2015年11月02日

ヴィジット

[80点]@TOHOシネマズみゆき座

 えーと、最初に書いておきたいんだけどさ、「三つの約束」とか宣伝に大嘘入れるのヤメロよ。出てこねぇじゃんそんなん。
 (追記 2005/11/6
  と思ったら、コレ海外でも同じ宣伝で、かつプロデューサーが「パラノーマル・アクティビティ」を仕掛けた人なのね……ワカってる人が狙ってやったことなのか。個人的には好かないけど……)



 さて、M・シャマラン監督の新作は、なんとPOVホラー。
 困ったことに傑作でした。
 「困ったことに」がつくのは、根幹のトリックはごくごく単純だし、「観客をビックリゾクゾクさせる目的のホラー」と思って見に行ったクチには、チャチとも言える大したことない作品だから。

 でもね。ヤラレタ。完璧に騙された。
 というか、ここしばらくあふれた安易なPOV作品に、ケンカ売って実力を見せつけた、そんな感じ。

 根本のネタバレはしてないけど、先入観なしに見てほしいので、見てない人はここから先読まないことをお勧め。



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 本作におけるシャマラン流ワールドメイキングのすばらしい点は、このPOV作品が、15歳の映画監督志望の女の子が撮影し、かつ編集までやっている、という設定。撮影は、さらに素人な弟も参加しています。
 初めて祖父母の家を訪ねる彼女は、この訪問旅行を一本のドキュメンタリー映画にしたいと考えています。彼女には、「どうしても撮りたいもの」があるのです。それは「思春期を迎えた子供だからこそ」撮りたいものであり、ひたむきに純真に、彼女は「それ」をカメラに収めようと苦闘します。
 どうやら祖父母はすっかり老いており、痴呆も進んでいて、おかしな行動をいくつも取るので、「それ」はなかなか撮ることができません。「おかしな行動」は子供らしい好奇心をも引き寄せ、彼女は「それ」以外にも自然とそちらへもカメラを向けていきます。


 この、「動機設定」が完璧なのです。
 何度か書いてますが、POV作品は、どんなにうまく撮っていても、「何でこいつこんなときにカメラ回してるの?」と観客が思ってしまうような映像になったら終わりです。
 ところがこの作品の場合、わざとらしいカメラワーク、わざわざカメラを回したまま放置する角度、偶然を装って肝心なものが瞬間カメラに収まる奇跡、あらゆる点がPOVホラー作品としては「できすぎて」いるのに、彼女の純真な動機が、「不自然な映像」のすべてを食らって勝るのです。

 本作のイベントは、「彼女の映画が充実していく」方向へ積み上がっていきます。ときおりおっかないことも起きますが、「恐怖体験」は核ではないのです。過去を忘れたいと言い、また、行動も怪しい年寄りから、どうやって「それ」を引き出すか。「それ」の裏にはいかに驚くべき事情があるのか。
 「それ」がカメラに収まりさえすれば、それこそこの映画全体のクライマックスなのだ、と観客が信じ込み、実際「それ」がついに起きた! ……その次のシーンでズバリと観客をはめ落とし、一気にこの映画の「あるべき方向」へとシフトする。いやお見事。
 これこそが本当に、「だまされた」という快感ですわ。


 弟の潔癖症設定&唐突に父へのうらみつらみを言い出すアメフトエピソードは、さすがに不自然過ぎて、彼に関する終盤の盛り上げは、面白いんだけど若干違和感が残ったのが難点でしょうか。でも物語の後始末的なものを、ほぼ全部「弟がどうしてもというので」と、弟に任せたセンスには脱帽しました。
 またこの「弟がどうしてもというので」は、それでも本作が「彼女の映画」だときっちり示しています。あれを? 全部彼女が作った? またしてもここで僕らは世界のシフトを味わいます。虚実境界線の何たるかを熟知した、シャマラン監督の職人仕事です。

 ……そういや本作、監督の出演ってあったっけ?
posted by アッシュ at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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