2017年04月17日

夜は短し歩けよ乙女

[80点]TOHOシネマズ新宿

 急に忙しくなって、更新滞りそうです……「人生タクシー」をいつ見られるかわからない……



 まず最初にすごく思うのは、湯浅政明監督が「デビルマン」を作るという話で。
 うがった見方かも知らんけど、超一流アニメ監督連れてきて/前哨戦にその監督の作品の新作を2本も公開/なおかつその2本が、「すでに評価の高い作品を作った座組」と「監督が好き放題やる完全新作」という組み合わせ、と、デビルマン映像化を再度企画として成立させるにはこれだけのみそぎが必要だったのか、と思わずにはいられず……。
 業が深すぎるぜデビルマン。


 で、まず公開されたのが本作。原作森見登美彦/脚本上田誠(劇団ヨーロッパ企画、個人的には「サマータイムマシンブルース」も忘れられない)と組んだ、週アニメの傑作「四畳半神話大系」とほぼ同一世界観の作品で、「黒髪の乙女」と彼女に恋する「先輩」の一夜の追いつ追われつ。……一夜のはずなのに一年が過ぎているキテレツな時間軸。

 いやもうスゴいわ。
 語彙乏しくって申し訳ないけど、湯浅監督の場合、どこがどうとか詳しく説明できる人そんなにいないと思うんで、許して。
 とりあえず、サイケで人智の想像及ばぬ凄まじいアニメーションが描き出すキテレツ時間軸に、大量の伏線とその回収を仕込んでなんら違和感なく、しかも重要なポイントは逃さず伝えてくる恐ろしい手際。
 見た目は全部無駄で大仰なことばかりしているように見えて、まるで無駄なところがないです。

 予告編を見ていて不安だったのは声優・星野源でした。どう聞いてもただのおっさんだったので。「聖☆お兄さん」はおっさんでよかったのだけども。
 坂本真綾→花澤香菜は、「乙女」のキャラが別物になっているので理解できます。「先輩」もだいぶキャラが違うとはいえ、四畳半神話大系における浅沼晋太郎の「こじらせた学生」演技は絶品なので、星野源が果たしてその域に到れるや否や。
 が、この作品って、実は乙女の方がメインで、先輩はあまり出番がない。少しずつ慣らしていって、ラストに一気に脳内会議、という弾けかたなので、納得のデキでした。あのシーンの浅沼晋太郎版も聞いてみたい気がしますけども。


 いずれにせよ、湯浅政明がいよいよメジャー級評価を受けはじめたようで喜ばしい限り。
 次の「夜明け告げるルーのうた」も楽しみです。一見してポニョみたいな設定に、わりと普通の話を載せてるぽいのが意外なのですが……さぁどうでるか。



マインド・ゲーム [DVD] -
マインド・ゲーム [DVD]
posted by アッシュ at 21:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月11日

バーフバリ 伝説誕生

[80点]@新宿ピカデリー

 あと3日しか機会がない。すぐに書きおおせねばならぬ。
 これが、この作品が、都心では1週間限定1日1回しか上映されないだと?!
 映画界馬鹿じゃねーの?!


 インド歴代興収ナンバー1、そしてインド映画で初めてアメリカでの週末興収ベスト10に入ったという、インドの古代叙事詩における伝説の戦士を描いた一大スペクタクル……とかいう惹句はこの際置いといて。

 ハッキリ言う。
 インド映画の主人公はだいたいみんなヒーローでイケメンだが、本作の主人公は突き抜けてイケメンである。
 よくありがちな貴種流離譚だのに、そのありがちなストーリーを、ここまで超カッコよく描写した作品にはそう滅多にお目にかかれない。境遇、性格、行動、戦いぶり、肉体美、女の手玉の取り方に至るまで、すべてのイケメンぶりに説得力がある恐るべきイケメンである。
 あらゆる女子は、壁ドンとか顎クイとか、そこらのスイーツなラブコメを見てる場合じゃない。ヒゲが生理的にダメというのでもない限り、絶対に今週中に新宿ピカデリーに駆けつけて本作を見るべきである。そして惚れよ。鼻血を吹け。高橋一生やら星野源やらジョニデやらあんなヤサくてチャラいの、どうっでもよくなること請け合いである。

