2017年07月11日

メアリと魔女の花

[75点]@新宿ピカデリー

 面白かったです。
 正直、あからさまに「自然原理主義・反原発」な思想には鼻白むし、前半でかっちり描いた「大学」が後半影も形もなくすあたり、モチーフの多くは借り物に過ぎず、掘り下げが浅いのにバランスが悪く、完璧さや凄みにはほど遠いものです。
 しかしながら、構成力というか、物語の盛り上げ盛り下げのタイミングと、宮崎駿のくびきから解放されて(?)弾けるアクションパートがうまく、見ごたえがあります。前二作と比してここは段違い。

 それにもまして素晴らしいのは、これもう僕はアリエッティのころから絶賛してるわけですが、米林宏昌監督が宮崎監督に圧倒的に勝るのは、「女の子の描き方」。宮崎駿はなんだかんだで古い時代の人で、女性キャラクターを「作品世界の秩序に従うおとなしい存在」として描くことが多く、殻を破り新たな世界へ導くストーリーの場合、男性主人公が牽引しているように思えます(ナウシカ/サンはおとなしくはないが、強く「作品世界の破壊」を試みるクシャナ/烏帽子様が対峙するという点が興味深い)

 本作は明確に「女の子の冒険」であり、(ささやかな表現だし、個人的には「それを目指してはいけない」のですが)様々な体験を経た女の子が、自らの判断で、世界の枠を破壊して次のステージへ至ります。
 ラピュタの性別逆転版……というより、ディズニーの最近の女の子向け映画にもそんな方向性があって、「女性の自立」云々を語るまでもなく本作はそうした現代の潮流に乗っている印象があります。ジブリの継承者としてだけでなく、面白くて売れる「女性もの」を、米林監督が自らの持ち味を発揮しつつ目指した結果と考えていいんじゃないでしょうか。

 ……えぇ、だからそう、ポッピンQが「プリキュア卒業後の女の子」を狙うのなら、こういうとこ目指さなきゃいけなかったんだよ!



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2017年07月07日

忍びの国

[60点]@チネチッタ

 リアリティライン、て言葉があるじゃないですか。
 この作品は、「忍者」を、「土豪が統括する傭兵集団」という史実に近いかたちで描きつつ、人間離れしたアクションやスキルを駆使するフィクショナルな超人像も併せ持たせています。原作の和田竜氏か中村義洋監督かわかりませんが、非常にユニークで面白い線を引いたなぁと感心します。
 なのに。
 冒頭のツカミ、忍者同士の白兵戦から始まるんですこの作品。「真っ昼間」「白く見えるほど乾いた砂地」の「集団戦」で、忍者が全員、全身黒ずくめの忍者装束。

 ギャグまんがだよね?

 そういうふうにツカまれた僕の、本作に対する総評は、「笑えないギャグ映画」です。
 そこで「忍者の服装」ごときでひっかかったりしない方にとっては、……いや自分も、アレがせめてカーキか焦げ茶くらいのカラーリングであったなら、史実の天正伊賀の乱を、娯楽アクションへと換骨奪胎した見事な作品として評価できるのではないでしょうか。



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2017年07月03日

ジーサンズ -はじめての強盗-

[70点]@チネチッタ

 僕の好きなタイプの老人娯楽映画。マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、アラン・アーキンが強盗する話。
 動機が、「元勤め先が買収(実質倒産)、資産を銀行が押さえたために、年金の支給が停止された」なので、ラストベルトの悲惨な現況を表に出してくるかと思ったら、あるにはあるけど全然控え目。中盤以降はひたすらクライムコメディです。
 その割り切りが実に軽妙で面白いです。不要な情報がなく、すべて回収されます。巧みで気持ちよいオチを三段階くらいかぶせてくる、後味のいい作品。ラストシーンの出費の金の出どころを考えると、「年金以上の贅沢」してる感じで、探られるとかなりヤバいんじゃねぇかと思いますが、まぁ些細なことですかね。
 ただ、その割り切りには逆に弱みもあって、「クライム」の部分に老人が主役である必然性はあまりありません。ていうか70代には不可能でしょうアレ。「体を鍛えた」は免罪符にはならんよ、札束があまりにも軽すぎる……。

 ちょっと面白かったのが、スーパーの警備員が全員カラードなうえ、捜査に協力する見返りに「ばあちゃんが逮捕されたから釈放して」とか言い出す皮肉なシーン。警備員の身内が犯罪者なわけで、それでも社会が成り立っちゃうのはいいのか悪いのか?

 あと、1回だけ場違いなラップ調が入る以外、音楽がいかにも古き良き娯楽コメディ! って感じですごく良かったです。



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2017年07月02日

短評(ヤマト2202-2/世界にひとつの金メダル/ドッグイートドッグ)


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち -第二章・発進編-
[65点]
@新宿ピカデリー
 面白かったし、ヤマトの発進はやっぱめちゃめちゃアガる、のだけども。
 群像劇としての演出がひどく雑で、ちょっとノリ切れない部分も多めです。また旧アニメを知ってる友人の言によると、2というのは「テレサの声に導かれた」以外の導入がなく、本作のここまでは「ほとんど全部辻褄合わせ」らしいです。
 ここからは、登場人物も固定されるはずだし、戦闘寄りになるのだろうから、も少し盛り上がると思いますが、さて。



世界にひとつの金メダル
[70点]
@恵比寿ガーデンシネマ
 久々のウマ映画。といっても馬術競技。フランスでは著名な金メダリストピエール・デュランと、騎乗馬ジャップルーの物語。
 事実ベースのせいかやや起伏も内容も浅い印象はあるものの、フランス映画らしからぬ傲慢でヤンチャな主人公(人馬ともに!)の成長が素直に好ましい作品です。
 何より、馬の飛越のモーションがとにかく美しい! そう思える時点でこの作品は価値があります。日本では馴染みの薄いジャンルですが、「銀の匙」あたりで興味を抱いた方は是非。



ドッグ・イート・ドッグ
[45点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 タクシードライバーの脚本・ラストリベンジの監督の新作ですが……ニコケイをヤク中のクズに配して面白くない、って、ある種の才能でないの? 彼もウィレム・デフォーも、素でキレッキレのヤク中になりきってくれるだろうに、なんであんなありがちな画面効果かぶせるのさ。
 おそらく、「会話劇」として面白い原作&脚本だったのではと推察するけども、その映像化は、会話シーンをむしろ退屈にさせる妙な撮り方を繰り返し、結果として何も伝わってこないという、まさかアメリカ映画でコレみたいな不細工な感覚を味わうとは思わんかったよ!



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2017年06月16日

怪物はささやく

[65点]@TOHOシネマズ川崎

 アメリカ・スペイン合作、スタッフの多くはスペイン人でイギリス文学ベストセラーの映画化、というよくわからない組み合わせ。
 リーアム・ニーソンがモーションキャプチャーでモンスター役を演じています。また、シガニー・ウィーバーがどこにでもいそうな「おばあちゃん」演じてるの、初めて見ました。時間は残酷よな……。

 内容的には、母の難病+少年の成長というプロットにおいては標準的、むしろ単純といってもよい何かだと思います。ラストシーンが中盤で読めます。標準が悪いわけではないですが、もっと面白く盛り上げる作品、いくらもありましょう。
 また、冒頭の展開がもろにコレで、主人公をケアしないのが「前提」になっている、学校の描写は正直不快。主人公が「罰を欲していた」のはわかるけど、なぜ「彼だけは殴っていい」ことになったのか?


 しかし映像の作り込みが素人目にも面白く、画面と演技だけで状況を丁寧に「読ませて」いくうまさがあって、飽きはきません。踏切の使い方とか、時計の曲面ガラスへの映り込みとか、記憶に残る印象的な映画と思います。
 とりわけ、二回差し挟まれるアニメーションパートがとても上質で美しい。あの絵だけで一本長編が見てみたいです。



96時間 (字幕版) -
96時間 (字幕版)
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2017年06月12日

ローガン

[55点]@ユナイテッドシネマズアクアシティお台場

 んー、いい映画と思うけど、僕はダメでした。
 だってさぁ。主人公が事態の理解をいっさい拒絶し、他のキャラはいっさい説明しようとしない状況が、開始からえんえん1時間くらい続くんだぜ? どんだけ観客を突き放すんだよ。
 それを過ぎると、説明のターンがあって物語の視界が一気に広がるのだけど、そこまでで僕はもう、完全に感情移入の扉を閉ざされた感じで、あとはずーっと他人事で遠巻きに見てました。

 また、ヒロインのローラは、「完全に社会から隔絶されていた」が前提のキャラで、だから社会や家族を知っていく過程が重要なポイントなのに、馬の遊具に乗るとか音楽聞くとか、そういうシーンを「置いているだけ」な不自然さ、わざとらしさを感じます。何より、「手をつなぐ」という超目玉シーンに伏線なしってアホすぎ。
 で、それっぽくイノセントなシーンを並べておいて最後に思いっきり業を背負わせるやり方は、「それがいい」という人もいるかもしれないけど僕は好きになれんです。



 例の邦題の問題は、僕は「ドリーム」というクッソ陳腐なメインタイトルの方にイラッとしてたので、改題されてより悪くなった気がしてます。ただ、時代背景から言ってキング牧師の演説が内容に噛んでくる可能性があるので、見るまではあまり dis らんでおこうと思います。



ウルヴァリン: SAMURAI  (字幕版) -
ウルヴァリン: SAMURAI (字幕版)
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2017年06月05日

短評(おじいちゃんはデブゴン/ゴールド)


 いつものゴニョゴニョから始めますってぇと、「天下りをあっせんしてた事務次官が、在職中からずっと買春三昧、かつそれが認知されても公表されず罪にも問われず退職、税金から退職金5000万円ご進呈」って、法的にも倫理的にも真っ黒で、取り繕いようのない行政の醜態。これこそ「内閣が二つ吹き飛ぶ爆弾」だと思うんですが、よくこの直撃をかわしたな安倍政権スゲー、ってのが率直な感想です。
 そんで、素人目にも信憑性皆無の怪文書をトップ記事にしてこれをアシストした朝日新聞て、チョー政府の犬(棒。


おじいちゃんはデブゴン
[60点]
@新宿武蔵野館
 このタイトルにして内容が重すぎ、スッキリもせず、国際色を出そうとして敵組織を3方面に分断したもんでくっちゃくちゃになったストーリーは、さすがに誉められたものではないのですが。

 一世を風靡したアクションスターが、今や手技しかまともに見せられない有様でも。シーンの終わりに息を切らせてばかりでも(アレ演技でなくてガチだよね……)。
 それでも、腹の肉で突きを滑らせて仕留めるとか、最後に決める大技が「全体重かけて背骨をへし折る」とか、やっぱりこれはサモ・ハンだからこそ、彼が老いてこそ作れた映画なわけで。
 何度か書いたけど、僕は高倉健や菅原文太に、老いてこそ作れるこんな風な映画をやってほしかったと、そう思わずにはいられないのです。


ゴールド -金塊の行方-
[65点]
@TOHOシネマズ川崎
 1995年に起きた Bre-X事件と呼ばれる投資詐欺の実話を元にした、探鉱師と投資会社、つまりは古き良き山師と現代の山師が、くんずほぐれつする狂騒曲。時代が1988年に変更されてるのは、「インターネット時代でないほうがいい」という判断?
 最後のオチが、完璧な伏線の回収で、ストーリー的には素晴らしくキマります。しかし、本作はどっちかというと、マシュー・マコノヒーの憑依系演技をひたすら楽しむタイプの作品で、彼にはどこまでもどこまでも 49er の流れを汲むアゲアゲな山師でいてほしかったなー、というのがホンネです。「ボーキサイトの鉱脈は、あるはずだけどまだ掘ってない」じゃん? 行かなくちゃさ!


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2017年06月03日

バイオハザード ヴェンデッタ

[40点]@ユナイテッドシネマアクアシティお台場

 「もうない」って書いたはずの、3・4人で世界の運命ぶん回す日本産3Dアニメーション、キター! よもやここまでクッソつまんないとは!

 デキ以前の問題でさ。最初の1時間くらい、マジで「どっかで見たものの焼き直し」しかないのよ。あ、たぶん次こういう展開が来るなと思ったら、ホントそのままそうなるんだよ!
 ゲームの再現、っていう感じでもないし、クリエーターなら絶対意識してるはずの、「独自性」とか「新奇性」で客の目を引こうという思想が、きれいさっぱり抜けてるとしか思えないの!
 ゾンビ映画なんてさ、とりあえず作れば売れるってんで、登場人物少人数のパターナリズムで個々のシーンを無駄に長引かせて安価に作ろうと考えるわけで。グローバル化でインドでも作るワケでさ! ゾンビもののトップブランドを冠して、不気味の谷を越えようかっていう精密アニメーションで作る映画が、なんでワザワザそんな低いレベルでやんねんっていう!

 「結婚式」でやっと、「新しい」っぽく見えるシーンが出てきて、「NY襲撃」の展開がきてやっと、安い実写では撮れないなと思えるシーンが出てきます。でもそこがもうクライマックスで、かつ率直に言ってショボい。もっと盛り上がるやり方があったはず。
 ガンカタっぽい格闘シーンは良かったし、ラスボス粘り腰展開のあまりのバカバカしさに、「よし許す」とちょっとだけ思えたけど、僕ならプロデューサーをぶん殴ってでも、アレがツカミ、悪くとも中ボスの物語を考えるけどね!

 じゃああるべきラスボスはって? 「ゾンビ化した後でもワクチン投与で人間に戻れる設定」なら、どんな3流でも「レベッカ=ラスボス」をまず考えるでしょう。それでやっと「陳腐」と評せるレベルの作品だよコレ。
 ていうか、冒頭で「家族や友人を殺せるか?」って話をしているんだから、脚本家は絶対そういう葛藤のある展開を書いてたはず。でもたぶん「ラスボスはでかいワルでないとダメじゃね?」みたいな凡庸極まりない意見が通ってああなったんだ。

 これで娯楽になると思えるってどんな才能だ。この辻本某とかいう監督はどんな経歴を経れば映画一本任されるほどの立場になれたんだ? 過去作を調べてみ……あ、ごめん、もうノーコメントで……。



バイオハザード ダムネーション [DVD] -
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2017年05月30日

夜明け告げるルーのうた

[70点]@TOHOシネマズ新宿

 「夜は短し歩けよ乙女」に続く、湯浅政明監督の新作。

 面白かった、のですが。
 湯浅監督のポテンシャルを全部出した、というよりは、かの作風に、一般性のある背景や物語が乗るか? という壮大な実験作です。その答えは、「乗る」であり、喜ばしい作品でした。

 ただ、それゆえに犠牲になった部分も大きい気がします。湯浅監督らしいダイナミックなアニメーションが弾けるのは「ダンスシーン」なわけですが、「そこだけは弾けていいよという許可を得たので弾けている」感がハンパないのです。
 それはなんか、違うだろ、と。ブレーキかかってるんじゃないか、と。アバンタイトルに見せ場がなくて説明的で退屈で入り込めない、って、湯浅作品の構成としてはありえんミステイクではないかと。
 もう少し、こう、やっぱり言葉で表現しづらいんだけど、シームレスというか、ストーリーや緩急やアニメーションの触感を変えても一貫してダイナミックさを見せつける、って路線は譲ってほしくなかった。「夜は短し歩けよ乙女」はそれができていたのです。

 また、「一般性を意識した」と考えたとき、やっぱあの予告編はまずかったんではないでしょうか。湯浅政明のネームバリューを知らない一般層をかえって遠ざけた印象です。
 「見た目にポニョ」で二番煎じに見えてしまうのがつらい。コンセプトは全然違うのに。
 それに、「田舎の若者→閉塞感からの脱却」をメインプロットと思わせて客を呼ぶのは、今となっては「それだけで陳腐」のイメージがあり、難しいように思います。

 実際には、予告編ではほぼ出さなかった「常世思想」が物語の背景にあり、世代の連なりつまりは「親子愛」を泣かせどころにしているわけで。さまざまな親子の形と、その相互理解や行き違いが重層的に描かれ収束していく流れはお見事でした。
 ワン魚とかルーのとーちゃんとか、「子供に見せたい」タイプのアニメーションも多かったので、もっと「親子押し」で作りこみ&宣伝してくれたらよかったのに、と思うことしきり。

 ところで、とーちゃんってアレ、「最初からずっと」あそこに勤めてた、って認識で合ってるよね?



湯浅政明大全 Sketchbook for Animation Projects -
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2017年05月27日

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

[80点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 このタイトルでイタリア映画。「イタリア初のスーパーヒーロー映画」を謳われ、現地で大ヒットした日本産ロボットアニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフにしている作品。



 マジ泣きした。
 男がヒーローになる、その瞬間に。


 起きるイベントは、クッソ陳腐なのに。
 気の利いた言葉などなく、説明するのも馬鹿馬鹿しいほどの顛末なのに。
 ハリウッドがいくらヒーローのビギニングものを並べたところで、決して至ることのない境地。
 底流にある、アメリカも日本も比べようもないほどの、今の南欧の窮状。若者はもがいてももがいても這い上がれないプレッシャーの下に生きていて、とりわけド底辺の小心なゴロツキ、「ヒーローという立場があること」すら知らず信じずに生きてきた男が、ヒーローになるまでの物語。凡百のヒーローとは、落差が違いすぎる。
 「彼らの理解できる範疇でのヒーロー像」は、実はちゃんと存在していて、多くの者が無邪気にそれを目指している。しかし本作の悪役は、それに近づこうともがいて、手段を見失い、堕ちていくのである。
 真のヒーローの居場所はもっと高い。かつてイタリアに旋風を巻き起こしヒーローの代名詞となった「鋼鉄ジーグ」は、そんな範疇に収まってはいない!


 断言してもいい。
 本作の主人公エンツォは、世界ヒーロー史上、「ヒーローになる前のメンタリティが最も低い」キャラクターである。
 物語の開始時点の彼は、善も正義も、愛も勇気も、情も絆も、希望も野心も、祈りも怒りも、およそヒーローと結びつくものをかけらも持ち合わせていない。
本当に何もなく、あらゆるものから物理的にも精神的にも逃げ続けて生きている。

 そんな男が、ヒーローになる。
 そんな男でも、ヒーローになれるのだ。


 ならばなんとする。君は何をする。
 せめて刮目して見よ。男がヒーローになるその瞬間を!



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スーパーロボット超合金 鋼鉄ジーグ 約130mm ABS&PVC&ダイキャスト製 塗装済み可動フィギュア



 せっかく気合い入った文章が書けたのでここで締めたいところだけど、少し追記しておきたいことが。
 冒頭にどーんと漢字入りのタイトルが出てくるので、へぇイタリア映画でもディズニーみたいに日本語訳でタイトル入れるようになったんだー、と思ってたら、パンフレット読んで驚いた。

 「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」これ、邦題じゃないのな。原題。イタリアでも、正式なタイトルが日本語なんですって。どんだけ愛されてるんだ鋼鉄ジーグ。

 それだけの愛に満ちてるのに、本場日本での反応が悪いのは残念。
 あのタイトルバック見るのと、エンディングのカバー曲を聴くだけでも日本に輸入された価値があると思うので、マーベル辺りの、悩むヒーローに食傷気味の方は是非。
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2017年05月25日

BLAME!

[80点]@新宿ピカデリー

 原作二瓶勉・製作ポリゴンピクチュアズの、「シドニアの騎士」の組み合わせによる3Dアニメーション新作。

 見終わって最初の率直な感想はこう!
 「これは世界で売れる」
 作っては作ってはクソを積み上げてきた「3Dジャパニメーション」が、やっと「売れる型」かつ「日本ならでは」に到達しました。寿ぐべきです。
 「レンダリングの都合上」3人か4人しか登場人物がいないのに、世界の運命をブン回す悪習はもはやありません。本作など、最大の難点が、「キャラが余っていて」効果的なキャラ配置ができず、ラスボス登場からの流れにもたつきを感じる点、ときてるんですから。

 シドニアも海外評価高いようですが、あちらはジャパニメーション文脈の比率が高いので、こちらの方が絶対いける。何しろ、西部劇の時代から紡がれる王道の物語構造(「マッドマックス」も同パターン)を、「男の背中」で締めて見せつけるこの説得力!
 さらには、物語空間が狭いにもかかわらず、3D背景にもキャラ構築にも奥行きがあり、さらなる広がりを感じるので、ダークな色彩なのになんか画面やキャラの動きを見てるだけでワクワク感があるんですよ。これはもう、絶対シリーズ化すべきです。

 なお、NETFLIX の同時配信で、映画館での公開は2週間限定だそうです。NETFLIX が、かなりの製作費を突っ込みつつもわりと自由に作品を作らせてくれるのはいい時代なのでしょうが、それでもこれは映画館で見るべき作品と思います。うまい棲み分けができてゆけばいいのですが……。



「劇場版 シドニアの騎士」Blu-ray -
「劇場版 シドニアの騎士」Blu-ray
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2017年05月24日

メッセージ

[55点]@ユナイテッドシネマ豊洲

 秋に「ブレードランナー2049」が控えるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の、ファーストコンタクトものSF。異星人のUFOが「ばかうけ」に似てるというのでちょっと話題に。
 映像はとてもよいデキで、この映像センスでブレードランナーが見られるなら、それはすごく楽しみだ、というべきなんですが、本作は内容的にな。そもそも映像化に向く原作だったか、という点でな……。

 あの手この手で苦心して「言語」で異星人とコミュニケーションしようと試みる前半部分は、ヒットさせづらそうな地味な絵面ながらも、個人的にはすごくwktkしながら見ておったのですが、後半で明かされる「仕掛けられたトリック」により、話は確実にヒット作的な方向に切り替わりつつも前半部とあまりに乖離してしまいます。というか、そこまでの苦労話を粉々にぶっ壊します。「いかに対話するか」の物語だったはずのものがなぜそのように変容するのか、正気を疑うレベル。
 うん、まぁ、コミュニケーションは大事だ、「それ」すらも、コミュニケーションに成功しなければ伝えられなかったわけだから……。

 以下ネタバレ注意。



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2017年05月15日

スプリット

[65点]@ユナイテッドシネマ豊洲

 M・ナイト・シャマラン監督の新作は、多重人格者が女子高生を誘拐する、という内容のシチュエーションホラー、なんですが……。
 あー……うーん……そーかぁ……。


 いやさ、まさかシャマラン監督作品で、「続編が決まっている」ので「含みを持たせて終わる」というエンディングを見ることになろうとは夢にも思わなかったですよ……。つーか、そのクロスオーバーする旧作、オレ知らんし!
 ヒロインのケイシーちゃんも「虐待を受けていた」のは明らかなので、「ビースト同士の殺し合い」か「つがいになる」か、どちらの終わりを選択するのだろう、と思って見ていた自分としては、どちらにも至らないのは消化不良としか言いようがないです。「続編」のせいでそういう中途半端に陥ったのだとしたら、あまりにもったいない。


 とはいえ、「製作費のうち最も高額なのはジェームス・マカヴォイのギャラ」としか思えない超安い絵面ながら、最後まで目を離せない緊迫感。これも「ヴィジット」同様、安易なパターンのB級映画を、実力者が全力でぶん殴りにいった感があります。

