2006年09月16日

明日の記憶

[80点]@丸の内TOEI(銀座)

 いつぞやこちらで「怖い映画」と評されていて、いっぺん見ておきたかった作品が、なぜか東映の本拠地ともいえる丸の内TOEIで、1300円で本日より再上映。
 いやー、助かりました……、って、なんでいきなり?

 館内のスタッフの方に聞いてみたところ「再上映のご要望がたいへんに多かったので」という教科書通りの回答が得られましたが、まぁ邪推するに、朝の銀座に「アキハバラ@DEEP」はムリがあったってことなんでしょう。
 しかし採算合う合わないって話なら、あの広さと客数に接客スタッフだけで8人もいるってことの方にもっとムリがありまして(3人いれば十分な状況)、昨今の東映の迷走ぶりを物語っているかのようでした。

 館内は広々。スクリーンが大きくて高い位置にあって快適。
 座席もシネコン型で良好。カップホルダー・傘立てあり。
 映画館としては、抜群……と思いきや。
 予告編が始まったとたんに、私は、あれ? と首を傾げました。「音が前からしか来ない」のです。この作品は音の使い方がよいだけに、もったいない感がありました。
 普通、横や後ろにもスピーカーってあるものじゃないの? っていうか、あるけどバランスが悪い……ってこと?
 自分は音響をめったに気にしません。それでも気になるというのは、よほど酷い水準なんだと思います。どーなの、実際?

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 さて。
 この映画を、感動大作、でくくりたかったら、ふつう「娘の結婚式」のシーンか「退職」のシーンで終わらせるでしょう。
 でも、この作品はそれで終わらない。
 題材となっている、若年性アルツハイマー病がじわじわと進行していく過程を、逐一───えっ、どこまで描くの───逐一───えっ、まだ終わらないの───逐一───えっ、そんなとこまで描くの───逐一、描き切っています。

 えぇ。
 怖いですよ、この作品。
 この作品には、感動は用意されていますが、制作者たちはそういう普通の感動で観客に「満足感を与える」ことをかなぐり捨てて、アルツハイマー病に真摯に向き合い、真摯に伝えようとします。その制作意図自体が、すでに怖さをはらんでいる。
 真摯に向き合うと、病気になって、それで生きてくって、それだけで十分怖い話なんですよね。フィクションばっかり見ていて、不治の病とか事故とか怪物に食われるとか、「とりあえずお話の都合で伏せったり死んだり」ってのばかり見ているとつい忘れがちなんですけど、本当はこういう、真摯なもののはずなんですよね。
 この真摯さをいちばん吐き出しているのが渡辺謙。企画者本人でもある彼の鬼気迫る好演は、ぜひラストサムライやバットマンしか知らない海外の人に見せたいなぁと思ってしまいました。


 脇役では、及川光博と香川照之。個人的には、「ゆれる」よりこちらの香川照之の方が断然味が出てました。

 難点は、CGの使いどころに若干場違いな部分があったこと(最初の、時間の巻き戻しだけはカッコいいんですけどね……)と───。
 非現実なシーンを挿入して主人公の心理を固めるというフィーチャーは、この作品に関してはすべて興をそぐ蛇足だったといっても過言じゃないでしょう。あんなのを何分かけて提示しても、樋口可南子の一瞬の表情や一発の啖呵にかないっこないことぐらい、どうしてわからなかったのかな。
posted by アッシュ at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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