2017年08月29日

短評(打ち上げ花火/キミコエ)


 短評と言うほど短くないけど、並べたい2作品なので。

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?
[60点]
@TOHOシネマズ新宿
 決して面白くないわけでも出来が悪いわけでもないんだけど、違和感が残る作品。何が問題か? ひとことでこう説明できます。「ターゲットが定まってない」

 去年「君の名は。」を大ヒットさせた川村元気Pが、今年も夏休みの終盤に放つ、見た目ジュブナイルSFアニメ。中高生向けと思うでしょ?
 しかし、かの作品ほどスピード感はなく、カタルシス少な目で考えオチのストーリー、そして中学生設定なのに無駄にセクシャルで生々しい描写。広瀬すずに「風俗働きも辞さないビッチ」を自称させ、松田聖子を歌わせる……脚本の大根仁と、何より制作したシャフトが、おっさん向け妄想を全力で具現化してる感アリアリでしてな。

 じゃあおっさんオタなら入りこめるかというと。
 考えオチと書きましたが、「球が破壊される=二度とループは発生しない」状況で、ふたり共通してレインボーブリッジにいる未来を見てるんだから、これ、ふつうに「駆け落ち成立エンド」の解釈でいいと思うのですよ。
 しかし、「よりよい選択」をしたつもりでその終幕に向かう主人公たちを、あまり応援する気になれません。絶対うまくいくわけない。「駆け落ち成立」したらハッピーエンドだ! と考えるおっさんは少なく、むしろ「ハァ? 無理ありすぎ」な即時却下エンディングではないでしょうか。
 誰かがそれを指摘して、「明示するとヤバい」という結論に至って、あぁなったんじゃないかと推察します。
 一方で、まだ自己の世界が狭い中高生ならば、「駆け落ち成立エンド」は一定のハッピーエンドたりうるでしょう。しかし曖昧にして明示しなかったので、彼らの物語リテラシーでは、「何コレ意味わからん」になってしまう。
 おっさんにも若者にも「理解不能」と判断される、どっちつかずで不満の残る結果に至ったようにみえます。

 この作品で一番印象に残るシーンは何と言っても、「親に引っ越しを強制されて連れ戻されるときの、広瀬すずのガチ悲鳴の不快極まりなさ」でしょう。彼女の熱演に罪はないのですが、「ラストどうまとめるか」にすべてがかかるタイプのストーリーを曖昧に終わらせてしまい、この不快を上回る「快」を提示できなかった以上、娯楽作品としては失格といわざるをえません。
 「初動から見ておそらく興行収入は15億くらい、本来オリジナルアニメはこれくらいが妥当」とか言ってる人がいましたが、本作は「『君の名は。』の翌年の東宝夏休みアニメ」という、二度と来ない巨大ゲタをはかせてもらってそれなんだから、本来は10億も行かないデキ、と認識すべき。

 ここまで書いてきて今さら気づいたんだけど、実写アニメ・若者年寄り関係なく、そもそも「原作岩井俊二/脚本大根仁」って時点で水と油過ぎたんでは……大根仁、「家出してきた中学生カップルが、歳をごまかしつつ安アパートに暮らし風俗で働く、でもコメディタッチ」な続編脚本を今頃ウキウキしながら書いてるんじゃないかしらん……。


きみの声をとどけたい
[70点]
@TOHOシネマズ新宿
 で、「打ち上げ花火」の陰で、ジュブナイルアニメがもう一本、ひっそりと公開が始まっています。「誰に向けたものかわからん」という意味ではこちらも似たり寄ったりなんですが、ラストが「快」である以上、僕は断然こちらを推します。

 女子高生6人がひょんなことから、休止していたミニFM局を再開させるひと夏の青春ストーリー、てな筋書きで、これこそ中高生向け。「文部省推薦」みたいな肩書きがついててもおかしくないくらいなのですが。
 実はこれ、キミコエプロジェクトという声優発掘企画の総仕上げとして作られたアニメ、なものですから、見にくるのは大半声優オタのおっさんでして、ポッピンQ」並みに観客の男性率と年齢層が高かったです。

 で、おそらくは1クールのアニメ(あるいは実写ドラマ?)企画の流用と推察され、2時間に納めるにはちょっと尺が足りません。
 イベントの発生やサブキャラの登場が唐突過ぎるとか、途中ナレーションでシーンをむりくりぶっ飛ばすとか、サブプロットが終わったセリフ直後にいきなりメインプロットの急展開が始まるとか、「まとまり・完成度」という意味では、率直に言って「打ち上げ花火」よりはるかに劣ります。もっとゆったりした展開で見たかったなぁ。

 しかしながら、主人公たちのキャラの置き方や知識レベルが適切で、イヤミな感じや不自然さがなく、とても感情移入度の高い物語空間が構築されています。
 また、開幕10分程度でラストに何が起きるかわかっちゃうんですが、中途に挫折やトラブルをきちんと配したうえでその終着点に向けてバリバリ邁進していき、完璧にそのクライマックスをこなし、きっちり感動にまとめきっている以上、鑑賞後の気分は「快」のひとこと。
 あの展開なら「住民(=元リスナー)全員のユニゾン」をクライマックスのトリガーにするのがベストだった気はしますが、まぁ、声優プロジェクトだからね。そこが妥協にみえたとしても納得感のある、良い歌声でした。

 知名度低すぎて、公開がすぐ終わっちゃうと思うんで、「打ち上げ花火」が不満だった人は早めにこれで口直しをしましょう。



君の名は。 -
君の名は。
posted by アッシュ at 15:46| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: