2015年10月09日

短評(ドローンオブウォー/屍者の帝国/アルペジオCadenza)


 新文芸座で旧作の「マッドマックス」「マッドマックス2」を見ました。「北斗の拳」に影響を与えた「2」がすばらしすぎて、涙出そうになりました。「デスロード」より、ずっといい。アクションじゃなく、ストーリーやキャラ配置の、無駄がなくかつ奥が深い、理想的な作りこみが感動的なのです。


ドローン・オブ・ウォー
[75点]
@TOHOシネマズ川崎
 安保法案の議論当時、なんとも鼻白んだことのひとつに、あの「徴兵制」云々を筆頭に、戦争というものの認識がまだベトナム戦争、ひどいのになると第二次大戦のまま更新されてない人が多い事実がある。なので、安保法案についてガタガタ言った人は全員、法案に関する賛否を問わず、本作を見て認識を改めてほしい。今後、日本が戦争するとしたら、たぶんこれに近いものになる。背広姿で電車で通勤してオフィスワークで人を殺すような、そんな戦争。

 「若者を戦場に送るのか」なんというロジックで反対していた方々は、こういう戦争には当然賛成してくれるのだろうが(もちろん皮肉)、本質はそこじゃない。「大義なき戦争の是非」ですらなく(ならば題材をドローンにしなくても同じなので)、主人公の苦痛の最も重要な点は、「家族・夫婦という個人の日常を目の前に置いたままの戦争」が存在する現実だ。遠いアフガンの地だけでなく、主人公の自宅をも執拗に空撮する映像に、「戦争との距離」をきちんと感じ取った上で、僕らは戦争について語るべきなんだと思う。


屍者の帝国
[50点]
@TOHOシネマズ川崎
 伊藤計劃という作家は、本人よりも褒めそやす周囲の意識高い感が鼻について、どうも手が出なかった人なのですが、こうしてアニメ化されて実際触れてみて、その認識は間違いではなかったと理解しました。いろいろケチついてるし、残りの二作品どうしようかなぁ。
 セリフだけの説明、物語と関係なく派手になるアクションシーン、出来が悪いとは思いませんがどこをとっても「ちぐはぐ」という印象です。作っている側も自分が何を作っているか理解できてないけど、「それっぽい映像」で押し流そうとしているとしか思えないんですよね。バベッジコンピュータとか、見た目には面白いんだけど、「ガチガチの機械式コンピュータに音波で死体を遠隔操作する能力」「操られた死体はゾンビ映画そのままに人間に噛み付いて殺す」「どう見ても死因は出血多量なのに、音波が消えたとたんに殺された人だけ生き返る」に至っては、もうスラップスティックギャグでしょ、これ。何のためにインドの山奥で「人体への霊素の強制注入による意志の剥奪」を描写したの?

 まあ、小説で読めばもっと面白いんだろうな、とはわかりましたし、「死者から言葉を引き出したいと願った者」による、伊藤氏に捧げられたと思しきエンドロールのモノローグはすごくズシンと来ました。……と思ったらエンドロール後のワンシーンは何だよ! やっぱあんたらギャグ映画作りたかったんだろ!


劇場版蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ Cadenza-
[60点]
@チネチッタ
 前作感想。
 「アドミラリティコード」については決着ついたとはいえ、「なぜ霧の艦隊が生まれたか」は投げっぱだし、対立の背景にあった「真実」はみみっちすぎて腰砕けるレベルだし、生徒会はやっぱり「仲間とぶつける」以上の意味がないし、肝心の艦隊戦も派手になりすぎてもはや何やってるかワケわからんくなってるし、……とはいえ、「剣を振りかざして襲いかかる戦艦」に「ドリルで応じる巡洋艦」という、そこらへんの「ワケわかるかどうか」の一線を完全に放棄した絵面に、もうどうでもいーや、という悟りの境地でいっぱいです。タカオかわいいよタカオ。

 ところで、最後くらいキリシマに体を返してやれよ。



ロード・オブ・ウォー Blu-ray -
ロード・オブ・ウォー Blu-ray
posted by アッシュ at 13:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
屍者の帝国は今原作を読んでて、冒頭映像だけ見たんですが、冒頭から違うんでたぶん内容も全編変わってると思いますよ。ワトソンのキャラも変わってるんじゃないかって思います。いきなり裸の男と抱き合うシーンとか観たくなかった...

原作の会話で魂について難しいことを議論しあってるんで、これ映画に出来んのか?とは疑問に思ってました。500pもありますし。そこが疑問だったので観に行こうと思います。

伊藤計劃を褒める人で戦争がどうこう言ってたのは何かおかしいなぁと思ってました。伊藤計劃以後のSFとか夭折の作家とか、そういう言葉も何だそれと。
Posted by とおりすがり at 2015年10月10日 06:58
コメントありがとうございます。

やはり原作とは違いますか。
まぁ、500Pもある原作を2時間の映画にするのなら、エッセンスだけ切り出す作業は必須だと思います。

ただ、円城塔という後継した作家は輪をかけて観念的な文章の人だと聞きました。
日本の娯楽消費者は「観念的」が大好きではありますが、映像化と相性が悪いのは否めません(上手いのももちろんありますが)。
しかしこの映画は「娯楽映画」を優先して上手くいかず、泥沼に突っ込んだ印象です。
Posted by アッシュ at 2015年10月12日 20:31
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック