2016年06月26日

帰ってきたヒトラー

[85点]@TOHOシネマズシャンテ

 傑作である。
 素晴らしいタイミングで公開された、まさに今見るべき映画。政治的主義主張は関係なく、誰もが見るべき。
 何より映画としてのデキが抜群だ。非常にテンポよく進み、ストレスがまるでない。2時間あっという間に経ってしまう。笑えるシーンも多いが(「最期の12日間」のパロディのぶっ込み方なんか最高なんだけど、アレ人を選ぶよなぁ。パロディのシーンは他にもいろいろありそうな)、基本的にはマジメに、目を凝らして見た方がいい。


 このたび英国のEU離脱が決まった。市場は大荒れだった。日本でも猛烈に円高が進み、株価は一時1200円も下げた。
 これほどまでに世界が動揺した理由は何か?
 移民の問題? 貧富の問題? 貧困層はみんな民族主義のレイシストか? それともEUの法制? ココアの甘さまで決められちゃうから?

 問うたのはそこじゃない。なぜ動揺したか、だ。
 誰も離脱を想定していなかったのだ。政治家とか、資本家とか、アナリストとか、そういう偉い人たち、世界を動かす側にいる人たちが、離脱を想定していなかった。残留を前提に経済は動き続けていた。だからいま世界中が騒然としている。
 なら彼らはアホだったのか? 驕っていたのか? まさか。彼らの情報感度や解析力の高さは、素人とは段違いで、普段なら彼らは、何が起きてもある程度「織り込み済み」で、淡々と行動する。それでこそ世界を動かせるのだし、その優秀さを舐めてかかる庶民が「また政治家が」とぶぅたれるのを、これまでは巧みにかわしながら、自分たちの思う方向に誘導していた。
 しかし、彼らの能力をもってしても埋められないほどに、格差が開きすぎたのだ。所得の話だけじゃない。思想とか、価値観とか、人権意識とか、「ヒトがヒトである」域でさえ乖離してしまった結果なのではと、思わずにいられない。


 本作は、現代にヒトラーが甦ったらどうなるか、という物語。
 ヒトラーはもちろん、歴史が示す通り、情報戦の重要さを知っている。プロパガンダの重要さを知っている。彼の設定したゴールは、開幕当初からあまりに明確だ。彼の振る舞いが「笑い」に見えるのは、彼が現代社会について無知なだけだ。人は無知を笑う。しかして彼は言う、「まずは情報収集だ」。
 彼は新聞を知っている。映像の威力を知っている。インターネットを知って驚愕する。
 そして。
 彼は市井の人々から丁寧に話を聞いていく。

 本作はユニークな構成である。
 ここでドキュメンタリーになるのだ。
 ものまね芸人と思い込んだテレビマンの若者とともにドイツ国内を巡り、ヒトラーはごく普通の素人と話し合う。すると人々はいっせいに政治への不満をぶちまける。
 彼はまた、既存のメディアや政治批判もまた骨抜きにする。実在のテレビ番組に出演し、実在のネオナチと相対し、言葉をぶつけ合わせる。
 その多くは、「タブーに触れる」話である。

 (別の話だが、「ボーグマン」は移民について活写した映画である。
 だけど監督は、移民の映画だとはひとことも言っていない。今の欧米で、移民を非難することはタブーだからだ。)
 (偶然知った面白い話がある。現在のドイツでは「ナチスを想起させるもの」が法律で禁止されているが、「ヒトラー本人」だったら禁止しようがなく、本作はその法の穴を突いているのだという)

 話す相手が「タブーに触れる存在」であるヒトラーだからこそ、彼らは素直に胸襟を開けたのだし、ヒトラーを描く映画だからこそ、その直截な言葉を批判や皮肉として世に出せている。僕にはそう見える。
 ヒトラーを介さなければホンネが通わない世界。なんだそれは。
 この絶望的な状況が、実に面白い、というさらなる絶望的状況。うはぁ……言葉にならない。


 彼は最終的に、優生主義者の邪悪な一面を露わにし、そこから物語の幕引きへ道筋がつけられる(この幕引きが恣意的に感じるのが難……というか、「彼」に、この結末しかなかったかなぁ?)
 この物語はフィクションであり、映画は終わる。しかし、「終わった後」、つまり彼の設定したゴールが強く示唆されている。そして、1939年のドイツにもしも自分がいたら、間違いなく彼に投票していたろうと、本心から思う。

 それは僕が邪悪だから? レイシストだから? あるいは、邪悪な政治家たちに騙された、可哀想なポピュリズムの被害者?
 それでもいいよ。でも、そうしたレッテル貼りや悪者探し・吊し上げに執心な人たちにはたぶんわからない、「情報」に関する絶望的な乖離を、ヒトラーは嘲笑いながらねじ伏せて我がものとし、すべてを掌中にするだろう。

 それをなせる「現代のヒトラー」はいるや否や?
 わからない。
 それでも、政治家を選ぶときの最低限の基本常識は、「無能な善人より有能な悪人」だ。僕らは、「ヒトラー」のリスクを覚悟しながら、より有能と思える人を注意深く選ばなければならない。


<追記 6/30>
 衝撃の日々から一週間、公約違反がどうの再投票がどうの、未だにメディアの論調はまさしくこの状態。「中の人」たちは、本当に何もわかっていないし何も感じていないのだと空恐ろしい。
 マジでヒトラーが現れなければ変わらないんじゃないかと思えてならない。向こう十年ほどは、世界は不安定で危険な状態が続くと予測します。みなさま防衛意識を強く持たれますよう。



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2016年06月16日

ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出

[80点]@109シネマズ二子玉川

 あなた! は! お姫さまが! 好きですか!
 好きですね!
 なら観なさい! 見ないと後悔するぞ。


 「ローマの休日」のモチーフとなったとされる、英国王室の王女姉妹が、戦勝記念日にお忍びで外出した史実のエピソードを、もちろんほぼ創作で映画化。監督は「キンキーブーツ」の、というか個人的にはこの作品のジュリアン・ジャロルド。
 ドキュメンタリーぽくなるかと思ったら、めっちゃコメディ。これ一本見るだけでも、英国王室がいかに寛大で人々に愛されてるかわかろうというもの。というか、当のエリザベス女王は本作を見たのか見てないのか、すごく知りたい。

 妹のマーガレット王女のほうがぽっちゃりで貫禄があって、最初はどっちが姉かわかりません。しかしすぐに「初めての外出」にはっちゃけまくる妹と、従軍して戦勝の重みを知り、王位継承者の自覚が芽生えつつあるまじめな姉、そのギャップがあらわになって、それだけですごく楽しいです。
 そりゃあオードリー・ヘップバーンの尋常ならざるかわいらしさには及びませんが、エリザベス王女を演じるサラ・ガドンには、自然体の美しさがあって、当時の感覚をまさに再現していて、観客を画面に引き込む力があります。
 あと、一生懸命スピーチ原稿に取り組むとーちゃん(「英国王のスピーチ」のジョージ六世。今回はルパート・エヴェレット)も魅力的。


