2015年09月28日

アントマン

[85点]@チネチッタ

 素晴らしい。
 まさしく、新時代のヒーロー像……というか、「ヒーローの既成概念をぶっ壊すヒーロー」です。こんなヒーローを見たかったんです。

 なお、最初に書いておくと、予告編にはまったく出てきませんでしたが、本作のヒーロー・アントマンは、超人的戦闘力以外に「アリを操る」という能力があり、ホラー映画かって勢いで(クリープショーみたく)虫が画面にあふれるシーンがあるので、苦手な人は超注意のこと。


 さて、アントマンの何が新時代かっていうと。

 もともとアメリカンヒーローというのは、「強い・速い・マッチョ」な、軍人的素養と同時にセックスシンボルであったわけです。ところが時代が変わって、戦争が起きずむしろ否定すべきものになると、そうしたことは美点とされなくなりました。
 その結果、ここしばらくの強くてマッチョなアメリカンヒーローは、「苦悩する時代」を続けていました。敵とは何か? 強さとは何か? 自分は本当に必要とされているのか?
 そういう「苦悩するヒーロー」、僕はあんまり好きじゃないんですよね。カッコ悪いじゃん。

 そしてまた、義賊、というのも成立させづらくなりました。「敵が奪って厳重に保管しているものを取り返す」というフィーチャーでヒロイックな活躍を見せたくても、テクノロジーが進化して、一昔前の人たちが思いついた方法論は現代ではほぼ無効化されており、映画に出てくると陳腐にしか見えません。未だに「換気ダクト通って侵入/脱出」とか、もう笑いも起きないです(まぁ、本作でも「レーザー防護壁の通過」という陳腐なネタはやるんですが)。
 現代だと「監視カメラの書き換え」とか「セキュリティシステムのハッキング」とか(ここをうまく描いた快作を見たばっかりではあるけれど)でがんばってるけど、どうも地味ですよね。「ヒーロー」がそんなんに助けられていては、やっぱりカッコ悪い。


 そこでアントマンだよ!
 現代において「強くあらねばならないもの」「その強さを人間が扱うにあたっては善意をもってなさねばならず、敵に回すと脅威であるもの」それはもう、武力じゃないんだ。ズバリ「セキュリティ」だよ!
 論理的な話(ウィルスや巨大システムと戦う、みたいな)なら、攻殻機動隊を嚆矢にいくつも出てきてますが、こういう物理的な切り口もあるのかと、そして、こう扱えばアメリカンヒーローにもなりうるのか、と思わず膝を打ちました。

 日本語では「蟻の這い入る隙間もない」なんて表現があるけど、文字通り「蟻さえ入れれば」たどりつけない場所が存在しない、「侵入」に特化したスーパーヒーローの登場。いくら換気口をふさごうと、人間が存在する建造物である限り、絶対に給水管はふさげない、とはやってくれます。
 そして、同じ能力を悪意もて扱う「敵」が現れたなら、危険すぎるから倒さねばならぬのです。いやマジで、このトンデモ能力を、着るだけで発揮できるのは怖すぎ。悪用超厳禁だぜアントマンスーツ!

 単に極小に縮んだ状態で冒険したりバトルしたり、という話も、思い返せばいろいろあります。しかし、使い古されているように見えて、「自在に拡大縮小して現れたり消えたりできる」というのは新機軸で、このアイディアを生かしたアクションや、縮小世界の表現が、楽しくてカッコよくてとても新鮮です。
 しかも、通常必殺技と超必殺技、2種類の「コンピュータ物理破壊スキル」を持っているのも新鮮。まさしく現代ヒーローバトルの申し子といっていいでしょう。
 ていうか、これはつまり、アメリカ人が考えた「オレたちの新しいニンジャ」なんじゃないかな!


 科学的にはもう、「柳田理科雄が解説し始めたら大変なことになりそう」としか思えないけどな!
 「原子間距離を縮める」とか、たぶん核爆発級のエネルギーがあっても科学的には無理だけど! あれだけのサイズに縮むと、物理的に比率で扱えない話が多くなりすぎて、機械もコンピュータもまともに動かないんじゃないかと思うけど!
 最終的な展開に至ってはもう、概念というか哲学というか、やりすぎ感あって受容しづらいのが惜しい(「開発者の奥さん」で解決すれば、精神論になるとはいえすっきりまとまったのにそうしなかったのは、次回作でと絡ませるためか?)けど、まぁ細かいことは気にすんな、ヤツはヒーローだ!



 ところで、この作品は、いわゆるマーベルユニバース(アベンジャーズ)と地続きになっており、アントマンの開発者はシールドの元研究者です。で、ラストシーンにキャプテンアメリカが出てきて続編の引きにしていて、次のアベンジャーズに登場するんじゃないか、とか言われてるんですが、……どうすんだろ。
 既述の通り、アントマンはこれまでのヒーローと一線を画しており、いろんな意味で他のヒーローとなじませづらいように思うのですが。

 何せ、神であるマイティソーはともかく、「見なくても他者を知覚・攻撃できる能力」がない限り、あらゆる超人はアントマンに勝てません。
 人間以上の攻撃力がないので逆にアントマンが勝つこともないですが、メカの補助を受けて活躍するヒーローは例外で、すべて中から破壊しちゃえます。何しろ、「鳥の能力」を持つマーベルヒーロー・ファルコンと戦って勝つ、というシーンまで出てくるんだから!
 一番やばいのがアイアンマンで、アントマンは天敵って言っていいレベル。トニー・スタークの性格的に、こんな危険キャラクターの加入を認めなさそうな気がするんだけど、そこらへんちゃんと処理してくるかな?



マーベル・コミック 6インチ レジェンド アントマン シリーズ1.0 #01 アントマン(映画版) -
マーベル・コミック 6インチ レジェンド アントマン シリーズ1.0 #01 アントマン(映画版)
posted by アッシュ at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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