2016年10月19日

映画館のCMのこと


 震源地はこの増田なのかな? また「映画館のCM」の話題が盛り上がっている様子なので、便乗します。


 映画館に行ったら映画だけ見たい、という欲求は自分もあるし、CMや予告編は少ないほうがうれしいのは確か。
 でもCM入るのは仕方ないと思う、というか、「映画」は「たくさんの目の人に触れる点で価値がある」と認められてるからこそなわけだし、悪いことじゃない気がします。テレビの少ない時代にゃ、幕間にニュース流してたわけで。

 で。
 それでも、思うところはいろいろあって。


○セブンイレブンはまだマシ! まとも!
 テレビ用のCMをそのまま流すのではなく、映画館向けにあまり声高でない内容にするとか、地域別のネタを入れるとか、工夫の余地はありそうですけど。

上映前CMでダントツにいいのは、やっぱりキューピー。福山雅治の穏やかなナレーションが聞こえると、あ、これからいよいよ映画だ、という気分になれます。

映画館でローカルなCMを見るの、けっこう好きだったりします。横浜の映画館で見られる、柳沢慎吾の万葉倶楽部とか。
 109クランベリー南町田で地元の小さい不動産屋のCMかけてんのとかは、むしろほほえましい。


 もちろん、こんなの映画見る前にかけるなと絶叫したくなるひどいものも少なくないわけで!

■TOHOシネマズがまず襟を正してほしい。最初期の鷹の爪団マナーCMは抜群によかったけども、気をよくしてチョーシこいていろいろ「上映前」をいじりだしたせいで、不快に思う人も増えてるのでは、と思わずにはいられません。

 →「映画のある生活」がいかにひどかったかは以前書いた。
 →今年映画館で見た、最もつまらない映像は「阿吽建設」。
 →シャンテの「行かないでハンケン」も、センスないから今すぐやめてほしい。

■他の追随を許さぬ酷さを誇るのが東京テアトル系。東京テアトルの映画以外の事業のCMは、「本当におまえら映像事業をやってる会社なのか?」と、企業価値を毀損するレベルでひどいのでCMの体をなしていない。一口とはいえ株主たる自分としては、いつか株主総会で糾弾するのがひとつの目標です(テアトル東京の株主優待はめっちゃ使えるので抜けられん……)。

 →以前 M@sterVision 氏が怒ってた状況は多少は改善されてるけど、今でも「予告編をカットしてでもTCGカードの勧誘はする」ってアレ意味わからん。
 →館によらず新宿や銀座の店舗のCMを見せるのって、間借りしてるビルから怒られねぇの? 特にシネリーブル池袋、東武百貨店のテナントなのになんで中の店のCMを流さない? 嫌われてるのハブられてるの?
 →ヒューマントラストシネマ渋谷で一時期流してた、黒地にカタカナの「ヒ」とだけスクリーン上に表示されるCMの絶望感といったらなかった。僕自身の「金払って映像見に来てんのに、なんでこんなもの見せられなきゃならんの?」という怒りはこれがピーク。コレを経験してたら、だいたいのことは許容できる(笑。

そんで、こないだ新宿ピカデリー行ったら、普通に松竹配給である「いきなり先生になった僕が彼女に恋をした」の予告編が、いちばん最初つまり「通常CM枠」でかかってたんだけど、あれは何だったんだろう?
 枠が安いってことか、それともあまりに絵面がショボいので、他のマジメに作ってる映画の予告編に混ぜちゃうとむしろ逆効果だと自分らでもわかってて、通常CMに混ぜ込むことで少しでもマシに見せようという深謀遠慮ですか?



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2016年10月18日

ゼーガペインADP

[65点]@新宿ピカデリー

 ゼーガペインはですね。僕、DVD全巻持ってるんですよ。棒読み花澤さん、いつでも堪能できるのですよ。いいでしょ。

 で。10周年記念の新作と銘打って公開された本作。
 開幕時点からいろいろおかしい。何かが変だ。知らないキャラは続々出てくるし、核の設定たるループはあっさりバラされる。何か変なのだ。井上麻里奈は登場したとたんキャラ崩壊してるし(笑、絶対変なんだ!
 その違和感の正体が、中盤になってわかる。この衝撃! 見た人に、どこで仕掛けに気づいたか、アンケート取ってみたいくらい(全話細部まできちんと記憶してた人は、「カノウ」の名前が出た時点で一発だったのかな……?)
 不覚、自分は「イェルに名をつける」まで気づかなかったよ! キスした瞬間ぐはっとなったよ! カミナギショックかよ! 

 完全に、全話どころか全設定を網羅してる人でないと完全には理解できないだろうし、そういう人が作ってる本気のファンサービス作品。
 少なくとも、僕はこれ見た後にもっかいDVD見返したいと思いましたから、その時点でこの作品は大成功ですよ。すばらしい10周年企画に感謝します。

 だから。
 積み重ねの足りないもう少し尺の欲しかった脚本とか、素人としか思えない編集ぶった切りとか、大スクリーンで見るに耐えない作画が執拗に繰り返されるとか、当時は技術が未熟で見栄えしなかったCG戦闘が10年経ってもあまり迫力が上がってないとか、そもそも長編映像作品としてのテクニカルな部分でやたら引っかかっちゃうのはちょっと悲しかったです。
 もーちょいカネ突っ込んでやってよサンライズ!



