[85点]@有楽町スバル座
おまえら、「パシフィック・リム」なんか見てる場合じゃねぇ!
……まあ、パシフィック・リムのような作品があってこそ本作のような比喩が成り立つわけなので、一概にディスってもいかんとは思うのだけど、「ロシア製のロボット映画」……なんぞという惹句を軽く蹴飛ばすすさまじい戦争描写が圧巻で、パシフィック・リムよりよほど迫力ある映像を見た実感があります。
凄い作品です。必見。
ちなみに、出てくる武器・兵装はほとんど「実物」だそうです。
(それにつけても本作の宣伝はひどかったねぇ。ただ、公開時期が「パシフィック・リム」と重なったから、戦略的にはうまかったのかもしれない。自分自身、「ロボット」が強調されていなかったら、見に行ったかどうか微妙だし。ゾンビ映画だと知ったからワールド・ウォーZは見に行く気なくしたし。
本作における「ロボット」は、子供の想像の産物として出てくる存在で、別にロボットが戦争する話ではないんですよ。ただ、「想像力による比喩」として素晴らしくうまく扱われているので、「ロボット映画」としても見事な傑作であることは論を俟ちません)
ロシア-グルジア間で2008年に発生した、いわゆる「南オセチア紛争」に巻き込まれる母子の話。別れた夫の生家へ幼い息子を遊びに行かせたところ、その地が突然戦場になって取り残されてしまう。母親が単身、戦地へ救出に赴く……というストーリー。
ほとんどの戦争描写を「非戦闘員たる母親の視点」で描いていることが、「突然町が戦場になる」の描写のリアリティを強くしています。そして、「なぜこんなことになっているのか」がほとんど不明瞭なまま、事態だけは刻一刻と変化(ほとんどは悪化)していく流れのプレッシャーがハンパありません。
このあたりは、戦争映画の大傑作「イノセント・ボイス」に通じる凄みがあります。
そんな中に、ときにFPSかガンシューティングのような、兵が無機質に人を殺傷していくアングルのシーンや、ときに机上でしかものを見ていない軍議のシーンがあり、またときとしては、それでもやはり「人が住み、生きている」ことの確かさを示すシーンがあるのです。
そのようにして、多角的に網羅されていく「戦場」。
でもそれは、これまで平和に生きてきた「子供」の目にどう見えるのか。
ともあれ、「戦争映画の新たな傑作」と評して間違いないと思うので、皆様ぜひ公開されているうちに映画館へ。
あと、序盤の母親の「恋の顛末」だけでもけっこうな傑作。あのエレベーターのシーンひとつで、下手なラブロマンス映画を軽く蹴飛ばせるよね。カッコいいというか何というか、この映画にあのイベントを放り込む胆力が凄ェと思った。
ここな傑作が、関東でわずか四館の公開、旗艦のスバル座が一週間限定って何それ……他の館もいつまでやってくれるのだか。
それにしてもスバル座は久々。なんと、これ以来。
あの贅沢な立地で、しかしあの地味なラインナップで、未だに興行を続けてられるというのがすげぇ。調べてみると、会社はもうほとんど建設会社みたいなもんらしい……意地とプライドでしょうなぁ。
2013年08月17日
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