2006年09月09日

太陽

[70点]銀座シネパトス

 自分が、初めて「昭和天皇の人柄」というものに触れたメディアは、「南方熊楠の伝記」でした。彼が、昭和天皇に献上する標本を、キャラメルの箱に入れたエピソードはよく知られています。彼は天皇陛下を同じ生物学者として扱ったのでしょうし、陛下もそれを受け入れたのでしょう。
 今思うと、南方熊楠のリベラルさの方が特別なんですけどね。このあたり、本作に登場するオーロラのエピソードに登場する科学者と比較してみてください。

 だから、僕にとって昭和天皇とは、「現人神だった」という過去を知る以前に、「学者」でした。天皇は、人間であり、学者なのです。はじめから。
 「戦争」という観点であっても、王として祭り上げられ、感情を潜めつつ、戦争を近く遠く見据えなければならなかった「人物」として見るのが、当たり前のことだと思っています。


 この作品は、とても優れた、美しい映画です。
 ただ、何ら驚くには値しない。天皇という一人物の、終戦の直前直後の日常を、ごく当たり前に切り取り、ごく当たり前に描き切っているに過ぎない。その意味で優れた映画なのです。
 このごく当然の映像に対して、日本人がなぜナーバスにならなければならないのか、僕には理解できません。

 だからこそ、最後のやりとりが、とても、とても痛いのですが。


 前半に顕著だった、過剰にモノマネな演技がやや惜しい。逆に、モノマネであるがゆえの奇妙な部分───戦時中の彼の年齢を考えれば、あんなもっさりした動作やセリフは不自然です。もっときびきび動き、しゃべって然るべきでしょう。皇后とのやりとりも含め、「戦後の、晩年の映像から」切り出して作った感じがします。
 あと、どのタイミングで戦争が終わったのか、はっきりさせてほしかったのはワガママでしょうか。ロシア人である監督は、玉音放送にそれほど価値を見いださなかったのでしょうが。
posted by アッシュ at 23:43| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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