2007年06月01日

ボラット 〜栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

[採点不能]@シネアミューズ イースト/ウェスト

 主人公は、カザフスタン人のテレビリポーター。カザフスタン情報省の命を受け、アメリカ文化を学ぶべく数々のアメリカ文化人にインタビューを敢行していく……が、実際は、キテレツな「カザフスタン風の慣習」で振り回して、彼らの反応から差別意識や選民意識を露わにしていく、ドキュメンタリー風の作品。


 おもしろかった。存分に笑った。のですが。

 ……いや、やっぱ、これ見て脳天気に笑ってたらマズいだろう。ちょっと反省。

 アメリカを痛烈に批判した、という意味ではスゴイです。しかし、それを実現するためにネタにしているカザフスタンに対し、敬意も畏れも感じられません。
 本作は、カザフスタンに対する宣戦布告級の侮辱です。
 制作者、登場した一般人、鑑賞者、評論家、この映画に関わる人すべてが、「一コメディアンがアメリカを批判する行為の価値>>>(超えられない壁)>>>一主権国家たるカザフスタンの名誉、品格、誇り、歴史、住まう人々の価値」という共通認識を持つことを前提として成立する作品なのです。

 もちろん作っている側は確信犯。そういう「アメリカ人は誰も知らない、知っていても毛ほどの価値も認めない未開の国」という認識を逆手にとっています。
 (ある調査によれば、アメリカ人の世界地理知識はヤバいレベルにあり、人口の六割は、戦争相手のイラクがどこにあるか知らないのだそうです。とすればおそらく、この映画を見て喝采したアメリカ人の大半は、カザフスタンを架空の国家だと思っているでしょうね。)
 一方で、対外的には、「カザフスタンだけスケープゴートにして、イスラム教徒すべてを敵に回すことを避けている」んでしょう。あったまいいが、ヒドい話。

 こちらによれば、カザフスタン政府は以下のような公式声明を出しています。
 「カザフスタン人はこの映画に出演していませんし、この映画をいかなる形でも承認していません。この映画は、カザフスタンに関係するあらゆる人の実際の信条・習慣・行動を表現することを意図したものではありません」

 また、Wikipedia によれば「カザフスタン政府は『ボラット』の影響を打ち消すため数億ドルを費やして「ユーラシアの心」キャンペーンを発動した。」そうですよ。

 カザフスタン人の心情を思うと非常に複雑です。素直に笑えません。
 そういう想像力が欠けているから、世界に紛争は絶えず、アメリカはイラクを攻撃してんじゃないでしょうか。
 ある意味、本末転倒の極みですよ、これは。


 でも、見ている間はすげぇ笑ったんです。間違いなく。
 ときに、見に行かれる方は、この映画における最大のアメリカ罵倒とも取れる、最高のあのオチを見逃さないよう、エンドロールが終わるまで絶対に席を立たないように。
 だからシネアミューズは、スクリーンの前しか通路がなくってエンドロール中に人がバンバンかぶる現状をなんとかしろってーの!
posted by アッシュ at 01:23| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2007-73】ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(BORAT: CULTURAL LEARNINGS OF AMERICA FOR MAKE BENEFIT GLORIOUS NATION OF KAZAKHSTAN)
Excerpt: ボラットが暴れるほど 本当のアメリカが見えてくる バカには理解できないバカです
Weblog: ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!
Tracked: 2007-06-04 19:59