2014年11月19日

100歳の華麗なる冒険

[85点]@チネチッタ

 (この文章は、高倉健氏の訃報を聞く前にほぼ書き上げてるので、かなりハイテンションです。……でも、健さんが本作みたいな映画に出ている姿も見てみたかったな、とちょっと思います)


 そろそろ今年のベストを考えなきゃいけない時期なのだけれど、実は困っていたのですよ。
 今年見た映画のうち抜きん出て素晴らしかったものをあげろ、と言われたら……プレイタイムアーネストとセレスティーヌボーグマン……全部「今年公開」の範疇外じゃんか! ついでにいうと今年の場合、僕は当然、OVAイベント上映のガンダムUCを上位にもってきちゃうわけで、それもう「今年の映画」のベストじゃなくなってきてね?! という状況だったわけです。

 回避されたようです。
 素晴らしかった。傑作、というかカタカナでケッサク。


 タイトルが示すとおり老人映画です。100歳のおじいちゃんが老人ホームを抜け出して、あれやこれやに巻き込まれます。そして、起きる騒動に自らの人生を重ね合わせていく、そんな話です(50歳くらいのコメディアンが特殊メイクで100歳を演じているそうです。道理でかくしゃくとしすぎてると思った)。
 舞台が北欧で、このタイトル。当然ながら、「ホルテンさんのはじめての冒険」を連想して、あんなほっこりした雰囲気じゃないかな、と思ってたわけですよ。

 ……とんでもない。
 ……いやもう、ひどい。(褒め言葉)
 ……こんなひどい映画、見たことない。(褒め言葉)
 ……映画史に残るひどさだよこれは! (超絶褒め言葉)

 ちゃんと映画史に残したいから、みんな今すぐ見に行け!

 あのさ、
 「100歳のじいちゃんが言ってることだから」とか、
 「100歳のじいちゃんの昔語りだから」とか、
 「まぁ、多少は大目に見てやんなきゃしかたないよね」て感覚、あるじゃない?

 それって、人類普遍だと思うんだけども。
 その人類普遍の感覚を、ここまで悪辣かつ狡猾にぶん回して、見るものすべてをねじふせてくる、突き抜けたブラックなロクデナシ感の爽快さよ。
 ひどい。ひどすぎる。けしからんもっとやれ。

 ちなみに原作小説はもっとひどいらしい。やばい、読みたい。


 とりあえず、どれくらいひどいか、ツカミの部分だけ説明します。
 いつも言ってるけど「ツカミは大事」です。しかしこの作品ほどすばらしいツカミを、ここしばらく見てないです。

 にゃんこを抱いてじいちゃんが自宅の窓辺に座っています。にゃんこが窓から出て行きます。じいちゃんは「ごはんまでには戻って来るんだよ」といって送り出します。
 ところがにゃんこが戻ってきません。じいちゃんが外に出てみると、鶏小屋のそばで、鶏とともににゃんこが無惨に殺されていました。狐のしわざです。怒れるじいちゃん、「かたきを取ってやるぞ」と言い、

 ダイナマイトにソーセージを巻きつけた罠を作り、かかった狐を爆殺します。

 モノローグ。「こうして私は、自分の余生も吹っ飛ばした
 次のカットで、じいちゃんがまた窓辺に座っています。ただし、自宅でなく老人ホームで。

 で、これが「ツカミ」なのですが、そこで当然「なんでじいちゃんがダイナマイトを普通に持ってんだよ!」というドツッコミが出るでしょ? ツッコむでしょ? でもよもや、「じいちゃんにとって爆発は男のロマン」が基本線で話が回りだすとは夢にも思わないでしょ? ここから先、物語は常に予想の斜め上を行くという、じいちゃんどこの星の王子やねんていう話なんですよ!


 ……ただ、じいちゃんがあの性格なんだったら、悪の黒幕のラストは「大・爆・発!」で締めなきゃ収まらない気がしました。
 じいちゃんの歩んだ歴史が、「爆弾で吹っ飛ばす」から「情報戦」に移り変わり、もう「爆発でカタをつける時代じゃない」という点も反映せねばなりませんから、あのシーンを「まあそんなこともあるさ」ていどにぼんやり通過していく、というのはすごくわかるのですが、それでももう一押しほしかった感。


 それにしても、(以前から何度も書いてますが)「老人が軽快に活躍する映画」は、やっぱり面白いです。
 日本でもようやく、北野武監督が手がけてくれると聞いて率直にうれしい。ただ伝え聞く内容から、「若者を馬鹿にする」作品にならないでほしいな、と思っていますが……。
 あと、「年寄りが活躍」といってはいけないでしょうが、近い系統の沖田修一監督の新作、「滝を見に行く」が間もなくです。激戦週ですが(個人的に、この週公開の新作だけで、10本見ることが確定済み!)、少しでも盛り上がることを祈ります。



窓から逃げた100歳老人 -
窓から逃げた100歳老人
posted by アッシュ at 16:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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