2017年02月24日

短評(愚行録/ナイスガイズ/王様のためのホログラム)


愚行録
[70点]
@チネチッタ
 いやもう……こういう作品は、最近はなるべく避けるようにしてるんだけどさ……向井康介脚本のミステリだしさ……迷った末に見たんだけど……。
 感想を一言で言うなら「見るんじゃなかった」と……見た人全員首肯してくださると確信するけど、この作品の場合、それが褒め言葉ですから……。
 空気を作る山下敦弘監督とは違って、この石川慶という監督は……奥底の情を抜き出そうとしてらっしゃるようで、なおさらキツイわけで……。ポーランドで学んだ方だそうで、あぁ東欧の文芸映画ってこういう雰囲気だよねそれを日本のイヤミスに使うとこうなるのかーと思いつつ、ほっとくとやたらゲージツ方向に走りそうな気配もあって、向井脚本は合ってたと思います。
 それにしても、あれ満島ひかりかよ……言われてみれば確かにそうなんだけど、見てる間はもう……女優怖ぇっす。



ナイスガイズ!
[50点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 期待してたんだけどピンとこず。コントめいた個々のシーンは笑えるんですが、肝心の「事件」の情報の置き方が散漫な印象で、何が重要で何が重要でないのか、進展しているのかいないのかハッキリせず、面白くないというよりよくわからなかったです。最終的にはちゃんと形になるものの、その後味も悪いし、「社会派」的なまとめ部分は、単なるノスタルジーだよねとしか……。字幕の限界もあるのかな。
 加えて、アクションシーンがスタントに頼り過ぎで、何が起きてるのかどころか、誰が闘ってるのかすらわからない始末。共闘シーンもないとあっては、これをバディものとして評価するのは、自分は無理です。

 あと、当時の「フィルム」と「火」を重ねるシーンが何度もあったから、最後にライアン・ゴズリングがフィルム缶持ったままタバコ吸い始めた瞬間にオレ吹き出しちゃったんだけど、その後何も起きなかったのですごく恥ずかしかった。そこ、フィルムが燃え出してパニクるオチをつけなきゃダメでしょ!



王様のためのホログラム
[45点]
@TOHOシネマズ川崎
 予告編で期待した、「ITシステムをどう売り込むか」という話はほぼ俎上にありませんでした。実質は、イスラム教国家の現状を教えてさしあげる啓蒙映画です。最初から最後までイスラム国家が舞台なのは珍しく、メッカにカメラが入った(ように見せかけた)展開だけはすごいと思ったけど、「異文化交流もの」と考えると、平板すぎて全然盛り上がりません。
 「イスラム教徒なんてみんなテロリスト」とか思ってる欧米人はビックリするのかもしれんけど、日本人にとってはなぁ……しかも選ばれた国が比較的豊かなサウジアラビア、ラブロマンスのお相手はムスリムでも欧米思想寄りの異端女性なので、なんか首をひねりたい感じが否めず。
 登場する企業ロゴが全部アジア企業なのはちょっと面白かったです。あと、「閉じこもってる欧米国家」の代表にされたデンマークは怒っていい。

 そんで、「恐怖心が生んだ少数の癌を取り除けば、活力みなぎってハッピー!」というあからさまな比喩が出てきますが、それが「少数」どころか半分以上を占めているからトランプ大統領が生まれた現実、そしてその「少数でない」状態を作り出したのはこういう脳天気なグローバル思想の帰結であってもはや精神論ではどうにもならないことを、そろそろトム・ティクヴァ監督には理解していただきたいもんです。



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2017年02月23日

サバイバル・ファミリー

[55点]@ムービル

 震災を経てこういう物語が望まれたのはわかるし、矢口史靖監督らしからぬストイックな(でもディストピアにはなりきらず、コメディの線は踏み外さない)作り込みの好感度は高いのだけれど、細かい設定のガバガバ感が鼻についたので、どうも自分はこの話に向いてないようです。
 ロボジーの印象が近い……というか、僕の大好きな「スウィングガールズ」も、あれ本気でジャズやってる人には聞けたもんじゃないらしいんですよね。
 矢口監督にとって、「創作物とはどうあるべきか」の線引きはそういうもので、噛み合わないときはしかたないと理解するしかないのかもしれません。


 以下、ラストまでネタバレでツッコミの嵐。



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2017年02月20日

劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-

[65点]@109シネマズ二子玉川

 ARをストーリーに持ち込んだのは、企画当時は革新的だったのでしょうが、完成前に「ポケモンGO」がヒットしてしまったのがよしあし。わかりやすくなった代わり、本来あるべきリアルへの影響───それを現実でやるといかに邪魔で迷惑な事態になるか───という観点が欠けてしまったのが痛いです。今さら初音ミクなキャラといい、ナーヴギア自体もそれっぽいのが普及し始めた昨今、先進的なイメージを持っていた作品が、時代に追いつかれ追い抜かれているのがちょっと悲しい。
 もはやフツーにゲームでしかないものに、ラノベ的な無茶と不意打ちのご都合主義で「新しさ」「面白さ」を作りこんでいて、そのデキは悪くないですが、肩透かしな感覚は否めません。

 ……いやそれより、忘れてたよ。この作品はさ。
 「夫婦モノ」なんだって。
 そんじょそこらの純愛モノなんて、軽く蹴飛ばすレベルの。

 泣いたり叫んだりの感情的なシーンはほとんどないのに、キリトとアスナがからむたびに熱いラブパワーが滲み出て、ニヤニヤどころかガチ赤面の域ですよ。
 全部わかっちゃいるけど納得しきれないリズベットのあの微妙な表情がね! こっちの気持ちを全部代弁してるようでね! ちくしょう爆発しろ。
 だからこの作品最大の爆笑ポイントは、エンドロールで一瞬映るアスナ母でしょ。え、違う?


 ときに、本作の一番すごいところは、「完全新作、といいつつよくあるサイドストーリーや延長戦」、にはならず、グランドストーリーにがっつり噛ませてるところ。「SAOの100層ボス」をここでラスボスに据えるとは、川原礫、このカードをよくここで切ってきた。こういうのが劇場版の本来の醍醐味とすら思えます。

 あとエイジ役の井上芳雄って、小野玄蕃か!



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2017年02月16日

x+y

[50点]@恵比寿ガーデンシネマ

 「僕と世界の方程式」という、書きたくもない絶望的な邦題で公開されている作品。

 原題が「x+y」。

 数学をテーマにした作品で、この究極にシンプルで美しい題名の価値がわからない人間なんて、言葉を扱う仕事から永久に消えてしまえ。


 ホント、「日本公開すべきでなかったのでは?」とすら思います。この作品のクライマックスは「親子の対話」で、あれはかーちゃん必死で「数学問題の表現で」愛について息子に説いているのです。字幕がそれを訳しきれていないため、感動のクライマックスなのにすごくのっぺりした印象になってしまっています。
 本作は2014年制作だそうで、それが今さらの日本公開なわけで、つまりは本作主演の(すっかりオトナになった)エイサ・バターフィールド君が、「ミス・ペレグリン」でも主演したので、それと同時期の公開なら何とか、という打算なんだろうな。


 理系映画なので興味深かったですし、個々のシーンは面白く見られるものの、正直、ちぐはぐな印象の強い作品です。どうしてこうなった。

 「数学オリンピックに挑む子供たちの物語」を主軸に作りこまれているので、母親と先生の関係のシーンがちょくちょく割り込むのが、話の腰を折りリズムを狂わせ、すごく苦痛でした。
 何しろこのかーちゃんが、「これまでの十ウン年間、息子をなんだと思っていたんだ」というレベルで息子を理解していないんで、物語からすぐフェイドアウトするとばかり思ってました。
 息子は単なる内向的な変人ではなく、はっきり ASD って診断を受けているんだから、それを関係者に周知するくらいはせぇよって話で。そんなだから、出会って2週間の中国女のハニトラに(笑)息子を持ってかれちゃうんだよ!

 ところが最終的には、主軸に見えた数学オリンピックを全部投げ捨て、かーちゃんにクライマックスを委ねます。話がちょくちょく割り込んでいたのはそのためだったのです。
 「十ウン年間何してたんだ」という疑念は晴れないものの、少なくともこの映画内では、「かーちゃんは死んだ父親と違い、落第レベルで数学がまったくできない人で、だから父親に理解できた息子が自分には理解できないと思い込んで苦しんでいた→先生と出会って数学を学び直したので、やっと息子と向き合えるようになった」という話なわけですね。
 で、そうして向き合った息子は「何も難しくない、ポテト鼻の穴に突っ込めばいい」と答える、と。

 ただその後、母に心を開いた息子の告白は、要するに「メイちゃんが好きになっちゃったみたい」、より的確には「あの女興奮する」でしかないわけで。
 結果、数学オリンピック自体に「メイに出会えた」以外の意味がなくなりました。彼を「異常者」「異端児」でなく「よくいるヤツ」と認識して接してくれた、物語の主軸にいると思っていたイギリスチームの仲間たちの存在は、どうでもいい何かに堕ちてしまいました。三角関係にすらならなかったレベッカちゃん。そしてリーダー格のアイザックくんてば、あの忘れもしないタレ目ではないですか。でも本作では存在感ナッシング。


 あれほど数学オリンピック合宿≒台湾ロケに重点が置かれたのは、もしかして、「中国市場を意識しただけなのかも」と考えると、余計に気が萎えます。この映画で、ちゃんと中国国内の公開枠に入れたんでしょうか……?



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2017年02月14日

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

[80点]@バルト9

 評価が二分しそうな作品。僕は「凄い」と思う派。

 まず凄いのは、予告編において、「奇妙なこどもたち」にのみフォーカスしてよくある異能譚と見せかけて、実は「日本で一番人気があるといってもいい定番ジャンル作品」であることを、いっさいバラさずに宣伝しきったことです。

 「定番ジャンル」であるにもかかわらず、従来の定石・常識を完璧にぶっ壊す、まったく斬新なパターン。そして誰が見ても「監督はティム・バートン」と一発でわかる個性。
 「懐かしいどこにでもある物語」と、「今までに見たことがない斬新な物語」とが違和感なく同居して、個性的な映像の中に織り込まれている。マジ衝撃。

 ただ、過不足なく説明されるとはいえ本当に複雑。かつ、日本映画なら間違いなく三部作にするであろう長い話を2時間に圧縮。微妙な矛盾は放置で進められるので、「何が起きてんのかわからないのが不快」という人は多いと思います。

 以下、超ネタバレ。



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2017年02月13日

虐殺器官

[60点]@TOHOシネマズ川崎

 ……うん、まあ、これまでの2作(「屍者の帝国」「ハーモニー」)に比べれば面白かったけど、物語が面白いところと映像が面白いところがまったくリンクしないあたり、伊藤計劃という作家は映像化には向かないしこの企画は失敗だったとしか。

 まして村瀬修功という監督は、本作同様マングローブの破産の影響をモロに受けたとはいえ、「ギャングスタ」を、救いようのない結末をすべての物語的説明をはしょって放り出すという、近年まれにみる最悪のエンディングを良しとしてしまった人。物語の咀嚼より、絵面のカッコよさを優先するんだと思います。人選間違えたんじゃないですかねぇ。
 軍事ギミック表現は、神山健治の攻殻を超えてそうなくらいカッコいいです(でも「ドローン・オブ・ウォー」「アイ・イン・ザ・スカイ」を見た後だと、標的の居場所もわからんのに歩兵で制圧ってのはいかにも古い)。しかしこの作品で重要なのはそこですか、と。
 物語がそういうことなら、この作品で執拗に描くべきは、アメリカ人の「平和な」市民生活でしょう。それを序盤の背景説明だけで終わらせてしまっているんだからねぇ……。



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2017年02月08日

短評(血煙の石川五ェ門/ドクターストレンジ/未来を花束にして)


Lupin the IIIrd -血煙の石川五ェ門-
[75点]
@バルト9
 前作の次元編は、背景を説明しない点が残念にも思えたんだけど、今作のバッサリ感はいっそすがすがしい。ストーリー的に背後にあるものをあえて全部はぎ取って空っぽにして、ただ強敵との対決にだけ注力してすっぱすっぱ切り捨てていく。
 そしてできあがるのが、五ェ門の斬鉄剣が、装飾を剥ぎ取った白木拵えになる理由の物語、というね……とにかくカッコいい、ザ・小池健アワー、ケレンみ全開の1時間を堪能せよ。


