2014年11月17日

短評(楽園追放/デビルズノット/嗤う分身/誰よりも狙われた男)


楽園追放 -Expelled from Paradise-
[70点]
@HUMAXシネマズ池袋
 虚淵玄脚本という看板があったとはいえ(制作開始はマドマギ前だそうですが)、まずは、ストーリー的にも映像的にも、「オタ向けSFアニメーション数十年の歴史の集大成」としか言いようのない作品が、完全オリジナルとして世に出てきたことに賞賛を惜しみません。今後、本作はひとつの基準として語られるでしょう。
 それでいて虚淵節はちゃんと出ているというね。ていうか、世界の構図がほぼ「ガルガンティア」じゃんね。
 ただ、集大成を100分に押し込んで、かつ、キャラが3Dということもあってか、説明や心情描写の大半が長ゼリフで、釘宮理恵と三木慎一郎の演技頼みというのはちょっとまずい。ただでさえ荒野もので、絵面がさびしいんだから、バトルだけでなく人物描写ももっとアクティブにしてほしかった。

 それにつけても、美少女キャラに「くぉんのぉーーーっ!」と絶叫させたら、釘宮理恵の右に出るものはいないな、うん。ていうかあれ、釘宮理恵って決まってから主人公キャラ作ってるよね、絶対?


デビルズ・ノット
[55点]
TOHOシネマズシャンテ
 冤罪の恐怖について、非常にまじめに、真に迫るように作られている作品ですが、それゆえ印象の悪い、座りのよくない作品でした。「それでもボクはやってない」に感じたものと似ています。
 冤罪にいたる詳細、すなわち、警察・法廷・それどころかほぼ街ぐるみで、悪魔崇拝者の若者たちを殺人者と一方的に決めつけ、都合の良い供述だけを採り入れ悪いものは無視&破棄、状況証拠と情緒への訴求だけで有罪へと追い込んでいく過程が描かれていきます。
 しかしその描写は、「一方的に決めつける偏狭な視野はこわいねひどいね、という一方的な主張」だけで作り込まれているんです。サタニストを純朴に恐れたであろう、地元の普通の人々に寄り添う視点は一切ありません。ここらへん完全に無自覚なのが、すごく怖いです。
 直球で受け止めてしまう前に、バーニー」をアンチテーゼとして観賞することをおすすめします。

 それにしても、どうしてこう冤罪警鐘映画で冤罪に陥いる人は、「自分が疑われていて不利な立場にある」と自覚するのが、手遅れなくらい遅いんだろうな?


嗤う分身
[45点]
@シネマライズ
 その可能性はあるなぁと思いつつ見に行ったとはいえ、やっぱりこれはアーティスト様のオナニー映画、のカテゴリに入れるべきでしょう。辛かった。
 オレサマ芸術を堪能させて差し上げますとばかりに、上映開始から30分くらいはストーリーに入らず、主人公がいかにヘタレストーカーかという描写がだらだら続きます。気が狂うかと思いました。
 陰影の強い映像、二十世紀初期のSFみたいな美術、流れる日本の歌謡曲。それらが、「自分の分身が現れて自分の存在を奪っていく」というストーリーに対し、フンイキ以外は何ももたらしません。
 それどころか……「分身」が現れてからはそこそこおもしろく、ジェシー・アイゼンバーグの話芸も堪能できるのに、「ゲージュツっぽさ」を優先する絵作りのため、クライマックスに至って「今行動しているのはサイモンなのかジェームスなのか」という、この物語で最も肝心な描写を見失うという恐ろしいことをやってのけるのでビックリしました。
 「オマエに芸術がわかるのかよ!」とか反論されそうですが、「『ブルー・シャトー』がBGMで流れる店の店員がチャイナ服」という時点で、こいつは何もわかっちゃいないです。えぇ。


誰よりも狙われた男
[70点]
@TOHOシネマズシャンテ
 凄い。何が凄いって「そこ」で終わらせるのが凄い。
 ノーマルな脚本家ならそこから復讐のターンが始まって超ドンパチになるはずなのですが、ル・カレ原作の銃すら出てこないスパイものに、これが遺作となったフィリップ・シーモア・ホフマンの演技が重なると、そこまでが濃密すぎておなかいっぱいです。

 テロリストとされる青年を、「泳がせて、テロの根底を握るもっと重要なターゲットへ誘導していく」ホフマンの手練手管と、彼をさっさと逮捕したい他の諜報機関との駆け引きの物語。銃もカーチェイスも出てこず、太ったおっさんとヒゲ面のアンちゃんと自転車のお姉ちゃんがウロウロしてる映像ばかりが続く作品なのに、どこまでも緊迫感が続きスリリングです。

 亡くなったのが本当に残念な俳優です。それにしても本当に40代だったのかこの人は……。



楽園追放 Expelled from Paradise【完全生産限定版】 [Blu-ray] -
楽園追放 Expelled from Paradise【完全生産限定版】 [Blu-ray]
posted by アッシュ at 16:41| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/409079020

この記事へのトラックバック

「デビルズ・ノット」
Excerpt: デビルズ・ノット…悪魔の結び目。永遠に絡まり続ける…。決して後味がいい作品ではない。冒頭からして男の子の子持ちの身として心臓がばくばく。恐れていた最悪の結末がやってくるが、実は本作の問題はそこから始ま..
Weblog: ここなつ映画レビュー
Tracked: 2014-12-03 15:07