 しかもジェームス・マカヴォイを使って、「超能力者がいかにして生まれるか」という「X-MEN」を連想せざるをえない内容を、すごく卑近な観点からやってのけるあたり職人芸なツボの押さえ方で、アメリカでヒットしたのも当然、という気がしました。



ヴィジット (字幕版) -
ヴィジット (字幕版)
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2017年05月02日

短評(フリーファイヤー/3月のライオン後編)


フリー・ファイヤー
[35点]
@チネチッタ
 見る直前に、実はあの駄作「ハイ・ライズ」の監督の作品と気づきました。でも、まさかチンピラがパカスカ銃撃戦するだけの内容に下手打つまい、だったらあのザラザラした質感の映像は合うんじゃないかな、と思っていたら。
 冒頭に出た「監督からのメッセージ」の言い訳がましい内容からして、手ごたえが変だったんですが。いやもう……退屈だった。
 だって、誰が誰を何の意図で撃つか、という表現がほとんどないんだもん。これ、銃撃戦て言わないよ! やたらに銃声がしてるだけだよ! パンパン音がしてる合間にみんな独り言をぐだぐだ並べてるのと何も違わないよ!
 あー、この監督の作品は二度と見ません。確実に時間の無駄。



3月のライオン -後編-
[70点]
@チネチッタ
 前編。
 いやはや今回も「対局シーン」が圧巻。今回は主人公がその立場に立つので、圧巻度合いがいや増しています。新キャラは伊勢谷友介くらいで、前編が前提にあれば「キャラが立ってない」感もなく、非常にのめり込んで見られました。
 ただ「対局」が凄いってことはつまり、大友監督は「強い孤高の男同士の勝負」にリキを入れている感じで、周辺にある「家族話」とは乖離しててバランスが悪い気はします。

 そこらへんの家族話がいまひとつピリッとしない理由は別にもあって、「中学生に見えない清原果耶」「年上に見えない有村架純」が主犯だと思います(特にあのイジメシーン、まんまチープな学園ホラーに突っ込みそうな気がしたヨ!)。神木隆之介や伊藤英明の凄みも、撮影は単に顔どアップにしてるだけ、と考えると、監督の力量と言うよりは俳優個々人の演技力、と思われ、うーん、正直まだ大友監督は信頼しきれない。
 というか、彼には変にウェットな要素のある作品を与えない方がいいのでは。升田幸三あたりのガチ勝負師を勝負師としてのみ撮るような作品の方が……、あ、そうか、この撮り方で「月下の棋士」を見てみたいかも!



 あと、映画の内容とは全然関係ないんだけど、前編でも書いたとおり、自分の目的の一つは、スピッツをカバーした、エンディングの「春の歌」でした。

 ……予告編の段階で気づいてろよって話ではあったのですが。
 これ、「愛と希望より前に響く」じゃなく「愛と希望を、より前に響く」って歌ってない? 愛と希望というものが存在して、それをもっと響かせよう、というニュアンスに変えてない?

 ふざけんなよファッキン編曲者。原曲と意味が真逆じゃネェか。ていうかその後の「愛も希望も作り始める さえぎるな」と合わなくなってるだろうが。
 愛も希望もない(あるいは、陳腐で価値がない)ところに春の歌は響いているのであって、そこでガムシャラに進んでいく詞が、まんま「将棋しかねぇんだよ」な桐山零に合致するからテーマ曲たりえてるんじゃねぇのかよ!



スーベニア - スピッツ
スーベニア - スピッツ
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2017年04月27日

短評(Free!/アニメたまご2017/人生タクシー)


 転売ヤーの話が話題になっていますが、ふっと思ったのは「立川シネマシティはキャンセルが上映20分前まで可。キャンセル料金はかからない神仕様」だってことです。キャンセル不可になった時刻をもって支払い確定。
 物理的な発券開始をそれ以降、会場内のみに設定すれば、転売可能な状況が極めて限定されるのでかなり抑止になると思うのですがどうでしょうか。シネマシティのシステムを作った会社は、汎用性を高めて、発券インフラも合わせて各種イベント会場に売りつけたらすごく喜ばれると思います。



劇場版 Free! -Timeless Medley- 絆
[50点]
@チネチッタ
 あ、この二部作って「総集編と新作の組み合わせ」じゃなくて「総集編2本」で、その先に新作を作るのか……じゃあ次は見ないな……。
 「フォトセッションつき舞台挨拶」という上映前特典映像の謎っぷりと、それよりさらに前「キンプリ新作の予告編」がいちばん面白かったので、本編はもはや必要なかったかもしれません。


アニメたまご2017
[75点]
@テアトル新宿
 アニメミライを後継している企画の一般公開が、テアトル新宿で1週間限定、レイトショー1回のみで実現。しかし平日だったとはいえ、もう少し入ってほしい……。
 で、今年は……面白いかどうかはまったく別として(ていうか他の3作品のほうがよほど面白いし出来もよかったはずなのだが)最後の「ずんだホライずん」が、目も耳も魂も記憶も根こそぎ全部持っていく破壊的なインパクトなので、もう少しバランスを取ったほうがいいと思いました(笑!


