2015年12月03日

ハッピーエンドの選び方

[80点]@チネチッタ

 舞台は高級老人ホーム。夫婦でホームに住まう元機械技師の主人公は、寝たきりの親友を見かねて秘密裏に「安楽死装置」を製作、望み通り永眠させるが、その噂はホーム中に広まってしまう。一方で主人公の妻は認知症を患い、次第に悪化していき……という内容のコメディ。
 ……冗談でも何でもなく、この内容で超笑えるコメディ

 これ、今年ベストかも。どうしよう。
 またかよ! おまえ老人映画好きだな! と言われそうだけど、ちょっとこれは、「傑作」とか「面白い」より先にヤバい・シャレになってない
 「泣いて笑って」という喜劇映画の常套句がありますが、この作品における「泣いて」は感傷的な何かではなく、老いが、病が、死別が、本当に辛く悲しくて涙がこぼれるのです。それでも「泣いて笑って」を、生命倫理ギリギリの線で成立させた、こんな「背筋に寒気が走るコメディ」を、僕は他に知りません。まったく新しい感覚だわ、コレ。

 なんと、「イスラエル」の映画。
 高齢化社会の悩みを持つ先進国なら、どこでもこういう「暴発」を起こしてよさそうなのに、他の国でなくイスラエル映画なのは、彼らがユダヤ教だからでしょうか。
 個人の倫理観において許容できない人もいそうだけど、終末医療とか認知症とかの、先行き必ず向かい合わねばならぬ事柄に真摯に取り組んだ作品に興味のある向きは……そうね、日本なら「明日の記憶」を見て思うところあった人なんかは、本作も是非。

 といっても、僕はこの手の作品を誉めるとき「実際にその世代の人が見たら」がどうとか書くけれど、本作に限っていえば、その世代の人にはちょっと実感がありすぎるように思えます。しかもそこに老い・生死をネタにしたジョークをガンガンぶっこんで笑いを取りにくる胆力に触れるのは、ブラック通り越して軽くホラーなんじゃないでしょうか。
 白バイのあんちゃんのシーンなんか、もはや「笑ってはいけない24時」な気分。絶対笑っていいタイミングじゃない。でも笑わなきゃしょうがない。


 惜しいのはラスト。「そこ」で終わることは中盤あたりからわかってくるので、もう少し厚みを持たせてくれてもよかった気がします。かの面々がその後どうなるのか(先生とその彼氏との関係やいかに?)、キャラが魅力的だけにもっと知りたかった。

 あと、この作品が「ハッピー」だといって宣伝している連中の正気は疑っていいと思います。



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posted by アッシュ at 16:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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