 惜しむらくは、本作は、終盤の合戦シーンがヌルい。
 いや、本当はスゴいのだ。合戦全体を俯瞰し、作戦をきちんと説明した上で緻密に描写し、すべてのキャラクターに目配せをしつつ、大量のエキストラによる組んずほぐれつの迫力ある集団戦を演出するという、現代の日本映画の合戦なんか鼻毛で吹き飛ばす、ハリウッドでさえここまできちんとやっているのは少ないと思えるくらい、完璧な合戦シーンである。
 だがしかし、本作に限っては、(説明された作戦通りに進行するので)だいたい予想の範疇で収まる上に視点をあちこち切り替えるので、主人公のイケメン度が薄れる、という意味でヌルいのである。
 もっとイケメンぶりを見せよ! バーフバリ! バーフバリ!

 なお、本作は二部作の前半であり、がっつりクライマックスを見せた後にすさまじく完璧なヒキを入れた上で「次回に続く」である。日本で安易に前後編公開をやっている連中は土下座しつつ刮目すべきである。


 後半はせめてもっとちゃんと公開してくれ。頼む。
 あとできれば、今回かかっているのは例によって英語圏向けの編集されたバージョンに見えるので(明らかにブツ切られた部分がある)、完全版の公開もお願いしたい。



バードシャー テルグの皇帝 [DVD] -
バードシャー テルグの皇帝 [DVD]
posted by アッシュ at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月10日

GHOST IN THE SHELL

[65点]@TOHOシネマズ新宿

 あーっ! あーっ! なるほど。なんかこう、せつないというかはがゆいというか。
 言わずと知れたスカヨハ攻殻。すごくわかる。攻殻機動隊って、海外じゃこういう受け止められ方してるんだなって。

 この作品、ひとことでいえば「アメリカナイズされた押井版攻殻」です(まったく同じ構図がバリバリ出てきます。でもエンドロールに押井守の名はなかったような……大丈夫なのか?)それは結局、「ブレードランナーへの先祖返り」へ帰着している。

 博覧強記に裏打ちされた未来世界で、むくつけき男どもを従え圧倒的なハッキング能力を駆使してサイバー犯罪を制圧する、僕らの思う「草薙素子少佐」像の魅力からはほど遠い作品ではありますが、これまでのジャパニーズコンテンツの安易な取り込みとは少し違い、「欧米が需要とみなすのはそこではない」とはっきり突きつけられた印象です。
 ブレードランナーを嚆矢として、以降いくつも後追いで作られた、猥雑な世界観でストイックかつウェットに進行するダークSFの一亜種。その視点でとらえれば、よくできた作品といえるのでは、と思えます。

 そして、「アメリカナイズ」つまり欧米でマスに向かって売ることを意識したとき、攻殻機動隊の世界観で最も重要といえる、「自らを情報化してネットワークに溶かし、それをもってなお生きているとする」結末は選択できない、は前提であったのだと思います。生命と自我を切り離す思想は伝わらない、と。これはもはや宗教や倫理の国民性で語る域でしょう。
 押井攻殻で人形使いにダイブするシーンを模したラストで、はっきりと「それはできない」と言ってのけるだから、意図的というか明確な差別化というか……製作陣の側にも、本来の結末が特色でありオリジナリティたりうると理解する人もいたでしょうから、悔しさがにじみ出ているというか。
 フル義体なんだから、人種は無論、見目そのものすらまったく本質にないのに、ホワイトウォッシュ問題でも敵視されて評価を下げたというのもまた欧米的です。「攻殻機動隊」というコンテンツをもってしても越えられない、高い壁がまだまだ存在するのですね。


 個人的には、「そうなるのかー」と歯がゆく思いつつも、あるていどは予想の範囲内でしたし、本作が作られたことに満足してます。
 本作が出る前に、比較的ウェットな ARISE シリーズが挟まれていたのも、個人的な許容レベルを上げるのに一役買ったかもしれません。本作の吹替は田中敦子・大塚明夫のオリジナル座組と聞きますが、坂本真綾の方がウェット感が出たのでは(自分が見たのは字幕版)。

 ビートたけしの荒巻課長が、全編日本語で演技していたのはちょっと意外でした。違和感がなくて助かりました(ビートたけしは割舌が悪いので、英語字幕が出る方がわかりやすい。吹き替えでちゃんと馴染んで聞けたのでしょうか?)
 ただ、だとすると、あの世界では自動翻訳が普通に成立してる設定だと思うので、もっと各国語が飛び交ったほうが面白かったと思うし、ホワイトウォッシュの話も薄れたんでないのかな?

 最後に、この作品で最も dis りたい点。
 ラスボス多脚砲台が……デザインといい武装設定といい、戦闘アクションのスケールの小ささといい、おまけに、悪役がニヤニヤしながら単にリモコンで動かすだけの仕様とか、何十年前の発想だよというレベル。あれだけは、あらゆる士郎正宗映像化の最下層と言わざるをえません。



攻殻機動隊ARISE (GHOST IN THE SHELL ARISE) 1 [Blu-ray] -
攻殻機動隊ARISE (GHOST IN THE SHELL ARISE) 1 [Blu-ray]
posted by アッシュ at 17:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月07日

短評(レゴバットマン/ハードコア)


 今回は無理です……
 対決もので、両方がタイトルに含まれてるというと、記憶にあるのは……モンスターvsエイリアンくらい?



レゴ バットマン・ザ・ムービー
[50点]
@シネ・リーブル池袋
 実は前作も見てるんだけど感想を書いてません。ラストの展開に感動した人はいるようだけど、自分にはあれが最低限の予定調和にしか見えなかったんですよね。
 ……そうなると、「本当にレゴ組み立ててるならすごい」のだろうけど、CGまるわかりなアニメーションは単調で魅力に乏しく、スピード感でごまかされてる印象なのが正直なところで……。わちゃわちゃおもちゃを動かすのはアニメーションの原初だから、もっと魅力を出せるはずなのに、主人公がレゴ人形なために自分で表現に限界を作っているような……。

 本作は輪をかけて魅力に欠け、「レゴを組み立てる」面白ささえ完全抹消。ストーリーも「家族大事」の凡百パターンで(バットマンの孤独表現はちょっとよかった)、レゴ&アメコミのネタを笑えない人が見る価値はたぶんないと思われます。
 いやはや……まさかこの高速テンポのCGアニメーションで寝落ちした自分にビックリだ。ゴメン、バットマンはどうやって「ファントム・ゾーン」から戻ったの?

 次は「ニンジャゴー」らしいけど、もう見ないです……。
 というかそもそも自分はダイヤブロック派だったんだっ!



ハードコア
[60点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「観るではなく同期する」がウリの、ヘッドマウントカメラで撮影し、全編通して主人公の目線がそのまま観客目線となるPOV映画。……なんですが。
 この視点自体は、海外のゲームは今やほとんど全部そうと言ってもいいし、映画でも「DOOM」のように部分的に採用したものも多いわけです。「全編」になってどんなこだわりの差別化が図られたか……ってコレ……むしろ優位性をグチャグチャに壊してない?
 だって、ブッツブツにカットを切るんだもの、まったく体験の共有になってない。音声は継続してるのにカットは切れている、なんてシーンもやたらある。今の技術なら、カットを切ってもCG処理で長回しのように見せられるはずなのに、その措置も雑。
 また、何かを見たとき、対象を目に留め認識する「間」があるべきなのにそれがなく、何をしてるかわからないところが多すぎ。体に動きを覚えさせたスタント目線そのままでは? と推測します。白兵戦のシーンになると、「演技ではインパクトさせられない」ので、対象との距離感が変、という違和感も出てくる始末。
 ストーリーも、襲われて切り抜けようとしてピンチになると助けが入る、を何度も繰り返すワンパターン。総じて、同期どころか、「作品世界に没入させたくないのでは」と思うくらい、他人事にしか見えなくなってしまった、残念な作品です。

 逆に、ピンチの先に現れる「ジミー」のアイディアと、演じるシャールト・コプリーが素晴らしすぎて、もはや彼が作品全体を乗っ取ってるも同然の状態になっています。「彼主演で一本作ればよかったのに」と思うことしきり。



diablock BASIC 350 -
ダイヤブロック BASIC 350
posted by アッシュ at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月04日

わたしはダニエル・ブレイク

[50点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 んー、モヤモヤすんなぁ。パルムドールはまたこんな感じか。

 いやさ、これ、役所の論理のほうがすごくわかるもん。求職実績が証明できない者に、求職手当が出るわけないじゃないか。実直さとかテメェの尊厳とか関係ねぇよ。
 仮にかつてはそれが通じるはずの優しい世界だったとしても、経済情勢の悪化で、そんなワガママはもはや通せないと突き上げた連中がいるんだろう? そこで福祉を維持するために、より合理的なシステムを取り込まざるを得なくなり、職員やコールセンターの回線が削られ、厳格なルールが作られ、情に流される前例を作ることが禁じられたんだろうに。因果関係が逆だ。

 ちょっと面白かったのは、イギリスでは福祉の手続きがあらかたオンライン化されており、デジタルディバイドゆえにダニエルは福祉を受けづらい立場にあること。オンライン化が進まない非合理さが福祉の質を落とす日本とは、対照的だと思いましたね。
 とはいえ、ダニエルは「助け合いを知っている」んだから、チャイナくんに「君のビジネスに住所を貸すから、俺のオンライン手続きを最後まで助けてくれ」って言えば、この話全部終わりじゃないか。コミュニケーション能力がある人をわざとコミュニケーション不全に描いて「ネガティブな人間模様」を捏造する、ミヒャエル・ハネケと同じやり方。

 この作品で一番辛い立場にいるのは、両者の論理の板挟みになるアンで、正しい意味で尊厳を傷つけられたのは「ハリー」だと理解しなくてはいけない。「自分と同じ立場の者がいくらでも居るであろう」ことに思い至らないダニエルの不正直な態度によって、ハリーがどれだけ苦い思いをしたか想像せよ。

 それを考えもせずに、「わたしはダニエル・ブレイク」だ? どんだけ自分は特別だと思ってんだよ。おまえが生きているのと同じように、融通の利かない公務員は生きているし、庭に犬のフンまき散らすやつは生きているし、合理化の必要性につけこんで福祉を民営化して儲けたい事業家が生きているんだ。個人の集合が社会なんだよ。「個人は大事だ」「個性は大事だ」そんなもの全部、言挙げするまでもない大前提として飲みこんだ上に、「社会」を構築すんだよ。
 だからこそ、一人一票の民主主義に価値があるんじゃないか。行政に八つ当たりすんな、議員に言え。


 で、社会の変化についていけない俺様でも望むとおりに福祉を受けられるようにしろ! という内容を見てか、本作のチラシには左翼方面の有名人の大絶賛コメントがずらりと並んでいるわけですが、このような行政に怒ったイギリスの大衆が選んだのは結局「ブレグジット」、という事実は全力スルーなのが爆笑ポイント。
 現地の人のほうが、「逆の因果関係」をよく理解している、ということですなぁ。



 ソッチ方面の話になったから、ついでに、森友問題の個人的総括しとく。

 この問題、はじめから「贈収賄がない」「近畿財務局の措置が不正でない」ならば、誰も何も突き上げられるいわれがない。そしてその正否は、まだまったく定まっていない。確固たる前提に欠けているんだ。前提を間違えた議論は必ず結論も間違っている。時間の無駄だ。
 ブラックな臭いはぷんぷんするよ、でもそれを断じていいのはオマエラじゃない。裁判所だけだ。

 法の裏付けがない状態で、誰かを公に断罪せんとする行為、それは「人民裁判」という。まともな法治国家の住人なら、絶対に避けるべき行為だ。それを恥ずかしげもなくやっている連中が政治家を名乗っている。マスコミもそれに乗っかる人々も、助長して臆面もない。嘆かわしい。
 自分が政治家なら一秒たりとも関わりたくないし、関わってるとみなされるのはたとえようもない屈辱だし、ましてそんな奴らのお望み通りに情報を提供するなんて、恐ろしくてできない。

 今回政権側が、証人喚問から偽証罪の告発、という路線に乗せたのは、いい判断だと思う。これを「司法に委ねようぜという意思表示」の観点で見る人が少ないのに驚く。彼らだってやりたかないだろうが、このまま国会を空転させるよりはなんぼかマシだ。
 (たとえば「この問題」を知っている人がいま日本に何人いる? 食の問題だから、きちんと深堀すれば世論にはすぐ火が付くだろうし、農政問題だから世論が動けば自民党議員の離反も確実に見込める。安倍政権を追い詰めるにはうってつけのネタなのに、野党の幹部は、この法案が審議されていることすら知らないのだろうよ。)

 アキエもツジモトも現段階ではまったくどうでもいい。そんな程度のことを、予算委員会で問う価値が微塵でもあると思う人間は、狂っている。心底軽蔑する。
 国会でやるな、裁判所でやれ! 話はそれでおしまい!



愛、アムール(字幕版) -
愛、アムール(字幕版)
posted by アッシュ at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする