2016年09月22日

「君の名は。」はなぜメガヒットしたか


 「君の名は。」がなぜかくもヒットしたのだろうか。
 作品の良さについては、もうすでにいくらも言及してる人がいるし、僕はいいものが売れて当然と思うので、気にするまでもない。

 だが本作は、「初日初回から」「地域の偏りなく」「若年層だけで」満席を連発した。この動きは異様だった。ここが気になるのだ。



 「初日初回から」であるから、作品の内容はほぼ関係ない。それ以前の情報で、彼らは映画館に来た。

 「地域の偏りなく」ヒットをなしとげたのは、これまで公開館が限定されていた新海誠監督のネームバリューではとうていありえない。オタクが盛り上がって満席連発、な作品はこれまでにいくつもあるが、それは情報が速い都会に限定され、地方には波及しきらないことが多い。
 そもそも、人口が少ない地方郊外のシネコンが「満席になる」自体レアだ。

 そして、観客は「若年層ばかり」だった。事前情報は少なかったとはいえ、幅広い年齢層に知名度が高く、東宝自身の熱量も高く、タイアップも大量に行われた「シン・ゴジラ」を、完全に若年層をターゲットにしたいしたタイアップもなかった「君の名は。」が、あっさりとぶち抜いた。


 つまり、作品の良し悪し以前に、我々にはもはやわからない、若年層だけに通じる動きが公開前にあって、それは東宝にすら予測不能かつ制御不能だったと考えられる。その異様で巨大な初動が、軒並み「よい作品」というリアクションを拡散したからこそ、現在につながっている。
 それが何か、なのだ。



 要因のひとつは、やはり「RADWIMPS」だろう。RADWIMPSは、露出が少ない点がむしろウケて、現在若年層に絶大な人気を誇る。一説には、全国ツアーをやれば、動員は100万人はカタイそうな。
 彼らは、映画の公開直前に同名アルバムを出すなど、プロモーションにも全面協力している。彼らのツイッターのフォロワーはバンドの公式で50万、ボーカルの野田洋次郎個人で25万を超える。彼らの存在は相当大きいと思っていいだろう。

 ただ、野田洋次郎が主演した別の映画「トイレのピエタ」が大きくヒットしたという話は聞かないし、実際、そういうプロモーション的なツイートに多大な反応がある感じもしない。若年層は、売らんかなの言葉を嫌うもんだしね。
 これほどのメガヒットに直結したかと問われると、?なのだ。


 で、一つ提唱したい説が、「ONE PIECE FILM GOLD」の影響である。
 かの作品は、その絶大な知名度により、「ふだん映画館には来ない若年層」を、大量かつ全国的に映画館に引き込んだ。今年おそらくダントツの700スクリーン以上で公開されており、そのうち「君の名は。」を公開予定だった映画館は、間違いなく上映前に予告編をかけている。

 しかし「ONE PIECE FILM GOLD」は、良くも悪くも「ワンピース」だった。「予定調和で型どおりの面白さ」を提供することを旨として作られている。
 「背伸びしたい年頃」には響かなかった。物足りなかった。
 だから、

 「予告編のアレの方がよさそうじゃなかった? RAD だし!

 という反応に結びついた可能性はないだろうか。
 「男女入れ替わりはジュブナイルの定番」であるが、そこで古典や大林宣彦の名作を引き合いに出すのは年寄りの思想だ。単純に、異性に興味を持ち始めた若年層にとって、どうしようもなく魅力的で斬新に響く設定だからなのだ。

 つまり、若年層のうち「ワンピースのファン層」の厚みが、「ワンピースよりすごそうで興味深いもの」の存在を知って、シフトしたのではないか……という推測である。


 当然ながらこれは僕の主観であって、アンケートとか採って調査したわけではないので、あくまでネタとして。
 できれば(たぶんもうどっか始めてると思うけど)、たとえばベネッセとか、中高生にネットワークを持っている企業は今すぐ、「『君の名は。』がいかに若年層にリーチしたか?」をきちんと調査して、コンテンツとして公開していただきたいですね。すごく興味深いものになると思う。



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君の名は。(通常盤) - RADWIMPS
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posted by アッシュ at 12:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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