2017年08月08日

ブレンダンとケルズの秘密

[80点]@恵比寿ガーデンシネマ

 「ソング・オブ・ザ・シー」のヒットを受けて、トム・ムーア監督の長編デビュー作が日本公開。中世アイルランドを舞台にしたファンタジー。

 見ての感想。

 ヤバい。「スゴい」を通り越して「ヤバい」。

 僕がこれまで見てきたアニメ映画の中で、最も絵画的で美しいアートアニメーションのひとつ。ユーリ・ノルシュティンやミッシェル・オスロ監督に比肩します。これを欧米公開当時に輸入できなかった日本の業界人の見識を疑います。
 「ソング・オブ・ザ・シー」も美しかったですが、ここまでの感慨はなかったですね。ただそれは、かの作品では兄妹の行く末に思わず手を握っちゃってそっちに意識が囚われていたせいでもあり、本作はストーリーにはそこまで引き込まれません。

 というか、「子供向け」にしようとしてか、ややチグハグな印象を受けます。
 キャッチコピーに反して、別に世界を救うとか救わないとかなくてヒロイックなカタルシスには欠け、その意味ではバッドエンドとしか言いようがない展開はどうなの……。
 一方で、あんなに恐ろしく描かれるバイキングたちが、最終的におじさんを生かし塔も破壊もしないあたり、ずいぶん優しい侵略だなぁと……。
 「ペンは剣よりも強し」的な意味合いもあるんだろうけど、あの人たちがやってるの、その意味での「ペン」ではないよね? 文化を守ろうとする行動は、おじさんの方が確実に正しいよね?


 なので本作は、ひたすら見惚れる作品となっております。ファンタジーに興味のある方は必見でありましょう。
 物語のモチーフとなっているアイルランドの国宝「ケルズの書」を範にした、徹底した細部までの描きこみ。そしてそれがアニメーションする脅威。
 ブレンダンとアシュリンが樫の実を探して森をゆくシークエンスが絶品です。うまく説明する語彙がなくて困るくらい「美しい」のひとことです。虫がいっせいに飛び立つシーンは鳥肌立つかと思いました。あと、クロム・クルワハの眼を奪う戦闘シーンも素晴らしかった。「ヴォルフィード」思い出した(笑。

 ともあれ「ソング・オブ・ザ・シー」と併せ、もう一度見てみたい、そして世界に溶け込みたいと思う作品です。


 あと思ったこと。
○仲間の修道士に明らかに黒人がいるのは、最低なポリコレ配慮かと思ったら、当時のアイルランドはキリスト教圏すべての地域から留学僧が集まってたそうで、本当にいたかもしれないらしい。

○「オオカミの妖精」がおめめくりくりなロリっ子という発想は、何から着想を得てそうしようと思ったのか、おじさん怒らないから言ってみ(笑?



ソング・オブ・ザ・シー 海のうた [Blu-ray] -
ソング・オブ・ザ・シー 海のうた [Blu-ray]
posted by アッシュ at 16:17| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする