2017年04月04日

わたしはダニエル・ブレイク

[50点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 んー、モヤモヤすんなぁ。パルムドールはまたこんな感じか。

 いやさ、これ、役所の論理のほうがすごくわかるもん。求職実績が証明できない者に、求職手当が出るわけないじゃないか。実直さとかテメェの尊厳とか関係ねぇよ。
 仮にかつてはそれが通じるはずの優しい世界だったとしても、経済情勢の悪化で、そんなワガママはもはや通せないと突き上げた連中がいるんだろう? そこで福祉を維持するために、より合理的なシステムを取り込まざるを得なくなり、職員やコールセンターの回線が削られ、厳格なルールが作られ、情に流される前例を作ることが禁じられたんだろうに。因果関係が逆だ。

 ちょっと面白かったのは、イギリスでは福祉の手続きがあらかたオンライン化されており、デジタルディバイドゆえにダニエルは福祉を受けづらい立場にあること。オンライン化が進まない非合理さが福祉の質を落とす日本とは、対照的だと思いましたね。
 とはいえ、ダニエルは「助け合いを知っている」んだから、チャイナくんに「君のビジネスに住所を貸すから、俺のオンライン手続きを最後まで助けてくれ」って言えば、この話全部終わりじゃないか。コミュニケーション能力がある人をわざとコミュニケーション不全に描いて「ネガティブな人間模様」を捏造する、ミヒャエル・ハネケと同じやり方。

 この作品で一番辛い立場にいるのは、両者の論理の板挟みになるアンで、正しい意味で尊厳を傷つけられたのは「ハリー」だと理解しなくてはいけない。「自分と同じ立場の者がいくらでも居るであろう」ことに思い至らないダニエルの不正直な態度によって、ハリーがどれだけ苦い思いをしたか想像せよ。

 それを考えもせずに、「わたしはダニエル・ブレイク」だ? どんだけ自分は特別だと思ってんだよ。おまえが生きているのと同じように、融通の利かない公務員は生きているし、庭に犬のフンまき散らすやつは生きているし、合理化の必要性につけこんで福祉を民営化して儲けたい事業家が生きているんだ。個人の集合が社会なんだよ。「個人は大事だ」「個性は大事だ」そんなもの全部、言挙げするまでもない大前提として飲みこんだ上に、「社会」を構築すんだよ。
 だからこそ、一人一票の民主主義に価値があるんじゃないか。行政に八つ当たりすんな、議員に言え。


 で、社会の変化についていけない俺様でも望むとおりに福祉を受けられるようにしろ! という内容を見てか、本作のチラシには左翼方面の有名人の大絶賛コメントがずらりと並んでいるわけですが、このような行政に怒ったイギリスの大衆が選んだのは結局「ブレグジット」、という事実は全力スルーなのが爆笑ポイント。
 現地の人のほうが、「逆の因果関係」をよく理解している、ということですなぁ。



 ソッチ方面の話になったから、ついでに、森友問題の個人的総括しとく。

 この問題、はじめから「贈収賄がない」「近畿財務局の措置が不正でない」ならば、誰も何も突き上げられるいわれがない。そしてその正否は、まだまったく定まっていない。確固たる前提に欠けているんだ。前提を間違えた議論は必ず結論も間違っている。時間の無駄だ。
 ブラックな臭いはぷんぷんするよ、でもそれを断じていいのはオマエラじゃない。裁判所だけだ。

 法の裏付けがない状態で、誰かを公に断罪せんとする行為、それは「人民裁判」という。まともな法治国家の住人なら、絶対に避けるべき行為だ。それを恥ずかしげもなくやっている連中が政治家を名乗っている。マスコミもそれに乗っかる人々も、助長して臆面もない。嘆かわしい。
 自分が政治家なら一秒たりとも関わりたくないし、関わってるとみなされるのはたとえようもない屈辱だし、ましてそんな奴らのお望み通りに情報を提供するなんて、恐ろしくてできない。

 今回政権側が、証人喚問から偽証罪の告発、という路線に乗せたのは、いい判断だと思う。これを「司法に委ねようぜという意思表示」の観点で見る人が少ないのに驚く。彼らだってやりたかないだろうが、このまま国会を空転させるよりはなんぼかマシだ。
 (たとえば「この問題」を知っている人がいま日本に何人いる? 食の問題だから、きちんと深堀すれば世論にはすぐ火が付くだろうし、農政問題だから世論が動けば自民党議員の離反も確実に見込める。安倍政権を追い詰めるにはうってつけのネタなのに、野党の幹部は、この法案が審議されていることすら知らないのだろうよ。)

 アキエもツジモトも現段階ではまったくどうでもいい。そんな程度のことを、予算委員会で問う価値が微塵でもあると思う人間は、狂っている。心底軽蔑する。
 国会でやるな、裁判所でやれ! 話はそれでおしまい!



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posted by アッシュ at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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