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2016年10月17日

日本アニメ(ーター)見本市

[80点]@新宿バルト9

 というか「PATLABOR REBOOT」
 いやぁ、すばらしい作品でした。押井版「NEXT GENERATION」がどれだけ関係者を激怒させたか、とてもよくわかります。
 「そもそもコレをやらなければ『パトレイバー』はコンテンツとしての独自性を持ち得ない」という内容を、10分間できっちりかっちり見せてくれるシンプルな作品で、「リブート」と呼称するにふさわしいものになっていました。何しろ抜擢された監督は、「ロボットで人情もの」を語れる吉浦康宏。押井守と対極に近い思想の持ち主といえましょう。

 劇パトが高評価だったのは、何度でも言いますけど、まずこの部分を直球として投げた後の、キレのいい変化球だったからです。「変化球だけでは勝てるわけない」この当たり前のことを、押井守は本気で理解していなかったという絶望が、「NEXT GENERATION」でした。

 本作が本当にリブートとして機能し、新たな展開の「パトレイバー」が作られる筋道となるのなら、その意味においてのみ、「NEXT GENERATION」には価値があったといえましょう。



 他の作品も少し。

○どの作品も各アニメーターが好き放題やっていてすばらしかったのですが、同時に「こいつらに好き放題やらせていてはいかんな……」とも思ってしまいました。「君の名は。」における新海誠がそうであったように、絶対誰かが手綱引かなきゃダメだ、と。
 だって半分は「メカと美少女」だもんなぁ。今脂が乗っている人たちが、それがどストライクな世代、ってのはわかるんですけども。
 個人的には、「アニメーター」を誇示するのであれば、「セリフなし」で勝負してもらいたいのですが、だいたいセリフが饒舌なのよね。

○そのセリフは、実績随一の山寺宏一と林原めぐみがすべて演じているので、至芸に酔える……のだけれど、さすがにここまで連続して聞かされると飽きますな。終盤に来て林原めぐみによる女子高生三人演じ分け、がぶっこまれた時には、それムリ、と思わずにはいられなかった……。

○一本いちばん好きなのを挙げるなら、「I can Friday by day!」。軽妙な動き、意外な内容、言葉より絵で伝えようという意志、いずれもステキ。



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2016年10月07日

短評(ハドソン川の奇跡/超高速参勤交代R/RWBY2)


ハドソン川の奇跡
[65点]
@ムービル
 クリント・イーストウッド監督にしては起伏も少なく、無理にドラマ性を高めようとして「事故調査委員会」が悪役めいた描写になっており(あのシミュレーション、マジで公聴会でやったの? 頭悪すぎじゃん。それに、「フライト」みたいな行状でなきゃ、パイロットを悪しざまに処遇しても再発防止に繋がらないので無意味です)、映画としてはどうにも「弱い」と言わざるをえません。
 しかしながら、そうした弱い作品であればこそ、「当たり前のことを冷静に確実に当たり前にやりました」とだけ示す結末は、絶妙な意外性の面白さで、イーストウッド監督らしくもありアメリカ映画の懐の深さでもある、収まりのいい作品であったと思います。


超高速! 参勤交代リターンズ
[50点]
@TOHOシネマズ川崎
 つまんなかった。話にまったくノレませんでした。
 前作は、「ともかく江戸に到達しさえすれば何とでも面目が立つ」という一点突破のストーリーだったから、「無茶をする」ことに説得力がありコメディとしても成立したんでしょうに。
 で、前回が参勤で、今回は「交代」つまり帰路の話なわけだけど、発生する状況がもはや「笑えない」深刻さなのですよ。でも結局コントじみた芝居しかやらないので、「全然深刻に見えない」という意味で、ストーリーが破綻しています。
 また、前作でも忍びの連中は、主人公ズの苦労をあざ笑うごとくに時空間を超越してたけど、今回は忍びどころか、単なる行列が時空間を超越する演出がなされる(信祝が水戸からいわきまでを2日で踏破したように見えた)ので、もうどういう作品だったかわかりません。
 一方で、前回はクライマックスの乱闘以外ぴりっとしなかったチャンバラが、全体的にしっかりしていた印象。主人公ズが人間離れして強いのを前作でわからせていて、戦力差を無視できるのが前提ではあるのだけど、映画の時代劇が真剣な剣劇を見せる方向にシフトしている昨今、テレビ時代劇がかつて見せていた、やんやと斬り合う娯楽チャンバラをたっぷり入れた作品は久々な感じがしました。


RWBY -Volume 2-
[55点]
@シネリーブル池袋
 どうもピンと来ません。
 Volume 1 と比べると、今回はアクションのほうが、連携技や連続技にアイディアが盛られていて、こなれてるところはホント鮮やかでした。傘中ボスの技のキレといったら……。あとわんこミサイル。なんだありゃ(笑。
 けど全体的に、こなれてない印象が強すぎ。アクションもダメダメなとこが多いけど、ストーリーがもっとアレレな方向に。
 きれいにまとまったのは黄色による黒の説得、くらいで、進展や成長が見当たらず、起きるイベントの軽重がよくわかりません。「異民族」が単なるテロ集団に堕した現状、「何のために戦うか」みたいな問いが必要とは思えないんだけど、「オタアニメのフォロワー」的な感性で創作する海外勢には、それがルールか何かに見えてるのかしら。
 なお、豊口&下野ペアに期待してましたが、もしかしてアレで片づいたの? だとしたら、あのサブチーム自体に、噛ませ犬以外の存在価値が残ってないんですけど。つか、豊口は悪堕ち路線じゃないの?



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2016年10月01日

短評(ある天文学者の恋文/高慢と偏見とゾンビ)&コラム


 東宝が公開5週目にして、最大のTOHO日劇1に「君の名は。」を移している。しかも易々と埋まる。ちなみに、「シン・ゴジラ」も遅れて日劇1で公開されており、これをどけての公開なので、今は「シャンテでゴジラ」という謎事態が発生中。そしてスカラ座と併せてソコソコ埋まる。
 じゃあ日劇2や3に入った、おそらくは1に入る予定だった新作がどうかというと、2すら埋められない。
 そんで、松竹系の丸の内ピカデリーは「聲の形」をやらないというね。ところが「High&Low」のライブ上映とかはやってるという……。

 銀座地区の映画館はそろそろ、オタ向け作品から目を背ける態度をあらためてほしい。その巨大なハコ、最初の1週にこそ使ってくれよ。想定外ヒットの「君の名は。」はともかく、「シン・ゴジラ」が日劇1使わなかったの、本当にビックリしたもん。そんで、松竹はいいかげん、屋台骨がアニメに移った現実を認めなさい。
 (今は日本橋があるし上野ももうすぐだけど、考えてみれば「秋葉原に最も近い映画街」でもあるわけでさ。)

 銀座はもうジジババの街、という事実はわかるけど、別に、平日と休日でかける作品を変えていけないわけでもなし。休日や夜は一番人が入る作品を、平日昼間は時代劇を、みたくやってもバチ当たらないでしょ? 「ハイブリッド刑事」の例もあるわけで。
 もっと柔軟にいこうよ。


ある天文学者の恋文
[55点]
@チネチッタ
 ジュゼッペ・トルナトーレ監督の新作は、巨匠と呼ばれる人とは思えないほど先進的な内容でした。つーか、ほんとオタク気質よなこのおっさん。
 死してなお恋人に「通信(原題:correspondence)」を試みる行為は、束縛にもみえて賛否ある気がしますが、嬉々としてチョーワガママな「客星システム」作りに没頭したおっさんの心情(それは死の恐怖や寂寥から逃れるためでもありましょう)は、察するに余りあります。
 ただ、作劇上必要なのはわかるのですが、時と場所を選ばず、観劇のシーンですら着信音が鳴りまくる演出は、さすがにやっちゃいけなかったのではと思います。また、ヒロインが「自分の命を軽んじているから」スタントになったという設定も、映画の作り手としてはすごく失礼な話に見えます。M@sterVision 氏が、「ニュー・シネマ・パラダイスは映画の敵だ!」と怒っていたのを思い出すなぁ。(リンク先ネタバレ注)


高慢と偏見とゾンビ
[60点]
@TOHOシネマズシャンテ
 名作のパロディもの。タイトルだけで一本勝ち感があります。セリフもどうやら原作からかなり引っ張っている様子、ただし銃の手入れや組手をしながら言う、みたいなアホ展開。
 さらに、「富める者は日本に、そうでなければ中国に学ぶ」のが今節イングランドの流儀らしく、ダーシーさんがサムライソードを振りかざしエリザベスは少林拳マスターという設定をぶん回されたときは、完全に持ってかれたかと思ったのですが。
 肝心の対ゾンビ戦がイマイチ冴えません。ゾンビって世俗文化の隠喩? だからあまり恐怖として描けないのか? と考えもしたのですが、どうも深く考えてないっぽい。
 あの伝統衣装でキレのある殺陣をせぇいうても無理筋とはいえ、カッコよく作ろうとしながら、どこも中途半端でつまらない。あの終盤のゾンビ群を見せといて、あのクライマックスは酷い。どうして「プロポーズ→お受けします→肩預け合っての無双展開」ではないのか?!



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2016年09月29日

短評(オーバーフェンス/亜人3/BFG/HighLow)


 「ペット」が、公開後に予告編CM打ってたのがせつなかった……今年は相手が悪かったね。


オーバー・フェンス
[60点]
@テアトル新宿
 冒頭の空の表現とかゾクッとするし、オダギリジョーと蒼井優の魂こもった演技が冴え、高品質な作品とは思うのですが。
 空気を切り取る天才・山下敦弘監督をしてここに作られた空気は、原作ありきの作品なのでしかたないかもしらんのですが、「低予算邦画の五本に一本はこんな感じだよね?」と思う何かで、やや退屈です。というか、山下監督はこれまで「社会の閉塞感」をもっと深くリアルに醸成してきたはずなのですが、本作の場合「サワヤカな函館シティー」を前面に出さねばならぬ都合上か、そこを「蒼井優の異常性」にあらかた押しつけていて、嘘くさいのです。
 メンヘラ女がギャアギャア泣き叫ぶ奇行をスクリーンで見たい需要なんて、この世にビタイチ存在しないと思うんだけど、世間のプロデューサー連中は、「シンゴジ」「君の名は。」のヒットを見ても、こういう愚行をまだ続けるのでしょうか。本作には、山下監督の過去作品の印象に近いシーンがあちこちに見えるのですが、集大成というより、キャリアを巻き戻して絞り出した出がらしのようで、なんだか寂しいです。


BFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)
前半[45点]後半[70点]@109シネマズ川崎
 スピルバーグ監督&アンブリンエンターテイメントの「E.T.」な組み合わせで、ロアルド・ダール原作の児童文学を映像化。
 どうにもこの両者のかみ合わせが悪い感じで、エグい展開もどこか上品に描かれてしまい、期待ほど盛り上がりません。BFGの家の中で、期待よりもずっとチマチマした動きと会話が続く序盤は、正直眠いです。
 しかしその「エグいのに上品」という特徴を一気にひっくり返す、「女王」登場シーンはすばらしかった。もうこの映画、「女王が屁をこく」ためだけにあるんじゃないかと思えるオモシロ展開、コレができるイギリスがホントに羨ましいです。


亜人 -衝戟-
[65点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 第一章第二章
 今回は、テレビシリーズの二期が始まる前に、全部見せちゃうよという趣向で。これ見たらもう見なくていいのかな? とか思ってたら、前章の超圧縮と違い、今回はツボは押さえつつもハッキリ端折られてるっぽく、オグラさんどーなったんや? カイトそれで終わりかい! という物足りなさで、どうやらテレビ見なきゃダメみたいです(それとも、もう1エピソード入るのか? ちょっとカタルシスに欠ける終わり方だったし)。くそ、商売うまいな。
 ストーリー上真っ先に端折れそうなのは「女の子バトル」、でもムリだったのはわかりすぎる。下村さんの乙女モードが、凛々しい顔つきのまま炸裂するのが最大の見どころ。


High&Low the Movie
[55点]
@ユナイテッドシネマ豊洲
 いろいろバズってたし、友人からも勧められたので、終映前に見てみました。個人的には、ヤンキーが「仲間」連呼しながら殴り合う映画なんて、興味の埒外ですが。
 ……まぁ、これが評価されるのはいいことなんでしょう。「国産の海外映画」って表現は言い得て妙。最終的に「ザ・レイド」っぽくなるし。「全部カッコイイ絵作り」みたいな評価がありますけど、それでもって「標準的なアクション映画」って言えるようになるなら、その嚆矢として十分な価値があるのだと思います。とはいえ、香港映画だったら、あのクライマックスの集団乱闘で、三分くらいの長回しを余裕でやると思うんだけども。
 で、その絵作りにおいて、相変わらず「汚さの表現がキレイ」なのが違和感なんですよね……イケメンさんにキレイな顔のまま小芝居されてもな。女性陣に至っては、もう存在自体違和感というしかない。
 そんな中、圧倒的に堂に入った存在感を示すのが例の「琥珀さん」なわけですが……、ストーリー上はどう控えめに言い繕っても「祭り上げられたカカシ」なので、「すごい人でした回想」をいくら入れてもらってもどうにもこうにも。彼の立ち位置にもう少し説得力があれば、全然印象が違ったろうなぁ、と思わずにいられません。



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2016年09月24日

レッドタートル -ある島の物語-

[80点]@ユナイテッドシネマ豊洲

 スタジオジブリの名前ばっかり表に出てて、そのわりにはつまらないとか売れてないとか散々な言われようだけど、ジブリは(というか高畑勲は)昔っから海外の良質なアニメーションを日本に仕入れてくれてたのを、みんな知らんのですかね……。
 ジブリが自力で良作を作れなくなって、この方向に転換するよって話なら、個人的には願ったりです。あんまり叩かんで見守って欲しいし、作品は作品としてぜひ見に行って欲しい。それだけの価値はある作品なので。

 でも、140スクリーンはやり過ぎだぜ東宝。今は亡きシネマアンジェリカだけで、ほそぼそやってた頃が懐かしい……。


 というわけで、名作「岸辺のふたり」のドゥ・ヴィット監督による初の長編です。8分に人生を凝縮させる手腕の持ち主が描き出す、無人島に流れ着いた男の物語。
 冒頭の海のダイナミックなアニメーションからして、ポニョにケンカ売ってそうな凄まじいデキでした。かと思えば、カニのチマチマしたアニメーションもいちいち可愛いです。セリフがなく展開の緩い本作で、決して飽きさせないよう下支えするすばらしい存在感でした。

 内容は、予告編等から想像するより、はるかにファンタジックな物語です。ちょっと驚くと同時に、なんというかこう、グッと腹の底に来る、見てよかったと思えるものでした。ネタバレのため「続きを読む」以降に隠しますけど、「君の名は。」を見てる少年少女たちにはまだわかんない、非常に深い内容です。




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シネマアンジェリカでは、こういう傑作がかかっていたのです。

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2016年09月22日

「君の名は。」はなぜメガヒットしたか


 「君の名は。」がなぜかくもヒットしたのだろうか。
 作品の良さについては、もうすでにいくらも言及してる人がいるし、僕はいいものが売れて当然と思うので、気にするまでもない。

 だが本作は、「初日初回から」「地域の偏りなく」「若年層だけで」満席を連発した。この動きは異様だった。ここが気になるのだ。



 「初日初回から」であるから、作品の内容はほぼ関係ない。それ以前の情報で、彼らは映画館に来た。

 「地域の偏りなく」ヒットをなしとげたのは、これまで公開館が限定されていた新海誠監督のネームバリューではとうていありえない。オタクが盛り上がって満席連発、な作品はこれまでにいくつもあるが、それは情報が速い都会に限定され、地方には波及しきらないことが多い。
 そもそも、人口が少ない地方郊外のシネコンが「満席になる」自体レアだ。

