2011年04月15日

塔の上のラプンツェル

[80点]@シネマイクスピアリ

 109シネマズ川崎が再開しないので、さて本作をどこで見ようかと考えた結果、ディズニーのお膝元のここにしました。ディズニーランドはまだですが、イクスピアリは再開しています。
 液状化による舞浜駅前の陥没はひどい有様ですが、「建築物や路盤はほとんど平気」という、日本の土木建築技術の凄みも垣間見られますので、一度見ておくとよいかもしれません。
 ……つか、南関東最大の被災地である浦安の映画館が復活してんのに、ホント109川崎は何やってんの?


 さて。
 この個性の多様化した現代社会、「世界中の老若男女に例外なく受けるキャラ」を作るのは至難のワザです。まして「ディズニープリンセス」の冠を戴くとなれば、制作側にどれだけのプレッシャーがあるでしょうか。「受け身でプリンスの登場を待ってるだけ」のプリンセスなど作ろうものなら、それだけで総攻撃を受けそうです。
 「プリンセスと魔法のキス」は、プリンセスを黒人にした時点で、普遍性を捨てています。ていうか、本作のプログラムにはディズニーの長編アニメーション50作がすべて記載されているんですけど、よくよくみると、普遍性が意識された「ディズニープリンセス」って、甘く見て「美女と野獣」、厳密に考えると「眠れる森の美女」まで遡らなきゃならないんですね。ちょっと驚きました。
 (「普遍性」という表現はかなり微妙ですが……「老若男女に例外なく愛されるキャラクター」は、社会的に被支配・被差別の側にいてあわれみを呼び起こす存在ではいかんと思うのですよ)


 しかし、やってくれました。
 ディズニーは渾身の作り込みで、現代に許される最強のプリンセス造形を成し遂げた
と思います。
 ラプンツェルは根本的に「見た目が可愛い」です。金髪です。瞳はエメラルドです。スポンジボブを連想するほどくりくりです。服はピンクです。ほどよく肉付きがあってかすかにエロスです。
 ラプンツェルは「設定が可愛い」です。18年間幽閉という、徹底した純粋性が潔く、そこから抜け出したいと思う動機も鮮やかです。
 ラプンツェルは「行動が可愛い」です。夢見がちでアクティブで、後ろ向きになっても卑屈や受け身にはならない自我の強さが現代のキュートさでしょう。

 この可愛い可愛すぎるプリンセスが、予定調和として恋を知り、当然の帰結として成就させる、その瞬間の映像の美しさたるやもう筆舌に尽くしがたい。必見超必見。

 まじめな話、「震災翌日の公開」というかたちになってしまって興行は振るわないのでしょうし、ディズニーランドが閉園のまま人も余っているのでしょうから、いっそディズニーは被災地の避難所に出向いて、この老若男女誰でも見られる美しい作品を無料で公開して回ればいいのです。「ディズニーの新作」を拒む理由はありますまい。
 ……洪水のシーンがあるから、ちょっとまずいか。うーむ。


 とはいえ。
 ラプンツェルというプリンセスを最高に研磨するために。
 それ以外の部分に限界があったようにも思います。

 スタッフのぎりぎりまでの努力は見えます。
 フリーダムなプリンセスを支えるため、王子には王子の役柄を与えませんでした。しかし本体である「ユージーン・ハーバート」を描かないことで想像力の余地を持たせています。
 プリンセスストーリーに欠かせない「白馬」にコミックリリーフを与えたのは慧眼。彼の出てるシーンは例外なく面白かったですね。

 やはり惜しいのは「魔女」。18年間幽閉されていた子供がアクティブに振る舞えるのは、彼女が世界とそこにある常識を過ちなく教えていたからに他なりません。彼女が母としてラプンツェルにどれほどの愛を注いでいたか、物語の底にしっかりと根付かせたのは、それもひとつの現代的な作り込みでしょうが。
 けれど、プリンセスストーリーでは、悪い魔女は死に二度と現れてはならず、プリンセスはそのかりそめの母のことをきれいさっぱり忘れなくてはいけないのです。
posted by アッシュ at 01:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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