2016年05月17日

短評(亜人2/WAT/赤塚不二夫)


亜人 -衝突-
[70点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 すげぇ。ちょっと唸った。
 この「すげぇ」は話の面白さの観点とは少し違います。いや、面白いんだけどさ。
 この作品はテレビシリーズの総集編映画で、前作はテレビ放送前に、「1話〜6話」まで編集した内容を公開したわけです。なら本作は放送済みの「7話〜13話」の総集編だと思うじゃん? 否。その先、+2話分くらい、一気に「総集」してしまう。加えて、テレビシリーズでは忘れられた友人キャラのエピソードも織り込むという盛り沢山。
 それで2時間? そりゃあ端折りすぎでしょ! と思うじゃん? それも否。ほとんど端折ってません。
 ほぼ同じシナリオからスタートし、「テンポ優先で徹底的に刈り込んだバージョン」が本作で、「いろいろ重みをつけて盛り込んだバージョン」がテレビシリーズと考えるべきでしょう。映画とテレビ企画が同時進行していたとはいっても、ここまで潔く切り分けたのは、正直、未体験ゾーン。
 物語創作に携わる人は、いちど見比べてみると面白いかも。


WAT 世界のアニメーションシアター
[75点]
@トリウッド
 久々にトリウッドで短編アニメーション集。<いろいろな愛を描くアニメーション><社会的視点を持つアニメーション>の、約1時間ずつ2プログラム。

 小規模製作のアニメーションも、テクノロジーの進化でだいぶすごいことになってきました、というのが味わえます。
 「ホワイトテープ」「ブラックテープ」の連作が、単なる技術ひけらかしで、元となった実写見せてもらったほうがなんぼかええんちゃうん、という印象を受けるほかは、いずれも「アニメでこそ」という題材、かつ、実にエンタメしていて、とてもクオリティが高く楽しいです。
 「ビトイーン・タイムス」でパン屋の髪型がくるくる変わる小ネタとか、「ギータ」のキレッキレの手描きアニメーションとか。「真逆のふたり」ではサカサマのパテマの二人が倦怠期を迎えた続編(違)を見ることができます。
 「Otto」は短編アニメーションにしておくのがもったいないアイディアなので長編で見てみたく、また、「アフガニスタン -戦場の友情-」の作者が次に作るというヒーローものが凄く見たい。

 で、見どころのひとつは、作品の上映前に流れる監督さんたちの自撮りメッセージで、これがみなさん「え? マジ? 日本で上映されるの? ひゃっほーい!」てな感じで、日本てやっぱこの人らには「聖地」なんやろなぁと微笑ましくなること請け合い。
 トリウッドは5/29まで。夜の上映は20日まで。


マンガをはみ出した男 赤塚不二夫
[50点]
@渋谷アップリンク
 ヘンリー・ダーガーダニエル・ジョンストンと同じパターン。題材となるアーティストがすごい人でも、語るドキュメンタリー映像作家が凡庸なので(何せ本作の監督はコレの人だ!)、思い出語りの映像記録としてはテンポよくて面白いけど、それ以上の意味はなし。
 突っ込んで欲しかったのは、彼のあのエキセントリックな感覚の源泉はどこか、て部分だのに、「満州が原風景」でバッサリ。同じ満州出身のちばてつやにも語らせといて、それでまとめちゃうんだぜ? なら「ちばてつやと赤塚不二夫の芸風の違い」はなんでスルーよ?(個人的には新潟時代や、「これでいいのだ!」がウケた社会背景とかも、もっと掘り下げて欲しかった)
 どうも、あまり深く考えてなくて、「これだとみんな納得するキレイなまとめだよね。あ〜、スッキリ!」って喜んでる感じがあるんだよな。赤塚不二夫にそういうスッキリ感、誰も求めてないと思うんだ。

 ……それにしてもアップリンク久々だった……何年ぶりだオイ……たぶん「火星人メルカーノ」以来。このブログ始める前です……。



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2016年05月15日

短評(追憶の森/フィフスウェイブ/シビルウォー)


追憶の森
[70点]
@TOHOシネマズシャンテ
 マシュー・マコノヒーと渡辺謙、2大俳優競演……と身構えて見ると、肩透かしを食らいます。脚本は「リミット」の人だそうです。気負わずに見る安いシチュエーションサスペンスと思うのが吉。
 日本の青木ヶ原樹海が舞台(といっても撮影はアパラチア山中らしい)。道に迷った自殺志願者2名が、なんやかんやで生きて脱出するためサバイバルするという筋書きなんですが、何しろその道中が、真剣にやってんのにそこはかとなくコントなんです。
 そもそも青木ヶ原行くのに新幹線で静岡で降りてるとこから始まって、祠という人工物があっても何も気づかないし、死体見つけたらまず剥ぐし、川を見つけて辿って下ろうぜって話した次のシーンでまた山に分け入ってるし、崖から落ちる瞬間とか完全に笑いを取りに来たよねアレ?
 しかし、おそらくは無神論者であろう主人公が、日本的なスピリチュアル展開に触れていく流れは、日本人としてちょっと面白かったですし、最後のオチを知ったうえでそうしたコントみたいな道中を思い返してみると、いろいろ腑に落ちて暖かい気分になり、見て良かったという感想に至るのです。

 でもあの奥さんの死に方はない。あれはコント。


フィフス・ウェイヴ
[55点]
@109シネマズ川崎
 なんか壮大なSF超大作っぽい宣伝、ディストピア・サバイバルな序盤とは裏腹に、「クロエ・モレッツが大人の階段登っちゃうんですぅ!」がメインプロットな、「ジュピター」に並ぶ、SFでトワイライトサーガやりましょう的な、スウィーツな作品。
 なので男子は、オハナシは一切忘れてオトナになったクロエさんを堪能しましょう。映像はそんなにエロくないけど、シチュエーションがエロい。フトモモだけで、こう、何かかきたてられるヨ!
 そして、「階段登っちゃった」を知って、本来彼氏ポジションにいたはずのベン君が「えーーーっ」て表情をする一瞬が大爆笑かつ最大のクライマックス。リンガーちゃんに慰めてもらえよ! 続編出るのかどうかしらんけど、あの娘デレたらチョー可愛い系のはずだから!