 そして、観客は「若年層ばかり」だった。事前情報は少なかったとはいえ、幅広い年齢層に知名度が高く、東宝自身の熱量も高く、タイアップも大量に行われた「シン・ゴジラ」を、完全に若年層をターゲットにしたいしたタイアップもなかった「君の名は。」が、あっさりとぶち抜いた。


 つまり、作品の良し悪し以前に、我々にはもはやわからない、若年層だけに通じる動きが公開前にあって、それは東宝にすら予測不能かつ制御不能だったと考えられる。その異様で巨大な初動が、軒並み「よい作品」というリアクションを拡散したからこそ、現在につながっている。
 それが何か、なのだ。



 要因のひとつは、やはり「RADWIMPS」だろう。RADWIMPSは、露出が少ない点がむしろウケて、現在若年層に絶大な人気を誇る。一説には、全国ツアーをやれば、動員は100万人はカタイそうな。
 彼らは、映画の公開直前に同名アルバムを出すなど、プロモーションにも全面協力している。彼らのツイッターのフォロワーはバンドの公式で50万、ボーカルの野田洋次郎個人で25万を超える。彼らの存在は相当大きいと思っていいだろう。

 ただ、野田洋次郎が主演した別の映画「トイレのピエタ」が大きくヒットしたという話は聞かないし、実際、そういうプロモーション的なツイートに多大な反応がある感じもしない。若年層は、売らんかなの言葉を嫌うもんだしね。
 これほどのメガヒットに直結したかと問われると、?なのだ。


 で、一つ提唱したい説が、「ONE PIECE FILM GOLD」の影響である。
 かの作品は、その絶大な知名度により、「ふだん映画館には来ない若年層」を、大量かつ全国的に映画館に引き込んだ。今年おそらくダントツの700スクリーン以上で公開されており、そのうち「君の名は。」を公開予定だった映画館は、間違いなく上映前に予告編をかけている。

 しかし「ONE PIECE FILM GOLD」は、良くも悪くも「ワンピース」だった。「予定調和で型どおりの面白さ」を提供することを旨として作られている。
 「背伸びしたい年頃」には響かなかった。物足りなかった。
 だから、

 「予告編のアレの方がよさそうじゃなかった? RAD だし!

 という反応に結びついた可能性はないだろうか。
 「男女入れ替わりはジュブナイルの定番」であるが、そこで古典や大林宣彦の名作を引き合いに出すのは年寄りの思想だ。単純に、異性に興味を持ち始めた若年層にとって、どうしようもなく魅力的で斬新に響く設定だからなのだ。

 つまり、若年層のうち「ワンピースのファン層」の厚みが、「ワンピースよりすごそうで興味深いもの」の存在を知って、シフトしたのではないか……という推測である。


 当然ながらこれは僕の主観であって、アンケートとか採って調査したわけではないので、あくまでネタとして。
 できれば(たぶんもうどっか始めてると思うけど)、たとえばベネッセとか、中高生にネットワークを持っている企業は今すぐ、「『君の名は。』がいかに若年層にリーチしたか?」をきちんと調査して、コンテンツとして公開していただきたいですね。すごく興味深いものになると思う。



ONE PIECE FILM GOLD オフィシャルムービーガイド BACKSTAGE PASS (集英社ムック) -
ONE PIECE FILM GOLD オフィシャルムービーガイド BACKSTAGE PASS (集英社ムック)

君の名は。(通常盤) - RADWIMPS
君の名は。(通常盤) - RADWIMPS
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2016年09月20日

聲の形

[75点]@新宿ピカデリー

 9月第三週も「君の名は。」の圧勝。すげぇなまだ伸ばすのか、と思っていたら、本作の旗艦の新宿ピカデリーでさえ、夕方以降は最大のスクリーン1を「君の名は。」に明け渡しているではないですか。
 ……松竹、おまえらがあきらめてどうすんだああああ!


 さて。ある意味すごい作品でした。
 いうなれば、「君の名は。」で本作の予告を見て、「あ、またジュブナイルアニメやるんだー」と軽い気持ちで来た中高生を、ドン底に叩き落とす2時間。しかし、10年後に「どっちを覚えてる?」と訊いたら、こちらを答えるのではないかしら。

 なにしろ恋愛話も「聴覚障害」も、重要そうに見えて単なる物語のパーツ。中心になるのは、「いじめがどのように人間を壊すか」の話。最初っから最後まで、コミュニケーション不全のまま、心を万力でギリギリじわじわと締めつけ続けるような苦痛をぶっこんで来ます。
 カタルシスのある展開はなく、主人公は結局、世界には良くも悪くもさまざまな人がいる事実を知るだけです。キツい。キツすぎる。警告する、一人で見ないほうがいいぞ!

