2016年05月09日

ズートピア

[75点]@チネチッタ

 ……。
 見終わって、ものすごく贅沢な感想を抱いてます。
 完璧すぎてつまらない。

 「人種の坩堝」である不平等な社会を、うまく「動物」へ置き換え、差別とその克服をさりげなく明るく、相棒ものの古典的なフォーマットに的確に乗せながら描いて、それでいて古びていない意外性のある展開、ここぞというところで鮮やかに回収される伏線……。
 もうね、これが「初めて見るストーリー映画」の子供は、この先何を見ても面白く感じられないんじゃないか、てくらい完璧。

 でも、世界が完璧に作りこまれているならば、そこに生きるキャラや起きるできごとは不完全で不合理な部分が少なからず含まれるはずなのです。現実がそうであるように。この作品はそこも完璧なので、手応えが変です。リアルなのにリアルじゃない。

 あるいは、「動物を人間ぽくアニメーション」という点が完璧で、まるで実写映画のように作っているので、マダガスカル3みたいな「リアルを超越したド肝を抜くアニメーション」はこの作品にはないのです。

 ホント、贅沢な感想ではあるのだけれど、もう少しスキがあってこそ魅力的になりそうな、そんな作品だったように思えます。



 ……まぁ、本音を言えばね。
 絶対激萌えキャラだと思っていたジュディが、あんまり萌えなかったかなー、と……そう、何が完璧でスキがないって、この娘だよ!
 「生まれがマイノリティ」以外に弱点がなくってさ。それでいて、「マイノリティ」であることの壁はわりとあっさりクリアして、彼女が得る最大の挫折は「差別を乗り越えるために行動した結果、別の差別の加害者になった→弱者だと思ってたら強者だった」という点なので、誰かが支えて救う話じゃないわけで。
 ある意味非常に現代的で、この点も実にリアル。なのだけれど、萌えはしない。強気ガールは、ここぞというとこで弱みを見せてこそ萌えるのだ(セレスティーヌを見習え!)。そういう視点で見るほうが間違ってんのはわかってるけど、惜しい実に惜しい。



↓コレ、マジで気になる……録音可能時間がもう少し長けりゃ……。
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2016年05月04日

短評(スポットライト/ルーム/響けユーフォニアム)


スポットライト -世紀のスクープ-
[75点]
@チネチッタ
 実にサスペンスフルな傑作。息つく間もなく見せるテンポのよさが素晴らしいですが、その内に、決して善や倫理だけでない、報道の裏や限界もさりげに織り交ぜているところがニクい。
 この作品で一番怖いのは、本当にアメリカ人は行動規範や人格の成立を宗教に頼ってるんだなぁ、という点。でも作中でも示されるとおり、神を完璧なよりどころと認知していても、それを取り扱うのが、教会という必ずしも完璧でない人間の組織であるという不一致。これが、社会にとっても個人にとってもすべてを破壊してしまいかねない爆弾となる異常性、しかしそれを正すのもまた人間……というアイロニー。


ルーム
[70点]
@ヒューマントラストシネマ渋谷
 「世界が広がる一瞬」は筆舌に尽くせない素晴らしさでしたが、その後の「世界の受容」については個人的にはあまりピンとこなくて、展開の遅さにイラつきすら感じました。が、たぶん作品のせいじゃないです。作品自体があまりに真摯でウソがない作りであるために、人の親でなくかつ欧米人でない自分には、投げ込まれた直球が受け止めきれないんだと思います。あれっくらいの「部屋」に住んじゃってるしな!

 ところで、これで「アカデミー賞主演女優賞」はないでしょ、子役のジェイコブくんを主演男優賞にするか共同受賞と銘打つべき。


劇場版 響け! ユーフォニアム -北宇治高校吹奏楽部へようこそ-
[70点]
@新宿ピカデリー
 テレビシリーズの総集編ですが、「前年度何があったか」の話をほぼばっさりカット、久美子と麗奈の関係だけに絞って再構築しており、やや掘り下げの甘い感もあるも、これ単体で成立するくらい盤石の仕上がりになっています。演奏部分も大幅にグレードアップして、劇場で聞けて良かったと思えます。二期も楽しみ!



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2016年05月02日

モヒカン、故郷に帰る

[70点]@テアトル新宿

 邦画はダメだダメだと言われる中、ストーリーコメディ路線において、安定した打率を誇る沖田修一監督の新作。
 今回は「里帰りで家族ドタバタ」という、わりとありきたりなシチュエーションでどうなるかと思いましたが、ある意味いっそうキレが増してました。
 ひとつひとつはクスリニヤリていどの薄い笑いで、それぞれの笑いの取り方は従前の作品と比べるといまひとつの感はあるのですが、その薄皮が積み上がって厚みを増していくにつれ、僕らの世代特に地方出身者にとっては、ちょっとシャレにならないくらい重くて分厚い「現実」となってぶつかってくるのです。
 主役の松田龍平が、モヒカンのまま腹を据えるさまが、見た目おんなじなのに、ちゃんとカッコいい。モヒカンがピンと立っている。

 難を言えば、柄本明はもっと若い人がよかったんじゃないかなぁ。ダメ親父演技はもちろん素晴らしいんだけど、「えーちゃんに憧れた」というには老けすぎなのよね。あの夫婦からなぜモヒカンの息子ができあがって断末魔を叫び出したのかが、ちょっと腑に落ちないです。

 あと、本作は沖田監督渾身の「メシ演出」が炸裂するから刮目して見よ! 例によって食事シーンが何度も出てくるわけですが、「メシがまずそうなシーン」と「メシがうまそうなシーン」が明確に分かれています。そしてそれは、食事の種類やデキとは関係ないのです。

 ……ところで、千葉雄大がふりかけてるアレはなんだろうか。



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2016年04月28日

筋肉ベストテン……にはやっぱりならなかった


 前回参加しないと書いたんですが、参加者数が少ないという話が出てきたので、できる範囲で参加します。

 僕はシュワちゃんとかスタローンとかの全盛期に原風景がなくて……どうもぴんとこないんですよね。
 で、ざっくりすでに投票されているのをみると、だいたいそこらへん+香港くらいしか見当たらないのに気づきまして。
 インドとタイがゼロなんてことは絶対赦されないと思ったので、自分の見た範囲でこんな感じに……。





(順不同でお願いします・例によって年号は「日本公開年」です)



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2016年04月22日

大丈夫かこの企画


 しばらく映画を見れてないのです。まもなく復帰予定。はやく松田龍平のモヒカンを見たい。
 あと、筋肉ベストテンは僕にはムリなので欠席。変態仮面には一票入れたいとこだけど。


 さて……、しばらくぶりにトリウッドのページをチェックしたら驚いてしまった。(現状はページ中段)

 先に言っておくとオレは Wake up Girls! がわりと好きだし、決して dis るつもりはないのだ。
 だがこれはどうなのだ。
 16日に行った人がいたら聞いてみたい。

 仮にも地上波放送したアニメ、全国ロードショーで公開した映画の、監督を呼んでの応援上映ファンイベントを、

 キャパ50人以下のあの狭苦しいトリウッドでやって大丈夫なのかオイ?

 つーかさ、トリウッドってさ、「ごく普通のマンション≒雑居ビルの2階のテナント」だぜ。飛んだり跳ねたり禁止とは書いてあるし、そりゃ多少の防音防振対策はしているだろうけど、1階の服屋とか隣の飲み屋から絶対苦情来るだろこれ。

 逆に「えぇもう全然大丈夫でした!」だったら、めちゃくちゃ寂しい悲惨な結果に終わったとしか思えないんだけど!



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2016年04月11日

例の論争をみて思い出したこと

 ↓これな。

 英映画配給会社代表の苦言「日本映画のレベルは本当に低い。最近すごく嫌いになってきたよ!」に対する反応
 邦画関係者「邦画をクソというな!がんばってるんだぞ!」という意見がまさかの大炎上

 もちろん、「作品がすべて」だよ。製作体制とかどうでもいいからおもろいもん見せてくれ。そのうえで、の話。

 以前、こんなこと書いたなぁ、って。
 日本の映画評論が、そもそも映画をフラットに見ていない状況は、何か変わったのかな?

