2014年05月19日

WOOD JOB! -神去なあなあ日常-

[70点]@109シネマズグランベリーモール

 実は僕は三重県出身なのです。
 矢口史靖監督が三重県を舞台にして映画を撮ったとなれば、これは見に行かねばと。しかも、現住所が川崎なので、なお身近な映画であることが発覚する結果に……(序盤で主人公がうろつく商店街や十字路は川崎駅前)
 こんなこともあるんやなぁ。

 内容的には、とにかく人里離れた山の中という描写で、三重県独自の何か、というわけではなかったのですが、出身者として、方言は気持ちよかったですね。関西弁なんだけど、大阪とはちょっと違って柔らかい伊勢の言葉は、こういう牧歌的な映画によく合ってたと思います。
 否定形が「へん」じゃなくて「やん」になるとかね。「疲れた」のを「えらい」いうとことかね。

 でもさ、「なあなあ」って方言なん?
 普通に使うやろ? 違うの?


 さて。
 面白かったです。

 物語の起伏は、これまでの矢口史靖作品からみるとあっさりめで、コメディとしてもあまり機能していない印象を受けます。

 でもそれよりも、へたれでチャラかった主人公がたくましく成長していく姿を描き出す過程での、バランスの良さが心地よかったですね。
 自然への畏敬や林業の厳しさをきちんと伝えつつ、しかし深刻にもなりすぎず。仕事も生活シーンも、俳優陣がガチでやってんのに、気負いは感じられず、生々しくもからっとしていて自然体で。
 田舎が舞台の作品などいくらもあるのに、ここにある空気は不思議と腑に落ちます。話が重くなって淀む前にテンポよく場面が切り替わるので、いつも空気が新鮮に味わえる感じもあります。
 その「空気」は、似た題材の「銀の匙」よりも、スケールは小さいけど「剱岳・点の記」に近いように思えました。コメディなのにね。

 ここらへんは、歴史的に常に豊かな土地柄で、あくせくせず穏やかな伊勢国の気風がうまく作用している……とか思うのは、三重県出身者のひいき目かしらん。


 で、ちょーっと惜しいなあと思ったことは。

 「信仰」の描き方が雑なのがまず一点。
 山自体にしめ縄を張っている[山=神]のに、それと別に地蔵っぽい偶像も作るのは変だし、山の神=女性っぽい描写をしておきながら、クライマックスでオオヤマツミという男神を持ち出して男根信仰に持ってくのもなんだかなぁ……。それに、48年周期の大祭であんなばかでかい大木(少なく見積もって樹齢500年)を切ってたら、いずれ祭が維持できなくなるよ。そういうことがわかってるはずの人たちの話じゃないの?


 それから、この作品は「林業は世代を経てつながる仕事」であると着目しているわけですが。
 映画単体だと、まるで「曾祖父が初めて入植した」的なニュアンスで描かれてるんですよね。曾祖父以前の歴史が見えない。それだと、「世代を経る」というにはちょっと短すぎる、と僕は思います。

 何しろ、本作の舞台となった旧美杉村一帯って、「奈良から伊勢神宮に至る街道の宿駅」が興りなんですよ。曾祖父どころか、大和朝廷時代から歴史が積み重なってるはずなんです(実際にかの地で林業がいつごろから営まれていたかという確たる資料を見つけられなかったので、勝手なことをいってるかもしれないですが)。

 先に書いたとおり別に三重でなくてもいい話ですし、現代人にわかりやすいように工夫した結果なのだとは思います。
 とはいえ、そうした「歴史の厚み」で描写を強めれば、林業が示す文字通りの「年輪」や、変わらぬ自然に対する畏怖についても、もっと凄みが増したんじゃないかな、と思えてなりません。


 そこで。
 次のエントリに続くのです。



WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~OFFICIAL GUIDEBOOK (ロマンアルバム) -
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posted by アッシュ at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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