲーム世界に参加してもつまらんよ」と突き放されている印象……観客にもっと「ゲームに参加してる擬似感覚」を強く与えないと、終盤の展開にビックリしてもらえないと思うんですよね。
 あと、「解決方法」として提示される「オープンソースだから書き換える」って、発想はすごいけど、何の解決にもなってないような気がするぞ……。


ホワイト・バレット
[60点]
@新宿武蔵野館
 改装なった武蔵野館は初めて。スクリーン2・3の入りにくい構造が改善されて何よりです

 本作は、「エグザイル -絆-」のジョニー・トー監督による、病院内のみで繰り広げられるノワール。撃たれた強盗犯が搬送された病院で、犯人、刑事、女医の3人の駆け引き。
 序盤から中盤までの、負い目のある女医と刑事のプライド描写や、それを飲み込む如くにインテリ強盗犯が上を行って立ち回る駆け引きの濃厚さ、緊迫感は素晴らしいです。
 ……それだけに、「クライマックスはとにかく派手にしました! 病院内で銃撃戦とか倫理的にどうなん、とかどうでもいいです! 勝つのは警察側、勝因は単に物量で勝ったから!」という、前半のさまざまな仕込をどぶに捨てるがごときガバガバな終盤が泣けます。技術的には、すごいことやってんのはわかりますが……。
 あと、医療シーンがリアルで、下手なホラーより生々しいので、血とか内臓とか苦手な方は注意。




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アリーテ姫 [DVD]
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2017年01月12日

短評(人魚姫/ドラゴンマッハ/傷物語3)


やっときたチャウ・シンチーとトニー・ジャーの新作だってのに、なんでこんなに公開規模小さいんだよ(怒!


人魚姫
[75点]
@シネマート新宿
 素晴らしかった。
 チャウ・シンチー流の人魚姫は、話の筋はめっちゃ単純。海を開発しようとしてた拝金主義の富豪と、それを阻止すべく暗殺しに行った人魚が、なんやかんやで恋に落ちる。以上!
 しかし話が単純なだけに、ミラクル7号を彷彿とさせる(実際、軽くネタにされてた)小学生が考えたようなギャグがハマるハマる。踏まれるヒロイン、食われる兄貴、笑ってはいけない人魚警察24時、ホントくっだらねーのばっかだけど、これくらい軽快に笑えるドタバタ喜劇映画が、全然出てこないのが現状なんだってば!


ドラゴン・マッハ!
[75点]
@シネマート新宿
 香港(ウー・ジン)とタイ(トニー・ジャー)との共闘だから邦題がコレ。わかりやすい。実は原題はSPL2」。続編?! と思えど、ウー・ジンが出演している以外のつながりはないみたい。
 臓器売買をテーマにして、いくつかの血縁関係が愛し合い行き違い、その中で繰り広げられる駆け引き、というストーリーの濃厚さがすばらしい。アジア映画でなかったら、アクションシーンなしで作っちゃいそうなくらい。
 香港とタイの両国を舞台にしたことで起きる、「言葉の違い」の組み込み方もドラマチック。「emoji」は国境を越える! すごいな(笑
 言葉という点では、「マッハ!」の頃は全然喋らなかったトニー・ジャーが、めっちゃ多くなったセリフをちゃんと演技しきってて、俳優としても大物感を漂わせていることに驚きました。

 ところで、High&Low 見て、アクションシーンすげーなとか思った人は、この作品の刑務所乱闘で腰を抜かすこと。これくらいが当たり前と理解しましょう。
 個人的には、「前作のサモ・ハン・キンポーの暴れっぷりのほうがすごかったよな……」と思ってて、アクション映画としては評価しにくいです。本作も十分すごいんですが、慣れって怖いね。


傷物語III -冷血編-
[65点]
@TOHOシネマズ川崎
 /
 西尾維新作品といえば、独特の言い回しで幻惑することに妙があり、ドラマそのものの奥行きはあまりない、というのが定説。ましてビギニングものの最終話である今回は、物語の結末はおろかどう決着するかもほぼわかっているわけで。じゃあ、それをどう盛り上げるか。
 ……そうかー、そっちいっちゃうかー、話に出てくるのとは別の意味でチキン野郎だわ。「その」直前の羽川さんの天使描写と、忍との悪魔的な決着の間に「ソレ」がはさまるのは、いかにもスジが悪いです。おかげで超アニメーションの決戦の説得力も薄れた感じがして、個人的には不完全燃焼だった感。
 ただ、アララララギくんが(失礼、かみまみた)、最終的にガハラさんを選ぶ理由はとてもよくわかりました。いろんな意味で、羽川さん相手では絶対に一線を超えられない、と認識してしまったんだな。

 あと、特に序盤、作画が妙だったような……レベルが高くてもカットごとに質がばらつくと、すごく微妙。



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ミラクル7号 (字幕版)

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2017年01月10日

短評(スタンドオフ/ドントブリーズ)


シチュエーションサスペンス2題。
これで去年公開の映画は全部出揃ったかな? 「海賊と呼ばれた男」がいちおう予定リストには残っているけど……見るかどうかは正直微妙。


スタンドオフ
[65点]
@シネマート新宿
 孤独な元軍人が住む荒野の一軒家に、殺人を目撃し証拠写真を撮ってしまった少女(超美ロリメガネっ娘!)が、殺し屋に追われて逃げ込む。序盤のやり取りで、元軍人殺し屋ともに、病院に行かねばいずれ死ぬ傷を負い、行動の自由が効かなくなる。2階に元軍人と少女、1階に殺し屋が陣取って、少女の命とフィルムをめぐって駆け引きが始まる……。
 1ヶ所、かなり痛いミスがあって、字幕を見る限りでは、途中のあるシーンで、殺し屋は軍人の残弾が1であると明確に見破っているんです。おそらく実際は、見破ったとは断定できないハッタリなのでしょう。その残弾を使ってしまった後も駆け引きが続くので、ちょっと引っかかってしまいました。
 それ以外は、1階と2階の位置関係だけで盛り上げ、さりとてあからさまなギミックもなく、伏線を意外なかたちで回収していく会話劇シナリオが面白いです。カメラも女の子も問題の解決にはなんら寄与しないとは。でも、なくていいわけじゃない、とても重要。
 日本も、若手監督や脚本家は、こういうのを作るのから始めたらいいと思います。


ドント・ブリーズ
[75点]
@渋谷シネパレス
 ここしばらく暗い話は避けてたのですが、評判いいので見てみました。住人は盲目老人だから気づかれるまいと泥棒に入ったら、実は聴覚鋭いシリアルキラーで、音を立てたら感知されて即殺されますよ、という話。
 怖さ、という点では弱いですが、素人目にもカメラワークにこだわっているのがわかる、演出技術の高い作品でした。登場人物が息を止めている間、自分も止めてたくなるもん。あと、●REC以来の見事な暗視カメラ表現!

 面白いのは、この作品には、「目が見えず耳が頼りの老人を、どうやれば幻惑・誤誘導させられるか」という発想がほぼありません。
 そうなってしまうのは、主人公ズのキャラづけをガッチリしてある上、冷静な判断をさせない展開が徹底されていて、彼らは「怖いので感づかれないように逃げる(でも金は持ってく)」という極めてプリミティブな要求でしか動かないからです。
 これはむしろうまい「縛り」で、「ヤバイヤバイヤバイ!」という感覚だけがどんどん浮き彫りになっていって、効果的でした。

