2017年08月17日

短評(ホームカミング/ファウンダー/スターシップ9/右目と左目で見る夢/裁き)


スパイダーマン ホームカミング
[80点]
@TOHOシネマズ渋谷
 言わずと知れたスパイダーマン。ソニーとマーベルが提携して、無事アベンジャーズ加入が成った、「シビル・ウォー」の直後から始まる再リブート。
 面白かったです。変な言い方だけど、今年の「君の名は。」たりうる作品。なんとなれば、めちゃくちゃテンポがいい。派手なシーンも地味なシーンも、細かいネタを入れつつ次へ次へまた次へと進めて、ちょっとやそっとのアラはさっさと押し流すと同時に、「先を知りたい」という渇きを的確に鎮めてくれます。若者層はこの速度でないとついてこないって、すごくわかってる作り。そのスピードの中に落とし込むあの「衝撃の真実」。それを超えた先の、苦みを含んだ少年の成長……。
 これでアメリカの学生のパーティー文化、なんてのがメインプロットでなければ、日本でももっとぐわーっと盛り上がるんだろうけどなぁ。

 ところで主演のトム・ホランドの Wiki 見てたら、映画初出演が「借りぐらしのアリエッティ」英語版の吹き替えだったってマジですか。


ファウンダー
[65点]
@角川シネマ新宿
 ホームカミングで悪役を演じたマイケル・キートン主演で、田舎のハンバーガー屋だったマクドナルドを世界最大のフランチャイズチェーンに築き上げた、レイ・クロックの一代記。……ていうか、彼が時代の変革をもたらす陰で貫いたえげつないまでの上昇志向を、余すところなく描いた作品。日本人的には後味悪いけど、アメさん的にはマクドナルド兄弟の方が固陋で愚かな敗者として、バランス取れて見えるんだろうなー。


スターシップ9
[65点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 スペイン・コロンビア合作のSF。移民のため旅立った宇宙船にトラブルで一人取り残された女性のもとへ、修復のため一人のエンジニアが現れる。規模的にもネタ的にも「月に囚われた男」を彷彿とさせる、宇宙の閉鎖空間を舞台にした小品、と思いきや……。
 凝った設定にも関わらず、説明セリフが要所要所にとどまり、雰囲気で理解させようとしている印象があり、個人的には物足りない印象があります。ただその「雰囲気」は絶妙で、少なくとも日本人には、こういう「暗さ」をまともに演出できる映画監督はいないよね。気鋭のスペイン人監督、とのことですが、これは一度大作を見てみたい感。


山村浩二アニメーション 右目と左目で見る夢
[55点]
@ユーロスペース
 久々の山村浩二短編集。今回は、「依頼を受けて」とか「共同制作で」という作品が大半で、山村作品の一番の魅力だと思う暴力的とも見えるイマジネーションは薄かった印象。縦長のビル向けのプロジェクションマッピング用映像を映画館で上映、ってのは斬新なのか苦渋の策なのか?


裁き
[70点]
@ユーロスペース
 インド発の法廷映画。といってもクライム・サスペンスではなく、またボリウッドスタイルも排して、ガチガチの固定カメラで、ある裁判の顛末とそれに携わる人々の日常を切り取っていく作品。インド映画も新たなステージのものが日本に入ってくるようになってきたようです。
 解説によるとカーストの問題もあるようですが、要は、民衆を歌でアジる扇動家をなんとか牢に入れたい検察側が、「おまえの歌の歌詞を真に受けて自殺した奴がいる、自殺幇助だ」と日本人的には無茶にも程がある難癖で逮捕、その無法と争う弁護士の物語。

 左翼さんたちはこの作品を、いわゆる共謀罪と絡めて権力の横暴うんぬんと喧伝するでしょうが、それ以前に日本は、国会を人民裁判所扱いしても誰も疑問視しない恐ろしい国で、まず先に「司法に対する信頼」を構築しないことには、この手の横暴は正されません。この作品の、判事も検察も人間であることをきちんと描写する誠実さこそ、見習いたいものです。



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posted by アッシュ at 16:49| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月08日

ブレンダンとケルズの秘密

[80点]@恵比寿ガーデンシネマ

 「ソング・オブ・ザ・シー」のヒットを受けて、トム・ムーア監督の長編デビュー作が日本公開。中世アイルランドを舞台にしたファンタジー。

 見ての感想。

 ヤバい。「スゴい」を通り越して「ヤバい」。

 僕がこれまで見てきたアニメ映画の中で、最も絵画的で美しいアートアニメーションのひとつ。ユーリ・ノルシュティンやミッシェル・オスロ監督に比肩します。これを欧米公開当時に輸入できなかった日本の業界人の見識を疑います。
 「ソング・オブ・ザ・シー」も美しかったですが、ここまでの感慨はなかったですね。ただそれは、かの作品では兄妹の行く末に思わず手を握っちゃってそっちに意識が囚われていたせいでもあり、本作はストーリーにはそこまで引き込まれません。