ドクター・ストレンジ
[65点]
@ムービル
 「厨二病」とかいいますが、いい大人が「魔法」を考察してその原理とか効果とかに凝りだすとキリがないわけで……ましてや天下のスタン・リー&マーベルコミックスがそれをおっぱじめた、となると!
 本作は東洋のスピリチュアル路線をメインにしてマゼコゼしているために、ストーリーからギミックからアクションから、必要以上にめんどくさい代物が出来上がっています。率直に言ってわかりづらく、日本人的には(それこそアニメによくありがちな)わりと単純な話に見えるのですが、全然すっきりしません。
 しかし戦闘シーンのVFXだけは、そのめんどくさいこだわりがとてつもなくよい方向へ振り切れていて、ダイナミックでアーティスティックでカッコいい。すごく「映画を見た」満足感がありました。


未来を花束にして
[45点]
@TOHOシネマズシャンテ
 予想と違った。酷い映画だった。……だって、主人公ってばガチ過激派ですぜ!
 それも、途中で刑事が詰問するとおり、運動のトップにとって使い勝手のいい先兵になるよう、家庭崩壊すら辞さないほど都合よく洗脳された人を、徹底して「気高い犠牲者」に描写するんだもの。
 ……いやさ、実際に女性参政権が成立したのが1918年ってことは、それどう考えても「世界大戦のドサクサ」ですがな。実力行使=既得権益者の不利益に直結する労働争議とは違うんだから、彼女らの行動は「脅迫」以外の意味を持たないテロそのもので、むしろ願望の実現を後退させただけとしか読み取れない。なのに「可哀想な人たちの抵抗する姿はすばらしい」とか「マスコミ沙汰にさえなりゃ正義」という、リベラルのいちばんダメなメンタリティを美化して直球でぶん投げるのは、意図的なのか素なのか……。
 そういや、運動の中心にいたパンクハースト夫人を演じるメリル・ストリープが、反差別のつもりで自身の差別的思想を露わにしてしまった話がちょうど持ち上がってるっけね……。



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2017年01月30日

沈黙 -サイレンス-

[80点]@ムービル

 凄かった。何がどこがと言われると、たぶん詳しく言えるのは実際にカトリックの人だけなんだろうけど。この作品は本当に、実際の宗教家の反応を知りたいですね。

 まず、映画が始まってタイトルが出るまでの表現にゾクッとします。「虫の声」なんですよ。一説には虫の「声」と認識できるのは日本人とインドネシア人だけで、それ以外の民族には単なるノイズなんだとか。つまり欧米人は、スコセッシ監督はおそらく「SILENCE」を表現しているのだろうと思うはず。でも、違う。

 正月にNHKでこの作品に関するドキュメンタリーをやってて(NHKが事実上の映画の宣伝やるのどうなんと思ったけど)、そこで述べられていたのは、原作小説が欧米で驚きをもって迎えられたのは、「棄教/Apostasy」という訳語が使われたからだそうです。
 でもそれに対する日本語は実は「転ぶ」だった。日本語の「転ぶ」には「起き上がれる」「一時的に主張を変える」というニュアンスがある。でも「Apostasy」には「二度と戻れない」ニュアンスがある。その違いを、スコセッシ監督はきちんと織り込んで作品を作っています。

 溝口健二等日本映画のオマージュもあり、映像も美しいです。「創造主」が「八百万」を超えられないと語るフェレイラが「大日」を説明するとき一瞬映る太陽が、本当に焼きついて離れない。

 よくいわれるような、「キリスト教弾圧の苦難の歴史」だけを語る物語にはなっておらず、自然とともに生きてきた日本の宗教観、ひいてはキリスト教だけを見ていると伝わらない宗教観の多様性、統治の方便としての宗教の役割など、「宗教」と「信仰」が含むすべてを、丁寧に咀嚼して美しく撮り上げた、まさしく入魂の一作。



 ちょっとだけ気になるのは、キリシタンはむろん、奉行から番人のレベルまで英語を使いこなしてたり、「キリシタン/Christian」「パライソ/Paradise」が会話に普通に混ざったりする、「ポルトガル人と日本人の関係」を英語に置き換えるにあたっての言語周りが、滑稽に見えないか……という点。少なくとも僕は不自然に思いました。

 あと、多くの人が言ってるけど、日本国内で撮れず台湾での撮影となったのはとても恥ずかしいと思うべきですね。



タクシードライバー (字幕版) -
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2017年01月26日

短評(ザ・コンサルタント/アラビアの女王)


 荒井晴彦氏のコメントが話題になってるけど、あの手合いを黙らせ、業界を刷新するために、映画界はいちど金を出し合って、「君の名は。」や「この世界の片隅に」を実写化すればいいと思います。
 その際ポイントなのは、手がけるスタッフが何をわめこうと、「そのまま再現する」こと。両作とも、アニメにもかかわらず「人体に不可能なデフォルメ」はほぼありませんので、そのまま実写にできます。
 そうすれば、制作過程できっと、「絵」「実写」の別ではない映像の根本的な部分、たとえば演出の理念や編集の技術についた彼我の差が、あらわになると思うんです。
 

ザ・コンサルタント
[65点]
@チネチッタ
 序盤から中盤にかけて、視点を切り替えつつ「謎」を積み上げていく手際は神がかってます。主人公のキャラクターが非常にユニークで、彼の存在自体がどーんとミステリアスで、それを解き明かしていこうと、登場人物も観客の視点からも、あの手この手で謎に近づいていく感じがすごくよいです。
 ……それだけに、「各視点がきれいに収束しない」のがすごくもったいないです。FBIチームの結末がアレで、過去の秘密をべらべら喋り倒してそのままフェイドアウトってのはあんまりです。
 あと、弟の方も相当ヤバイ橋を渡ってるはずなのに、あの終わり方でええのん……? もう少し因果応報があったほうが僕はよいと思うのですが、まぁメリケンの「家族絶対主義」は宗教みたいなものだからなぁ……。


アラビアの女王 -愛と宿命の日々-
[40点]
@シネマカリテ
 ……死ぬかと思った。
 いやさ、アラビアのロレンスと同時期にアラブで活躍した女性の伝記映画……と聞いて、あなたどんなの想像するよ。……前半1時間くらいずーっと、益体もない色恋沙汰で引っ張ると、誰が思うかね! もうアラフィフのニコール・キッドマンに10代みたいな演技させてさ! しかも彼女の高身長とスタイルの良さが仇となって、英国貴族の娘に見えなくて、吉田沙保里がマウントしてるような印象しかないよ! そんでこの色恋部分、物語的には「ヒロインが砂漠に踏み込むきっかけになったようななってないような」くらいしか意味がない、というね!
 そこを過ぎて、彼女が砂漠に踏み込み、砂漠の民と交流していく過程は興味深く、また、いろいろ手を尽くして砂漠の自然美を撮影している印象はあるのですが、結局は「砂漠を行く」「話し合う」のひたすら繰り返しで、ドラマ性が乏しくって……キツかった。