シビル・ウォー キャプテン・アメリカ 
[60点]
@TOHOシネマズ渋谷
 アントマンとスパイダーマンを加えて、オレの素人考えなんかお見通しな、アベンジャーズ同士組んずほぐれつバトルロイヤルは面白かったですが、……ぶっちゃけそこだけ。
 その状況を作るためだけに四苦八苦している物語は、2時間半もかけておきながら、ちっともアガらない。「キャプテンアメリカ」がタイトルという点を考えると(自分、キャップの他の作品見てないんだよね……)、アゲアゲにせぇというのはムリかもしれないけども。
 脳天気な新入り両名を加え、さらにはアイアンマンを「政府の手先」チックな役回りにして道楽者で自由人なイメージを台無しにするくらいなら、ハルクとソーはバランスブレイカーだから出さない、って判断を下したのと同様の割り切りで、物語をもっと狭く絞るべきだったんではないかと思えてならないです。



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2016年05月09日

ズートピア

[75点]@チネチッタ

 ……。
 見終わって、ものすごく贅沢な感想を抱いてます。
 完璧すぎてつまらない。

 「人種の坩堝」である不平等な社会を、うまく「動物」へ置き換え、差別とその克服をさりげなく明るく、相棒ものの古典的なフォーマットに的確に乗せながら描いて、それでいて古びていない意外性のある展開、ここぞというところで鮮やかに回収される伏線……。
 もうね、これが「初めて見るストーリー映画」の子供は、この先何を見ても面白く感じられないんじゃないか、てくらい完璧。

 でも、世界が完璧に作りこまれているならば、そこに生きるキャラや起きるできごとは不完全で不合理な部分が少なからず含まれるはずなのです。現実がそうであるように。この作品はそこも完璧なので、手応えが変です。リアルなのにリアルじゃない。

 あるいは、「動物を人間ぽくアニメーション」という点が完璧で、まるで実写映画のように作っているので、マダガスカル3みたいな「リアルを超越したド肝を抜くアニメーション」はこの作品にはないのです。

 ホント、贅沢な感想ではあるのだけれど、もう少しスキがあってこそ魅力的になりそうな、そんな作品だったように思えます。



 ……まぁ、本音を言えばね。
 絶対激萌えキャラだと思っていたジュディが、あんまり萌えなかったかなー、と……そう、何が完璧でスキがないって、この娘だよ!
 「生まれがマイノリティ」以外に弱点がなくってさ。それでいて、「マイノリティ」であることの壁はわりとあっさりクリアして、彼女が得る最大の挫折は「差別を乗り越えるために行動した結果、別の差別の加害者になった→弱者だと思ってたら強者だった」という点なので、誰かが支えて救う話じゃないわけで。
 ある意味非常に現代的で、この点も実にリアル。なのだけれど、萌えはしない。強気ガールは、ここぞというとこで弱みを見せてこそ萌えるのだ(セレスティーヌを見習え!)。そういう視点で見るほうが間違ってんのはわかってるけど、惜しい実に惜しい。



↓コレ、マジで気になる……録音可能時間がもう少し長けりゃ……。
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2016年05月04日

短評(スポットライト/ルーム/響けユーフォニアム)


スポットライト -世紀のスクープ-
[75点]
@チネチッタ
 実にサスペンスフルな傑作。息つく間もなく見せるテンポのよさが素晴らしいですが、その内に、決して善や倫理だけでない、報道の裏や限界もさりげに織り交ぜているところがニクい。
 この作品で一番怖いのは、本当にアメリカ人は行動規範や人格の成立を宗教に頼ってるんだなぁ、という点。でも作中でも示されるとおり、神を完璧なよりどころと認知していても、それを取り扱うのが、教会という必ずしも完璧でない人間の組織であるという不一致。これが、社会にとっても個人にとってもすべてを破壊してしまいかねない爆弾となる異常性、しかしそれを正すのもまた人間……というアイロニー。


ルーム
[70点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「世界が広がる一瞬」は筆舌に尽くせない素晴らしさでしたが、その後の「世界の受容」については個人的にはあまりピンとこなくて、展開の遅さにイラつきすら感じました。が、たぶん作品のせいじゃないです。作品自体があまりに真摯でウソがない作りであるために、人の親でなくかつ欧米人でない自分には、投げ込まれた直球が受け止めきれないんだと思います。あれっくらいの「部屋」に住んじゃってるしな!

 ところで、これで「アカデミー賞主演女優賞」はないでしょ、子役のジェイコブくんを主演男優賞にするか共同受賞と銘打つべき。


劇場版 響け! ユーフォニアム -北宇治高校吹奏楽部へようこそ-
[70点]
@新宿ピカデリー
 テレビシリーズの総集編ですが、「前年度何があったか」の話をほぼばっさりカット、久美子と麗奈の関係だけに絞って再構築しており、やや掘り下げの甘い感もあるも、これ単体で成立するくらい盤石の仕上がりになっています。演奏部分も大幅にグレードアップして、劇場で聞けて良かったと思えます。二期も楽しみ!



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2016年05月02日

モヒカン、故郷に帰る

[70点]@テアトル新宿

 邦画はダメだダメだと言われる中、ストーリーコメディ路線において、安定した打率を誇る沖田修一監督の新作。
 今回は「里帰りで家族ドタバタ」という、わりとありきたりなシチュエーションでどうなるかと思いましたが、ある意味いっそうキレが増してました。
 ひとつひとつはクスリニヤリていどの薄い笑いで、それぞれの笑いの取り方は従前の作品と比べるといまひとつの感はあるのですが、その薄皮が積み上がって厚みを増していくにつれ、僕らの世代特に地方出身者にとっては、ちょっとシャレにならないくらい重くて分厚い「現実」となってぶつかってくるのです。
 主役の松田龍平が、モヒカンのまま腹を据えるさまが、見た目おんなじなのに、ちゃんとカッコいい。モヒカンがピンと立っている。

 難を言えば、柄本明はもっと若い人がよかったんじゃないかなぁ。ダメ親父演技はもちろん素晴らしいんだけど、「えーちゃんに憧れた」というには老けすぎなのよね。あの夫婦からなぜモヒカンの息子ができあがって断末魔を叫び出したのかが、ちょっと腑に落ちないです。

 あと、本作は沖田監督渾身の「メシ演出」が炸裂するから刮目して見よ! 例によって食事シーンが何度も出てくるわけですが、「メシがまずそうなシーン」と「メシがうまそうなシーン」が明確に分かれています。そしてそれは、食事の種類やデキとは関係ないのです。

 ……ところで、千葉雄大がふりかけてるアレはなんだろうか。



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2016年04月28日

筋肉ベストテン……にはやっぱりならなかった


 前回参加しないと書いたんですが、参加者数が少ないという話が出てきたので、できる範囲で参加します。

 僕はシュワちゃんとかスタローンとかの全盛期に原風景がなくて……どうもぴんとこないんですよね。
 で、ざっくりすでに投票されているのをみると、だいたいそこらへん+香港くらいしか見当たらないのに気づきまして。
 インドとタイがゼロなんてことは絶対赦されないと思ったので、自分の見た範囲でこんな感じに……。





(順不同でお願いします・例によって年号は「日本公開年」です)



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2016年04月04日

短評(ちはやふる上の句/暗殺教室卒業編/父を探して/たまゆら4)


ちはやふる -上の句-
[75点]
@チネチッタ
 構成や演出について、細かいことあげをすればキリがない感じはあるんだけど、オーバーアクトが合う広瀬すずを筆頭に、とにもかくにも、かるた部五人のどハマり感ハンパない。もう、この作品はそこに尽きる。よくぞ揃えた。あとあのヒョロ連れてきたの誰だ(笑
 原作からだいぶはしょられてるようにはみえるのだけれど、彼女らがスクリーン映えしていて、立ち振る舞いだけで「キャラ立ち」している時点で、もう全部無問題大正義横綱相撲感があります。下の句も楽しみ。

 ところで、銀の匙も思ったし暗殺教室もそうだったんだけど、最近の日本映画は、「一般生徒」を自然に撮るの下手になってない? どうも動きが不自然で、エキストラですって看板ぶら下げてるような感じのばっかり……。


暗殺教室 -卒業編-
[60点]
@チネチッタ
 前作で僕はかなり誉めた。何より「イトナ合流=クラス全員集合」まで一気に描いたことで、この作品は「教室」を描く気があるのだと勝手に思い込んだからだ。だから僕にとって本作は、サブタイトルを知った瞬間に終わってしまった。「卒業編」……だと……? 「二学期編」「三学期編」の三部作、じゃなくて……?
 つーことは何か、二学期イベント全ブッチ? 原作全編通して最高のイベントである「赤羽業vs浅野学秀」、ああいうのを喜ぶ観客などおらんと? 松井優征にしては予定調和感が強くてあまり評価の高くないあの「暗殺」でまとめると? てことは、「積み上げた上で」ガツンとぶっこまなきゃ全く意味がないカエデイベントを、ツカミに置くんですかァーーーーっ?!
 はい、全部その通りでした(泣。 何あの申し訳程度に「学校」にした学園祭。怒りだ! もう怒りしかない!
 ……もっとも、単体の映画としては、前作の散漫さと比べればきちんとまとまってた印象です。特に殺せんせーの過去部分は、細やかに描けてたと思います。……それは僕が桐谷美玲大好き人間ゆえのひいき目かも知れんけども。

 ところでさ。最終的に「渚が首席」っていうセリフが出てくるけどさ。
 映画だけ考えると、どう見ても首席は奥田さんだよね。


父を探して
[75点]
@シアター・イメージフォーラム
 ブラジル産のアート系アニメーション。色鉛筆で描いたような牧歌的な色彩、棒人間のようなシンプルなキャラクターが印象的。
 そんな一見穏やかな画風で、出稼ぎに出た父の消息を求めて、田舎住まいの少年が旅に出る。綿花の農場、紡績工場などをたどり、産業や社会を知っていく……て書くと、なんかすごくマイルドで教育的で眠くなりそうな「子供の見るアニメ」に見えるでしょ? うん。ぶっちゃけ中盤までは眠いんですよ。

 ……中盤以降、もの凄い勢いで、どこまで広げんねん! ってとこまでぶん回し始めるのでビックリしました。二大怪獣空中決戦とか、ありえねーわ。そんで、かなりせつなくなるところへと落とし込むというね。
 否定的に描かれる、「機械化・工業化によって環境破壊が進み人間性を失う」みたいな表現は、いやいやブラジルの場合それは序盤で平穏に描かれる大規模プランテーション農園を作るためにやってたんでしょ? とツッコミ入れたくもあるのだけど、久方ぶりに気合入った海外アートアニメーションを見られたので満足。


たまゆら 〜卒業写真〜 第4部 朝 -あした-
[80点]
@新宿ピカデリー
 の感想。
 「卒業」というゴールに向けてひたすら畳み掛けていく、この作品から想定しうる、完璧な大団円。それも、今までやってきた「友達」を整理しつつ、本来底辺に横たわっていた「親子」をかっちりすくい上げて締める意外性。大袈裟に泣かせるイベントなど何一つ起きないのに、男だらけの館内にすすり泣きが漏れる凄さ。誰かが言った、「これ、まさしく松竹映画じゃね?」と。
 もう何度か繰り返して言ってるけど、「日本映画」を正しく継承したのはアニメである、という新たな証左です。

 今回は公開延長したこともあって、作画も完璧でした。
 あとは、ちもさんの結婚式がきちんと描かれていればなぁ、と、そこは少し切ないですね。「〜に捧ぐ」ではなく、「セリフはなくてもキャストのクレジットに入っている」のが、この作品のひとつの「らしさ」だったかもしれません。



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2016年03月24日

アーロと少年


 なんか TAAF がえらいことになってるらしいけど、大丈夫か……。


[80点]@チネチッタ

 ……なんかすげぇもん見た。

 いやね、序盤と終盤だけ切り取ったら、どこにでもある「勇気!」「家族!」なアメリカ映画です。それも、かなりトラウマ級のイベントを放り込んでくる、これホントに子供に見せていいの? 的な。
 すごくオリジナルな発想に見える「恐竜と人間の組み合わせ」にも、ほとんど意味はありません。「人間と犬」でもほぼ同じ話にできるでしょう。ぶっちゃけ、はじめのうちはつまんなくて、短編アニメの「僕のスーパーチーム」の方が面白いんじゃないかと思ったくらい(これガチ傑作! というか、この題材を世界規模の公開に組み込む勇気!)。

 しかし、話が進むにつれ、本作が何をしたいのかが、だんだん見えてきます。
 本作には、ここまで来たか! と思うくらい、実写と変わらぬ超写実的な背景映像が使われています。それにいかにもカートゥーンな、常時骨折してるみたく見えるデフォルメ恐竜が乗っかっているのはいささか奇妙滑稽ではあるのですが、ともあれ、その壮麗な背景で、おそらく現代ではアメリカでも撮り辛くなっているであろう、「大自然ロードムービーやろうぜ!」が本作の趣向です。
 ……うーん、それはどう考えてもイマドキ子供向けじゃないのが、この作品の辛いところですが。

 アーロと少年が大自然の中に放り出され、ぶつかり翻弄され手を携え、心を通わせていく。それも、「少年」は意味のあるセリフを発しませんので、ただただ映像でもって表現されます。それだけの内容が、なんとも沁みるし、なんかとにかくスゴかった。圧倒された。
 ホントに、「言葉で説明できない」という感想は、この作品ならば許してもらえると思う。つーか、言葉で説明すると、最初に述べたとおり「どこにでもある映画」になっちゃう。「感じる」タイプの作品だと思うのです。

 どうも世間的にはあんまり評価されてない感じで、本命は次の「ズートピア」みたいな扱われ方をしている印象ですが、僕は好きですコレ。



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2016年03月20日

マジカル・ガール

[60点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 年に四ヶ月は日本にいるという日本ヲタのスペイン人、カルロス・ベルムト監督の長編デビュー作。だそうで。

 アニメの魔法少女に憧れる病弱な少女の願いをかなえたい……というイノセントなきっかけから、とんでもない方向へ話が転がっていくサスペンス。マジカルってそっちかよ、と。
 その意気やよし、と言いたいところなのだけれど、どうやら撮影スタイルはアニメではなく、古い日本映画を範にしているとみえて、ガッチガチの固定カメラで超スローテンポに話を進めていくので、サスペンスとしては(ましてスペイン人が作ったと考えると)かなりキツいです。
 それで話が鮮烈ならよいのですが、発生する犯罪の構造とか、先生とバルバラの関係とか、思わせぶりに引っ張ったわりには興味を惹かれなかったのが正直なところ。過去に何があったのか明確にしなかったことに、あまり意味も感じませんし……。

 ただ監督さん、インタビューでは「ドラゴンボール」や「ナルト」のファンとか答えてるみたいだけど、この作品に最も影響を与えてるアニメは絶対「まどか☆マギカ」。
 ああいうのが海外から見てアイコンになるってのも、善し悪しやねぇ。



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2016年03月14日

マネー・ショート -華麗なる大逆転-

[80点]@チネチッタ

 破壊屋さんの誰映2015の結果発表ですね!



 さて。

 自分は2005年から投資を始め、知識もあまりないままに、本作で示される状況に突っ込み、ぶっちゃけ大損こきました。
 ならば知識をつければいいのか、というとそれも違って、「個人の予想できる範疇で値が動くことなど絶対にありえない」という理解に至っています。今は決まったパターンでしか売り買いしません。

 相場とは、経済学ではなく群集心理で動きます。カオスな生き物です。
 本作に示されるように、経済指標において明らかにマイナスな情報が出回っても、相場はプラスになるような、因果関係の成立しない現象が当たり前に生じます。

 本作は2006年〜2008年の期間を描いてますが、僕の記憶にある限り、サブプライムローンがヤバイ、いつ崩壊するかわからん、というのは2007年頃にはある程度、一般投資家に流布してました。

 ところが、カネというのは、一部がヘタレても「逃げ出す」ができます。そうすると、別のところで「見かけだけの活況」が起き、それを見て、経済学者やアナリストたちは、「ほら活況ですよ」と言い募り、「全体がヤバイ」情報は捨て置かれます。
 本作では、「最初期に仕掛けた人」「最終的に大勝ちした人」しか取り上げないわけだけど、早い段階で、できる範囲で「破綻」に張った投資家は山ほどおるんですよ。しかし本質的にヤバい状況がいつまでもダラダラと続く中、正しく時流を見越していた人々が、本作で言えば CDS の保険金に耐えきれない状況に陥って、次々に敗者としてこぼれ落ちていったのが現実でしょう。

 結局、カタストロフが起きるまで止まらないのです。ていうか、「起きても止まらない」が正しい。彼らは誰も責任を取らない。税金ジャブジャブ突っ込むか現金ジャブジャブ刷って今ある金銭の価値を薄める=インフレ以外の対処を、彼らは認めません。自分の身を削るなんて脳みその片鱗にすら存在しない。
 経済学とは、過去の動きにいかにして後追いで理屈をつけるか、という学問であり、決してよき未来を願っていない。僕はもう、そう諦観してます。



 ちゅうことで、映画のほうなんですけど。
 あの当時、市場がどういう挙動をしていたか、把握していない方にはかなり辛い内容のような気はしますが、逆にわかってるともう、なんか胃が痛い。この胃に穴が開きそうな感覚は「エンロン」見たときに近いな。

 この作品が上手いのは、序盤から、「いかにもデキの悪い、人を煙に巻くタイプのドキュメンタリー、みたいな映像演出」を頻出させることです。
 正直、これヤバイんじゃね? と思ったのですが、次第に、あの時期の狂騒をユーモアのオブラートに包んで描く狙いが見えてきます。そうでなきゃ、「金融用語をマーゴット・ロビーがバスルームで解説」みたいな、人を食った演出するわけがない。

 描かれた勝者の陰に、どれだけの敗北者がいるのか。作品内でブラピが指摘するように、どれだけ一般市民に押しつけられたのか。そこに思いを致すと、本当に絶望しかない物語なのです。
 けれど、勝者の歓喜と世界の絶望、恐怖と隣り合わせの好奇心と欲望、そのあたりのさじ加減が絶妙で、先ほど書いた胃の痛さをエンタメに昇華して、実におもしろく仕上がっていると思います。



 ところで、直近の経済状況。
 「株を買ってください。売らないでください」と金融庁長官クラスの幹部官僚が直接保有者に懇願するような中国の株式市場が、まだ普通に売買成立してる、というホラーな状況がありますよ。
 どうなるんでしょうね。怖い怖い。

 あと、これも酷い邦題なんですよね。
 ここでも指摘されてるけど、これだと金融用語としては「資金枯渇」のニュアンスになり、題材と全然意味合いが違ってきます。



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2016年03月02日

ヘイトフル・エイト

[65点]@丸の内ピカデリー

 率直な感想。……この内容で167分は長ェよ! タランティーノ監督にそれを言うても無理筋なのはわかるけど、それでも、序盤1時間くらいは「情報の提示」しかしなくって、本筋である8人揃って丁々発止、になるまでに、寝落ちするレベルで時間かかり過ぎなのは辛い。
 遠回りするにしても、もう少しメリハリや緊張感のある作劇をする人だと思うのですが……。最後の銃撃戦だけぐわーっとアガるけど、それ以外の中身はない、みたいな、一昔前の西部劇の悪いところもそのままやっちゃった、てことかな。

 だから中盤以降、ワルどもがゲタゲタ嗤い合う展開になってくると、加速度的に面白くなるんだけどね!
 白人黒人メキシコ人、南軍北軍、法を執行する側される側が、クソミソに絡んでヘイトし合って、どのセリフがホントでどれがウソかわかんない世界をくんずほぐれつ、みたいな。実に醜い現代アメリカの縮図のメタファーですな。
 そんな世界で、やっぱり虚実はわからないままに、一筋の光として、「リンカーンの手紙」がきっちり居場所を作ってる。

 ヘイトスピーチがどうこうわめき合ってる人たちは、ぜひ見てください。そして「善人はみんな井戸の中」って現実を自分から作ろうとしていないか、よく考えるこった。



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2016年02月24日

短評(キングオブプリズム/スティーブジョブズ/Xミッション)


 真田丸面白いよね!
 今の三谷幸喜は、台詞回しや「作品世界全体を俯瞰する」能力は相変わらずピカイチで、「個々のエピソードをつないで盛り上げる」能力が衰えてるんだと思います。
 ここしばらくでは「清須会議」がいちばん面白かったと思う自分としては、当面、そこらへんがあらかじめ決まってる歴史ものに取り組むのがいいんじゃないかな。


KING OF PRISM by PrettyRhythm
[70点]
@チネチッタ
 なんかネット上で「キンプリはいいぞ」とバズってたので、普段見ないフィラー作品にトライ。……そうしてやや期待値高い状態で見たのと、あと基本的に(男女問わず)アイドル文化にまったく興味がないせいか、思ったほどの「脱ぎ率」や「狂ってる感」は感じず、フィクションとして容認できる範疇です。
 それでも絶対に「女児アニメの延長」ではなく、作り手が脳内麻薬を出しまくりながら全力でクソ真面目にアホをやっている感覚は伝わってきて、常にキラキラエフェクトがかかる画面を見るうちに、男かつノーマルの自分でも少し体温上昇した感じがしたので、女の子だったらいわゆる「ヘヴン状態!」をリアル体感できるんじゃねぇかと思います。
 ふっと脳裏をよぎったのは、ここにある狂気はどこか、「トリオ・ザ・パンチ」出した頃のデータイーストのマッシヴ感をBL方面に置き換えたようなそんな、……あくまで個人の感想です。


スティーブ・ジョブズ
[55点]
@ムービル
 スティーブ・ジョブズの伝記映画を見に行ったはずなのに、
 大半は痴話喧嘩だったでござる
 父娘愛大事でまとめられたでござる
 舞台演劇的な会話映画としての完成度ならめっちゃ高いのは伝わってくるのに、「そんなの誰も望んでねーよ(確信)」なんでござる
 そもそも、あーちすと様たちにはそりゃあジョブズは神みたいな存在かもしらんけど、一般人が見たら「何あの偉そうなオッサン?」にしか見えん作りにすなや! 今の世代、アップルIIはおろかiMacすら知っとるかも怪しいわ!
 ていうか、本作で省かれた「アップルIIとiPodをメインにした」アシュトン・カッチャー版を見とくと理解しやすいわけで、「予習してから見てね?」ってなんで別の作品見るのが前提みたいな話になっとんねーん!


X-ミッション
[50点]
@チネチッタ
 エクストリームスポーツを題材にしたアクションもの。
 登場する犯罪集団にはいちおう「環境過激派」的な理屈がつけてあるんですが、その「思想」に基づく「行動」が、なんで札束ばらまいたり山爆破したり、果ては「金ないんで銀行強盗→銃撃戦」というフツーなコトになるのかまったく理解できないので、ストーリーは考えるだけ無駄です。(ちなみにその「思想」の提唱者は日本人仏教徒みたいで、その説明に「悟り」って言葉が字幕に出るんですが、セリフ上は「ボンノー」言ってるように聞こえたのは気のせいか)

 なので完全に映像を見る映画ですが、予告でバンバン出てきたウイングスーツのシーンがエクストリーム感の最大値で、それ以上の興奮はなかったのが残念。
 ていうか、ノーCGを謳っているのに、完全にリアルを撮っているシーンと、明らかにCG込みのシーンやフィクションでなければありえない嘘を、何の注意もなく混ぜているので、「全部つくりものじゃね?」が通ってしまう時点で、自分から企画倒れにしてしまった失敗作としか……。
 たとえば、撮影上は絶対に安全対策しているのはわかるのですが、いちばん金玉ヒュンヒュン来るやべぇ映像が出来上がってるのは、「フリークライミング」なんです。
 でもその後に、なぜ「飛び降り」をエクストリームスポーツの一環として追加してしまうのか。あれ、物理的に生存不可能です。エンジェルフォールに滝壺は存在しません(高さに比して水量が少ないため、空中で散乱して地面から見ると単なる雨)し、仮に下が水面であっても衝撃は固体並みです。調べたら、飛び込みの高さの世界最高記録はたったの60mだそうです。



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2016年02月17日

オデッセイ

[75点]@ムービル

 まずこの酷い邦題を何とかして欲しい。何の映画かわかりゃしない。公式ツイッターがつけてるタグの「火星ひとりぼっち」の方が数万倍インパクトが強いよ!


 さて。火星に置き去りにされた宇宙飛行士のサバイバル、という題材ですが、何しろリドリー・スコット監督なので、エンタメ寄りの作り込みです(実際はものすごく考証を加えてるのは明らかなんですけどね。「プロメテウス」と違って)。
 なので、本作のウリと言われている(?)「火星で鉄腕DASH」な展開とかの描写は、意外にあっさりで拍子抜け。
 火星で生き延びる方法論よりも、生死ギリギリの絶望的状況でもとにかくめげない、前向きで楽しそうに張り切る主人公=マット・デイモンのキャラクターこそが「鉄腕DASH」的でした。この点がすばらしい(現実の宇宙飛行士の選抜も、「そういうメンタルの持ち主であるか」を重視されるみたいです)。
 「月に囚われた男」や「ゼロ・グラビティ」も高評価である自分としては、人間同士が愁嘆場繰り広げる、ってよりも、こういう「淡々と極限状況に向き合う」の方が断然ノレます。

 そこであの「マーズパスファインダー」ですよ! 発見までのくだりもさることながら、「送れるのは回転するカメラによる画像だけ、という条件で通信」にうぉぉとアガったのなんのって。あのシーンは、凡百なミステリーものを軽く凌駕してたと思います。


 難点としては、ビジネス的にしょうがないのはわかるけど、中国の絡み方がどうにもあざといことと、次回計画用の脱出艇が事前に投下されている、という展開は、そんなんホンマにやるかね? と少し疑問。あと、あの過剰な軽量化はあんまり意味なくね?



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2016年02月15日

不屈の男 アンブロークン

[50点]@シアター・イメージフォーラム

 いろいろ物議をかもした作品。先に言っとくと、右か左かっつったら僕は右寄りな方で、日本を悪く言われてうれしいわけはないです。
 でもまぁ、「見ずに批判するな」は真理だし、脚本はコーエン兄弟なんで、むしろサスペンス寄りできっちりしたものができてるだろう、という期待のもと見に行ったわけですが……。
 その「物議をかもした」あたりは、あんまり気にしなくていいです。もともと、「自国人が戦時に外国でひどい目に遭わされたけどがんばった! 映画」は、どこでも作ってんですから、いちいちことあげしてたら始まりません。

 それどころか本作の場合、日本軍はおろか戦争にさえ主眼があるとはいいがたい。
 「いかなる環境におかれても誇りを失わず耐え抜く男のサバイバル」な話を語るのが主眼で───要するに、あれですよ、アメリカが大好きな宗教説話もの。「キリストの受難」になぞらえているんです。宗教テーマのためなら、いかなるところからでも善悪対立を引っ張り出すのがキリスト教。

 だから本作を見て、「皇軍兵士の侮辱ー!」とか言い出したら、そりゃアホとしか言いようがありません。
 現実に虐待をした兵士がいる事実は認めましょう。軍全体の問題ではなく、個人の資質の問題であることは作中で示されています。むしろここを、「社会・民族の総意としての悪意」でなく、「個人の悪意」にしたがゆえに、テーマがぼやけ、この作品を凡作たらしめている、ともいえます。
 (「日本軍の行動」として、もっともキツい描写……事実ならば戦争のおぞましさを思い、脚色ならば侮辱すんなと怒るべきは、「救命ボートに機銃掃射」じゃないでしょうか)

 この映画に日本人として抗議したいならば、まず「寛容や赦しをなぜ宗教依存の行動と捉えるのか」、という点に疑問を呈するべきではないかな?


 でまぁ、面白いかと言われると微妙で……。事実ベースだから仕方ないんだけどさ……。
 漂流して生死の境をさまよい、その後ジャングル内の独房で処刑の恐怖に怯えるという、圧倒的な絶望感でぐいぐい引き込んでくる前半と比べると、現代の刑務所くらいの待遇はある収容所で、DQNな看守がひとりいるだけの後半の状況は、「甘っちょろい」の域(伍長ていどでなんであんなに偉そうなのか、という点はありえないよなぁ……また、捕虜待遇が敗戦濃厚になるにつれ劣悪に変化する点は、非難すべきでない)。そこで、キリストのまねごとをされてもなぁ……。

 (なお、「白鯨との戦い」を見た人は、その前半でさえ「甘っちょろい」という感想になると思うよ![自分は見てません。「エセックス号事件」を事前に知ってたから、見たら鬱になるのはほぼ確実だと思って]

 捕虜虐待を行う渡辺伍長は、「ノーカントリー」におけるハビエル・バルデムさんのごとき不気味さを出しつつ、あの手この手で主人公をいじめ抜くわけですが、先に述べたとおり「個人の悪意」であって、出世できない八つ当たり&嫌がらせでしかない、と描写されるので、どうにもこうにも……。
 描き出したい「気高さ」にたえうるか、と考えたとき、あのクライマックスはまったくクライマックスたりえません。ガタガタ言った右翼さんたちには申し訳ないけど、事実であるかはまったく別問題として、「収容所にいた日本軍人全体が、渡辺伍長の悪意を中心に、集団心理によって人道を外れていく」という描写でないと、この作品は「人間の恐ろしさ」「それに耐え、赦す人間」を描いたとはいえません。そう踏み込めなかった時点で、アンジェリーナ・ジョリーもコーエン兄弟も、とっても優しい人たちだった、と思ったほうがいいです。



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2016年02月09日

短評(ラストエグザイル/コードギアス最終章)

正式タイトルがやたら長いアニメ二題。

劇場版ラストエグザイル ‐銀翼のファム‐ Over The Wishes
[65点]
@新宿バルト9
 十三年前のヒットしたとは言いづらいテレビシリーズの、五年前のさらにヒットしなかった続編テレビシリーズの、総集編劇場版。
 パチ絡みでなく、何か新たな展開や販促があるわけでもなく、なぜこのタイミングで? と謎が多いですが、お蔵入りになりかけたのを関係者の努力でどうにか、というのが本当のところらしい。デザイン周りは確かに捨てがたい、よくできた作品なので、航空戦艦による艦隊戦等、大画面で見られるのは素直にうれしいですね。
 見たことのない人にはキャラの立ち位置がわかりにくい内容ですが、見てた人には綺麗に濃厚にまとめられ、ひとつの映画として成立しており、総集編映画としては完成度の高い部類に入ると思います。それはつまり、テレビシリーズが冗長でエンジンのかかりが遅く、ヒットし得ない作品だった、ということも示しているわけですが……。


コードギアス 亡国のアキト -最終章 愛シキモノタチヘ-
[40点]
@TOHOシネマズ渋谷
 第一章第二章第三章第四章
 いやはや……「これは酷い」とか「どうしてこうなった」以外に言葉が出てこんぜ。
 やりたかったのは観念SFだったか政争ものだったか、はたまた「反逆のルルーシュのサイドストーリー」だったのか、焦点がどこにも合わず何もできあがらなかった、3年かけた消化不良品。まだ見てない人にはっきり言っておくと、予定調和でやってくる「兄死ぬ」以外、物語を構成する新たな情報は事実上存在せず、何の結論も導かれない(ていうか四章のあのみっともない「演説」が「結論」だったのかよ!)から覚悟しておけ。その「死ぬ」も、「もしかしてあのキャラのアレは伏線のつもりだったのか」という展開で、「乳首券発行」を最大のサプライズとして実現される、というね。
 あと、あのアキト組のラストって、「イレブン」にはそういう選択もアリって話なのはわかるけど、現実のロマの歴史を考えると能天気すぎで、そこはやっぱ覚悟決めて戦い続けたルルーシュの方が、物語的には美しいよね。
 ロボットアクションだけは、最後まで気を張ってます。この一章に限っていえば、そこ以外に見所はまったくないです。それも、理解させるつもりのない観念SFを間に挟みながら進行するので、見せ場になりきらなかったのが残念極まりない。



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2016年02月05日

短評(さらばあぶない刑事/残穢)


さらば あぶない刑事
[60点]
@品川プリンスシネマ
 シリーズ全然知らんので、老人活躍映画としてどうなんだろうか、と思って見たんだけど、定年退職直前というシチュエーション以外、二人とも全く老人扱いされず、特に柴田恭兵はバリバリにアクション決めまくってるのであんまり期待に沿わず。
 そうなると、中盤まではともかく最終的には、物語の整合性放棄してケレン味最優先の絵作りなので個人的にはどうもこうも。まぁ、よその反応見てると、ファンにとっては「それでいつも通り」の模様で、むしろこれが最後と言われても実感がわかないんだとか……。
 あと、最近の邦画が安っぽく見えるのは、そもそも建物や内装がなべて安っぽく作られてるのも一因だと理解。


残穢 -住んではいけない部屋-
[75点]
@丸の内ピカデリー
 ジャパニーズホラーってあんまり見てないのでコレがどれくらいのレベルにあるかよくわからんし、そもそも中村義洋監督なんでミステリーに寄せてくるだろうと踏んだから見たんだけど、超がっつりホラーでした! 怖かった! ていうか中村監督ってホラー出身だったのか!
 ストーリー的には、「別に100%祟るわけでない・逆に祟られた人のレベルによっては祟りの上乗せ、拡散が起きる」という以外は、凝ったところはないんだけど、とかく演出(特に音)が腹の底からぞわぞわくる、そういうタイプの怖さ。竹内結子の無感情なナレーションだけで、なんか持ってかれる感ある(彼女の「枯れた主婦」な佇まいもすごくいい雰囲気)。
 ほんの少しの音で怖さを醸し出すので、雑音の少ない良い設備のところで見ましょう。丸の内ピカデリー、空調と思うけどホールの外から絶え間なくなんかピシピシきしむ音がして、ちょっともったいない感じがしたよ!



白ゆき姫殺人事件 -
白ゆき姫殺人事件
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2016年02月01日

エージェント・ウルトラ

[60点]@渋谷シネパレス

 いやぁ……ある意味、こんな酷い映画は他にないんじゃないでしょうか。
 なぜって、一番面白いのが「エンドクレジット」(に挿入されるアニメーション。これは唸るほど凄い)ですもん。
 この作品は、冒頭シーンで「現在」を描き、「過去回想」というかたちでスタートします。そして、少しひねった「トゥルーマン・ショー」的な舞台設定の根幹を、開幕十五分ほどでほぼバラしてしまいます。
 こういう場合、物語中盤で時間軸を現在に戻し、そこから主人公のめくるめく活躍、に転じるのが定石だと思います。バラし済みの世界を、謎めいた何かとして描き続けてもしょうがないじゃないですか。

 ところが本作はダラダラダラダラと、バレている世界に「もうちょっとだけある秘密の関係」について語ろうとします(作り手としては「ボンクラ野郎がプロポーズに至る」が主眼のつもりだったのかもしれないけど、それにしたって遠回りしすぎ。それに、ヒロインの秘密バラシが唐突過ぎて、なぜそのタイミングでバラす気になったのかまったくわからない)。
 んでラストに至ってようやく現在に戻り、その後に起きる爽快なシーンをエンドクレジットで表現する、という……優先順位を間違えた感覚が否めません。

 ジェシー・アイゼンバーグは、どうも才能の無駄遣いな作品に当たることが多いように思います。すごいポテンシャルがある俳優だと思うんですけどねぇ。もったいないなぁ。



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2016年01月29日

スター・ウォーズ -フォースの覚醒-

[70点]@チネチッタ

 実はエピソード4以外見たことなくて、今冬地上波放送されたのをようよう全部見終わってから鑑賞。

 ……残りの5作見て思ったんだけど、ぶっちゃけ面白くなくね?
 歴史的価値というか、当時の技術考えたときの特撮レベルの高さ(「ジェダイの帰還」の高速戦闘は凄かった!)とか、世界観の作り込みの濃度とかはよくわかるんだけど、……。
 特にエピソード1〜3って、要はありがちなビギニングとかゼロとかの類をよくもまぁ3作もかけて……としか思わんかった。うん、1〜3で最高に感動したシーンといったら、なんたって「R2-D2が空飛んだ!」だったよオレ。
 ただ、4〜6まで見た後に「皇帝」でググってWiki見ちゃって、そしたら1行目から1〜3の壮絶なネタバレ食らった、てのはあるんですけどね!

 で、本作なんですが。
 面白かったです。
 ただこの面白さというのは、あくまで「エピソード4をなぞってる」の上に、何を上乗せしたら観客を驚かせられるだろうか、という工夫の結果なので、手放しにはできないです。
 ファンが多い作品をきちんと納得させられるデキに作り込んだのはグッジョブなんだけど、「すげぇすげぇ」じゃなくて、「そうくるかー、なるほどなー」なんだよな。もう少し何か、「独自の積み上げ」が欲しかった気がします。


 ところで、「ストームトルーパーってクローンで、忠誠誓うように製造されるんじゃねぇの?」「ライトセイバーってジェダイでなくても使えるもんなん?」という疑問はあるんだけど、まあスター・ウォーズ世界観的には特に問題ないのだろうな。時代も数十年過ぎてるわけだし。



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2016年01月21日

パディントン

[75点]@109シネマズ木場

 予告編を見る限り、名作児童文学を「家族愛連呼」なありがちファミリーコメディーに改変してるぽかったので、あまり大きな期待はしてなかったのですが、なかなかどうして、面白かったです。
 実際、「家族愛連呼」なありがちファミリーコメディー、には違いないです。で、家族ものとしては、パディントンを介してひとつに打ち解けていく流れがあっさりめで、あまり面白くはないです。しかし、コメディーとしてのキレがよくて飽きが来ないので、素直に好感が持てるつくり。日本人的には、「クレヨンしんちゃん」をイメージしたほうがたぶん近いです。
 あの手この手のくすぐりポイントが豊富、かつネタをいちいち二段構え三段構えに仕込む巧みさで、笑わせてもらいました。脚本は 「Mr.ビーン」や「ジョニー・イングリッシュ」の人だそうです。なるほど。
 お気に入りは、衛兵の帽子から「非常食」が出てくるネタですが、あの帽子って熊の毛皮製のはずなんですよね。パディントン的にはOKだったのでしょうか。クライマックスの最後のトドメはなんか唐突に見えますが、あれ、「鳥=バードさん」が助けてくれた、ってダジャレだよね?
 あとこの作品、ちょっとしゃれたオチがエンドロールにあって、動物ものの映画だと必ず出てくる「いかなる動物も傷つけていません!」ていう文言が、「いかなるクマも」になってる。


 吹き替え版で鑑賞。ほぼ俳優専業の人で固められ、まったく磐石な布陣でした。松阪桃李のパディントンは、テディベアの延長線上にある原作イメージだと違和感がありますが、本作はパディントン自体が精悍なリアル若熊として造形され、「ロンドンに憧れてやってきた移民の若者」的に描写しているため、すんなりはまっています。
 モデル・歌手出身者の「声優初挑戦」は地雷になりやすいところ、三戸なつめも健闘してました。


 ひとつ気になってること。
 ブラウンさんが女装したときの「入館証」には、いったい何が映っていたのでしょうか? 絶対ネタがあると思うんですが、顔が太っていて腕がなくて掃除婦をしている既製のキャラクターって何……?



くまのパディントン -
くまのパディントン
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2016年01月19日

短評(ガラスの花と壊す世界/傷物語1/シンドバッド2)

新年公開のアニメ三題。

ガラスの花と壊す世界
[55点]
@新宿バルト9
 上映時間67分で料金1800円、パンフレット2000円(!) という、「劇場版花咲くいろは」のえげつなさを上回るコストパフォーマンス記録を打ち立てたことがまず衝撃的。でも友人によれば、カントクさんの画集が2000円で手に入ると思えばOKじゃないの? とのこと(←キャラデザのイラストレーターのペンネームが「カントク」というややこしい話)。
 内容は……サーバー内に人間がデータとなって居住している、というSF設定はゼーガペイン楽園追放もそうだし今さら驚くには値しません。その凡庸な設定を終盤になってからかなり強引にひねくりたおすストーリーは、作っている側は「二転三転のどんでん返し」と思ってやったんだろうけど、率直にいってワケがわからない。もっとシンプルにまとめてよかったと思います。冒頭に登場するキャラとその「名前」が、ツカミだけ顔出しだけと思わせておいて、最終的に物語全体に影響を与える点だけは意外感があり、面白かったですが。
 まぁ、女の子を愛でる作品、と開き直るしかないですかね。初期値では感情も感覚も持たず、物語の中でそれを知っていくはずの主人公2名が、しょっぱなから感情バリバリ出して会話してんだもん、そう思わなきゃやってられない。正直、「ダーティペアを今風にアレンジした」という感覚が強いです。今いちばんカネ持ってるオタ世代ってそこらへんだもんね、おもねらなくちゃね!


傷物語I -鉄血編-
[65点]
@TOHOシネマズ新宿
 言わずと知れた<物語シリーズ>の、既成事実として語られないままにされてきた発端エピソードが、劇場版三部作として公開。このシリーズは、つるべ打ちの文字演出と垂れ流しかつ持って回った言い回しの会話劇だけで、ほとんど話の進展なく一話終わらすことをざらにやってますが、劇場版でもそのノリは変化なし、というかそれよりテンポが遅いです。
 スクリーンは巻き戻しや一時停止ができないので、文字演出が遅いのは当然の措置なのですが、そこ以外でも、緩急という意味では焦れるくらい緩いのはちょっとマイナス。

 とはいえ、「急」というべきアニメーションは、「じっくり見せる」ことに重点を置いて、かなり凝ったアーティスティックな激しく動くものが用意されています。いつもの抽象画ではない実写取り込み系の背景に、今回のアニメーションがうまく乗っていたかは微妙ですが(例によってモブは一切存在しないので、空虚感が過剰に強い)、人気シリーズだからこそできたチャレンジだったには違いなく、攻めの姿勢を堪能すべきでしょう。
 緩急の幅があるこの演出を、友人が「70年代の鈴木清順ぽい」ということを言ってまして、あぁこれも邦画のテイストをアニメが受け継いだ証左なのかもしれません。

 あと、知らない人に明示しておくと、
 登場する二人の女性キャラは、
 本シリーズのメインヒロインではありません。
 信じられねぇよな。


シンドバッド -魔法のランプと動く島-
[50点]
@イオンシネマ港北ニュータウン
 あれ……前作は良かったのに、今回はなんか微妙。
 前作と比べ、だらしなく間延びしている印象がある演出で、悪い意味での「昭和感」を感じて、めくるめく冒険のはずなのにあまりわくわくしません。あと、あの島が「水棲生物の背中」というのは王道ですぐ読めるのに、配置されたオブジェクトやイベントが、何もその設定を補強せず、むしろ矛盾しているのが奇妙です。個々の表現や伏線の張り方は間違ってないと思うのですが……(馬が蹄でなくヒレだったのはわかったけど、巨人はどうにもなんない……見せ場を作るためだけに配置されたとしか)。
 監督の宮下新平氏が、昨年急逝されたことも関連しているのでしょうか。ちょっと残念です。




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posted by アッシュ at 13:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする