2013年11月11日

サカサマのパテマ

[65点]@角川シネマ新宿

 まず思うことは。
 本作の配給はアスミックエースですが、製作委員会を見るとカドカワが名を連ねてるんですよね。だったら、もう少しうまくやれなかったかなぁ。
 「アップサイドダウン」と同日公開にして、今重力反転ブーム! とか日米重力反転対決! みたく煽れば相乗効果が見込めたと思うのになぁ。


 さて。
 惜しい作品です。もったいないです。吉浦康宏監督はアイディア一点突破型で、表現については発展途上である……とは「イヴの時間」で書いたことですが、今回もそうなりました。
 サカサマ世界のアイディアを生かし、ひたすら垂直方向へ展開するアクションや物語のダイナミズムはすばらしかったと思います。あと、パテマが空に落ちないようにするにはどうしても手つないだり抱きかかえたりしなくちゃならんので、その「密着感」というか、素直なスキンシップがほほえましいというか何というか。

 ……つーか、そこらへんしか誉めるとこないかも……アイディアを生かすための世界作りが、よくいえばターゲット層の感覚に合わせて、悪くいえば中二病の妄想にとどまるレベルで簡略化されていて、足りてない部分が多すぎです。ツッコミどころ探し出すとキリがないのでやめます。


 そして、この作品でいちばん「うまくないなぁ」と思わされたことは。

 この作品は、「映像の視点」は、エイジとパテマ両方にあり、どちらの視点に立つかで重力により映像の上下が反転します。
 また、「物語の視点」は基本的にエイジにあります。「エイジが」パテマを受容して、束縛から解放され相互理解に至る物語です。観客は、エイジに感情移入することが前提となっています。
 ですから観客にとっては、「エイジの視点=正」「パテマの視点=逆」ととらえるとわかりやすいはずなのです。

 にもかかわらず、「物語」をパテマ視点で始めてしまうのは、なんで? これは、「パテマの視点=正」です、と主張する行為でした(彼女がお姫さまでどうとかって、結局話に関係ないのに)。
 しかしその後、物語は「エイジの視点=正」になります。エイジとポルタの共闘が始まるあたりまでは、どちらが正しいのかわからない混乱のまま、映像の上下反転が繰り返されるために、無重力に放り出されたような不快感を味わうことになりました。

 世界観を総合して考えると、最終的には「パテマの世界=正」になるのはわかります。だから、意図してそうしたのかなとも思います。同時に、吉浦監督自身がパテマかわいいって感情移入してて、彼女の日常を少しでも描写したかったのだろうと察します。
 ……「観客にとっては初めて触れる世界だ」ってことを忘れてるんじゃないかな、と。

 「アップサイドダウン」では、物語の視点は完全に主人公固定、映像の視点も主人公の感じる重力方向に原則固定されており、主人公の視点と観客の視点はほぼ同一視できます。これにより、混乱は一切なく、重力反転のダイナミックな映像がストレートに伝わってきました。
 この作品も、エイジ視点を原則として、たまにパテマに移る、とした方がすんなりしたと思うんですよね。

 あるいは、「ポルタ視点」とかで三人称的に説明していった方が、意外にこの物語はまとまったんではないかとも思います。「あんなに密着してー」と、最初から最後までほぞをかみ続けることになってしまいますが(笑



イヴの時間 劇場版 期間限定スペシャルプライス版 [Blu-ray] / 福山潤, 野島健児, 田中理恵, 佐藤利奈 (出演); 吉浦康裕 (監督)イヴの時間 劇場版
posted by アッシュ at 22:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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