アラビアのロレンス (字幕版) -
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2017年01月19日

短評(UTOPIA/パシフィックウォー/鮫の惑星/ナーヴ/ホワイトバレット)

いろいろ一気に。

UTOPIA
[45点]
@下北沢トリウッド
 「カラフル忍者いろまき」に続く、アニメたまご2016からのシングルカット公開(「風の又三郎」見たいんだけどなぁ……2017はちゃんと一般公開がある模様)。

 連続ものの1話だけを抜き出した体なんだけど、キャラの魅力が全く出ておらず微妙。あのやかましいだけの猫娘は何がしたかったのか。対象年齢低めとはいえ、スタジオ4℃特有のスピード感が削ぎ落とされアニメーションの魅力も薄く、「見たかったのはコレジャナイ」感が強いです。

 なお、トリウッドでは本作公開に合わせスタジオ4℃特集をしてて、片渕須直監督の旧作「アリーテ姫」や、今週末には特別上映で「アニマトリックス」とかやるので、興味のある向きはどうぞ。


パシフィック・ウォー
[60点]
@シネマサンシャイン池袋
 ニコラス・ケイジ主演で、第二次大戦末期のインディアナポリス号撃沈のエピソードを映画化。遺族がお金を出し合って作った?らしく、日本映画並みの安っぽさだけど内容は真剣。ただし、向こうでは「ジョーズの原型」な話でもあるせいか、サメがやたらリアルなのが嘘っぽくて少し損をしてる印象。あと沈没時の構図、やたら「タイタニック」に寄せてたような?
 ハリウッド映画が、旧日本軍の潜水艦かつ人間魚雷「回天」をきっちり描写する、というのもレアだと思うので、そういうクラスタの方は、公開規模小さいですが是非。


Planet of the Sharks -鮫の惑星-
[40点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「パシフィック・ウォー」がサメ映画の原型とすれば、アサイラムといえばサメ映画の現在進行形。……だと思っていたのですが。
 ……あれ? おかしいぞ? アサイラムのサメ映画といったら、サメが宇宙に行ったり巨大ロボットと戦ったりするんじゃないの? 本作なんてこのタイトルで、これみよがしにオープニングに自由の女神出したりするから、てっきりサメが人間を拷問したりサメの大軍が銛振りかざして襲ってくるもんだと思ってたのに。
 フツーだった。
 …………いやいやいや、アサイラムはただでさえ絵面が安いんだから、彼ら流の無茶振りと、それを強引に納得させる畳み込みを捨てたら、それ単にヌルくて説明的で、似たようなシーン何度も繰り返すケチくさい駄作なだけじゃん。

 ちなみにこの作品で最も衝撃的なシーンは、サスペンス映画のセオリーなら、「真っ先に死ぬか最後までしぶとく生き残るかの二択」としか思えないキャラが、なんのタメも感傷もなく、あっさり普通に食われて死ぬところです。


NERVE -世界で一番危険なゲーム-
[60点]
@TOHOシネマズ川崎
 うーんうーん、評価難しいな。
 各チャレンジの撮り方はドキドキさせられたし、コンピュータ周りのリアリティラインの作り方も割と好きです。不特定多数参加のゲームの話なのに世界観狭すぎるのは、スクールカーストの打破というよくあるパターンを持ち込むためだろうから、理解はできます。
 ただなぁ……あの彼氏が「盛り上げるための仕込み」なの、初手からあまりにあからさま過ぎて、その時点で「このゲーム世界に参加してもつまらんよ」と突き放されている印象……観客にもっと「ゲームに参加してる擬似感覚」を強く与えないと、終盤の展開にビックリしてもらえないと思うんですよね。
 あと、「解決方法」として提示される「オープンソースだから書き換える」って、発想はすごいけど、何の解決にもなってないような気がするぞ……。


ホワイト・バレット
[60点]
@新宿武蔵野館
 改装なった武蔵野館は初めて。スクリーン2・3の入りにくい構造が改善されて何よりです

 本作は、「エグザイル -絆-」のジョニー・トー監督による、病院内のみで繰り広げられるノワール。撃たれた強盗犯が搬送された病院で、犯人、刑事、女医の3人の駆け引き。
 序盤から中盤までの、負い目のある女医と刑事のプライド描写や、それを飲み込む如くにインテリ強盗犯が上を行って立ち回る駆け引きの濃厚さ、緊迫感は素晴らしいです。
 ……それだけに、「クライマックスはとにかく派手にしました! 病院内で銃撃戦とか倫理的にどうなん、とかどうでもいいです! 勝つのは警察側、勝因は単に物量で勝ったから!」という、前半のさまざまな仕込をどぶに捨てるがごときガバガバな終盤が泣けます。技術的には、すごいことやってんのはわかりますが……。
 あと、医療シーンがリアルで、下手なホラーより生々しいので、血とか内臓とか苦手な方は注意。




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2017年01月12日

短評(人魚姫/ドラゴンマッハ/傷物語3)


やっときたチャウ・シンチーとトニー・ジャーの新作だってのに、なんでこんなに公開規模小さいんだよ(怒!


人魚姫
[75点]
@シネマート新宿
 素晴らしかった。
 チャウ・シンチー流の人魚姫は、話の筋はめっちゃ単純。海を開発しようとしてた拝金主義の富豪と、それを阻止すべく暗殺しに行った人魚が、なんやかんやで恋に落ちる。以上!
 しかし話が単純なだけに、ミラクル7号を彷彿とさせる(実際、軽くネタにされてた)小学生が考えたようなギャグがハマるハマる。踏まれるヒロイン、食われる兄貴、笑ってはいけない人魚警察24時、ホントくっだらねーのばっかだけど、これくらい軽快に笑えるドタバタ喜劇映画が、全然出てこないのが現状なんだってば!


