2015年05月03日

龍三と七人の子分たち

[75点]@丸の内ピカデリー

 日本における「老人娯楽映画」の嚆矢となるのではと期待して見にいった。
 思っていた「老人映画」とは少し違うけれど、でも、素晴らしかった。
 そして、
 見終えた後、マジで泣けてきた。

 この作品は、老いたヤクザの物語である。しかし、「老いたキタノノワール」ではない。
 北野武、世界のキタノより前、「老いたビートたけしの不謹慎ギャグコント」だ。
 昔っからそうだ。この人は悪人じゃない。強くもない。ただ不謹慎を包み隠さないのだと思い出す。
 土曜の夜、「オレたちひょうきん族」に笑い転げていた世代に向けて、「オレのこと忘れてないかな?」と、はにかみながら問いかけている、そんな作品。

 あの頃の爆発力はない。凄みはない。過去の栄光を懐かしみ、しがみつこうという未練の愚かしさを笑う物語でありながら、作品全体がその愚かしさで包まれている。
 コントの集積と言ってよく、物語の構成的には稚拙とすら思える出来。重要そうに出てきたことの大半は投げ捨てられる。メインプロットすら、ラストシーンに出てくるビートたけし自身がデウスエクスマキナとなって終わらせてしまう。老いたるヤクザどもは何も残しちゃあいない、迷惑なだけの馬鹿どもだ。

 けどビートたけしは、すべて自覚してやっている。「過去の栄光」部分の、「座頭市」並みにキレのよい立ち回りを見れば明らかだ。
 そのうえで、今の彼にできるギャグを、老いた体で繰り出せる渾身のギャグを、七転八倒しながら画面に投げ散らかす。結果として、終盤の「中尾彬を使ったギャグ」や、「日本におけるカーチェイスの終わり方の正しい形」みたいな、彼しか思いつかないであろう映像が次々出てくるのに慄然とする。

 彼のそんな態度が正しいのか、また、今の彼があなたの琴線に触れるかは、正直わからない。
 でも、あの頃「ビートたけし」を愛したすべての人たちに、この作品の鑑賞は「義務」であると申し述べたい。そして、あれから30年の年を経た事実を重く自身に問いかけ、泣いて欲しい。



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posted by アッシュ at 07:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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