2017年01月07日

アイ・イン・ザ・スカイ

[65点]@TOHOシネマズシャンテ

 ドローン・オブ・ウォーに次ぐ「ドローン戦争」もの。かの作品で再現されていたコンテナを、またも見ました。
 シャンテのみ先行公開、他の映画館は1/14公開だそうです。

 ドローン・オブ・ウォーは、トリガーを引く操縦士にフォーカスしていましたが、本作は命令を下す指揮官の苦悩が描かれます。なんとなれば、ドローンの飛ぶ舞台はケニア。つまり「敵対国」ですらない! 目標のテロリストも、テロ組織に参画したとはいえ自国民。
 まずもって「攻撃していいのか」というとこで、たいへんな騒ぎになるのです。まして、民間人を巻き込むおそれがある、ともなると。

 決断が遅れればテロリストを逃してしまう。しかし現場-指揮官-軍上層-政治家間を、情報と決定権が行ったり来たり、方針は定まらない。焦る指揮官、責任逃れを重ねる政治家、「緊迫感のあるブラックコメディ」としては、ギャヴィン・フッドの手並みは間違っておらず、すこぶるのめり込めます。

 ……ただ、のめり込めるがゆえにヤバく思える点がありまして。


 ひとつは、当事国であるはずのケニアがガン無視であること。

 米英人テロリストの存在だけが問題視され、ケニア人やソマリア人のテロリストについては俎上に上がりません。
 それに、物語のキーとなる「目標付近にとどまっている7歳の少女」については大騒ぎしますが、それ以外のケニア人はどうっでもいい扱いです。目標は市場のすぐ近くで、人通りソコソコあるんで、被害が出ないわけないんですが、無視です(自分は途中で、目標をずらす決断によって少女でなく両親が死ぬ、というオチを予想しました。いやホント、あの位置攻撃してなんで親が無事なの?)。

 また、領空を米軍のドローンが我が物顔で飛び回るのは話が事前についてるにしても、国民に危害を晒すおそれのある「攻撃決定のプロセス」において、「当事国が一切関与しない」という描写はマジなんですか。つまり、友好国ケニアの少女を殺していいかどうかを、アメリカとイギリスだけで話し合って決める、という異様な状況を、登場人物が誰も疑問視しない。
 きちんと監修もついて、実際の軍事規定をなぞっているらしいんですが……「危険人物がいる」という理由だけで問答無用でよその国をぶっ飛ばすステルス」を、ギャグ扱いして笑ってましたが、まさか現実の運用がそうなるとは……笑えないわこれは。


 もうひとつは、全体的に軍人>政治家の描写ということ。
 政治家はいつも安全圏にいて、責任転嫁しか考えず、戦争はプロパガンダが優先であると認識し、一方で軍需品の輸出には熱心で中国人におもねる惰弱な存在として描かれます。
 人間的で正しい状況判断ができるのは、現実に即して問題を捉える軍人である。現場で働く軍人を馬鹿にするな。そういう論調になってしまっているのです。

 たとえ時間がかかり、愚かな決断となり、犠牲者が増えたとしても、「軍人の独断専行を許してはならない」「決断を下し責任を負うのは『国民の代表者』、ひいては主権者たる国民でなくてはならない」というのが、文民統制の最大の原則では? と僕は思うのですが、本作に登場する軍人たちは、そうしていちいちお伺いを立てることがどうも不満なようです。

 僕はあくまでこれを「風刺」と受け止めますが、修羅場も見たであろう南アフリカ生まれのギャヴィン・フッドは、もしかすると本気で「米英の軍人に全部任せるべきだ」と考えているのではないかと、少し不安になるのです。



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posted by アッシュ at 16:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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