ドラゴン・マッハ!
[75点]
@シネマート新宿
 香港(ウー・ジン)とタイ(トニー・ジャー)との共闘だから邦題がコレ。わかりやすい。実は原題はSPL2」。続編?! と思えど、ウー・ジンが出演している以外のつながりはないみたい。
 臓器売買をテーマにして、いくつかの血縁関係が愛し合い行き違い、その中で繰り広げられる駆け引き、というストーリーの濃厚さがすばらしい。アジア映画でなかったら、アクションシーンなしで作っちゃいそうなくらい。
 香港とタイの両国を舞台にしたことで起きる、「言葉の違い」の組み込み方もドラマチック。「emoji」は国境を越える! すごいな(笑
 言葉という点では、「マッハ!」の頃は全然喋らなかったトニー・ジャーが、めっちゃ多くなったセリフをちゃんと演技しきってて、俳優としても大物感を漂わせていることに驚きました。

 ところで、High&Low 見て、アクションシーンすげーなとか思った人は、この作品の刑務所乱闘で腰を抜かすこと。これくらいが当たり前と理解しましょう。
 個人的には、「前作のサモ・ハン・キンポーの暴れっぷりのほうがすごかったよな……」と思ってて、アクション映画としては評価しにくいです。本作も十分すごいんですが、慣れって怖いね。


傷物語III -冷血編-
[65点]
@TOHOシネマズ川崎
 /
 西尾維新作品といえば、独特の言い回しで幻惑することに妙があり、ドラマそのものの奥行きはあまりない、というのが定説。ましてビギニングものの最終話である今回は、物語の結末はおろかどう決着するかもほぼわかっているわけで。じゃあ、それをどう盛り上げるか。
 ……そうかー、そっちいっちゃうかー、話に出てくるのとは別の意味でチキン野郎だわ。「その」直前の羽川さんの天使描写と、忍との悪魔的な決着の間に「ソレ」がはさまるのは、いかにもスジが悪いです。おかげで超アニメーションの決戦の説得力も薄れた感じがして、個人的には不完全燃焼だった感。
 ただ、アララララギくんが(失礼、かみまみた)、最終的にガハラさんを選ぶ理由はとてもよくわかりました。いろんな意味で、羽川さん相手では絶対に一線を超えられない、と認識してしまったんだな。

 あと、特に序盤、作画が妙だったような……レベルが高くてもカットごとに質がばらつくと、すごく微妙。



ミラクル7号 (字幕版) -
ミラクル7号 (字幕版)

SPL 狼よ静かに死ね 特別版 [DVD] -
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2017年01月10日

短評(スタンドオフ/ドントブリーズ)


シチュエーションサスペンス2題。
これで去年公開の映画は全部出揃ったかな? 「海賊と呼ばれた男」がいちおう予定リストには残っているけど……見るかどうかは正直微妙。


スタンドオフ
[65点]
@シネマート新宿
 孤独な元軍人が住む荒野の一軒家に、殺人を目撃し証拠写真を撮ってしまった少女(超美ロリメガネっ娘!)が、殺し屋に追われて逃げ込む。序盤のやり取りで、元軍人殺し屋ともに、病院に行かねばいずれ死ぬ傷を負い、行動の自由が効かなくなる。2階に元軍人と少女、1階に殺し屋が陣取って、少女の命とフィルムをめぐって駆け引きが始まる……。
 1ヶ所、かなり痛いミスがあって、字幕を見る限りでは、途中のあるシーンで、殺し屋は軍人の残弾が1であると明確に見破っているんです。おそらく実際は、見破ったとは断定できないハッタリなのでしょう。その残弾を使ってしまった後も駆け引きが続くので、ちょっと引っかかってしまいました。
 それ以外は、1階と2階の位置関係だけで盛り上げ、さりとてあからさまなギミックもなく、伏線を意外なかたちで回収していく会話劇シナリオが面白いです。カメラも女の子も問題の解決にはなんら寄与しないとは。でも、なくていいわけじゃない、とても重要。
 日本も、若手監督や脚本家は、こういうのを作るのから始めたらいいと思います。


ドント・ブリーズ
[75点]
@渋谷シネパレス
 ここしばらく暗い話は避けてたのですが、評判いいので見てみました。住人は盲目老人だから気づかれるまいと泥棒に入ったら、実は聴覚鋭いシリアルキラーで、音を立てたら感知されて即殺されますよ、という話。
 怖さ、という点では弱いですが、素人目にもカメラワークにこだわっているのがわかる、演出技術の高い作品でした。登場人物が息を止めている間、自分も止めてたくなるもん。あと、●REC以来の見事な暗視カメラ表現!

 面白いのは、この作品には、「目が見えず耳が頼りの老人を、どうやれば幻惑・誤誘導させられるか」という発想がほぼありません。
 そうなってしまうのは、主人公ズのキャラづけをガッチリしてある上、冷静な判断をさせない展開が徹底されていて、彼らは「怖いので感づかれないように逃げる(でも金は持ってく)」という極めてプリミティブな要求でしか動かないからです。
 これはむしろうまい「縛り」で、「ヤバイヤバイヤバイ!」という感覚だけがどんどん浮き彫りになっていって、効果的でした。

 そして、いちばん心憎いと思った点。
 この話、「」さえ無事に「あの家」から脱出できれば、いちおうのハッピーエンドになります。「ヒロイン」はどういうエンドになろうと、観客は納得がいく。アンハッピーエンドさえ可。
 ラストが見えない不安定さ自体はよくあるパターンで、その場合、ラストシーンだけ何かどーんとびっくり演出を置いて終わらせるのが定番ですが、本作の場合、ぎりぎりで伏線の「車のトランク」→「てんとう虫」に観客の意識を振る。
 うーむ、これ作った人テクニシャンだわー。ホラーはやっぱり見ないと思うけど、フェデ・アルバレス、覚えておきましょう。



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2017年01月07日

アイ・イン・ザ・スカイ

[65点]@TOHOシネマズシャンテ

 ドローン・オブ・ウォーに次ぐ「ドローン戦争」もの。かの作品で再現されていたコンテナを、またも見ました。
 シャンテのみ先行公開、他の映画館は1/14公開だそうです。

 ドローン・オブ・ウォーは、トリガーを引く操縦士にフォーカスしていましたが、本作は命令を下す指揮官の苦悩が描かれます。なんとなれば、ドローンの飛ぶ舞台はケニア。つまり「敵対国」ですらない! 目標のテロリストも、テロ組織に参画したとはいえ自国民。
 まずもって「攻撃していいのか」というとこで、たいへんな騒ぎになるのです。まして、民間人を巻き込むおそれがある、ともなると。

 決断が遅れればテロリストを逃してしまう。しかし現場-指揮官-軍上層-政治家間を、情報と決定権が行ったり来たり、方針は定まらない。焦る指揮官、責任逃れを重ねる政治家、「緊迫感のあるブラックコメディ」としては、ギャヴィン・フッドの手並みは間違っておらず、すこぶるのめり込めます。