 間抜けな護衛の目を盗み、怪しげな士官についてっちゃった妹を探して、偶然出会った空軍兵士の助けを借りながら姉もロンドン中を駆け巡る。でもどっちも世間知らずには変わりなく、地理はわからないし、お金の使い方も知らない。
 勝利に湧いたロンドンの一夜、その陰に残る無視できないいくつもの爪跡、そして姉妹が醸し出す、「これが最初で最後の自由」という寂寥感も重ね合わせながら、目くるめくドタバタ珍道中と一夜のロマンス。
 アクションシーンなどないのに、全編見どころまた見どころのノンストップムービーです。

 それだけに、終盤のまとめに少しもたつき、きれいにオチがつかない部分が多いのが惜しいですが、ラストの「守衛の視線」に免じてヨシとしましょう。
 すでにフィリップ殿下とはおつきあいしている時期だからね、まぁアレでね、あの演出はうまかった。



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2016年06月15日

マネーモンスター

前半[75点]後半[35点]@TOHOシネマズ川崎

 いやぁ……なんと言おう。
 オレほんとジョージ・クルーニーと相性悪いな。「ゼロ・グラビティ」以外、当たりがない。

 ジョージ・クルーニーが司会を務める生放送の金融情報番組に、彼が推奨した銘柄の暴落にブチ切れた男が乱入、放送を継続しながらふたりの駆け引きが始まる……という導入は、傑作「テロ、ライブ」を彷彿とさせてひたすらアガったもんですが。
 面白かったのは「犯人の彼女の罵倒」により、どっちも人生で得たはずの何かの価値が吹っ飛んで、奇妙な協調が生まれるあたりまでかなー。

 そこから先、「真相」がヒドい。

 悪いのは脚本家か監督のジョディ・フォスターか製作のジョージ・クルーニー本人なのかわからんが、ダメなリベラルの典型で、批判したいものを感情論でしか理解せず、まるで勉強してないことだけはよくわかった(あるいは観客がそのレベルでしか見ないとたかをくくっている)。
 それではどんなに批判したって、ウォールストリートには「あぁ娯楽だねぇ」と鼻で笑われて終わりだ。こんなので溜飲を下げるから、いつまでも勝ち組負け組の構造が変わらないんだ。

 えーっと、問題となってるアイビスキャピタルは、アルゴリズムによる株の高速取引を売りにする「投機会社」なわけだ。株式の発行で資金調達、それをそのまま市場にぶっこみ、株売買益を配当として還元する仕組みだろう。
 ならば、この会社の価値は「アルゴリズムの信頼性」にあるはずだ。そこが投資対象だ。「アルゴリズムの誤動作で損失出しました」などと認めた瞬間に社運が尽きる。「原因不明」までついたらなおさらだ。この会社は、作品冒頭の時点で倒産するや否やの瀬戸際にある。
 ……という危機感が、あまり感じられないまま、まずはサスペンスが進む。ようやく主人公が、「暴落の原因を確かめよう」という方向に物語を誘導する。さぁ、ここからだ、となるわけだが。

 その上で「真相」があの通りであるならば、あのCEOは、馬鹿とか愚行とかそういう次元を超えている。やってること起きてることがあらかた理屈に合わず、どこからツッコんでいいのかわからない。
 あの「企み」は、天才にも馬鹿にも富豪にも貧者にも考えつかない。「どうにか話をまとめなくては」と追い詰められた作り手の頭の中以外では、絶対に成立しないロジックだ。そして彼らにとっての大前提は、「『アルゴリズムの誤動作』は、すべてを煙に巻ける無敵で魔法の言葉」なのだ。……ンなわけあるか!
 そんで、「金融アルゴリズム」を語るそばで、「ハッカーは万能、世界中の監視カメラにぜーんぶアクセスできてものの数分でなーんでもわかっちゃう! すげー!」な世界も確立されているという……。どういう思考回路があればこんな話が構築できるんだ……。狂ってる……。

 本作ではいちおう、民衆側の欲望や、すべてをネタ消費してフレームを起こす群集心理にもフォーカスしている。が、それらの点は、「テロ、ライブ」のようにスタジオ内だけで話を完結させるかに見せる手法が災いして、スタジオ外にある貧者の側の怒りや狂騒がよく伝わってこず、批判として成立しきっていない(3月6日に何が起きたのか、から始めるべきだったと思う)。
 それならそれで、POVっぽく作り込めば緊迫感だけは強まったはずなのに、あっちこっちフラフラするカメラのせいで魅力激減。特に、「警察の動き」を逐次描写するのは、語るべきテーマから乖離している。そのくせ、狙撃のチャンスなんぼでもあったのに実行しないし、犯人の素性はあっさり突き止めるわりに、「遠隔爆弾を手に入れるコネやスキルがあるか」は想像もしないし、総じてアホで邪魔。

 そしてラストシーンだ。
 お・ま・え・も詐欺の片棒担いだんじゃろがボケぇーーーっ! 何でちょっと幸せそうにしてんねん!
 ジョージ・クルーニーはあの世界ズッポリの「富める1%」の側やから、それでも抜け出せない、の結論でしゃあない。でもジュリア・ロバーツは「二度とこんなのはゴメン、向かいの局へ行く」
結論と違うの……?


 とりあえず、投資は自己責任で。
 自分がオカネについていろいろ見聞して得た最大の教訓は、「人生を賭けた勝負は必ず負ける」だ。勝てるのは、「たった六万ドル」と言ってのける余裕が、精神的にも資金にもある側だけ。そういう世界。
 それが理解できない人は、手を出しちゃダメです。損しても自業自得です。



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2016年06月13日

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ

[70点]@角川シネマ新宿

 マイケル・ムーア監督も年齢相応に、体型だけでなく丸くなったようです。オバマ政権で国民皆保険や軍縮はいちおう端緒につき、次も民主党政権がほぼ確定てことで、あんまり声高に叫ぶ必要もないんでしょう(でもヒラリーはウォールストリートとべったりという話も聞くしなー、格差是正する方向の施策は後退するんじゃないかとちと心配)
 アメリカの暗部にガリガリ切り込んでいった突撃志向は影を潜め、今回はこれまで「比較対象」であった他国へ出向いて、この国はアメリカと違ってこんないい制度なんだよーと紹介していく、「なるほど・ザ・ワールド」な内容。「INVADE」という強い言葉を使うわりに、実に緩くて和やかです。

 ところがこれが意外に面白い。第一に、テンポのいい編集はこれまで通りですから、純粋に見てて飽きません。
 例によってアメリカとの比較しかしておらず、文化や歴史の相違は無視して他国の「よいところ」しか紹介しないので、ツッコミどころは多々あります。しかし、労働問題から教育問題犯罪問題、さらには政治や金融の問題へと、多様な視点の移動がスムーズで、かつだんだん深刻になっていく流れが鮮やか。そしてその流れの中で、ツッコミどころがある一点に収束していく構成にうなります。
 ホント、「その事実」を当のアメリカ人がぶち壊しまくって、今はもうきれいさっぱり、てわけだからねぇ……。


 知らなかったこと。
 ポルトガルでは薬物使用しても逮捕されない、という話の中で、「アメリカはなぜドラッグを敵視し、厳しく取締るのか」「なのになぜいつまで経ってもドラッグが撲滅できないのか」という点に、監督はちょっと意外な理由をつけます。うがって見すぎな気もするけど、そういう見解もあるのか。ふーむ。



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2016年06月08日

神様メール

[60点]@TOHOシネマズシャンテ

 旧来の宗教観とそれに根ざす社会のあり方を問う奇作。
 ホントに、いつから「神」というものは(「権威」や「国家」と言い換えてもよい)、「悪いことしかしない」という理解が当たり前になったんでしょうか?
 些細な悪事(マーフィーの法則作り)しかしなくなった「神」への嫌がらせのため、「神の娘」が「新・新約聖書」を作るべく、地上へ降り立って「使徒」を捜すコメディ。その過程でボッコボコにされていく「神」の哀れな姿が見もの。ここは素直に笑えます。

 しかし、「使徒」になる人々は要するに「自由恋愛主義者」で、「愛の形はいろいろ、旧来の価値観にとらわれるな」という内容なんですが、個人的にはあまりにリベラル&アナーキーに過ぎて、受け付けない部分が正直多かったです。
 「現代ではリベラル主張こそ神のお告げである。従え!」っていう過激な主張をしているわけで、ものすごくヤバい。

 カトリーヌ・ドヌーブの不倫相手が「黒人少年→サーカスのゴリラ」というのはまったく笑えないし、「神の恩寵」を受けて平和になる世界に「ウズベキスタンは含まれない」というラストシーンは悪意しか感じない(要するにボラット」と同じだよ!)

 「世界の中心は自分たちである」という傲岸さを隠そうともしていない、というか、その手前勝手な歪さを「ピュアな子供を主人公」にすることでカモフラージュしてるつもり、っぽいのがなお不快です。
 ブラックジョーク的に受け止めてね、という意図の可能性もあるけど、……素でわかってない気がするんですよねぇ。

 ウィットに富んだ、スキのないコメディには違いなく、ツボ入る人はドッカンドッカンいくタイプの作品なので、そういうこと気にしない方はどうぞ。


 にしてもなんだな、洗濯機がワープゲートってアイディアはどっかで見たことあるよ、な……。



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2016年06月02日

短評(デッドプール/ガンダムORIGIN3/殿、利息でござる)


 今日は Google ロゴが「ロッテ・ライニガー」だ!


デッドプール
[70点]
@TジョイPRINCE品川
 珍しく初日に鑑賞。
 序盤の路上ハイスピードアクションだけは、速さの緩急といいタイミングよく挟まれる小ネタといいサイッコーにキレるので、ここは必見といわざるを得ません。すばらしかったです。
 しかしそれ以降はトーンダウンするので、注意されたし。「マーベルユニバースにしては異端」であるだけで、キャラクターもプロットもそんなに珍しくはない、ていうかデッドプールさん以外は敵も味方も魅力が皆無な上に過去話は無駄に長いだけで、ストーリー派としてはいささか物足りないです。むしろマーベルを逸脱できない限界が足を引っ張っている感が強いです。
 コメディとしても、むりくり楽屋ネタとシモネタを連ねながら転がしていくだけなので、ネタの大半がわからない日本人には、ツウの皆さんがもてはやすほどには面白くないとしか……。リーアム・ニーソンの脇の甘さはまったくもってそのとおりだが!

 あと、本作のエンドロール後オチは、「眼帯のおっさんなんか出てこねーよ」て話よりも、あのインド人運ちゃんが、忘れてった銃器をどう処理したかって方がはるかに気になるのですが。


機動戦士ガンダムTHE ORIGIN III -暁の蜂起-
[75点]
@新宿ピカデリー
 第一章第二章
 シャアとガルマの出会いという、ファースト知っていると特に感慨深いエピソードを、バランスよく綺麗にまとめていて実に面白く、これまでの章と違い、余計なこと考えずにのめりこんで見られました。ガンダムやモビルスーツが出てこなくても、シンプルな架空戦記としてのよさが、白兵戦のリアリティによってより高まった感。邪悪なシャアが素晴らしいのなんの!

 ルウム戦役どうすんの? と言われてたんだけど、分割されることも判明して一安心。
 あと、見た後で、あの士官同期の女の子誰だっけ、記憶にはあるのになーと言ったら、ミネバのお母さんじゃん、と友人に返されて絶句。そうか、この時点のドズルはまだ結婚してないんだ! あのツラで!


殿、利息でござる!
[50点]
@109シネマズ川崎
 ピンとこない。劇中、瑛太が「あんたはどっちを向いているんだ!」と叫ぶシーンがあるけど、まさしくそんな感じ。中村義洋監督なので、個々のシーンの作り込みに手落ちはないのですが……。
 そもそもタイトルが間違ってるんです。史実がどうあれ、そして劇中でどんなに通貨価値の説明をしても、「利息」が話の中心にありません。
 「困窮する村を救う」目的に対する手段が「有力者が喜捨する」だけ。この作品には思惑の差こそあれ悪人は出てこないので、確執も弱い。娯楽のフォーマットに乗る物語ではないのを、どうにかごまかしている印象です(山崎努・妻夫木聡親子を「悪役」と思って欲しかったんだろうか? いやそれ、アバンで山崎努が悪人だと理解した人いねーべ? だから彼らの意図がわかっても「はぁそうだよね」でしかなく、人情ものとして成立しきらない)。
 最初から最後まで損得勘定でしか動かない、だがそういう冷血漢なりの処世術を見せ付ける、松田龍平の立ち位置はちょっと面白かったです。しかしそれゆえ、クライマックスでまた軸足がぶれてしまうというね……。



ロッテ・ライニガー作品集 DVDコレクション【3枚組】 -
ロッテ・ライニガー作品集 DVDコレクション【3枚組】
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2016年05月25日

シンドバッド

[55点]@TジョイPRINCE品川(旧品川プリンスシネマ)

 うわぁぁぁ超もったいねぇぇぇ
 ラピュタ級のポテンシャルがある作品なのに! これが完成型とは!
 やっぱり宮下新平監督が亡くなったことは、致命的な痛手だったんだろうな……。トワノクオンもそうだったけど、せっかくのオリジナルシリーズがこういう不幸に見舞われるとやっぱ辛いやね……。
 本作はいくらでも言い訳してくれて構わないので、ぜひリベンジしていただきたく。