人生タクシー
[評価不可]
@新宿武蔵野館
 イランで20年の「映画製作禁止」の刑に服しているはずのパナヒ監督の新作は、もっと「法の抜け穴」的に撮った作品かと思ったら、「映画ではない」とした曖昧さを脱してはっきり「映画」でした。
 複数のカメラを使いカットを割ってきりきり切り替わる映像といい、序盤に張った伏線が終盤に生きる展開といい、同様に車内のカメラだけで撮った「逃走車」かそれ以上に「映画」です。無論、意図的でしょう、中盤以降ハッキリと、監督が現況に不満と抗議をぶつける「主張」があらわになっていきますから。そりゃイランでは上映許可出ませんわな。ちょっと意外でした。
 ただ、姪っ子ちゃんの言動そして存在感は素晴らしいのだけど、彼女に業を背負わせる形でこの作品に巻き込むのは個人的には好かない……というのは日本人の感覚かな。


 ところで、この作品は尺が短いためか、本編の前に日本人監督による短編が2本差し挟まれます。しかし、松江哲明監督はともかく、森達也のものは、「本作をおススメしたい」気持より「この森達也の愚行を誰にも見てもらいたくない」気持ちが上回るひどさのため[評価不可]としました。
 それを「日本で」表に出したって、厚顔無恥なひけらかしでしかないだろうに。「イランで」やってこい、話はそれからだ。
 でもそうしたところで、相手にすらされるまい。「映像作品」としてみたとき、撮影技術から脚本から、撮って何を伝えるかというカメラに込める意志の強さから、すべてにおいて、本編内で示される「イランの子供のその場の思いつき」に劣る惨憺たる内容だからだ。
 これが日本のドキュメンタリー映像作家のトップレベル? 日本の映画界はどこまで堕ちれば気が済むのだ。



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2017年04月17日

夜は短し歩けよ乙女

[80点]TOHOシネマズ新宿

 急に忙しくなって、更新滞りそうです……「人生タクシー」をいつ見られるかわからない……



 まず最初にすごく思うのは、湯浅政明監督が「デビルマン」を作るという話で。
 うがった見方かも知らんけど、超一流アニメ監督連れてきて/前哨戦にその監督の作品の新作を2本も公開/なおかつその2本が、「すでに評価の高い作品を作った座組」と「監督が好き放題やる完全新作」という組み合わせ、と、デビルマン映像化を再度企画として成立させるにはこれだけのみそぎが必要だったのか、と思わずにはいられず……。
 業が深すぎるぜデビルマン。


 で、まず公開されたのが本作。原作森見登美彦/脚本上田誠(劇団ヨーロッパ企画、個人的には「サマータイムマシンブルース」も忘れられない)と組んだ、週アニメの傑作「四畳半神話大系」とほぼ同一世界観の作品で、「黒髪の乙女」と彼女に恋する「先輩」の一夜の追いつ追われつ。……一夜のはずなのに一年が過ぎているキテレツな時間軸。

 いやもうスゴいわ。
 語彙乏しくって申し訳ないけど、湯浅監督の場合、どこがどうとか詳しく説明できる人そんなにいないと思うんで、許して。
 とりあえず、サイケで人智の想像及ばぬ凄まじいアニメーションが描き出すキテレツ時間軸に、大量の伏線とその回収を仕込んでなんら違和感なく、しかも重要なポイントは逃さず伝えてくる恐ろしい手際。
 見た目は全部無駄で大仰なことばかりしているように見えて、まるで無駄なところがないです。

 予告編を見ていて不安だったのは声優・星野源でした。どう聞いてもただのおっさんだったので。「聖☆お兄さん」はおっさんでよかったのだけども。
 坂本真綾→花澤香菜は、「乙女」のキャラが別物になっているので理解できます。「先輩」もだいぶキャラが違うとはいえ、四畳半神話大系における浅沼晋太郎の「こじらせた学生」演技は絶品なので、星野源が果たしてその域に到れるや否や。
 が、この作品って、実は乙女の方がメインで、先輩はあまり出番がない。少しずつ慣らしていって、ラストに一気に脳内会議、という弾けかたなので、納得のデキでした。あのシーンの浅沼晋太郎版も聞いてみたい気がしますけども。


 いずれにせよ、湯浅政明がいよいよメジャー級評価を受けはじめたようで喜ばしい限り。
 次の「夜明け告げるルーのうた」も楽しみです。一見してポニョみたいな設定に、わりと普通の話を載せてるぽいのが意外なのですが……さぁどうでるか。



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2017年04月11日

バーフバリ 伝説誕生

[80点]@新宿ピカデリー

 あと3日しか機会がない。すぐに書きおおせねばならぬ。
 これが、この作品が、都心では1週間限定1日1回しか上映されないだと?!
 映画界馬鹿じゃねーの?!


 インド歴代興収ナンバー1、そしてインド映画で初めてアメリカでの週末興収ベスト10に入ったという、インドの古代叙事詩における伝説の戦士を描いた一大スペクタクル……とかいう惹句はこの際置いといて。

 ハッキリ言う。
 インド映画の主人公はだいたいみんなヒーローでイケメンだが、本作の主人公は突き抜けてイケメンである。
 よくありがちな貴種流離譚だのに、そのありがちなストーリーを、ここまで超カッコよく描写した作品にはそう滅多にお目にかかれない。境遇、性格、行動、戦いぶり、肉体美、女の手玉の取り方に至るまで、すべてのイケメンぶりに説得力がある恐るべきイケメンである。
 あらゆる女子は、壁ドンとか顎クイとか、そこらのスイーツなラブコメを見てる場合じゃない。ヒゲが生理的にダメというのでもない限り、絶対に今週中に新宿ピカデリーに駆けつけて本作を見るべきである。そして惚れよ。鼻血を吹け。高橋一生やら星野源やらジョニデやらあんなヤサくてチャラいの、どうっでもよくなること請け合いである。

 惜しむらくは、本作は、終盤の合戦シーンがヌルい。
 いや、本当はスゴいのだ。合戦全体を俯瞰し、作戦をきちんと説明した上で緻密に描写し、すべてのキャラクターに目配せをしつつ、大量のエキストラによる組んずほぐれつの迫力ある集団戦を演出するという、現代の日本映画の合戦なんか鼻毛で吹き飛ばす、ハリウッドでさえここまできちんとやっているのは少ないと思えるくらい、完璧な合戦シーンである。
 だがしかし、本作に限っては、(説明された作戦通りに進行するので)だいたい予想の範疇で収まる上に視点をあちこち切り替えるので、主人公のイケメン度が薄れる、という意味でヌルいのである。
 もっとイケメンぶりを見せよ! バーフバリ! バーフバリ!

 なお、本作は二部作の前半であり、がっつりクライマックスを見せた後にすさまじく完璧なヒキを入れた上で「次回に続く」である。日本で安易に前後編公開をやっている連中は土下座しつつ刮目すべきである。


 後半はせめてもっとちゃんと公開してくれ。頼む。
 あとできれば、今回かかっているのは例によって英語圏向けの編集されたバージョンに見えるので(明らかにブツ切られた部分がある)、完全版の公開もお願いしたい。



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2017年04月10日

GHOST IN THE SHELL

[65点]@TOHOシネマズ新宿

 あーっ! あーっ! なるほど。なんかこう、せつないというかはがゆいというか。
 言わずと知れたスカヨハ攻殻。すごくわかる。攻殻機動隊って、海外じゃこういう受け止められ方してるんだなって。

 この作品、ひとことでいえば「アメリカナイズされた押井版攻殻」です(まったく同じ構図がバリバリ出てきます。でもエンドロールに押井守の名はなかったような……大丈夫なのか?)それは結局、「ブレードランナーへの先祖返り」へ帰着している。

 博覧強記に裏打ちされた未来世界で、むくつけき男どもを従え圧倒的なハッキング能力を駆使してサイバー犯罪を制圧する、僕らの思う「草薙素子少佐」像の魅力からはほど遠い作品ではありますが、これまでのジャパニーズコンテンツの安易な取り込みとは少し違い、「欧米が需要とみなすのはそこではない」とはっきり突きつけられた印象です。
 ブレードランナーを嚆矢として、以降いくつも後追いで作られた、猥雑な世界観でストイックかつウェットに進行するダークSFの一亜種。その視点でとらえれば、よくできた作品といえるのでは、と思えます。

 そして、「アメリカナイズ」つまり欧米でマスに向かって売ることを意識したとき、攻殻機動隊の世界観で最も重要といえる、「自らを情報化してネットワークに溶かし、それをもってなお生きているとする」結末は選択できない、は前提であったのだと思います。生命と自我を切り離す思想は伝わらない、と。これはもはや宗教や倫理の国民性で語る域でしょう。
 押井攻殻で人形使いにダイブするシーンを模したラストで、はっきりと「それはできない」と言ってのけるだから、意図的というか明確な差別化というか……製作陣の側にも、本来の結末が特色でありオリジナリティたりうると理解する人もいたでしょうから、悔しさがにじみ出ているというか。
 フル義体なんだから、人種は無論、見目そのものすらまったく本質にないのに、ホワイトウォッシュ問題でも敵視されて評価を下げたというのもまた欧米的です。「攻殻機動隊」というコンテンツをもってしても越えられない、高い壁がまだまだ存在するのですね。


 個人的には、「そうなるのかー」と歯がゆく思いつつも、あるていどは予想の範囲内でしたし、本作が作られたことに満足してます。
 本作が出る前に、比較的ウェットな ARISE シリーズが挟まれていたのも、個人的な許容レベルを上げるのに一役買ったかもしれません。本作の吹替は田中敦子・大塚明夫のオリジナル座組と聞きますが、坂本真綾の方がウェット感が出たのでは(自分が見たのは字幕版)。

 ビートたけしの荒巻課長が、全編日本語で演技していたのはちょっと意外でした。違和感がなくて助かりました(ビートたけしは割舌が悪いので、英語字幕が出る方がわかりやすい。吹き替えでちゃんと馴染んで聞けたのでしょうか?)
 ただ、だとすると、あの世界では自動翻訳が普通に成立してる設定だと思うので、もっと各国語が飛び交ったほうが面白かったと思うし、ホワイトウォッシュの話も薄れたんでないのかな?

 最後に、この作品で最も dis りたい点。
 ラスボス多脚砲台が……デザインといい武装設定といい、戦闘アクションのスケールの小ささといい、おまけに、悪役がニヤニヤしながら単にリモコンで動かすだけの仕様とか、何十年前の発想だよというレベル。あれだけは、あらゆる士郎正宗映像化の最下層と言わざるをえません。



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2017年04月07日

短評(レゴバットマン/ハードコア)


 今回は無理です……
 対決もので、両方がタイトルに含まれてるというと、記憶にあるのは……モンスターvsエイリアンくらい?



レゴ バットマン・ザ・ムービー
[50点]
@シネ・リーブル池袋
 実は前作も見てるんだけど感想を書いてません。ラストの展開に感動した人はいるようだけど、自分にはあれが最低限の予定調和にしか見えなかったんですよね。
 ……そうなると、「本当にレゴ組み立ててるならすごい」のだろうけど、CGまるわかりなアニメーションは単調で魅力に乏しく、スピード感でごまかされてる印象なのが正直なところで……。わちゃわちゃおもちゃを動かすのはアニメーションの原初だから、もっと魅力を出せるはずなのに、主人公がレゴ人形なために自分で表現に限界を作っているような……。

 本作は輪をかけて魅力に欠け、「レゴを組み立てる」面白ささえ完全抹消。ストーリーも「家族大事」の凡百パターンで(バットマンの孤独表現はちょっとよかった)、レゴ&アメコミのネタを笑えない人が見る価値はたぶんないと思われます。
 いやはや……まさかこの高速テンポのCGアニメーションで寝落ちした自分にビックリだ。ゴメン、バットマンはどうやって「ファントム・ゾーン」から戻ったの?

 次は「ニンジャゴー」らしいけど、もう見ないです……。
 というかそもそも自分はダイヤブロック派だったんだっ!



ハードコア
[60点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「観るではなく同期する」がウリの、ヘッドマウントカメラで撮影し、全編通して主人公の目線がそのまま観客目線となるPOV映画。……なんですが。
 この視点自体は、海外のゲームは今やほとんど全部そうと言ってもいいし、映画でも「DOOM」のように部分的に採用したものも多いわけです。「全編」になってどんなこだわりの差別化が図られたか……ってコレ……むしろ優位性をグチャグチャに壊してない?
 だって、ブッツブツにカットを切るんだもの、まったく体験の共有になってない。音声は継続してるのにカットは切れている、なんてシーンもやたらある。今の技術なら、カットを切ってもCG処理で長回しのように見せられるはずなのに、その措置も雑。
 また、何かを見たとき、対象を目に留め認識する「間」があるべきなのにそれがなく、何をしてるかわからないところが多すぎ。体に動きを覚えさせたスタント目線そのままでは? と推測します。白兵戦のシーンになると、「演技ではインパクトさせられない」ので、対象との距離感が変、という違和感も出てくる始末。
 ストーリーも、襲われて切り抜けようとしてピンチになると助けが入る、を何度も繰り返すワンパターン。総じて、同期どころか、「作品世界に没入させたくないのでは」と思うくらい、他人事にしか見えなくなってしまった、残念な作品です。

 逆に、ピンチの先に現れる「ジミー」のアイディアと、演じるシャールト・コプリーが素晴らしすぎて、もはや彼が作品全体を乗っ取ってるも同然の状態になっています。「彼主演で一本作ればよかったのに」と思うことしきり。



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ダイヤブロック BASIC 350
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2017年04月04日

わたしはダニエル・ブレイク

[50点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 んー、モヤモヤすんなぁ。パルムドールはまたこんな感じか。

 いやさ、これ、役所の論理のほうがすごくわかるもん。求職実績が証明できない者に、求職手当が出るわけないじゃないか。実直さとかテメェの尊厳とか関係ねぇよ。
 仮にかつてはそれが通じるはずの優しい世界だったとしても、経済情勢の悪化で、そんなワガママはもはや通せないと突き上げた連中がいるんだろう? そこで福祉を維持するために、より合理的なシステムを取り込まざるを得なくなり、職員やコールセンターの回線が削られ、厳格なルールが作られ、情に流される前例を作ることが禁じられたんだろうに。因果関係が逆だ。

 ちょっと面白かったのは、イギリスでは福祉の手続きがあらかたオンライン化されており、デジタルディバイドゆえにダニエルは福祉を受けづらい立場にあること。オンライン化が進まない非合理さが福祉の質を落とす日本とは、対照的だと思いましたね。
 とはいえ、ダニエルは「助け合いを知っている」んだから、チャイナくんに「君のビジネスに住所を貸すから、俺のオンライン手続きを最後まで助けてくれ」って言えば、この話全部終わりじゃないか。コミュニケーション能力がある人をわざとコミュニケーション不全に描いて「ネガティブな人間模様」を捏造する、ミヒャエル・ハネケと同じやり方。

 この作品で一番辛い立場にいるのは、両者の論理の板挟みになるアンで、正しい意味で尊厳を傷つけられたのは「ハリー」だと理解しなくてはいけない。「自分と同じ立場の者がいくらでも居るであろう」ことに思い至らないダニエルの不正直な態度によって、ハリーがどれだけ苦い思いをしたか想像せよ。

 それを考えもせずに、「わたしはダニエル・ブレイク」だ? どんだけ自分は特別だと思ってんだよ。おまえが生きているのと同じように、融通の利かない公務員は生きているし、庭に犬のフンまき散らすやつは生きているし、合理化の必要性につけこんで福祉を民営化して儲けたい事業家が生きているんだ。個人の集合が社会なんだよ。「個人は大事だ」「個性は大事だ」そんなもの全部、言挙げするまでもない大前提として飲みこんだ上に、「社会」を構築すんだよ。
 だからこそ、一人一票の民主主義に価値があるんじゃないか。行政に八つ当たりすんな、議員に言え。


 で、社会の変化についていけない俺様でも望むとおりに福祉を受けられるようにしろ! という内容を見てか、本作のチラシには左翼方面の有名人の大絶賛コメントがずらりと並んでいるわけですが、このような行政に怒ったイギリスの大衆が選んだのは結局「ブレグジット」、という事実は全力スルーなのが爆笑ポイント。
 現地の人のほうが、「逆の因果関係」をよく理解している、ということですなぁ。



 ソッチ方面の話になったから、ついでに、森友問題の個人的総括しとく。

 この問題、はじめから「贈収賄がない」「近畿財務局の措置が不正でない」ならば、誰も何も突き上げられるいわれがない。そしてその正否は、まだまったく定まっていない。確固たる前提に欠けているんだ。前提を間違えた議論は必ず結論も間違っている。時間の無駄だ。
 ブラックな臭いはぷんぷんするよ、でもそれを断じていいのはオマエラじゃない。裁判所だけだ。

 法の裏付けがない状態で、誰かを公に断罪せんとする行為、それは「人民裁判」という。まともな法治国家の住人なら、絶対に避けるべき行為だ。それを恥ずかしげもなくやっている連中が政治家を名乗っている。マスコミもそれに乗っかる人々も、助長して臆面もない。嘆かわしい。
 自分が政治家なら一秒たりとも関わりたくないし、関わってるとみなされるのはたとえようもない屈辱だし、ましてそんな奴らのお望み通りに情報を提供するなんて、恐ろしくてできない。

 今回政権側が、証人喚問から偽証罪の告発、という路線に乗せたのは、いい判断だと思う。これを「司法に委ねようぜという意思表示」の観点で見る人が少ないのに驚く。彼らだってやりたかないだろうが、このまま国会を空転させるよりはなんぼかマシだ。
 (たとえば「この問題」を知っている人がいま日本に何人いる? 食の問題だから、きちんと深堀すれば世論にはすぐ火が付くだろうし、農政問題だから世論が動けば自民党議員の離反も確実に見込める。安倍政権を追い詰めるにはうってつけのネタなのに、野党の幹部は、この法案が審議されていることすら知らないのだろうよ。)

 アキエもツジモトも現段階ではまったくどうでもいい。そんな程度のことを、予算委員会で問う価値が微塵でもあると思う人間は、狂っている。心底軽蔑する。
 国会でやるな、裁判所でやれ! 話はそれでおしまい!



愛、アムール(字幕版) -
愛、アムール(字幕版)
posted by アッシュ at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする