2017年05月24日

メッセージ

[55点]@ユナイテッドシネマ豊洲

 秋に「ブレードランナー2049」が控えるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の、ファーストコンタクトものSF。異星人のUFOが「ばかうけ」に似てるというのでちょっと話題に。
 映像はとてもよいデキで、この映像センスでブレードランナーが見られるなら、それはすごく楽しみだ、というべきなんですが、本作は内容的にな。そもそも映像化に向く原作だったか、という点でな……。

 あの手この手で苦心して「言語」で異星人とコミュニケーションしようと試みる前半部分は、ヒットさせづらそうな地味な絵面ながらも、個人的にはすごくwktkしながら見ておったのですが、後半で明かされる「仕掛けられたトリック」により、話は確実にヒット作的な方向に切り替わりつつも前半部とあまりに乖離してしまいます。というか、そこまでの苦労話を粉々にぶっ壊します。「いかに対話するか」の物語だったはずのものがなぜそのように変容するのか、正気を疑うレベル。
 うん、まぁ、コミュニケーションは大事だ、「それ」すらも、コミュニケーションに成功しなければ伝えられなかったわけだから……。

 以下ネタバレ注意。



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 今期アニメに、同じくファーストコンタクトものの「正解するカド」という作品があります。木下工務店が噛んでるのに面白い(笑)という稀有な作品なのですが、それはともかく。
 ざっくりいうと、異次元人が日本に現れてオーバーテクノロジーを提供しようと言い出す話です。で、「なぜ日本に?」という問いに異次元人の返す答えが、「日本が世界で一番平和で貧富の格差が小さいから」。表現は婉曲だけど、脚本の意図的にはきっぱり言い切るんですよ。日本バンザイ自画自賛な手応えが無きにしもあらずで、「思い切ったなぁ」と感心して見ていたのですが。


 本作「メッセージ」は逆方向に振り切れます。
 異星人の宇宙船は地球12カ国に分散して着陸したため各国は協同でコミュニケーションを試みるのですが、どうにかそれを確立し「なぜ地球に来たのか」と問いを投げると、「武器を提供するため」と返答が来ます。
 「武器」と聞いた瞬間に協同体制が崩壊します。なんの逡巡もありません。これほど驚愕する展開はここしばらくなかったです、悪い意味で。
 本当に正しい回答か、どんな武器なのかの確認もせず、そもそも「武器」の概念が人類と彼らとで異なる可能性も考慮せず、地球人類がその瞬間に分断する。

 僕は、戦争(武力行使)は避けるに越したことはなく、しかしもし「戦争に踏み切る要件」があるとしたらそれはただひとつ、「対話が成立しない」であると考えます。よくいわれるように、戦争とは「外交の最終手段」なのです。

 よもや、ハリウッドがウン億ドル突っ込んで作る映画の主張において、「武器即戦争、が政府レベルでの常識的な判断」とブッ込んでくるとは夢にも思わなかったですよ。
 これが「シビアに現実を直視している、人間は性悪説に基づく生き物」的な描写であるならまだよかったのだけれど、その後、ヒロインが超人的な能力を手に入れてその戦争状態を回避する展開とその手管に至っては、もう腰砕けるなんてレベルじゃない。なんかすごく感動的な何かっぽくしてるけど、要するに「要人の弱みを握って脅迫すりゃええんやで」ってことっしょ?


 あれですよ。
 前も書いたことあるのだけど、この世には、戦争を「疫病」に類する「災害」だと思ってる人が少なくない数いるみたいなんですよね。つまりここでは、「武器という病原菌によって、自然発生的に起きる」、的な思想。
 その思想下では誰も「なぜ戦争が起きるのか」を考えず、「戦争反対」という言葉が、水害を起こさないで下さい、と竜神様に祈るのと同じレベルのお題目と化すわけです。いわゆる「憲法9条教」もそれ。
 そこには、「対話」という発想もまたありません。正確には、「対話しよう」すらお題目で、「対話しよう対話しよう」と唱えていれば、誰も対話していなくても相手の主張を何も聞いていなくても、なぜか対話したことになって自己完結する。
 でも、繰り返しますが、戦争とは「対話が成立しない」とき選択する手段です。反戦の主張が、実は最も戦争に近いところにいる矛盾。

 悪いのは原作か脚本か監督かしらんけども、要はそういう「反戦思想」と、それに基づく「対話の価値」で作っちゃったんだ、これ。

 とりあえずは、「正解するカド」の方がおもろいし今後も楽しみだ、というまとめにしておきます。たぶんあれ、カドは最終的に「進化と称して、現段階の人類の生命倫理に完全に抵触する提案をしてくる。それを受け入れるか拒否るか」、って話になると思ってますが、どうなるか。
posted by アッシュ at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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