 第一部第二部
 今回、「第三部」の公開であるはずが、前半に第一部第二部のダイジェストを置いてまとめた、2時間の作品として公開されました。第三部単体だと、これまでの不入りに合わせた観客数しか見込めない、が理由かと思ったのですが、実際見てみてわかりました。最大の理由は別にあります。
 第二部の感想で「微妙、間延びしている」と書きました。しかし今回、いわば「第三部前半」として挿入された、サナの過去回想&「ランプの謎が解ける」の部分が、本来は「第二部終盤」だったとするとすごくスッキリするのです。各章いずれも「サナの立ち位置が変化する」で幕を閉じることになるから。
 おそらく、監督急逝の影響で制作体制が混乱、第二部は「制作可能な部分だけ」で体裁を整えるしかなかった。本来は編集でカットすべき冗長な部分も、全部入れ込んだ状態で公開せざるを得なかったのでしょう。

 そしてその影響が続いたか、先に進むほど見せ方が平板でうまくない印象(アニメーションの面白さは、最初のじゅうたん空中戦がピークと言うしかない)。結末に至っては、「第三部終盤」になるはずの部分がほぼセリフなしのダイジェストという有様に……。
 「サナとシンドバッドの関係」だけはどうにか整えた(ベタな演出だけど、「サナ>シンドバッドだった身長が、ラストでは同じ高さに並んでいる」はグッときた)ものの、他はかなりお粗末。
 特に、現代的でうまく作りこまれた悪役、ガリプの結末に、伏線も説明もないのは本当にもったいない。ていうか、あれだと「サナの魔力が途切れたから砂嵐を防御できなかった」という見方になりそうなんだけど、物語的には、「砂嵐の予兆の情報はあったが、『自分に都合のいい情報しか見なかったので』適切に対処できなかった」の方が因果応報なわけで、彼に本来はどういう結末を用意していたのか、すごく気になりますね。

 あと、シンドバッドの父親母親ともに魔法族とは結局無関係、ていうのが意外。ここも本当は何か入れるつもりだった気がして、その上でただ「帰る」というラストに、これまたもったいない感があふれるのです。


 それでも、意欲的なオリジナルアニメーションには違いないので、コレを単なる「失敗作」としてしまわないためにも、皆様にはぜひ劇場へ足を運んでいただきたく。Tジョイ品川、2週目にして朝一回の公開になってしまいましたが……。

 特に、ブラック企業にお勤めの方にオススメ。憎めない悪役ダールさんの、
 現場の人間なめんなー!」からの華麗なる転職成功にぜひ溜飲を下げてください。



シンドバッド 魔法のランプと動く島 -
シンドバッド 魔法のランプと動く島
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2016年05月24日

HK 変態仮面 -アブノーマル・クライシス-

[75点]@TOHOシネマズ川崎

 誰だ福田雄一にこんなにも予算を与えたのは!
 面白ぇじゃねーか!


 いやー、VFXにどんだけかけたんだコレ。CGの量が当社比300%くらいいってんじゃないの? それゆえ前作以上にアホが極まった、ツボ押さえまくりの良い「実写化」。
 福田雄一監督にやりたい放題やらせると、こういうことになるんだなぁ、と。予算安ければ安いなりに安いものを面白がって撮っちゃう人なので勘違いされがちだけど、以前「バクマン。」で書いた、邦画の生き残りに必要な「マンガ表現」のセンスが、独自かつパワフルな人なので、もっと「安くないもの」を撮らせてみてほしいと切に願います。

<追記 6/30>
 ……とか言ってたら「銀魂」に福田雄一かよぉぉぉぉぉ!



 いや、安いっていや、安いんですよ。どうしようもないシーンはいつもどおり山ほどあるし、「パロディだけやん、こんなん」とか言われたら返す言葉がないのも事実です。
 でもさ。
 いつもの尺稼ぎチックなムロツヨシの顔芸に、「メカニカルカニ歩き」が付加されるだけで、どんだけ破壊力が増すかッつー話よ。
 「主人公がニューヨークに行く」シーンがあるんだけど、福田雄一がニューヨークロケなんてやるわけないから、こちらは「どうやってごまかすんだろう……あー、やっぱごまかしたー、これのどこがニューヨークやねんケラケラケラ」と笑ったとたんにブッ込まれるあの衝撃よ!
 精神性最底辺レベルの下ネタコメディに「手のひらの上で転がされる」を味わわされる屈辱。くっくやしい! ビクンビクン

 この勢いの中核にいる鈴木亮平の筋肉美そしてマジっぷりは相変わらずすばらしい。柳楽優弥も見事に乗っかってアホをやらかしている。カンヌ俳優がカブリモノとか、今のカンヌの審査員が見たらきっと卒倒するだろうが、いいぞもっとやれ。


 だがこれだけは苦言を呈する!
 前回も書いたはずだぞ!
 最後の「脱いでからかぶる」はワンカットで撮れと!
 ていうか今回の場合、「そのまままたがってコスリつける」でよいではないか、何を生ぬるいことをしておるのか!

 ……へ、変態だー!



HK/変態仮面 -
HK/変態仮面
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2016年05月18日

ちはやふる -下の句-

[75点]@ヒューマントラストシネマ渋谷

 スゴイぞこれ。昨今の「邦画はor実写化はダメ」論争に一石を投じる問題作たりうると思う。邦画が「ダメな実写化」を作り続けた果てに「バクマン。」やコレができたのなら、決して無駄ではなかったのだ。

 映画に限らず日本の若者向け創作物に蔓延する「仲間」の連呼。かるたという題材の魅力を何一つ説明せず、代わりにテーマは全部セリフで説明。やたらと入る過去回想カットイン。ダメに思える部分がてんこ盛りだ。
 再撮影すべきミスを、たぶんスケジュールの都合で、セリフ調整だけでごまかしたとおぼしきヒドいシーンまである(しのぶちゃんが「着替える」シーンな)。

 でも面白いんだ。バクマン同様、「何を描くか」に迷いがない。

 上の句の感想で書いたとおり、本作はキャラ揃えた時点で横綱相撲だった。
 そして、手垢がついてようとおかまいなく、「仲間の大切さ」にテーマを絞って寄り切った。盤石である。

 満を持して登場する、「ライバル」にして孤高の存在である、しのぶちゃんの扱いが鮮やか。
 「なぜ千早がかるたの実力者なのか」原作には理由はあるんだけど、本作ではかるたのテクニカルな部分はほとんど描かれない。ゆえに、「しのぶちゃんが最年少クイーンである」事実にまったく凄みがなく、彼女には「開き直ったボッチ」以上の存在意義がない。
 しかし「仲間」を描く作品ならば、それでいいのだ。見事に、千早と鏡の表裏の位置に在るよう描かれている。過去回想も、仲間のいる千早にはあるが、いないしのぶにはないのだ。明確で力強い対比。実にわかりやすい。

 セリフ説明が過剰になる部分も、上の句で明確に「説教くさいキャラ」として登場し、実質的に「唯一の大人」である國村隼がまとめとして言う分には、納得のいく範疇だろう。むしろ、ターゲットたる顧客層の物語リテラシーを考えれば、これだけですませたのは立派、とさえいえるかも。

 というわけで、先から「邦画はダメ」論争でガタガタ言ってた奴らは、とりあえず上の句下の句合わせて本作を見るように!



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2016年05月17日

短評(亜人2/WAT/赤塚不二夫)


亜人 -衝突-
[70点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 すげぇ。ちょっと唸った。
 この「すげぇ」は話の面白さの観点とは少し違います。いや、面白いんだけどさ。
 この作品はテレビシリーズの総集編映画で、前作はテレビ放送前に、「1話〜6話」まで編集した内容を公開したわけです。なら本作は放送済みの「7話〜13話」の総集編だと思うじゃん? 否。その先、+2話分くらい、一気に「総集」してしまう。加えて、テレビシリーズでは忘れられた友人キャラのエピソードも織り込むという盛り沢山。
 それで2時間? そりゃあ端折りすぎでしょ! と思うじゃん? それも否。ほとんど端折ってません。
 ほぼ同じシナリオからスタートし、「テンポ優先で徹底的に刈り込んだバージョン」が本作で、「いろいろ重みをつけて盛り込んだバージョン」がテレビシリーズと考えるべきでしょう。映画とテレビ企画が同時進行していたとはいっても、ここまで潔く切り分けたのは、正直、未体験ゾーン。
 物語創作に携わる人は、いちど見比べてみると面白いかも。


WAT 世界のアニメーションシアター
[75点]
@トリウッド
 久々にトリウッドで短編アニメーション集。<いろいろな愛を描くアニメーション><社会的視点を持つアニメーション>の、約1時間ずつ2プログラム。

 小規模製作のアニメーションも、テクノロジーの進化でだいぶすごいことになってきました、というのが味わえます。
 「ホワイトテープ」「ブラックテープ」の連作が、単なる技術ひけらかしで、元となった実写見せてもらったほうがなんぼかええんちゃうん、という印象を受けるほかは、いずれも「アニメでこそ」という題材、かつ、実にエンタメしていて、とてもクオリティが高く楽しいです。
 「ビトイーン・タイムス」でパン屋の髪型がくるくる変わる小ネタとか、「ギータ」のキレッキレの手描きアニメーションとか。「真逆のふたり」ではサカサマのパテマの二人が倦怠期を迎えた続編(違)を見ることができます。
 「Otto」は短編アニメーションにしておくのがもったいないアイディアなので長編で見てみたく、また、「アフガニスタン -戦場の友情-」の作者が次に作るというヒーローものが凄く見たい。

 で、見どころのひとつは、作品の上映前に流れる監督さんたちの自撮りメッセージで、これがみなさん「え? マジ? 日本で上映されるの? ひゃっほーい!」てな感じで、日本てやっぱこの人らには「聖地」なんやろなぁと微笑ましくなること請け合い。
 トリウッドは5/29まで。夜の上映は20日まで。


マンガをはみ出した男 赤塚不二夫
[50点]
@渋谷アップリンク
 ヘンリー・ダーガーダニエル・ジョンストンと同じパターン。題材となるアーティストがすごい人でも、語るドキュメンタリー映像作家が凡庸なので(何せ本作の監督はコレの人だ!)、思い出語りの映像記録としてはテンポよくて面白いけど、それ以上の意味はなし。
 突っ込んで欲しかったのは、彼のあのエキセントリックな感覚の源泉はどこか、て部分だのに、「満州が原風景」でバッサリ。同じ満州出身のちばてつやにも語らせといて、それでまとめちゃうんだぜ? なら「ちばてつやと赤塚不二夫の芸風の違い」はなんでスルーよ?(個人的には新潟時代や、「これでいいのだ!」がウケた社会背景とかも、もっと掘り下げて欲しかった)
 どうも、あまり深く考えてなくて、「これだとみんな納得するキレイなまとめだよね。あ〜、スッキリ!」って喜んでる感じがあるんだよな。赤塚不二夫にそういうスッキリ感、誰も求めてないと思うんだ。

 ……それにしてもアップリンク久々だった……何年ぶりだオイ……たぶん「火星人メルカーノ」以来。このブログ始める前です……。



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2016年05月15日

短評(追憶の森/フィフスウェイブ/シビルウォー)


追憶の森
[70点]
@TOHOシネマズシャンテ
 マシュー・マコノヒーと渡辺謙、2大俳優競演……と身構えて見ると、肩透かしを食らいます。脚本は「リミット」の人だそうです。気負わずに見る安いシチュエーションサスペンスと思うのが吉。
 日本の青木ヶ原樹海が舞台(といっても撮影はアパラチア山中らしい)。道に迷った自殺志願者2名が、なんやかんやで生きて脱出するためサバイバルするという筋書きなんですが、何しろその道中が、真剣にやってんのにそこはかとなくコントなんです。
 そもそも青木ヶ原行くのに新幹線で静岡で降りてるとこから始まって、祠という人工物があっても何も気づかないし、死体見つけたらまず剥ぐし、川を見つけて辿って下ろうぜって話した次のシーンでまた山に分け入ってるし、崖から落ちる瞬間とか完全に笑いを取りに来たよねアレ?
 しかし、おそらくは無神論者であろう主人公が、日本的なスピリチュアル展開に触れていく流れは、日本人としてちょっと面白かったですし、最後のオチを知ったうえでそうしたコントみたいな道中を思い返してみると、いろいろ腑に落ちて暖かい気分になり、見て良かったという感想に至るのです。

 でもあの奥さんの死に方はない。あれはコント。


フィフス・ウェイヴ
[55点]
@109シネマズ川崎
 なんか壮大なSF超大作っぽい宣伝、ディストピア・サバイバルな序盤とは裏腹に、「クロエ・モレッツが大人の階段登っちゃうんですぅ!」がメインプロットな、「ジュピター」に並ぶ、SFでトワイライトサーガやりましょう的な、スウィーツな作品。
 なので男子は、オハナシは一切忘れてオトナになったクロエさんを堪能しましょう。映像はそんなにエロくないけど、シチュエーションがエロい。フトモモだけで、こう、何かかきたてられるヨ!
 そして、「階段登っちゃった」を知って、本来彼氏ポジションにいたはずのベン君が「えーーーっ」て表情をする一瞬が大爆笑かつ最大のクライマックス。リンガーちゃんに慰めてもらえよ! 続編出るのかどうかしらんけど、あの娘デレたらチョー可愛い系のはずだから!


シビル・ウォー キャプテン・アメリカ 
[60点]
@TOHOシネマズ渋谷
 アントマンとスパイダーマンを加えて、オレの素人考えなんかお見通しな、アベンジャーズ同士組んずほぐれつバトルロイヤルは面白かったですが、……ぶっちゃけそこだけ。
 その状況を作るためだけに四苦八苦している物語は、2時間半もかけておきながら、ちっともアガらない。「キャプテンアメリカ」がタイトルという点を考えると(自分、キャップの他の作品見てないんだよね……)、アゲアゲにせぇというのはムリかもしれないけども。
 脳天気な新入り両名を加え、さらにはアイアンマンを「政府の手先」チックな役回りにして道楽者で自由人なイメージを台無しにするくらいなら、ハルクとソーはバランスブレイカーだから出さない、って判断を下したのと同様の割り切りで、物語をもっと狭く絞るべきだったんではないかと思えてならないです。



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2016年05月09日

ズートピア

[75点]@チネチッタ

 ……。
 見終わって、ものすごく贅沢な感想を抱いてます。
 完璧すぎてつまらない。

 「人種の坩堝」である不平等な社会を、うまく「動物」へ置き換え、差別とその克服をさりげなく明るく、相棒ものの古典的なフォーマットに的確に乗せながら描いて、それでいて古びていない意外性のある展開、ここぞというところで鮮やかに回収される伏線……。
 もうね、これが「初めて見るストーリー映画」の子供は、この先何を見ても面白く感じられないんじゃないか、てくらい完璧。

 でも、世界が完璧に作りこまれているならば、そこに生きるキャラや起きるできごとは不完全で不合理な部分が少なからず含まれるはずなのです。現実がそうであるように。この作品はそこも完璧なので、手応えが変です。リアルなのにリアルじゃない。

 あるいは、「動物を人間ぽくアニメーション」という点が完璧で、まるで実写映画のように作っているので、マダガスカル3みたいな「リアルを超越したド肝を抜くアニメーション」はこの作品にはないのです。

 ホント、贅沢な感想ではあるのだけれど、もう少しスキがあってこそ魅力的になりそうな、そんな作品だったように思えます。



 ……まぁ、本音を言えばね。
 絶対激萌えキャラだと思っていたジュディが、あんまり萌えなかったかなー、と……そう、何が完璧でスキがないって、この娘だよ!
 「生まれがマイノリティ」以外に弱点がなくってさ。それでいて、「マイノリティ」であることの壁はわりとあっさりクリアして、彼女が得る最大の挫折は「差別を乗り越えるために行動した結果、別の差別の加害者になった→弱者だと思ってたら強者だった」という点なので、誰かが支えて救う話じゃないわけで。
 ある意味非常に現代的で、この点も実にリアル。なのだけれど、萌えはしない。強気ガールは、ここぞというとこで弱みを見せてこそ萌えるのだ(セレスティーヌを見習え!)。そういう視点で見るほうが間違ってんのはわかってるけど、惜しい実に惜しい。



↓コレ、マジで気になる……録音可能時間がもう少し長けりゃ……。
ディズニー ズートピア 録音再生! ジュディのニンジン型レコーダーペン -
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2016年05月04日

短評(スポットライト/ルーム/響けユーフォニアム)


スポットライト -世紀のスクープ-
[75点]
@チネチッタ
 実にサスペンスフルな傑作。息つく間もなく見せるテンポのよさが素晴らしいですが、その内に、決して善や倫理だけでない、報道の裏や限界もさりげに織り交ぜているところがニクい。
 この作品で一番怖いのは、本当にアメリカ人は行動規範や人格の成立を宗教に頼ってるんだなぁ、という点。でも作中でも示されるとおり、神を完璧なよりどころと認知していても、それを取り扱うのが、教会という必ずしも完璧でない人間の組織であるという不一致。これが、社会にとっても個人にとってもすべてを破壊してしまいかねない爆弾となる異常性、しかしそれを正すのもまた人間……というアイロニー。


ルーム
[70点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「世界が広がる一瞬」は筆舌に尽くせない素晴らしさでしたが、その後の「世界の受容」については個人的にはあまりピンとこなくて、展開の遅さにイラつきすら感じました。が、たぶん作品のせいじゃないです。作品自体があまりに真摯でウソがない作りであるために、人の親でなくかつ欧米人でない自分には、投げ込まれた直球が受け止めきれないんだと思います。あれっくらいの「部屋」に住んじゃってるしな!

 ところで、これで「アカデミー賞主演女優賞」はないでしょ、子役のジェイコブくんを主演男優賞にするか共同受賞と銘打つべき。


劇場版 響け! ユーフォニアム -北宇治高校吹奏楽部へようこそ-
[70点]
@新宿ピカデリー
 テレビシリーズの総集編ですが、「前年度何があったか」の話をほぼばっさりカット、久美子と麗奈の関係だけに絞って再構築しており、やや掘り下げの甘い感もあるも、これ単体で成立するくらい盤石の仕上がりになっています。演奏部分も大幅にグレードアップして、劇場で聞けて良かったと思えます。二期も楽しみ!



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2016年05月02日

モヒカン、故郷に帰る

[70点]@テアトル新宿

 邦画はダメだダメだと言われる中、ストーリーコメディ路線において、安定した打率を誇る沖田修一監督の新作。
 今回は「里帰りで家族ドタバタ」という、わりとありきたりなシチュエーションでどうなるかと思いましたが、ある意味いっそうキレが増してました。
 ひとつひとつはクスリニヤリていどの薄い笑いで、それぞれの笑いの取り方は従前の作品と比べるといまひとつの感はあるのですが、その薄皮が積み上がって厚みを増していくにつれ、僕らの世代特に地方出身者にとっては、ちょっとシャレにならないくらい重くて分厚い「現実」となってぶつかってくるのです。
 主役の松田龍平が、モヒカンのまま腹を据えるさまが、見た目おんなじなのに、ちゃんとカッコいい。モヒカンがピンと立っている。

 難を言えば、柄本明はもっと若い人がよかったんじゃないかなぁ。ダメ親父演技はもちろん素晴らしいんだけど、「えーちゃんに憧れた」というには老けすぎなのよね。あの夫婦からなぜモヒカンの息子ができあがって断末魔を叫び出したのかが、ちょっと腑に落ちないです。

 あと、本作は沖田監督渾身の「メシ演出」が炸裂するから刮目して見よ! 例によって食事シーンが何度も出てくるわけですが、「メシがまずそうなシーン」と「メシがうまそうなシーン」が明確に分かれています。そしてそれは、食事の種類やデキとは関係ないのです。

 ……ところで、千葉雄大がふりかけてるアレはなんだろうか。



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2016年04月28日

筋肉ベストテン……にはやっぱりならなかった


 前回参加しないと書いたんですが、参加者数が少ないという話が出てきたので、できる範囲で参加します。

 僕はシュワちゃんとかスタローンとかの全盛期に原風景がなくて……どうもぴんとこないんですよね。
 で、ざっくりすでに投票されているのをみると、だいたいそこらへん+香港くらいしか見当たらないのに気づきまして。
 インドとタイがゼロなんてことは絶対赦されないと思ったので、自分の見た範囲でこんな感じに……。





(順不同でお願いします・例によって年号は「日本公開年」です)



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2016年04月04日

短評(ちはやふる上の句/暗殺教室卒業編/父を探して/たまゆら4)


ちはやふる -上の句-
[75点]
@チネチッタ
 構成や演出について、細かいことあげをすればキリがない感じはあるんだけど、オーバーアクトが合う広瀬すずを筆頭に、とにもかくにも、かるた部五人のどハマり感ハンパない。もう、この作品はそこに尽きる。よくぞ揃えた。あとあのヒョロ連れてきたの誰だ(笑
 原作からだいぶはしょられてるようにはみえるのだけれど、彼女らがスクリーン映えしていて、立ち振る舞いだけで「キャラ立ち」している時点で、もう全部無問題大正義横綱相撲感があります。下の句も楽しみ。

 ところで、銀の匙も思ったし暗殺教室もそうだったんだけど、最近の日本映画は、「一般生徒」を自然に撮るの下手になってない? どうも動きが不自然で、エキストラですって看板ぶら下げてるような感じのばっかり……。


暗殺教室 -卒業編-
[60点]
@チネチッタ
 前作で僕はかなり誉めた。何より「イトナ合流=クラス全員集合」まで一気に描いたことで、この作品は「教室」を描く気があるのだと勝手に思い込んだからだ。だから僕にとって本作は、サブタイトルを知った瞬間に終わってしまった。「卒業編」……だと……? 「二学期編」「三学期編」の三部作、じゃなくて……?
 つーことは何か、二学期イベント全ブッチ? 原作全編通して最高のイベントである「赤羽業vs浅野学秀」、ああいうのを喜ぶ観客などおらんと? 松井優征にしては予定調和感が強くてあまり評価の高くないあの「暗殺」でまとめると? てことは、「積み上げた上で」ガツンとぶっこまなきゃ全く意味がないカエデイベントを、ツカミに置くんですかァーーーーっ?!
 はい、全部その通りでした(泣。 何あの申し訳程度に「学校」にした学園祭。怒りだ! もう怒りしかない!
 ……もっとも、単体の映画としては、前作の散漫さと比べればきちんとまとまってた印象です。特に殺せんせーの過去部分は、細やかに描けてたと思います。……それは僕が桐谷美玲大好き人間ゆえのひいき目かも知れんけども。

 ところでさ。最終的に「渚が首席」っていうセリフが出てくるけどさ。
 映画だけ考えると、どう見ても首席は奥田さんだよね。


父を探して
[75点]
@シアター・イメージフォーラム
 ブラジル産のアート系アニメーション。色鉛筆で描いたような牧歌的な色彩、棒人間のようなシンプルなキャラクターが印象的。
 そんな一見穏やかな画風で、出稼ぎに出た父の消息を求めて、田舎住まいの少年が旅に出る。綿花の農場、紡績工場などをたどり、産業や社会を知っていく……て書くと、なんかすごくマイルドで教育的で眠くなりそうな「子供の見るアニメ」に見えるでしょ? うん。ぶっちゃけ中盤までは眠いんですよ。

 ……中盤以降、もの凄い勢いで、どこまで広げんねん! ってとこまでぶん回し始めるのでビックリしました。二大怪獣空中決戦とか、ありえねーわ。そんで、かなりせつなくなるところへと落とし込むというね。
 否定的に描かれる、「機械化・工業化によって環境破壊が進み人間性を失う」みたいな表現は、いやいやブラジルの場合それは序盤で平穏に描かれる大規模プランテーション農園を作るためにやってたんでしょ? とツッコミ入れたくもあるのだけど、久方ぶりに気合入った海外アートアニメーションを見られたので満足。


たまゆら 〜卒業写真〜 第4部 朝 -あした-
[80点]
@新宿ピカデリー
 の感想。
 「卒業」というゴールに向けてひたすら畳み掛けていく、この作品から想定しうる、完璧な大団円。それも、今までやってきた「友達」を整理しつつ、本来底辺に横たわっていた「親子」をかっちりすくい上げて締める意外性。大袈裟に泣かせるイベントなど何一つ起きないのに、男だらけの館内にすすり泣きが漏れる凄さ。誰かが言った、「これ、まさしく松竹映画じゃね?」と。
 もう何度か繰り返して言ってるけど、「日本映画」を正しく継承したのはアニメである、という新たな証左です。

 今回は公開延長したこともあって、作画も完璧でした。
 あとは、ちもさんの結婚式がきちんと描かれていればなぁ、と、そこは少し切ないですね。「〜に捧ぐ」ではなく、「セリフはなくてもキャストのクレジットに入っている」のが、この作品のひとつの「らしさ」だったかもしれません。



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2016年03月24日

アーロと少年


 なんか TAAF がえらいことになってるらしいけど、大丈夫か……。


[80点]@チネチッタ

 ……なんかすげぇもん見た。

 いやね、序盤と終盤だけ切り取ったら、どこにでもある「勇気!」「家族!」なアメリカ映画です。それも、かなりトラウマ級のイベントを放り込んでくる、これホントに子供に見せていいの? 的な。
 すごくオリジナルな発想に見える「恐竜と人間の組み合わせ」にも、ほとんど意味はありません。「人間と犬」でもほぼ同じ話にできるでしょう。ぶっちゃけ、はじめのうちはつまんなくて、短編アニメの「僕のスーパーチーム」の方が面白いんじゃないかと思ったくらい(これガチ傑作! というか、この題材を世界規模の公開に組み込む勇気!)。

 しかし、話が進むにつれ、本作が何をしたいのかが、だんだん見えてきます。
 本作には、ここまで来たか! と思うくらい、実写と変わらぬ超写実的な背景映像が使われています。それにいかにもカートゥーンな、常時骨折してるみたく見えるデフォルメ恐竜が乗っかっているのはいささか奇妙滑稽ではあるのですが、ともあれ、その壮麗な背景で、おそらく現代ではアメリカでも撮り辛くなっているであろう、「大自然ロードムービーやろうぜ!」が本作の趣向です。
 ……うーん、それはどう考えてもイマドキ子供向けじゃないのが、この作品の辛いところですが。

 アーロと少年が大自然の中に放り出され、ぶつかり翻弄され手を携え、心を通わせていく。それも、「少年」は意味のあるセリフを発しませんので、ただただ映像でもって表現されます。それだけの内容が、なんとも沁みるし、なんかとにかくスゴかった。圧倒された。
 ホントに、「言葉で説明できない」という感想は、この作品ならば許してもらえると思う。つーか、言葉で説明すると、最初に述べたとおり「どこにでもある映画」になっちゃう。「感じる」タイプの作品だと思うのです。

 どうも世間的にはあんまり評価されてない感じで、本命は次の「ズートピア」みたいな扱われ方をしている印象ですが、僕は好きですコレ。



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2016年03月20日

マジカル・ガール

[60点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 年に四ヶ月は日本にいるという日本ヲタのスペイン人、カルロス・ベルムト監督の長編デビュー作。だそうで。

 アニメの魔法少女に憧れる病弱な少女の願いをかなえたい……というイノセントなきっかけから、とんでもない方向へ話が転がっていくサスペンス。マジカルってそっちかよ、と。
 その意気やよし、と言いたいところなのだけれど、どうやら撮影スタイルはアニメではなく、古い日本映画を範にしているとみえて、ガッチガチの固定カメラで超スローテンポに話を進めていくので、サスペンスとしては(ましてスペイン人が作ったと考えると)かなりキツいです。
 それで話が鮮烈ならよいのですが、発生する犯罪の構造とか、先生とバルバラの関係とか、思わせぶりに引っ張ったわりには興味を惹かれなかったのが正直なところ。過去に何があったのか明確にしなかったことに、あまり意味も感じませんし……。

 ただ監督さん、インタビューでは「ドラゴンボール」や「ナルト」のファンとか答えてるみたいだけど、この作品に最も影響を与えてるアニメは絶対「まどか☆マギカ」。
 ああいうのが海外から見てアイコンになるってのも、善し悪しやねぇ。



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2016年03月14日

マネー・ショート -華麗なる大逆転-

[80点]@チネチッタ

 破壊屋さんの誰映2015の結果発表ですね!



 さて。

 自分は2005年から投資を始め、知識もあまりないままに、本作で示される状況に突っ込み、ぶっちゃけ大損こきました。
 ならば知識をつければいいのか、というとそれも違って、「個人の予想できる範疇で値が動くことなど絶対にありえない」という理解に至っています。今は決まったパターンでしか売り買いしません。

 相場とは、経済学ではなく群集心理で動きます。カオスな生き物です。
 本作に示されるように、経済指標において明らかにマイナスな情報が出回っても、相場はプラスになるような、因果関係の成立しない現象が当たり前に生じます。

 本作は2006年〜2008年の期間を描いてますが、僕の記憶にある限り、サブプライムローンがヤバイ、いつ崩壊するかわからん、というのは2007年頃にはある程度、一般投資家に流布してました。

 ところが、カネというのは、一部がヘタレても「逃げ出す」ができます。そうすると、別のところで「見かけだけの活況」が起き、それを見て、経済学者やアナリストたちは、「ほら活況ですよ」と言い募り、「全体がヤバイ」情報は捨て置かれます。
 本作では、「最初期に仕掛けた人」「最終的に大勝ちした人」しか取り上げないわけだけど、早い段階で、できる範囲で「破綻」に張った投資家は山ほどおるんですよ。しかし本質的にヤバい状況がいつまでもダラダラと続く中、正しく時流を見越していた人々が、本作で言えば CDS の保険金に耐えきれない状況に陥って、次々に敗者としてこぼれ落ちていったのが現実でしょう。

 結局、カタストロフが起きるまで止まらないのです。ていうか、「起きても止まらない」が正しい。彼らは誰も責任を取らない。税金ジャブジャブ突っ込むか現金ジャブジャブ刷って今ある金銭の価値を薄める=インフレ以外の対処を、彼らは認めません。自分の身を削るなんて脳みその片鱗にすら存在しない。
 経済学とは、過去の動きにいかにして後追いで理屈をつけるか、という学問であり、決してよき未来を願っていない。僕はもう、そう諦観してます。



 ちゅうことで、映画のほうなんですけど。
 あの当時、市場がどういう挙動をしていたか、把握していない方にはかなり辛い内容のような気はしますが、逆にわかってるともう、なんか胃が痛い。この胃に穴が開きそうな感覚は「エンロン」見たときに近いな。

 この作品が上手いのは、序盤から、「いかにもデキの悪い、人を煙に巻くタイプのドキュメンタリー、みたいな映像演出」を頻出させることです。
 正直、これヤバイんじゃね? と思ったのですが、次第に、あの時期の狂騒をユーモアのオブラートに包んで描く狙いが見えてきます。そうでなきゃ、「金融用語をマーゴット・ロビーがバスルームで解説」みたいな、人を食った演出するわけがない。

 描かれた勝者の陰に、どれだけの敗北者がいるのか。作品内でブラピが指摘するように、どれだけ一般市民に押しつけられたのか。そこに思いを致すと、本当に絶望しかない物語なのです。
 けれど、勝者の歓喜と世界の絶望、恐怖と隣り合わせの好奇心と欲望、そのあたりのさじ加減が絶妙で、先ほど書いた胃の痛さをエンタメに昇華して、実におもしろく仕上がっていると思います。



 ところで、直近の経済状況。
 「株を買ってください。売らないでください」と金融庁長官クラスの幹部官僚が直接保有者に懇願するような中国の株式市場が、まだ普通に売買成立してる、というホラーな状況がありますよ。
 どうなるんでしょうね。怖い怖い。

 あと、これも酷い邦題なんですよね。
 ここでも指摘されてるけど、これだと金融用語としては「資金枯渇」のニュアンスになり、題材と全然意味合いが違ってきます。



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2016年03月02日

ヘイトフル・エイト

[65点]@丸の内ピカデリー

 率直な感想。……この内容で167分は長ェよ! タランティーノ監督にそれを言うても無理筋なのはわかるけど、それでも、序盤1時間くらいは「情報の提示」しかしなくって、本筋である8人揃って丁々発止、になるまでに、寝落ちするレベルで時間かかり過ぎなのは辛い。
 遠回りするにしても、もう少しメリハリや緊張感のある作劇をする人だと思うのですが……。最後の銃撃戦だけぐわーっとアガるけど、それ以外の中身はない、みたいな、一昔前の西部劇の悪いところもそのままやっちゃった、てことかな。

 だから中盤以降、ワルどもがゲタゲタ嗤い合う展開になってくると、加速度的に面白くなるんだけどね!
 白人黒人メキシコ人、南軍北軍、法を執行する側される側が、クソミソに絡んでヘイトし合って、どのセリフがホントでどれがウソかわかんない世界をくんずほぐれつ、みたいな。実に醜い現代アメリカの縮図のメタファーですな。
 そんな世界で、やっぱり虚実はわからないままに、一筋の光として、「リンカーンの手紙」がきっちり居場所を作ってる。

 ヘイトスピーチがどうこうわめき合ってる人たちは、ぜひ見てください。そして「善人はみんな井戸の中」って現実を自分から作ろうとしていないか、よく考えるこった。



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