 ……ただ、のめり込めるがゆえにヤバく思える点がありまして。


 ひとつは、当事国であるはずのケニアがガン無視であること。

 米英人テロリストの存在だけが問題視され、ケニア人やソマリア人のテロリストについては俎上に上がりません。
 それに、物語のキーとなる「目標付近にとどまっている7歳の少女」については大騒ぎしますが、それ以外のケニア人はどうっでもいい扱いです。目標は市場のすぐ近くで、人通りソコソコあるんで、被害が出ないわけないんですが、無視です(自分は途中で、目標をずらす決断によって少女でなく両親が死ぬ、というオチを予想しました。いやホント、あの位置攻撃してなんで親が無事なの?)。

 また、領空を米軍のドローンが我が物顔で飛び回るのは話が事前についてるにしても、国民に危害を晒すおそれのある「攻撃決定のプロセス」において、「当事国が一切関与しない」という描写はマジなんですか。つまり、友好国ケニアの少女を殺していいかどうかを、アメリカとイギリスだけで話し合って決める、という異様な状況を、登場人物が誰も疑問視しない。
 きちんと監修もついて、実際の軍事規定をなぞっているらしいんですが……「危険人物がいる」という理由だけで問答無用でよその国をぶっ飛ばすステルス」を、ギャグ扱いして笑ってましたが、まさか現実の運用がそうなるとは……笑えないわこれは。


 もうひとつは、全体的に軍人>政治家の描写ということ。
 政治家はいつも安全圏にいて、責任転嫁しか考えず、戦争はプロパガンダが優先であると認識し、一方で軍需品の輸出には熱心で中国人におもねる惰弱な存在として描かれます。
 人間的で正しい状況判断ができるのは、現実に即して問題を捉える軍人である。現場で働く軍人を馬鹿にするな。そういう論調になってしまっているのです。

 たとえ時間がかかり、愚かな決断となり、犠牲者が増えたとしても、「軍人の独断専行を許してはならない」「決断を下し責任を負うのは『国民の代表者』、ひいては主権者たる国民でなくてはならない」というのが、文民統制の最大の原則では? と僕は思うのですが、本作に登場する軍人たちは、そうしていちいちお伺いを立てることがどうも不満なようです。

 僕はあくまでこれを「風刺」と受け止めますが、修羅場も見たであろう南アフリカ生まれのギャヴィン・フッドは、もしかすると本気で「米英の軍人に全部任せるべきだ」と考えているのではないかと、少し不安になるのです。



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2017年01月06日

2016年ベスト&ワースト


 あけましておめでとうございます。

 2016年は、映画党として実に良い一年でした。
 恒例のベストテンから始めます。順位付けしようにも、どうにもなりません。嬉しい悲鳴です。

ベスト10

1位/シン・ゴジラ
2016年、文句なくいちばん「スゴかった」作品。

1位/君の名は。
事実上新海誠に全振りしてきた、コミックスウェーブの忍耐が報われた感。

1位/この世界の片隅に
これを機に「戦争映画」の傾向が、少しでも変わってくれればいいと思います。



シン・ゴジラ -
シン・ゴジラ

君の名は。 宮水神社湯のみ -
君の名は。 宮水神社湯のみ

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4位/帰ってきたヒトラー
見たときは、間違いなく今年ベストと思ったものですが。

4位/聲の形
必ず2回見るべき作品。最初は描写どおり石田くん視点で、2回目は西宮さん視点で。小学生西宮さんの意図がわかると戦慄しまっせ。


6位/レッドタートル -ある島の物語-
傑作なのに、世間の「ジブリブランド」の過大な期待のせいで不憫な結果に……あれ、「三鷹の森ジブリライブラリー」のブランドを移行させちゃダメだったんだろうか。

7位/PATLABOR REBOOT
一昨年のワーストの反動がないといえば嘘になりますが、見たかったものが見られて本当に良かった。

8位/ペレ 伝説の誕生
「世間の評価は低くとも、僕だけは高く評価する」作品は、例年ならもう少し高い位置につけるんですが、今年は層が厚い。

9位/たまゆら -卒業写真-
2016年いちばん泣けた作品。いやマジで。「このせか」は僕にとっては泣く作品ではなかったので。

10位/ロイヤル・ナイト -英国王女の秘密の外出-
最後の一本は、アーロorズートピアとかエクスマキナとかいろいろ横並びで選ぶのが難しかったですが、最終的には自分の嗜好を優先ってことで。



ワースト3

1位/カゲロウデイズ -in a day's-
ぶっちぎりで 2016年ワースト、という話はリンク先参照。

2位/明日の世界 -ドン・ハーツフェルトの世界-
こんなのあったっけ? ……これです。マジで、英語で念仏を2時間聞き続けて平気な方以外は、「記憶にすら残らない」作品。

3位/魔法使いの嫁・-星待つ人:前編-
世にはいろいろえげつない特典商法がはびこっておりますが、それは「『それでもしょうがない』と許してくれるファン層が構築されてはじめて成り立つ」という、あたりまえのことを見誤った作品。

 この下はペイ・ザ・ゴーストとかウォークラフトとかマネーモンスターとか、キリがなさそうなのでこのへんで。


 アニメに特筆すべき作品がなかった2015年と異なり、2016年はベストもワーストもアニメが多数を占めました。

 今年ですが、神山健治監督の「ひるね姫」が控えています。「君の名は。」以降のアニメ映画を占う意味で重要な作品になると思われます。
 が、自分は見なかったんですが、年末に彼が「総監督」名義でやったサイボーグ009の新作は、2012年版を上回る勢いで「セカイ設定」の念仏を唱える最悪な作品だったらしいです。また、「ひるね姫」公式サイトのストーリー紹介が「岡山県倉敷市」で始まるあたり「聖地巡礼需要に色気満々」とみえるとことか、地雷の匂いがぷんぷんします。そういう低い期待値を上回ってくれればよいのですが。

 では、またつらつら書きっぱなしにするかと思いますが、今年もよろしくお願いします。
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2016年12月31日

ピートと秘密の友達

[70点]@TOHOシネマズ川崎

 ディズニーの子供向け映画にしては全然話題になってないし公開規模も小さいので、どんだけ駄作なんかと思っていたら、なかなかどうして。40年前の作品のリメイクだそうですが、シンプルな話を手堅くまとめた良作です。
 何しろ、登場人物が出揃ったあたりで、先のプロットがあらかた読めます。その通りになります。でも、つまらなくないし不快でもない。きちんと物語に没頭できる。よい意味で子供向けだと思います。
 
 例によって邦題がダメで、友達は秘密でもなんでもなくて、主人公ピートのほうがよほど「秘密」なポジションでした。「ジャングル・ブック」的な生い立ちに捻りがあり、5歳で山中の交通事故によって親が死ぬ、という設定。
 なので最低限の人間性があり、言葉がわかり、車も知っている。「文明に触れてビックリする」という定番の展開が排除されて、物語がとてもスムーズに進行します。

 そして、喪った家族を取り戻していく展開、しかしそれは共に暮らしてきた友達を喪うことでもある。ここ、御託は並べず、本能に近いふるまいで、ピートは家族を選ぶ、という描写が美しい。

 ……「新たな母親」となるブライス・ダラス・ハワードの母性を強調すべく、着衣おっぱいをどアップにするシーンが、おっさん的にはすばらしいので必見(笑。実は「レディ・イン・ザ・ウォーター」の「ストーリー」だったと知って驚きました。


 まだ見てない作品がいくつかありますが、今年はこのエントリで打ち止めです。よいお年をー。



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2016年12月27日

ローグ・ワン

[前半45点][終盤80点]@チネチッタ

 終盤の大バトル&畳み込みは凄いですそれに異論はないです。
 なればこそ。

 ……なんでこの作品、ジンが主人公なんですか?

 反乱軍のためと思い、意に沿わぬ汚れ仕事に手を染めてきた連中が、自らの名誉を取り戻すために、政治ではなせぬ大仕事に命を賭ける。それが中心になくちゃいけないんじゃないの?

 ジンというキャラクターに、感情移入対象としての作り込みが足りず求心力もないので、「ローグ・ワン」が成立するまでは、戦争がひとごとにしか見えません。人生フォースとともにあると言い切れるようなSWファンには、そうでないのかもしれませんが。

 登場する幾多のならず者たちの背景にあるそれぞれの物語を、ほんの少しでも盛り込んでくれたら、もう少し感じが違ったと思います……が、もしかするとあれ本当はひとりひとりちゃんと名前ついてて、ディズニーはこれから赤穂義士の向こうを張って「ローグ・ワン銘々伝」を始める気では? と思うとそれはそれでなんかヤダ。



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2016年12月24日

ポッピンQ

[50点]@チネチッタ

 日本における永遠の謎のひとつ。なぜ小学生男子にコロコロで圧倒的シェアを誇る小学館が、その読者層を維持できず、少年誌ではジャンプマガジンの後塵を拝するのか。
 ……この作品もそういうことなんだろうなぁ。
 狙いはすごくわかる。プリキュアで小学生女子をガッチリ押さえてる東映アニメーションが、「次の年代」を、プリキュアの手法とラブライブの路線をミックスさせて、取り込もうとしたのである。

 でも、売り方を間違えると……。
 「ダンスで異世界を救う」がガッチガチのメインプロットなのにそれを隠し、「異世界に飛ぶ」に違和感が生じるような、そして石塚運昇が「ダンスじゃ」と言った瞬間に「なんでやねん」とツッコまざるを得ないような、そんな予告編を作ったりすると。

 この、明らかに中学生女子だけしかターゲットにしてない作品の初日に、30以上のおっさんばかりが押し寄せるという事態が発生するのである。


 いやさ……開幕30秒で、大人の見るもんじゃないと思い知らされまっせ。正確にいえば、「物語リテラシーの低い人を相手にしています」という限りなくあからさまな主張……かな。それでも、あのテロップは出さずに組み立てるのがまともな演出家でしょうよ。
 以降、東映アニメーションが本気を出しているのでアニメにまったく瑕疵はないですし、個々のイベントはきっちりツボを抑えてはいるのですが、イマイチ乗り切れません。映像でなくセリフで説明していく例のパターン多いし、「世界の危機」にまったく説得力が無いので、あの異世界における主人公たちの行動は、「ただ言われたとおりやる」で終わっている。


 では、それだけわかりやすく中学生レベルの物語を組み立てた結果として、予告編で強調した「彼女らの卒業前の不安」についてうまく描けたか? って話です。そこさえ描けてればこの作品は成功だったはずなんですが。

 僕はね、中高生がいちばん悩むのは、それなりに歳を重ねて世界が広がってきたときに、どんなにがんばってもより優れた人がいる、上を見たらきりがない、という「才能の差」が見え始めることだと思うんです。それはもう、「心の持ちよう」ではどうにもならない。だから苦しい。
 (強制的に老化させられるシーン、あれだけはよかった。だけどそれは「老い」そのものが恐ろしいのではなく、「何もなせずに老いる」のが恐いのだということを、制作陣はわかっていたか?)

 恐ろしいことに本作では、登場人物全員「才能の壁」が存在しないの。より秀でた存在がおらず、「彼女らに見える世界の範疇で、自身がそのジャンルで最優秀であると自他共に認めてる状況」なんだよ。
 で、彼女らのうち3人は「優秀すぎて敵を作ってしまった」という、贅沢すぎる悩みを抱えていて、残りの2人は、持てる才能に対してあまりに低次元な「普通の女の子でいたい!」的な悩みを訴えるのですわ。
 加えて、まったく別のジャンルであるダンスに手ェ出して、世界を救う奇跡のレベルにたった10日で到達してミッションクリアですよ。才能有りあまりすぎてて気色悪い。

 この「子供の全能感」の延長線≒プリキュアを継承したままのキャラ描写で、一年代上に共感してもらえると思う? 本気で?
 完全に勘違いしてできあがってるものを見るのは、哀しくすらあるよ。


 あとひとつ書いておきたいこと。
 東映アニメーションは、地方のアニメ制作会社で地方を舞台にしまくる京アニや PAWorks が、セリフになぜ方言を使わないのか、聞いたことないのかな。
 好きな声優だからあまり言いたくないけど、実質ほぼ標準語のイントネーションで、ときどき思い出したように語尾が変わるだけの瀬戸麻沙美の土佐弁は、キャラ個性として確立できておらず、聞いてて苦痛。使うべきではなかった。


 いま東映アニメーションなら、「虹色ほたる」が配信されてるそうだから、そっち見ようみんな。



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2016年12月22日

映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!

[60点]@TOHOシネマズ川崎

 妖怪ウォッチは、しばらく遠ざかっていたコンテンツだったんですが、本作に限っては、実はものすごく期待してました。
 予告編を見たときのあの戦慄は忘れられません。これはスゴイ。ローグ・ワンなんかメじゃねぇって。

 今までにも、実写とアニメの融合、なんて作品はいくらでもありました。しかし、アニメの側を「主」「真」「正常な世界」とし、実写を「従」「偽」「異常な世界」と定義して物語を構築した作品があったかって話ですよ。
 少なくとも予告編はそう見えたんだ。

 実際見てみて、どうだったか、というと。
 残念ながら、結局は「実写が主」でした。実写とアニメが文字通りに平行世界である設定で、ケガに絶望した「実写側」の人物が妖怪を生み出し、「自由に動ける」という理由でアニメ世界に紛れこんできた、というストーリー。
 そんでもって、実写とアニメで「ルール」にあまり違いがない、あるいは想像のつく範疇でしかなかったです。違いに意味があったのはせいぜい、「現実的だから」アニメっぽい技は全然効かない、くらいでした。でも、敵による「キャラを魚に変える」技はフツーに実写側で通用してるというね。

 つまるところ、せっかくのダブル世界のアイディアは生かしきれてない印象。そもそもなぜ「実写/アニメ」の切り替えが効くのか、それがなんでコアラの能力なのか、とかも全然わかりません。
 ……妖怪ウォッチ、というか日野晃博に論理的整合性を求めるほうが無理筋でしたわあっはっは。あきらめた。


 素直にいつものギャグアニメとしてみると、実写を「毛穴世界」と呼ぶセンスとか、一瞬だけ登場する(予告でも圧倒的存在感があった)遠藤憲一の人面犬のインパクトとか、ギャグやってネタやって終わったら次のネタいってみよー! という変わらぬコロコロノリで楽しいです。
 その点、人面犬は一瞬なんだけど、遠藤憲一は別の形で映画全体のオチを担当しています。これが、論理的整合性ぶん投げの最たるものであると同時に、すでに「おもしろかったねー」とか言ってお帰りモードに入っていた子供たちを大爆笑に包む素晴らしいキレ味で、ここで笑ってもらえたらギャグアニメの本懐極まれりってモンでしょう。
 オトナにゃもうわからん世界ですが、その意味では傑作かもしれません。


 遠藤憲一以外の「実写勢」ですが、

 澤部佑のクマは出オチでした。
 ゲストヒロインたる浜辺美波は、最重要役でありながら存在感があまりありません。最近あちこちに出ててゴリ押し感ある人ですが、声も顔もかわいくなく、正直、使い倒されたあげくにポイ捨てされる将来しか見えません。かわいそうな感じがします。
 一方で武井咲がべらぼうに美しくて、小学生設定のヒロインズと並べても遜色ないのが怖いくらいでした。つーか、「毛穴世界」なのにあんな肌つるっつるの毛穴なさそうな人をなぜ使ったのだ(褒めてます)。

 だが山崎賢人と斎藤工、おめーらはダメだ。
 おめーらのダンスは、王と面従腹背の部下がなぜか完璧に合う、ってのがギャグのキモだろうが。なんだあのてんでバラバラのやる気のない手抜き。子供向けだからってナメてんじゃねぇ、まじめにやれ!



映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン! -
映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!
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2016年12月21日

幸せなひとりぼっち

[70点]@ヒューマントラストシネマ渋谷

 「ホルテンさんのはじめての冒険」「100歳の華麗なる冒険」と、毎度味わい深いものが出てくる北欧の老人映画。本作も良かったです。

 今回の爺様は偏屈ジジィ。ある住宅地の地区会長を長年務め、地区のルールを住民に口うるさく押し付ける日々。でも愛妻に先立たれ、序盤はあの手この手で後追い自殺を試みるも、引っ越してきた移民一家のイラン人妻になぜか邪魔される……。
 爺様の演技が絶品で、イヤなジジィなんだけど拒絶はしきれないギリギリのところからはじまり、しかたなく少しずつ心を開いていく進展が見事です。

 たびたび背景に国旗が映り込むし、車はサーブしか認めない(ボルボ好き友人との意地の張り合いがメチャメチャ笑える)あたり、この爺様はスウェーデンという国家そのものです。偏屈に老いて己の言い分を通したくとも、移民とも、LGBTとも否応なく向き合わなきゃいけない立場にある。
 そうした異物に、なべて寛容であれ手を携えて生きよ、とだけ能天気に主張するのでなく、「爺様の作ったルールをちゃんと守り引き継ぐことが受容の前提」、という点をさりげなく示す、線の引き方がうまいと思いました。

 無駄に長い回想シーンがイマイチ噛み合ってないのが残念。現在の爺様見てれば過去はなんとなく見えてくるので、そこは観客の想像力を信頼してほしかった。で、回想シーンは最終的に「奥さんの過去の真実(意味するのはおそらく『高福祉国家の幻想』)」へと導かれるワケですが、どうもご都合主義感を禁じえない……というか、なぜそのデキた奥さんがそばにいて爺様の偏屈が維持されたのか、本作が最大の謎。

 あと、回想には若かりし頃の爺様が登場しますが、役者さんが違うのに声がほとんど一緒なので驚きました。あれマジでアテレコか何か?



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2016年12月14日

RWBY -Volume 3-

[60点]@シネリーブル池袋

 いやぁ……すげぇ盛り上がって面白かったんですけどね。
 とりあえずこの RWBY というシリーズでは、Volume 1 で僕が期待した「欧米人によるアニメの換骨奪胎とはいかなるものか」という新規性はもうあきらめたほうがよくて、Volume 2 以降、「ストーリーのついた格闘ゲーム」以上のことはやんない、という路線で邁進してることはよくわかりました。それはそれで斬新でスゴいんですけどもね。

 「監督がお亡くなりになった」とたんに変貌したのか、元からそういうプロットだったのか知りませんが、さらなる展開のために後付としか思えない無茶な設定を盛り込み、風呂敷を広げまくった挙句に、主人公ズには試練を与えて現在絶賛ドン底状態、ここからどうやって盛り返そうか……というところで第4期に続く! とか、どうすんのこれ……。豊口→伊藤静なピュラ嬢の無駄死にが絶望的過ぎるよ……。

 で、あの……「劇中最強のチートキャラ・その能力の奪い合いが最大のイベント」であるところのアンバーさんがあっさり普通に負けて、その一方で脇役に過ぎないエメラルドさんの能力が、「範囲・人数無制限で幻覚を事実と認識させられる=もう全部あいつひとりでいいんじゃないかなクラスのチート」なんですが、そこらへんのさじ加減はどうなっておるんでしょうか……。

 とりあえず僕は、パラソル子さんが再登場してくれたんでそこがいっとうアガりました。まだ死んでないよね? ね?



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