2016年08月28日

君の名は。

[85点]@TOHOシネマズ新宿

 おぉぉぉ……。
 言わずと知れた新海誠監督の最新作ですが、従来作品と比べて作品世界が広すぎる気がして、きちんとさばけるのか、見る前はめっちゃ不安でした。しかし、結論からいえば素晴らしかったのひとことです。
 全面的に「続きを読む」以下に隠します。未見の方はこの先読まないようにね。

 ミステリでもないのになぜ隠すかって、新海誠監督は「ハッピーエンドかバッドエンドかさえ見るまでわからない、先の読めない」作り手で、この作品でもそこが楽しみのひとつであり、語らずにはいられないからです。



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 というわけで。
 新海誠、エンターテイナーとして完全覚醒、ですよ! 「言の葉の庭」でその片鱗は見せていたけど、間違いなくこれで一皮剥けました。
 これからのアニメ映画界を背負って立つことになるでしょう。全年齢層に向けて、というわけにはいかないけど、宮崎駿級のバジェットを渡すなら、僕なら細田守でなく新海誠を選びます。
 (追記:ていうか今回すでにそれくらい突っ込まれてたんかー……バクチ打ったなぁ、東宝。お見事)

 これまで彼が作ってきたすべての作品のエッセンスを、すべて有効に活かしたまさしく集大成。僕は好きだけれど世間的にはさんざん酷評された、「星を追う子ども」ですら、きっちり織り込まれています。
 これまで扱ってきたものは何だったか。そのテーマを突き詰めるとどこへ行くか、そしてそれをエンターテイメントとして見せるには? 徹底して問い直し、作劇を研究して、導かれた答えが、これ。
 もとより描写・演出は圧倒的にうまかった人だから、こうしてエンタメに徹すると快感そのものができあがるんですなぁ。


 距離のある、けれど何かで繋がっている男女二人が入れ替わるストーリー。男女入れ替わりはジュブナイルでは定番ともいえる展開で、予告編でもさんざん流れたのに、驚くほど新鮮に見えます。不快感なく人間関係を絡めつつ(サブキャラ群が魅力的かつ効果的)、テンポよく構成されていて、とにかく楽しくて没入できるのです。

 それで十分快感を感じられたのに、「距離だけでなく時間差までもがあった/ずれた時間差に何が起きたか」という、いわばトリックがぶっこまれたときの衝撃ったらないよ。完璧に騙される快感。コレこそ映画見る喜びと言ってもいいくらい。
 (なお、友人の話によると、「日経新聞の映画評がここをネタバレしてしまっていた」という、信じられないことをやらかしたそうなので、映画ファンは日経を取るのをやめた方がいいよ。)


 そこから二転三転の、場所と時間を飛びまくるクライマックス、しかし序盤にかっちり情報が提示されているし方向性が明確なので混乱はなく、手のひらで転がされる一方。

 そして、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか焦らす焦らす最終局面!
 いやアレ、新海誠初めての人は、絶対最後に会えるって疑ってなかったと思うけど、秒速五センチメートルの絶望を知っている新海誠ファンにとっては、マジで胃に穴が空きそうなキリキリ感だぜ? くっそ、わかってやってやがるだろこのド外道がー!(褒めてます)

 総じて、濃厚な時間ですばらしかったです。シン・ゴジラももう一回見直したいんだけど、これも公開されているうちにもう一回くらい見返して、仕掛けられた細々を再確認してみたいなぁ。
 いやぁ、「帰ってきたヒトラー」を見たときは、今年はこれがベストだろうと思っていたのに、シンゴジに本作に、これから「聲の形」「この世界の片隅に」が控えてるんだぜ……幸せ者だなオレたち。



細かい余録。

○「雲の向こう、約束の場所」要素は、……「メガネの友人と、あんまりいい目を見られない年上のお姉さん」もそうだと思う。

○神木隆之介くんはともかく、初アニメの上白石萌音にここまでやられちゃあ、「芸能人声優ガー」の人たちの出る幕ないね! かわいいめっちゃかわいい。

○難点をいくつかあげとくと、
 ・アバンタイトルに「成長後の三葉」を描写したのは、「最終的に彼女が生き残る」ことを示してしまって失敗だったような気がするけど、それは「バッドエンドかもしれない」と疑ってしまう我々をなだめる意味だったのかもしれない……。
 ・髪を切った理由と、そのタイミングが三葉/瀧で違う理由がよくわからんかった。なんで?(8/29追記:あ、そっか、純然たる失恋か! 三葉はここで3年のタイムラグ=瀧が自分を知らないことに気づいたわけだから!)
 ・三葉が瀧にリボンを渡すシーンは微妙。あれ、瀧の側に、事前に「渡される」描写が必要だよね。なぜ大切にとっておこうと思ったのかの理由付けも。
 ・そして一箇所、シナリオの最大のボーンヘッド。
 「通う学校の名前くらい記録しとけや! 飛騨って情報だけであそこまでよう行ったな! 高山市だけで香川県より広いンやぞ!」

○瀧は「飛騨」という情報しかなかったから、東京-糸守の行き来に東海道新幹線-高山線のルートを使ったのだと思われるけど、糸守町があると想定されている飛騨古川のあたりは、都会に出るなら富山の方が近い。では三葉もそのルートを使ったのはなぜか? ここ、たった三年の時間差を強く感じさせる、面白いポイントでした(今なら北陸新幹線経由の方が速くて安い)。

○ていうか、糸守ってあれ「神岡」かな? 降ってきたのは彗星じゃなくてニュートリノだったんだよ! ナ、ナンダッテー!

○逆に、タイアップしたかなんか知らんけど、「FUN! TOKYO!」のポスターはその時点では存在せんやろ! こだわって描写してる作品でそういう変なゴリ押しすなや!

posted by アッシュ at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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