 というか、「子供向け」にしようとしてか、ややチグハグな印象を受けます。
 キャッチコピーに反して、別に世界を救うとか救わないとかなくてヒロイックなカタルシスには欠け、その意味ではバッドエンドとしか言いようがない展開はどうなの……。
 一方で、あんなに恐ろしく描かれるバイキングたちが、最終的におじさんを生かし塔も破壊もしないあたり、ずいぶん優しい侵略だなぁと……。
 「ペンは剣よりも強し」的な意味合いもあるんだろうけど、あの人たちがやってるの、その意味での「ペン」ではないよね? 文化を守ろうとする行動は、おじさんの方が確実に正しいよね?


 なので本作は、ひたすら見惚れる作品となっております。ファンタジーに興味のある方は必見でありましょう。
 物語のモチーフとなっているアイルランドの国宝「ケルズの書」を範にした、徹底した細部までの描きこみ。そしてそれがアニメーションする脅威。
 ブレンダンとアシュリンが樫の実を探して森をゆくシークエンスが絶品です。うまく説明する語彙がなくて困るくらい「美しい」のひとことです。虫がいっせいに飛び立つシーンは鳥肌立つかと思いました。あと、クロム・クルワハの眼を奪う戦闘シーンも素晴らしかった。「ヴォルフィード」思い出した(笑。

 ともあれ「ソング・オブ・ザ・シー」と併せ、もう一度見てみたい、そして世界に溶け込みたいと思う作品です。


 あと思ったこと。
○仲間の修道士に明らかに黒人がいるのは、最低なポリコレ配慮かと思ったら、当時のアイルランドはキリスト教圏すべての地域から留学僧が集まってたそうで、本当にいたかもしれないらしい。

○「オオカミの妖精」がおめめくりくりなロリっ子という発想は、何から着想を得てそうしようと思ったのか、おじさん怒らないから言ってみ(笑?



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posted by アッシュ at 16:17| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月03日

心が叫びたがってるんだ。(2017実写版)

[75点]@TOHOシネマズ新宿

 わりと早めに見ていたのですが、地上波放送されたアニメ版も再見しての感想。アニメ版の頃から実写で作るべき題材だと思っていましたが、当たりでした。
 アニメの方を高く評価しがちな当ブログですが、本作に限っては「実写>アニメ」。とはいえ、どちらも良いです。


○実写版の何がいいって、脚本の徹底したブラッシュアップ。アニメ版の感想で「『気持ちを言葉にすること』に徹底して突っ込んだ」と書き、とかく「言葉」の量がハンパなかったわけですが、実写版はその点でウザいところがありません。
 しかしちゃんと同じ内容になってる、それどころか、アニメ版でごちゃついたり勿体をつけた部分を、丁寧に解きほぐしてわかりやすくしており、理解がスムーズです。卵の妖精をオミットしたのはナイス判断。

 ただ、アニメ版の饒舌さこそがこの物語の本質、とも考えられ、そこを捨てて平板な青春群像劇にしてしまった、という見方もありそう。もともと起伏の浅いストーリーだけに、アニメ版を知らない人にはやや単調だったのでは? という印象もあるのですが、初見の方はどうだったのでしょう(てか、初見の方はあの「キャッチコピーでネタバレ」をどう思ったのか……全面的に「アニメ版見てるの前提」で作ってたのかもな……)
 また、タイトルの前後の時間経過に何の説明もないのはちょっとボーンヘッド過ぎて、序盤はどうなるかと思いましたぜ。

○アニメ版ではわちゃわちゃオーバーなボディランゲージをさせた部分を、芳根京子の演技力に全振りした点はやはり実写の良さ。
 →だからエンドロールの最初がなんで「中島健人」やねん、ちゅうの。
 →演技全振りなのに、なぜか容姿をアニメに寄せようとしすぎて髪型が変。あれじゃまるで太ってるのをごまかすAV女優じゃん?

○最近の実写では、主役級はキャラが立っててもサブキャラやモブが壊滅的で素人演技丸出し、というのがありがちですが、本作はそれがありません。野球部の山路くんの存在感がすごい。というか、野球部サブプロット全体に存在感が増してる。

○クライマックスのミュージカルシーン、アニメ版では過程にも内容にも、高校生にできるの? 的な不自然さがありますが、実写版にはあまりありません。むしろ、「田崎もっと真面目に踊れ!」みたいな生身ならではのリアリティがあって、親近感高いです。


 一長一短というか、アニメはアニメらしさ、実写は実写らしさを意識しているようで、どちらも良いので、比較して見るのオススメです。


 ……ところで、水瀬いのりはどこに出てたんでしょうか。



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posted by アッシュ at 12:43| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする