2016年12月21日

幸せなひとりぼっち

[70点]@ヒューマントラストシネマ渋谷

 「ホルテンさんのはじめての冒険」「100歳の華麗なる冒険」と、毎度味わい深いものが出てくる北欧の老人映画。本作も良かったです。

 今回の爺様は偏屈ジジィ。ある住宅地の地区会長を長年務め、地区のルールを住民に口うるさく押し付ける日々。でも愛妻に先立たれ、序盤はあの手この手で後追い自殺を試みるも、引っ越してきた移民一家のイラン人妻になぜか邪魔される……。
 爺様の演技が絶品で、イヤなジジィなんだけど拒絶はしきれないギリギリのところからはじまり、しかたなく少しずつ心を開いていく進展が見事です。

 たびたび背景に国旗が映り込むし、車はサーブしか認めない(ボルボ好き友人との意地の張り合いがメチャメチャ笑える)あたり、この爺様はスウェーデンという国家そのものです。偏屈に老いて己の言い分を通したくとも、移民とも、LGBTとも否応なく向き合わなきゃいけない立場にある。
 そうした異物に、なべて寛容であれ手を携えて生きよ、とだけ能天気に主張するのでなく、「爺様の作ったルールをちゃんと守り引き継ぐことが受容の前提」、という点をさりげなく示す、線の引き方がうまいと思いました。

 無駄に長い回想シーンがイマイチ噛み合ってないのが残念。現在の爺様見てれば過去はなんとなく見えてくるので、そこは観客の想像力を信頼してほしかった。で、回想シーンは最終的に「奥さんの過去の真実(意味するのはおそらく『高福祉国家の幻想』)」へと導かれるワケですが、どうもご都合主義感を禁じえない……というか、なぜそのデキた奥さんがそばにいて爺様の偏屈が維持されたのか、本作が最大の謎。

 あと、回想には若かりし頃の爺様が登場しますが、役者さんが違うのに声がほとんど一緒なので驚きました。あれマジでアテレコか何か?



100歳の華麗なる冒険(字幕版) -
100歳の華麗なる冒険(字幕版)
posted by アッシュ at 13:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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