 そして、いちばん心憎いと思った点。
 この話、「」さえ無事に「あの家」から脱出できれば、いちおうのハッピーエンドになります。「ヒロイン」はどういうエンドになろうと、観客は納得がいく。アンハッピーエンドさえ可。
 ラストが見えない不安定さ自体はよくあるパターンで、その場合、ラストシーンだけ何かどーんとびっくり演出を置いて終わらせるのが定番ですが、本作の場合、ぎりぎりで伏線の「車のトランク」→「てんとう虫」に観客の意識を振る。
 うーむ、これ作った人テクニシャンだわー。ホラーはやっぱり見ないと思うけど、フェデ・アルバレス、覚えておきましょう。



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2017年01月07日

アイ・イン・ザ・スカイ

[65点]@TOHOシネマズシャンテ

 ドローン・オブ・ウォーに次ぐ「ドローン戦争」もの。かの作品で再現されていたコンテナを、またも見ました。
 シャンテのみ先行公開、他の映画館は1/14公開だそうです。

 ドローン・オブ・ウォーは、トリガーを引く操縦士にフォーカスしていましたが、本作は命令を下す指揮官の苦悩が描かれます。なんとなれば、ドローンの飛ぶ舞台はケニア。つまり「敵対国」ですらない! 目標のテロリストも、テロ組織に参画したとはいえ自国民。
 まずもって「攻撃していいのか」というとこで、たいへんな騒ぎになるのです。まして、民間人を巻き込むおそれがある、ともなると。

 決断が遅れればテロリストを逃してしまう。しかし現場-指揮官-軍上層-政治家間を、情報と決定権が行ったり来たり、方針は定まらない。焦る指揮官、責任逃れを重ねる政治家、「緊迫感のあるブラックコメディ」としては、ギャヴィン・フッドの手並みは間違っておらず、すこぶるのめり込めます。

 ……ただ、のめり込めるがゆえにヤバく思える点がありまして。


 ひとつは、当事国であるはずのケニアがガン無視であること。

 米英人テロリストの存在だけが問題視され、ケニア人やソマリア人のテロリストについては俎上に上がりません。
 それに、物語のキーとなる「目標付近にとどまっている7歳の少女」については大騒ぎしますが、それ以外のケニア人はどうっでもいい扱いです。目標は市場のすぐ近くで、人通りソコソコあるんで、被害が出ないわけないんですが、無視です(自分は途中で、目標をずらす決断によって少女でなく両親が死ぬ、というオチを予想しました。いやホント、あの位置攻撃してなんで親が無事なの?)。

 また、領空を米軍のドローンが我が物顔で飛び回るのは話が事前についてるにしても、国民に危害を晒すおそれのある「攻撃決定のプロセス」において、「当事国が一切関与しない」という描写はマジなんですか。つまり、友好国ケニアの少女を殺していいかどうかを、アメリカとイギリスだけで話し合って決める、という異様な状況を、登場人物が誰も疑問視しない。
 きちんと監修もついて、実際の軍事規定をなぞっているらしいんですが……「危険人物がいる」という理由だけで問答無用でよその国をぶっ飛ばすステルス」を、ギャグ扱いして笑ってましたが、まさか現実の運用がそうなるとは……笑えないわこれは。


 もうひとつは、全体的に軍人>政治家の描写ということ。
 政治家はいつも安全圏にいて、責任転嫁しか考えず、戦争はプロパガンダが優先であると認識し、一方で軍需品の輸出には熱心で中国人におもねる惰弱な存在として描かれます。
 人間的で正しい状況判断ができるのは、現実に即して問題を捉える軍人である。現場で働く軍人を馬鹿にするな。そういう論調になってしまっているのです。

 たとえ時間がかかり、愚かな決断となり、犠牲者が増えたとしても、「軍人の独断専行を許してはならない」「決断を下し責任を負うのは『国民の代表者』、ひいては主権者たる国民でなくてはならない」というのが、文民統制の最大の原則では? と僕は思うのですが、本作に登場する軍人たちは、そうしていちいちお伺いを立てることがどうも不満なようです。

 僕はあくまでこれを「風刺」と受け止めますが、修羅場も見たであろう南アフリカ生まれのギャヴィン・フッドは、もしかすると本気で「米英の軍人に全部任せるべきだ」と考えているのではないかと、少し不安になるのです。



ドローン・オブ・ウォー [Blu-ray] -
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2017年01月06日

2016年ベスト&ワースト


 あけましておめでとうございます。

 2016年は、映画党として実に良い一年でした。
 恒例のベストテンから始めます。順位付けしようにも、どうにもなりません。嬉しい悲鳴です。

ベスト10

1位/シン・ゴジラ
2016年、文句なくいちばん「スゴかった」作品。

1位/君の名は。
事実上新海誠に全振りしてきた、コミックスウェーブの忍耐が報われた感。

1位/この世界の片隅に
これを機に「戦争映画」の傾向が、少しでも変わってくれればいいと思います。



シン・ゴジラ -
シン・ゴジラ

君の名は。 宮水神社湯のみ -
君の名は。 宮水神社湯のみ

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック -
この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック


4位/帰ってきたヒトラー
見たときは、間違いなく今年ベストと思ったものですが。

4位/聲の形
必ず2回見るべき作品。最初は描写どおり石田くん視点で、2回目は西宮さん視点で。小学生西宮さんの意図がわかると戦慄しまっせ。


6位/レッドタートル -ある島の物語-
傑作なのに、世間の「ジブリブランド」の過大な期待のせいで不憫な結果に……あれ、「三鷹の森ジブリライブラリー」のブランドを移行させちゃダメだったんだろうか。

7位/PATLABOR REBOOT
一昨年のワーストの反動がないといえば嘘になりますが、見たかったものが見られて本当に良かった。

8位/ペレ 伝説の誕生
「世間の評価は低くとも、僕だけは高く評価する」作品は、例年ならもう少し高い位置につけるんですが、今年は層が厚い。

9位/たまゆら -卒業写真-
2016年いちばん泣けた作品。いやマジで。「このせか」は僕にとっては泣く作品ではなかったので。

10位/ロイヤル・ナイト -英国王女の秘密の外出-
最後の一本は、アーロorズートピアとかエクスマキナとかいろいろ横並びで選ぶのが難しかったですが、最終的には自分の嗜好を優先ってことで。



ワースト3

1位/カゲロウデイズ -in a day's-
ぶっちぎりで 2016年ワースト、という話はリンク先参照。

2位/明日の世界 -ドン・ハーツフェルトの世界-
こんなのあったっけ? ……これです。マジで、英語で念仏を2時間聞き続けて平気な方以外は、「記憶にすら残らない」作品。

3位/魔法使いの嫁・-星待つ人:前編-
世にはいろいろえげつない特典商法がはびこっておりますが、それは「『それでもしょうがない』と許してくれるファン層が構築されてはじめて成り立つ」という、あたりまえのことを見誤った作品。

 この下はペイ・ザ・ゴーストとかウォークラフトとかマネーモンスターとか、キリがなさそうなのでこのへんで。


 アニメに特筆すべき作品がなかった2015年と異なり、2016年はベストもワーストもアニメが多数を占めました。

 今年ですが、神山健治監督の「ひるね姫」が控えています。「君の名は。」以降のアニメ映画を占う意味で重要な作品になると思われます。
 が、自分は見なかったんですが、年末に彼が「総監督」名義でやったサイボーグ009の新作は、2012年版を上回る勢いで「セカイ設定」の念仏を唱える最悪な作品だったらしいです。また、「ひるね姫」公式サイトのストーリー紹介が「岡山県倉敷市」で始まるあたり「聖地巡礼需要に色気満々」とみえるとことか、地雷の匂いがぷんぷんします。そういう低い期待値を上回ってくれればよいのですが。

 では、またつらつら書きっぱなしにするかと思いますが、今年もよろしくお願いします。
posted by アッシュ at 17:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする