2011年06月07日

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[90点]@109シネマズ川崎

 傑作。超傑作。
 ただし、
 山下敦弘作品経験者限定。

 山下敦弘(または向井康介)のストーリーテリングがこういうもんだと知ってないと144分の長尺は死ねます。実際、隣のおっさんは爆睡してました。まして本作は「ターゲットを微妙にずらす」ところに製作の着眼点がある作品だけに、「普通の娯楽映画」と比較すると、とらえどころのなさが際立っているように思います。
 でも、空気を切り取る天才・山下敦弘が「社会全体」を意識して「空気」を作った意欲作には間違いないので、「リンダリンダリンダ」あたりで予習してから本作を是非。


 本作が「妻夫木くんのorマツケンの新作」とか思って見に来た女性客の皆さんがどういう感想を持ったのか知りたいですね。「いつプロローグが終わるのだろう」と思い、ふたりが出会うシーンあたりで「えっ、もう映画始まってたの?」とびっくりしたんじゃないでしょうか。時代背景なんてもうファンタジーの世界だろうし。
 ただ、本作は、従来の山下作品と比べ「顔のアップ」が多く、表情の演技で世界を構築しようとしているので、彼らの競演はホント迫力があります。若手随一の名優であることに疑いはありません。この点、女性客の皆さんも満足だったのではないかと。

 一方で、あの当時に学生時代を送った世代はどう見たのでしょうか。空気の寒々しさに違和感があるんじゃないでしょうか。いや、でもそれ「表現がおかしい」のではないからね。
 この作品は、明らかに、学生運動が完全に下火になってからの、大学入学したらサングラスにヘルメットの奴らがうろうろしてて、「何をあいつらアホなことしてんだろう」と冷めた目で見ていた世代の感覚がベースです。「『当時の若者世代には熱い空気があった』というのはまるっきり筋違いだったんですよという空気」を、当時に似せたざらついた映像の中に完全再現しています(小道具やセットの作り込みまで圧巻!)。これはもう山下敦弘の非凡な才能の発露と言うしかない。

 当時の残滓を引きずって、改革/革命みたいな言葉だけ精神の根っこに残した結果、まともな神経で考えれば明らかに実現不可能な公約を丸呑みにして民主党に投票したような連中は、全員この映画を見るべき。そして泣ける男になれ。


 なんと、127スクリーンもの公開だそうですよ。
 どう考えてもミニシアターでロングラン、というタイプの作品なのにスタートダッシュを強制されてしまうのは悲しい。当然のように不入りで、今週、一気に上映回数が減ってますね。レイトショーは長めにやってくれると思うんで、お見逃しなきよう。
posted by アッシュ at 09:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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