2006年01月22日

ランド・オブ・プレンティ

[55点]
 目黒シネマのお目当てはこっち。去年見たかったけど見損ねた作品です。

 この作品はちょっと他人のふんどしに乗ります。その内容の都合上、このエントリは全面的にネタバレですので未見の方はご注意。



 まぁ、どことは特定しませんので適当に探してください。この作品に対するあるサイトの批評はこんな風に締められています。

>このラストシーンで、ヴェンダースはテロの脅威など、所詮は米国政府が作り上げた幻影だと断言する。しかし、今現在も世界のどこかでテロリストは爆弾を爆発させているのだ。ヴェンダースの世界への見識はあまりにも甘いといわざるを得ない。

 いや、このサイト、ものすごく偉そうな文体で洋画をなで切りにしてるわりに、国際情勢についての基礎常識が皆無に近いのではっきり言って笑えます。いちばん笑ったのは「ポーラー・エキスプレス」で、「サンタを子供に信じ込まそうなんて非科学的過ぎる」と言い切ってます。アメリカはキリスト教の国なんだからあれでいいんだって。

 さて、このサイトの「ランド・オブ・プレンティ」評。
 恐ろしいことに、主要キャラの経歴について、「ポールが過剰な愛国者である」としか触れません。おいおい、この作品を批評するのに、

・ラナはアメリカ生まれだが、親とともにアフリカ→イスラエルと移住して、コミュニストの母の死を契機に帰国したばかり
・ポールはラナの伯父にあたり、ベトナム帰りで、戦闘の影響で心身を病んだ経歴あり。コミュニストの妹と不仲だった

 この2点を外したら意味ないだろ!

 ポールは、ある男の遺体を、その兄の住む砂漠の街へ届けることになります。その家族がみなアラブのテロリストであり、街にアジトがあるに違いないと疑ったからです。この旅が、物語の中心です。
 その途上、ポールは「俺たちは勝った」と言い切ります。ベトナムで、冷戦で。ポールはアメリカは強い国だと言います。ベトナム戦争が事実上アメリカの惨敗だったことは歴史が知るとおりです。
 ラナはそれに答えません。彼女はパレスチナの友人とメールやチャットをかわしています。その中では、男の子の話もしますし、草の根レベルではアラブもイスラエルもパレスチナもないことをさらりと描いています。

 そして、ポールがテロリストだと疑った男の兄は、「弟を連れてきてくれてありがとう」と言ってうれしそうにポールを抱きしめます。その弟は、すでに遺体だというのに。
 その後、ポールはラナが届けた妹からの手紙を初めて読みます。その内容を要約するなら、「娘を頼みます」と、それだけだったのです。

 ラストシーンのグラウンド・ゼロは、テロの脅威を過小評価しているのではなく、アメリカ人が愛国心をいくら高めても無意味であると警鐘を鳴らしているのです。
 あなたの愛国心で、このイスラエル帰りの若者の心を揺さぶることができるのですか、と。あなたの愛国心で、かのイスラム教徒の胸の内に入り込めますか、と。
 グラウンド・ゼロは、テロへの怒りの象徴とするには、小さすぎるのです。

 しかし、前半が著しくタルいのは同感。ていうか、「死んだ男を兄の家まで運ぶ」というだけの話が2時間10分に引き延ばされてるんですから、主義主張以前の問題で、はっきり言って苦痛です。耐えられずに寝ました。
 苦手です、こういう、序盤からじわじわじわじわ細かい描写を積み重ねて高めていって、終盤でガシッとまとめるタイプの話。
 僕の場合、序盤にツカミのエピソードを置いている、「世界に引き込む」という意識の高い作品が好みです。あぁ、その意味では、「ホテル・ルワンダ」も苦手な部類なんですよ、実際。
posted by アッシュ at 01:58| Comment(0) | TrackBack(2) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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