 逆に言えば、「感動ポルノ」の要素は一切ありません。聴覚障害や手話は、この物語の中で「当たり前の要素」として溶け込んでいて、その点はすばらしい。

 山田尚子監督は、「アニメだから許される、美しく描ける」ということを確信的にやっているようです。パステル調の軽いビジュアルの一方で音の演出にはものすごい重圧をかけ、ヤバいバランスを成立させつつヘヴィーな内容を描き出してねじ伏せてきます。ここらへん、狂気すら感じる凄み。
 「たまこラブストーリー」で穏やかな恋愛を描いた直後の作品が、このパワフルさ。こういうこともできる人だったんだ……。


 特徴的な「バッテン」の表現がいささか直截過ぎてあまり効果を感じなかったのと(これ原作踏襲なのか……)、昭和の邦画テイストを突き詰めたのか、時間経過の表現が曖昧でわかりにくいのが難点。
 また、結果的に「入野自由ひとり芝居」に近い作品になっているので致命傷ではないけど、個人的には「早見沙織は熱演だがキャスティングミス」だと思います。声に色気が出てきちゃってるんだよね。素直に、聾唖の学生で芝居をやっている方を捜してつれてきたほうが、リアリティになったんじゃないかな。

 あと、この世界における「人間関係の破壊」は、「硝子が悪い」となって彼女が罪悪感を感じていく展開になるんだけど、これ、どう考えても「根本的に悪いのは小学校時代の教師」よね。テーマ的に似通った話である「心が叫びたがってるんだ。」も根幹の原因は同じだったよなー、と思い出しました。



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2016年09月17日

短評(キングオブエジプト/スーサイドスクワッド)


キング・オブ・エジプト
[70点]
@TOHOシネマズ川崎
 現代基準から見たら安っぽいCG(ていうか「すっごい牙狼」)、タメとか整合性とか一顧だにしないくっちゃくちゃの展開、エジプト神話を深く考察しつつぶん投げ倒す世界設定(神と人の身長差とかアレ何?!)、一言で言って超カオス。でもそのカオスこそ神話の真髄とも思え、なんだかんだで上へ下への、ダイナミックで予想のつかない展開に圧倒される二時間で、「chaos, chaos, I wanna chaos!」って感じでした! ……ってそれ別の神話や!


スーサイド・スクワッド
[50点]
@TOHOシネマズ川崎
 コイン入れてからゲームが始まるまでに1時間もかかる「ベルトフロアアクションゲーム」(アベンジャーズはデコが作ってたなぁ)。中盤から終盤にかけての絵作りはまあまあ面白かったと思うけど、そこまでが……。
 アメコミヒーローのビギニングものはこういう展開になりがちとはいえ、前半にうだうだと愛や絆の「彼らの事情」のゴタク並べるので盛り下がるのなんの……そんで、「悪にもウェットな話がある」的な話をしといて、倒されるべきもっと悪いボスにいちばん情状酌量の余地があるので、「えー、戦うの?」という本末転倒な感覚があるという……。
 悪が悪をぶっ倒すピカレスクものなんだから、問答無用で「でも死ね」が見たかったヨ! その点で、ジョーカーとハーレイクインの関係性だけはちょっとよかった。



図説 エジプトの神々事典 -
図説 エジプトの神々事典
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2016年09月12日

みつばちマーヤの大冒険

[65点]@109シネマズ二子玉川

 ドイツで3DCG化された「リメイク」版の映画化。ただ不思議なことに、キャラデザが明らかに日本アニメーション版を踏襲してんのに、エンドロールにそこらへんの情報の提示がなかったので、向こうとしてはあくまで原作児童文学に沿ったオリジナルという意識なのかもしれません(でも原作は、こんな牧歌的な話じゃないらしい……)。ちなみにこの制作会社は「ハイジ」「ビッケ」も作ってるんですが……大丈夫なのかな?

 観客が6人、うち4人がおっさんでした。いやマジで。入場者プレゼントっぽく渡されたのが、どう考えても「余った販促グッズ」です。なんだこりゃ。
 ガンバがコケたのは、デキやデザインの話じゃなくて、もはや版権的価値しかない、年末特番とかで特集されたりする「懐かしアニメ」に、日本人全体でまったく興味ないのが現実、って気がしました。


 しかし、配給側はもう少しやる気を出してプッシュしてもよかったんじゃないでしょうか。完全に子供向けとはいえ、期待以上の面白さはありました。
 丁寧な描写でたいへんにわかりやすく、しかし決して説教くさくはない。「広い外の世界に飛び出していく」楽しさが十分に伝わってきます。一方で、「秩序だったミツバチ社会」を否定するわけでもない。映像としては、巣の中の表現がいちばん楽しいのです。
 また、「種族」として悪い虫はいない、という描写が現代的(カエルなど、完全に対話の通じない脅威は存在する)。スズメバチが遊牧民のような設定にされており、決して悪者じゃないですし、クモに捕食されかかるシーンが出たかと思いきや、後半のミュージカルパートで別のクモがドラム叩いてたりします。
 悪いのは個人で、それもミツバチの中にいる。秩序だった社会自体は悪くないが、誰かが悪用をたくらむとその硬直ゆえ悪い方向へ向かうという表現になっているあたり、ヨーロッパらしい結論です。


 マーヤ役を、はるかぜちゃんこと春名風花が演じたことでも少し話題になりました。今後、声優方向でもっと露出が上がるかな?
 そして野沢雅子はほんまバケモノです。アレ何も知らずに聞いて「15歳と80歳が並んで共演してる」ってわかる人はこの世にいないと思う。



みつばちマーヤの冒険 (小学館児童出版文化賞受賞作家シリーズ) -
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posted by アッシュ at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月10日

短評(セルフレス/弱ペダスペアバイク)&その他


セルフ/レス
[70点]
@TOHOシネマズシャンテ
 アイディア勝ちの一本です。年寄りが若返るため別人の肉体を乗っ取る、というのは、悪役の手管としてありがちですが、意図せずその状況になったため二つの人格の間で悩む話、は意外に新機軸。そうしたストーリーを象徴するように、時間軸を分け、その両軸をキリキリカメラが切り替わる手法が繰り返されるのが面白いです。
 また、アイディアは荒唐無稽ながら、それ以外はリアルというかアナログというか(ラボの構造とか、擬闘というより単なる取っ組み合いな格闘戦とか、最強武器が火炎放射器とか)、いかにもありそうな範囲で演出されているのは、狙いだったかそれとも安く仕上げるためか? 僕には好印象でしたが、実際どうだったんでしょうか。


弱虫ペダル -SPARE BIKE-
[50点]
TOHOシネマズ川崎
 弱虫ペダルのサイドストーリー三本立て……だけど、実質「巻島&東堂」ファンムービー(一部荒北)。内向きのモノローグばっかりで、イマイチでした。そうして抑圧したものを、自転車競技のスポ根演出による爽快感が上回らない感じです。せめて、東堂が「マキちゃぁん!」と叫ぶようなカラミを、回想映像でいいから出しておけば、観客の女の子たちももう少しアガったんじゃないかなぁ。
 まぁ、マキちゃんは実質的にヒロインだから、むしろ鬱屈してたほうがいい、な層は一定数いるんだろうけど……いやでもそれだと、今回のお相手役完全に寒咲さんだし、そちらのクラスタにはむしろ辛い内容なのでは……(笑。




 「Planetarian」は見ません。
 事前の Web 配信分だけ見て、ヒロインのウザさに死にそうになりましたので。
 あれでも、葉鍵系のファンなら楽しめるのだそうです。ホントに?



 ところで、来週末が面白いことになりそうな予感。
 松竹が満を持して「聲の形」を投入しますが、いかんせん松竹、公開館数は「君の名は。」の半分以下。まだ勢いを残してそうなかの作品との軍配がどうなるかは、東宝が「レッドタートル」にどこまで肩入れするかにかかっているようにみえます。個人的には期待してるけど、さすがに今回はジブリブランドの押し売りじゃねぇかと(人を選ぶ作品に見えるんだけどなぁ)……。



 全然別の話。
 国籍は、政治家の資質それ自体には関係ありゃしません。だから、「単一国籍しか認めない日本の法律こそおかしい、変えていく」って最初からハッキリ言やぁいいんです。国会議員なんだから。法律を作る立場なんだから。そう堂々と言えるか、そして「あとは有権者の判断ですよね」ってニッコリ笑って言えるかどうかが「政治家の資質」でしょうよ。
 それを、いかにも後ろめたそうな反応をして、生まれたときから日本人だの国籍抜いただの、よく調べもせずに口からでまかせ言ったことが「燃料投下」になりました、ってだけじゃないんですか。ただでさえ信頼を失っている民進党が、「党首選」という最大のチャンスに、信頼回復から遠のく方向に全力疾走する滑稽さ、そりゃネトウヨさんたち面白がっておもちゃにしますわさ。



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posted by アッシュ at 16:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月02日

短評(鷹の爪8/ソングオブザシー/ねむれ思い子/ダーティーコップ)


鷹の爪8 -吉田くんの×ファイル-
[70点]
@TOHOシネマズ川崎
 エックスファイル、じゃなくて「バッテンファイル」。
 上映時間40分を無料公開した前作と、ほぼ同質なのに68分で正規額の本作。「鑑賞料金」とは何なのかちょっと問い詰めたくなるね! つーか、オカルト系以外のネタはあらかた島根の観光案内なんだから、島根県は税金で補填してくれ!

 今回は、メディアミックスでコロコロで連載されたものの映像化(のはずなのに、上映時間がどこも午後〜夜に偏ってるのはなぜだ?)。これまでにも増して、精神年齢小学生レベルのくっだらないネタの連打です。
 いや、でも、それがいい。何度も言うけど、こういう頭からっぽにしてケラケラ笑うだけの、ストレス何もない映画が、FROGMAN の独壇場である邦画の現状がおかしいんですよ。「シンゴジは恋愛要素排除してウケた」と同ベクトルの話で、こういうのがウケると思うのになんで作られないのかな。

 今回はいつものお説教も小学生レベルなんで、くどくなくちょうどいい感じ、それどころかかなりキマっててカッコいい。しかも、ラストにはさりげなく「シリーズ全体を知ってる人向けの泣かせ」まで織り込まれている、いい按配でした。


ソング・オブ・ザ・シー 海のうた
[75点]
@恵比寿ガーデンシネマ
 アイルランド産の長編アニメーション。本国アイルランドのアカデミー賞では、あらゆる実写作品を押しのけて「作品賞」を受賞したそうな。「動く絵本」的なアニメで、絵本風のデフォルメされた背景やキャラが、そのままグリグリ動きます。冒頭の「灯台の光」だけで心つかまれる美しさ。

 ケルト民話の「アザラシ女房」(日本の「天女の羽衣」と同類)をベースにした、妖精の母を持つ幼い兄妹の物語は、「我が家へ還るロードムービー」と「妖精の世界を救う冒険譚」をうまく織り交ぜており、派手さはなくとも、表現が豊かで飽きがきません。かつ、どこにも悪人がいない優しい世界が形づくられています。嫌な人悪い人にみえても、そこにちゃんと意味がある。途中で出会う妖精シャナキーが示すように、誰もが物語を持っている、そこが伝わってくるよいおはなしです。夏の文部省選定作品になったようですが、子供たちにも伝わるといいなぁ。
 ただ、ラストは、「世界一の兄になった」とちゃんと褒めてあげて欲しかった。そもそもアンタが何も言わんと去るのがあかんのやし、民話の登場人物ってそんなもんとはいえ、オレあの母ちゃんちょっと好かんよ……。

 ところで、登場する妹の名前が「シアーシャ」なのね。シアーシャ・ローナンと同じ。アイルランド語で「自由」という意味なのだそうです。


ねむれ思い子 空のしとねに
[65点]
@下北沢トリウッド
 タイトルを忘れてしまいそうなので、書いて残しておきたいインディーズ3Dアニメ。
 この持って回ったタイトルと、主人公の境遇をはっきりさせない序盤から唐突に宇宙に飛ぶ展開に、いかにもインディーズ的な独りよがりかと思ったら、描きたいものを描くだけじゃない練ったストーリーが繰り広げられて、想像以上に面白かったです。あのストーリーであのエンドロールはけっこうキツかった、いい意味で。

 ところで、あの役に井上喜久子を配したのは、絶対作者が強く希望した結果に違いなく、思いは通じるものなのだなと(笑 そこかよ!)


ダーティー・コップ
[65点]
@角川シネマ新宿
 いやぁ年に一度はニコラス・ケイジ見とかんとね。
 しかも「悪徳警官」のニコケイっすよ! 表は善人ヅラで内心は腐りきった、ゲス野郎な警官っすよ! もうそれだけで最高じゃん!
 さらに、今回はほぼイライジャ・ウッドとの二人芝居。こちらも悪徳警官だけど、普段からワルな奴に見えて、内心はまだ煮え切らないとこがある若手。この二人で、もっとワルな麻薬売人どもの資金の横取りを企てる……という筋立て。
 いやぁいいコンビだわ。どっちもイチモツありそうすぎて。

 説明的セリフなしに演技合戦でガシガシ進めてくタイプの作品なので、あんまりゴチャつかせてもつまらなくなるだけとはいえ、正直、ストーリーにはもうひと押し欲しかったのが本音です。
 絶対ニコケイの父親(ジェリー・ルイス!)は何か噛んでると思ったんだけど、何も出てこないし……(邪推するならば、最後に映った「2枚のチケット」、イライジャは「自分の分」と思ってはっとするけど、あれ「もう1枚は親父の分」だったんじゃあ……)。
 あと、「売人の黒幕が準備した隠し金庫」に武器がある、って別に驚くことじゃないよね。そんで、その建物に住人がいたら、「見張り」と考えるのが当然じゃないのかなぁ?



いやホント10年もよぅ続いたなぁ……。

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posted by アッシュ at 16:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月28日

君の名は。

[85点]@TOHOシネマズ新宿

 おぉぉぉ……。
 言わずと知れた新海誠監督の最新作ですが、従来作品と比べて作品世界が広すぎる気がして、きちんとさばけるのか、見る前はめっちゃ不安でした。しかし、結論からいえば素晴らしかったのひとことです。
 全面的に「続きを読む」以下に隠します。未見の方はこの先読まないようにね。

 ミステリでもないのになぜ隠すかって、新海誠監督は「ハッピーエンドかバッドエンドかさえ見るまでわからない、先の読めない」作り手で、この作品でもそこが楽しみのひとつであり、語らずにはいられないからです。



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続きを読む
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2016年08月24日

ゴーストバスターズ(2016)

[55点]@チネチッタ

 男女転換させてのリブートが話題となった新生ゴーストバスターズ、かなり期待して見に行ったのですが……1984年版旧作の印象が強いせいかもしれないけど、微妙。

 個人的には、男女逆転は特に斬新とは思わなかったので、「ゴーストバスターズ」としてどうなのか……という視点だったのですが、旧作をなぞる構成なのに、かの作品にあった爽快感を失う方向にアレンジされているので拍子抜けです。唯一良くなったのは、「黒人キャラの扱い」くらい?
 旧作のオマージュやカメオ出演を優先して、ストーリー進行をぶっ壊す愚行にあきれました。ビル・マーレイのキャラの存在も、彼に関連してゴーストを逃がすイベントも、全体に何ら影響しないのにビックリです。

 何より「お仕事をやり遂げた」達成感がまったくないのが致命的。異端視されながらも新たな技術開発により事業を立ち上げ、困難があっても何とか成し遂げ、その結果富と名声を手にする、アメリカらしいサクセスストーリーがきっちり描かれているから、旧作は面白いんじゃないですか。
 本作では、旧作のホテルに該当する「ゴースト退治に成功する」シーンまでに1時間以上かかり、それが終わるといきなり市長による完全隠蔽。富もへったくれもないです。資金や機材をどうやって手当てしてんのかわからない中、テクノロジーはアホみたいに向上してパワーアップするから、バトルものとしてもどっちらけ。

 「サクセスストーリーこそ男性主体の発想だから、今回は女性同士の友情がメインです」ってことかもしれないけど、エリンとアビーの二人は最初から最後まで普通に仲いいじゃん。なにかその点でカタルシスのある展開ってありましたっけ? オレが女性だったら伝わってきたのかね?


 ところで、旧作の何がスキって、僕の場合「アニー・ポッツ」なんですよ!
 本作でアニー・ポッツに該当するのがクリス・ヘムズワース。うん、そういうキャラ付けでそういうストーリーになったのはわかる、

 でも違うんだそうじゃないんだ。



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posted by アッシュ at 16:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする