2014年12月25日

神は死んだのか

[30点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 まさか今年の最後になって年間ワースト級に引っかかるとは思わなかった……期待値けっこう高かったので、すごく落胆してます。
 「イブの夜に独りで『神は死んだのか』を見る」という自虐ネタなんかやったから、罰が当たったかな。

 予告を見た方は、無神論者の教授と敬虔なクリスチャンの学生との間で、何かものすごい真剣な議論があるように思ったかもしれません。僕もそう思ってました。でもそんなんじゃありません。
 ひとことでいうと、完全な「布教映画」なので、キリスト教に興味がないなら見る必要はありません。

 以下超ネタバレで全部内容バラすよ。隠しもしないよ。ホント、新興宗教に引っかかって金ふんだくられた、みたいなこの不快な感覚、他人に味わってほしくないもの。


 映画のつくりからして、僕の大嫌いなパターンでして。
 本作は「神は存在するや否や」という議論が主軸なんだけど、それだけでは尺がもたないということか、それとは関係なく、人と神とのかかわりを示す宗教説話的なサブエピソードがいくつも同時進行し、メインのストーリーをめったやたらに切り刻むように割り込んできます。何かメインに大きく絡むところがあるのかと思ったら、ぜんぜん絡んできません。
 非常に邪魔くさいです。というか、「肝心なところを不明瞭にしてごまかす」意図ではないかと思います。宗教が勧誘する時って、「多対一」の構図にもってって反論の機を与えず洗脳にかかるのがセオリーだと聞くけど、そんな感じがする。


 じゃあ、主軸の「神は存在するか」の議論がどうなるかというと。
 無神論者の教授が自爆して終わります。
 ていうか、中盤で彼のプライベートが明かされるんです。なんと、彼が子供の頃、助けてって祈ったのにお母さんが死んじゃったっていうんです。

 「お母さんを助けてくれなかった神様が嫌いなんですね?」
 「はい、嫌いです」
 「いないものを嫌うことはできませんね。はい、論破」

 ……ホントにこれだけでケリがついちゃうんですよ、この議論。

 なんか超ドラマチックに盛り上げますけど、もう、腰が砕けるとはこのことですわ。

 「宗教学や哲学といった歴史上で人類が幾度となく積み重ねてきた議論を土台にしたうえで、理を尽くすアカデミックな論戦」ではなく、「情に訴え、反論者の誤謬を捉え、陪審員を納得させる弁論術」によって、「神は存在することにできる」のです。それでいいのかよ!
 (陪審制で決を採ると定義したうえでの論戦なので、ここは非を言うべきではないかもしれませんが。)

 とどめに、自爆した教授がその後どうなるかというと。
 終盤、唐突に車に撥ねられます。
 するとそこへ、サブエピソードの登場人物である神父さんが通りがかり、「神を信じれば天国に行けるぞ!」的なことを言うので、無心論者だった教授は心を入れ替え、神様に祈って安らかに死んでいくのです。
 ……「信者増やすために車で人を撥ね殺す神様」なんて信じてたまるかっちゅーの!


 いちおう、そのふざけた「ケリ」がつくまでは、ある程度ちゃんと議論してて、「科学者たちの意見をまとめれば、『創造主が存在して宇宙が生まれた』自体は、科学とて否定できない」というところまでは納得がいく描写です。

 だから、「創造主が存在する」ことは、この作品の主張として認めるべきでしょう。また、「創造主(人知を超越した存在)に対する崇拝」がいわば「精神のオペレーティングシステム」として機能し、意志や道徳を定めること(これは日本の神道も同じ)もうなずけます。
 神様はいます、「無神論」が敗れ去るのは、少なくともこの映画の中では必然です。

 なのに、サブエピソードで、「キリスト教に改宗するイスラム教徒の話」が出てくるのは何で? イスラム教とキリスト教は根本の神様同じでしょうが!
 中国人が目ぇきらきらさせて神を信じ出すのは何で? アジア人が無神論っていうのは欧米キリスト教徒の偏見だっての! God は信じてなくても Deity は信じてるよ! そういうスーパーナチュラル思想ならむしろてめぇらより歴史長いわ!


 極めつけがさ。
 作品は最終的に、メインもサブもすべての登場人物が、NewsBoys というクリスチャンのバンドのコンサートになだれ込み、現代の賛美歌というべきか、「神様は死んでない」とみなでいっせいに歌ってはじける、という形で幕を閉じるのですが。
 ……幕が閉じる前にとんでもないことをやらかします。
 「神は死んでないって友達に今すぐメールしましょう」って、登場人物が言うと、会場中の観客がみんないっせいにメールし始めるんだよ! あまつさえ、ラストカットで、「あなたも今すぐメールしましょう」って、テロップまで出てくるんだよ!

 スパム強要してんじゃねぇよ!
 ガチで布教だったのかよコレ!



 要するに、宗教の多様性を認めない、偏狭な脳みそのキリスト教徒の皆さん方による、オレたちの神様だけがひたすら正しい、他はいらん、信じねぇやつは地獄に落ちろ、という趣旨の、こないだ破壊屋さんが書いていた「思考停止」系の作品だと思います。
 無神論者が増えてきて危機感を抱いて作ったんだとは思いますが、逆効果じゃないかなぁ。

 日本人は、冗談でもなんでもなく、これ見るくらいだったら「幸福の科学」の映画見た方が、まだ楽しめると思いますよ。


 ……今年見た新作映画は本作が最後だったのですが、感想エントリはもう一本、「ベイマックス」が残ってます。実に傑作だったので、次で明るく今年を締めましょう。



ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2) -
ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)
posted by アッシュ at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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