 以前新聞を購読していた頃は、書評欄だけは必ず読んでた。内容以前に、意外な本に意外な評者があたってたりして、異文化バトルロイヤルみたいな評価のぶつけ合いが好きだった。映画評でそういう印象を受けたことはない。
 荒井晴彦脚本だったら上位に来るとか、町山智宏脚本をきちんとワーストにしたとか、そんなことが話題になってる時点でおかしいんだよ。菊池寛が仕切ってた昭和文壇かっての。

 あと、書こうかどうかずっと迷ってたけど、この際書く。
 今年映画館で見た最悪な「予告編」。

 

 これが今年の新作だぜ。これに「映画美学校」が名前を出してるってことは、これを、「金取って見せていい」っていう人物が「映画を教える側にいる」ってことなんだぜ。
 「カミュなんて知らない」でも思ったけど、そりゃ邦画はダメになりますわ。

 ホント、日本じゃ「映画は狭いもの」なんだよ、いろんな意味で。その固定観念をどっかで壊さないとさ。 



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2016年04月04日

短評(ちはやふる上の句/暗殺教室卒業編/父を探して/たまゆら4)


ちはやふる -上の句-
[75点]
@チネチッタ
 構成や演出について、細かいことあげをすればキリがない感じはあるんだけど、オーバーアクトが合う広瀬すずを筆頭に、とにもかくにも、かるた部五人のどハマり感ハンパない。もう、この作品はそこに尽きる。よくぞ揃えた。あとあのヒョロ連れてきたの誰だ(笑
 原作からだいぶはしょられてるようにはみえるのだけれど、彼女らがスクリーン映えしていて、立ち振る舞いだけで「キャラ立ち」している時点で、もう全部無問題大正義横綱相撲感があります。下の句も楽しみ。

 ところで、銀の匙も思ったし暗殺教室もそうだったんだけど、最近の日本映画は、「一般生徒」を自然に撮るの下手になってない? どうも動きが不自然で、エキストラですって看板ぶら下げてるような感じのばっかり……。


暗殺教室 -卒業編-
[60点]
@チネチッタ
 前作で僕はかなり誉めた。何より「イトナ合流=クラス全員集合」まで一気に描いたことで、この作品は「教室」を描く気があるのだと勝手に思い込んだからだ。だから僕にとって本作は、サブタイトルを知った瞬間に終わってしまった。「卒業編」……だと……? 「二学期編」「三学期編」の三部作、じゃなくて……?
 つーことは何か、二学期イベント全ブッチ? 原作全編通して最高のイベントである「赤羽業vs浅野学秀」、ああいうのを喜ぶ観客などおらんと? 松井優征にしては予定調和感が強くてあまり評価の高くないあの「暗殺」でまとめると? てことは、「積み上げた上で」ガツンとぶっこまなきゃ全く意味がないカエデイベントを、ツカミに置くんですかァーーーーっ?!
 はい、全部その通りでした(泣。 何あの申し訳程度に「学校」にした学園祭。怒りだ! もう怒りしかない!
 ……もっとも、単体の映画としては、前作の散漫さと比べればきちんとまとまってた印象です。特に殺せんせーの過去部分は、細やかに描けてたと思います。……それは僕が桐谷美玲大好き人間ゆえのひいき目かも知れんけども。

 ところでさ。最終的に「渚が首席」っていうセリフが出てくるけどさ。
 映画だけ考えると、どう見ても首席は奥田さんだよね。


父を探して
[75点]
@シアター・イメージフォーラム
 ブラジル産のアート系アニメーション。色鉛筆で描いたような牧歌的な色彩、棒人間のようなシンプルなキャラクターが印象的。
 そんな一見穏やかな画風で、出稼ぎに出た父の消息を求めて、田舎住まいの少年が旅に出る。綿花の農場、紡績工場などをたどり、産業や社会を知っていく……て書くと、なんかすごくマイルドで教育的で眠くなりそうな「子供の見るアニメ」に見えるでしょ? うん。ぶっちゃけ中盤までは眠いんですよ。

 ……中盤以降、もの凄い勢いで、どこまで広げんねん! ってとこまでぶん回し始めるのでビックリしました。二大怪獣空中決戦とか、ありえねーわ。そんで、かなりせつなくなるところへと落とし込むというね。
 否定的に描かれる、「機械化・工業化によって環境破壊が進み人間性を失う」みたいな表現は、いやいやブラジルの場合それは序盤で平穏に描かれる大規模プランテーション農園を作るためにやってたんでしょ? とツッコミ入れたくもあるのだけど、久方ぶりに気合入った海外アートアニメーションを見られたので満足。


たまゆら 〜卒業写真〜 第4部 朝 -あした-
[80点]
@新宿ピカデリー
 の感想。
 「卒業」というゴールに向けてひたすら畳み掛けていく、この作品から想定しうる、完璧な大団円。それも、今までやってきた「友達」を整理しつつ、本来底辺に横たわっていた「親子」をかっちりすくい上げて締める意外性。大袈裟に泣かせるイベントなど何一つ起きないのに、男だらけの館内にすすり泣きが漏れる凄さ。誰かが言った、「これ、まさしく松竹映画じゃね?」と。
 もう何度か繰り返して言ってるけど、「日本映画」を正しく継承したのはアニメである、という新たな証左です。

 今回は公開延長したこともあって、作画も完璧でした。
 あとは、ちもさんの結婚式がきちんと描かれていればなぁ、と、そこは少し切ないですね。「〜に捧ぐ」ではなく、「セリフはなくてもキャストのクレジットに入っている」のが、この作品のひとつの「らしさ」だったかもしれません。



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2016年03月24日

アーロと少年


 なんか TAAF がえらいことになってるらしいけど、大丈夫か……。


[80点]@チネチッタ

 ……なんかすげぇもん見た。

 いやね、序盤と終盤だけ切り取ったら、どこにでもある「勇気!」「家族!」なアメリカ映画です。それも、かなりトラウマ級のイベントを放り込んでくる、これホントに子供に見せていいの? 的な。
 すごくオリジナルな発想に見える「恐竜と人間の組み合わせ」にも、ほとんど意味はありません。「人間と犬」でもほぼ同じ話にできるでしょう。ぶっちゃけ、はじめのうちはつまんなくて、短編アニメの「僕のスーパーチーム」の方が面白いんじゃないかと思ったくらい(これガチ傑作! というか、この題材を世界規模の公開に組み込む勇気!)。

 しかし、話が進むにつれ、本作が何をしたいのかが、だんだん見えてきます。
 本作には、ここまで来たか! と思うくらい、実写と変わらぬ超写実的な背景映像が使われています。それにいかにもカートゥーンな、常時骨折してるみたく見えるデフォルメ恐竜が乗っかっているのはいささか奇妙滑稽ではあるのですが、ともあれ、その壮麗な背景で、おそらく現代ではアメリカでも撮り辛くなっているであろう、「大自然ロードムービーやろうぜ!」が本作の趣向です。
 ……うーん、それはどう考えてもイマドキ子供向けじゃないのが、この作品の辛いところですが。

 アーロと少年が大自然の中に放り出され、ぶつかり翻弄され手を携え、心を通わせていく。それも、「少年」は意味のあるセリフを発しませんので、ただただ映像でもって表現されます。それだけの内容が、なんとも沁みるし、なんかとにかくスゴかった。圧倒された。
 ホントに、「言葉で説明できない」という感想は、この作品ならば許してもらえると思う。つーか、言葉で説明すると、最初に述べたとおり「どこにでもある映画」になっちゃう。「感じる」タイプの作品だと思うのです。

 どうも世間的にはあんまり評価されてない感じで、本命は次の「ズートピア」みたいな扱われ方をしている印象ですが、僕は好きですコレ。



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2016年03月20日

マジカル・ガール

[60点]@ヒューマントラストシネマ有楽町

 年に四ヶ月は日本にいるという日本ヲタのスペイン人、カルロス・ベルムト監督の長編デビュー作。だそうで。

 アニメの魔法少女に憧れる病弱な少女の願いをかなえたい……というイノセントなきっかけから、とんでもない方向へ話が転がっていくサスペンス。マジカルってそっちかよ、と。
 その意気やよし、と言いたいところなのだけれど、どうやら撮影スタイルはアニメではなく、古い日本映画を範にしているとみえて、ガッチガチの固定カメラで超スローテンポに話を進めていくので、サスペンスとしては(ましてスペイン人が作ったと考えると)かなりキツいです。
 それで話が鮮烈ならよいのですが、発生する犯罪の構造とか、先生とバルバラの関係とか、思わせぶりに引っ張ったわりには興味を惹かれなかったのが正直なところ。過去に何があったのか明確にしなかったことに、あまり意味も感じませんし……。

 ただ監督さん、インタビューでは「ドラゴンボール」や「ナルト」のファンとか答えてるみたいだけど、この作品に最も影響を与えてるアニメは絶対「まどか☆マギカ」。
 ああいうのが海外から見てアイコンになるってのも、善し悪しやねぇ。



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2016年03月14日

マネー・ショート -華麗なる大逆転-

[80点]@チネチッタ

 破壊屋さんの誰映2015の結果発表ですね!



 さて。

 自分は2005年から投資を始め、知識もあまりないままに、本作で示される状況に突っ込み、ぶっちゃけ大損こきました。
 ならば知識をつければいいのか、というとそれも違って、「個人の予想できる範疇で値が動くことなど絶対にありえない」という理解に至っています。今は決まったパターンでしか売り買いしません。

 相場とは、経済学ではなく群集心理で動きます。カオスな生き物です。
 本作に示されるように、経済指標において明らかにマイナスな情報が出回っても、相場はプラスになるような、因果関係の成立しない現象が当たり前に生じます。

 本作は2006年〜2008年の期間を描いてますが、僕の記憶にある限り、サブプライムローンがヤバイ、いつ崩壊するかわからん、というのは2007年頃にはある程度、一般投資家に流布してました。

 ところが、カネというのは、一部がヘタレても「逃げ出す」ができます。そうすると、別のところで「見かけだけの活況」が起き、それを見て、経済学者やアナリストたちは、「ほら活況ですよ」と言い募り、「全体がヤバイ」情報は捨て置かれます。
 本作では、「最初期に仕掛けた人」「最終的に大勝ちした人」しか取り上げないわけだけど、早い段階で、できる範囲で「破綻」に張った投資家は山ほどおるんですよ。しかし本質的にヤバい状況がいつまでもダラダラと続く中、正しく時流を見越していた人々が、本作で言えば CDS の保険金に耐えきれない状況に陥って、次々に敗者としてこぼれ落ちていったのが現実でしょう。

 結局、カタストロフが起きるまで止まらないのです。ていうか、「起きても止まらない」が正しい。彼らは誰も責任を取らない。税金ジャブジャブ突っ込むか現金ジャブジャブ刷って今ある金銭の価値を薄める=インフレ以外の対処を、彼らは認めません。自分の身を削るなんて脳みその片鱗にすら存在しない。
 経済学とは、過去の動きにいかにして後追いで理屈をつけるか、という学問であり、決してよき未来を願っていない。僕はもう、そう諦観してます。



 ちゅうことで、映画のほうなんですけど。
 あの当時、市場がどういう挙動をしていたか、把握していない方にはかなり辛い内容のような気はしますが、逆にわかってるともう、なんか胃が痛い。この胃に穴が開きそうな感覚は「エンロン」見たときに近いな。

 この作品が上手いのは、序盤から、「いかにもデキの悪い、人を煙に巻くタイプのドキュメンタリー、みたいな映像演出」を頻出させることです。
 正直、これヤバイんじゃね? と思ったのですが、次第に、あの時期の狂騒をユーモアのオブラートに包んで描く狙いが見えてきます。そうでなきゃ、「金融用語をマーゴット・ロビーがバスルームで解説」みたいな、人を食った演出するわけがない。

 描かれた勝者の陰に、どれだけの敗北者がいるのか。作品内でブラピが指摘するように、どれだけ一般市民に押しつけられたのか。そこに思いを致すと、本当に絶望しかない物語なのです。
 けれど、勝者の歓喜と世界の絶望、恐怖と隣り合わせの好奇心と欲望、そのあたりのさじ加減が絶妙で、先ほど書いた胃の痛さをエンタメに昇華して、実におもしろく仕上がっていると思います。



 ところで、直近の経済状況。
 「株を買ってください。売らないでください」と金融庁長官クラスの幹部官僚が直接保有者に懇願するような中国の株式市場が、まだ普通に売買成立してる、というホラーな状況がありますよ。
 どうなるんでしょうね。怖い怖い。

 あと、これも酷い邦題なんですよね。
 ここでも指摘されてるけど、これだと金融用語としては「資金枯渇」のニュアンスになり、題材と全然意味合いが違ってきます。



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2016年03月09日

IMAX栄枯盛衰


 ……このニュースに、なんともいえない気分になったのは僕だけでしょうか。

 品川プリンスシネマが Tジョイ系になる、というのもひとつ感慨深いわけですが……。
 あそこは、都心で最後まで「従来の」IMAX シアターでがんばってたとこでもあるわけでさ。
 新技術キター! 大迫力キター! と鳴り物入りで導入されたにもかかわらず、まったくぱっとしなかった当時の IMAX。その跡地を、ずっとシアター ZERO っつって無駄に維持してたわけで。
 それが復活ですよ。他に使い道もなかったのだろうけど、もしかして「IMAX は必ずまた脚光を浴びる!」みたいな意地もあったんかなぁと。
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2016年03月02日

ヘイトフル・エイト

[65点]@丸の内ピカデリー

 率直な感想。……この内容で167分は長ェよ! タランティーノ監督にそれを言うても無理筋なのはわかるけど、それでも、序盤1時間くらいは「情報の提示」しかしなくって、本筋である8人揃って丁々発止、になるまでに、寝落ちするレベルで時間かかり過ぎなのは辛い。
 遠回りするにしても、もう少しメリハリや緊張感のある作劇をする人だと思うのですが……。最後の銃撃戦だけぐわーっとアガるけど、それ以外の中身はない、みたいな、一昔前の西部劇の悪いところもそのままやっちゃった、てことかな。

 だから中盤以降、ワルどもがゲタゲタ嗤い合う展開になってくると、加速度的に面白くなるんだけどね!
 白人黒人メキシコ人、南軍北軍、法を執行する側される側が、クソミソに絡んでヘイトし合って、どのセリフがホントでどれがウソかわかんない世界をくんずほぐれつ、みたいな。実に醜い現代アメリカの縮図のメタファーですな。
 そんな世界で、やっぱり虚実はわからないままに、一筋の光として、「リンカーンの手紙」がきっちり居場所を作ってる。

 ヘイトスピーチがどうこうわめき合ってる人たちは、ぜひ見てください。そして「善人はみんな井戸の中」って現実を自分から作ろうとしていないか、よく考えるこった。



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2016年02月24日

短評(キングオブプリズム/スティーブジョブズ/Xミッション)


 真田丸面白いよね!
 今の三谷幸喜は、台詞回しや「作品世界全体を俯瞰する」能力は相変わらずピカイチで、「個々のエピソードをつないで盛り上げる」能力が衰えてるんだと思います。
 ここしばらくでは「清須会議」がいちばん面白かったと思う自分としては、当面、そこらへんがあらかじめ決まってる歴史ものに取り組むのがいいんじゃないかな。


KING OF PRISM by PrettyRhythm
[70点]
@チネチッタ
 なんかネット上で「キンプリはいいぞ」とバズってたので、普段見ないフィラー作品にトライ。……そうしてやや期待値高い状態で見たのと、あと基本的に(男女問わず)アイドル文化にまったく興味がないせいか、思ったほどの「脱ぎ率」や「狂ってる感」は感じず、フィクションとして容認できる範疇です。
 それでも絶対に「女児アニメの延長」ではなく、作り手が脳内麻薬を出しまくりながら全力でクソ真面目にアホをやっている感覚は伝わってきて、常にキラキラエフェクトがかかる画面を見るうちに、男かつノーマルの自分でも少し体温上昇した感じがしたので、女の子だったらいわゆる「ヘヴン状態!」をリアル体感できるんじゃねぇかと思います。
 ふっと脳裏をよぎったのは、ここにある狂気はどこか、「トリオ・ザ・パンチ」出した頃のデータイーストのマッシヴ感をBL方面に置き換えたようなそんな、……あくまで個人の感想です。


スティーブ・ジョブズ
[55点]
@ムービル
 スティーブ・ジョブズの伝記映画を見に行ったはずなのに、
 大半は痴話喧嘩だったでござる
 父娘愛大事でまとめられたでござる
 舞台演劇的な会話映画としての完成度ならめっちゃ高いのは伝わってくるのに、「そんなの誰も望んでねーよ(確信)」なんでござる
 そもそも、あーちすと様たちにはそりゃあジョブズは神みたいな存在かもしらんけど、一般人が見たら「何あの偉そうなオッサン?」にしか見えん作りにすなや! 今の世代、アップルIIはおろかiMacすら知っとるかも怪しいわ!
 ていうか、本作で省かれた「アップルIIとiPodをメインにした」アシュトン・カッチャー版を見とくと理解しやすいわけで、「予習してから見てね?」ってなんで別の作品見るのが前提みたいな話になっとんねーん!


X-ミッション
[50点]
@チネチッタ
 エクストリームスポーツを題材にしたアクションもの。
 登場する犯罪集団にはいちおう「環境過激派」的な理屈がつけてあるんですが、その「思想」に基づく「行動」が、なんで札束ばらまいたり山爆破したり、果ては「金ないんで銀行強盗→銃撃戦」というフツーなコトになるのかまったく理解できないので、ストーリーは考えるだけ無駄です。(ちなみにその「思想」の提唱者は日本人仏教徒みたいで、その説明に「悟り」って言葉が字幕に出るんですが、セリフ上は「ボンノー」言ってるように聞こえたのは気のせいか)

 なので完全に映像を見る映画ですが、予告でバンバン出てきたウイングスーツのシーンがエクストリーム感の最大値で、それ以上の興奮はなかったのが残念。
 ていうか、ノーCGを謳っているのに、完全にリアルを撮っているシーンと、明らかにCG込みのシーンやフィクションでなければありえない嘘を、何の注意もなく混ぜているので、「全部つくりものじゃね?」が通ってしまう時点で、自分から企画倒れにしてしまった失敗作としか……。
 たとえば、撮影上は絶対に安全対策しているのはわかるのですが、いちばん金玉ヒュンヒュン来るやべぇ映像が出来上がってるのは、「フリークライミング」なんです。
 でもその後に、なぜ「飛び降り」をエクストリームスポーツの一環として追加してしまうのか。あれ、物理的に生存不可能です。エンジェルフォールに滝壺は存在しません(高さに比して水量が少ないため、空中で散乱して地面から見ると単なる雨)し、仮に下が水面であっても衝撃は固体並みです。調べたら、飛び込みの高さの世界最高記録はたったの60mだそうです。



劇場版KING OF PRISM by PrettyRhythm 初回生産特装版Blu-ray Disc -
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2016年02月17日

オデッセイ

[75点]@ムービル

 まずこの酷い邦題を何とかして欲しい。何の映画かわかりゃしない。公式ツイッターがつけてるタグの「火星ひとりぼっち」の方が数万倍インパクトが強いよ!


 さて。火星に置き去りにされた宇宙飛行士のサバイバル、という題材ですが、何しろリドリー・スコット監督なので、エンタメ寄りの作り込みです(実際はものすごく考証を加えてるのは明らかなんですけどね。「プロメテウス」と違って)。
 なので、本作のウリと言われている(?)「火星で鉄腕DASH」な展開とかの描写は、意外にあっさりで拍子抜け。
 火星で生き延びる方法論よりも、生死ギリギリの絶望的状況でもとにかくめげない、前向きで楽しそうに張り切る主人公=マット・デイモンのキャラクターこそが「鉄腕DASH」的でした。この点がすばらしい(現実の宇宙飛行士の選抜も、「そういうメンタルの持ち主であるか」を重視されるみたいです)。
 「月に囚われた男」や「ゼロ・グラビティ」も高評価である自分としては、人間同士が愁嘆場繰り広げる、ってよりも、こういう「淡々と極限状況に向き合う」の方が断然ノレます。

 そこであの「マーズパスファインダー」ですよ! 発見までのくだりもさることながら、「送れるのは回転するカメラによる画像だけ、という条件で通信」にうぉぉとアガったのなんのって。あのシーンは、凡百なミステリーものを軽く凌駕してたと思います。


 難点としては、ビジネス的にしょうがないのはわかるけど、中国の絡み方がどうにもあざといことと、次回計画用の脱出艇が事前に投下されている、という展開は、そんなんホンマにやるかね? と少し疑問。あと、あの過剰な軽量化はあんまり意味なくね?



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2016年02月15日

不屈の男 アンブロークン

[50点]@シアター・イメージフォーラム

 いろいろ物議をかもした作品。先に言っとくと、右か左かっつったら僕は右寄りな方で、日本を悪く言われてうれしいわけはないです。
 でもまぁ、「見ずに批判するな」は真理だし、脚本はコーエン兄弟なんで、むしろサスペンス寄りできっちりしたものができてるだろう、という期待のもと見に行ったわけですが……。
 その「物議をかもした」あたりは、あんまり気にしなくていいです。もともと、「自国人が戦時に外国でひどい目に遭わされたけどがんばった! 映画」は、どこでも作ってんですから、いちいちことあげしてたら始まりません。

 それどころか本作の場合、日本軍はおろか戦争にさえ主眼があるとはいいがたい。
 「いかなる環境におかれても誇りを失わず耐え抜く男のサバイバル」な話を語るのが主眼で───要するに、あれですよ、アメリカが大好きな宗教説話もの。「キリストの受難」になぞらえているんです。宗教テーマのためなら、いかなるところからでも善悪対立を引っ張り出すのがキリスト教。

 だから本作を見て、「皇軍兵士の侮辱ー!」とか言い出したら、そりゃアホとしか言いようがありません。
 現実に虐待をした兵士がいる事実は認めましょう。軍全体の問題ではなく、個人の資質の問題であることは作中で示されています。むしろここを、「社会・民族の総意としての悪意」でなく、「個人の悪意」にしたがゆえに、テーマがぼやけ、この作品を凡作たらしめている、ともいえます。
 (「日本軍の行動」として、もっともキツい描写……事実ならば戦争のおぞましさを思い、脚色ならば侮辱すんなと怒るべきは、「救命ボートに機銃掃射」じゃないでしょうか)

 この映画に日本人として抗議したいならば、まず「寛容や赦しをなぜ宗教依存の行動と捉えるのか」、という点に疑問を呈するべきではないかな?


 でまぁ、面白いかと言われると微妙で……。事実ベースだから仕方ないんだけどさ……。
 漂流して生死の境をさまよい、その後ジャングル内の独房で処刑の恐怖に怯えるという、圧倒的な絶望感でぐいぐい引き込んでくる前半と比べると、現代の刑務所くらいの待遇はある収容所で、DQNな看守がひとりいるだけの後半の状況は、「甘っちょろい」の域(伍長ていどでなんであんなに偉そうなのか、という点はありえないよなぁ……また、捕虜待遇が敗戦濃厚になるにつれ劣悪に変化する点は、非難すべきでない)。そこで、キリストのまねごとをされてもなぁ……。

 (なお、「白鯨との戦い」を見た人は、その前半でさえ「甘っちょろい」という感想になると思うよ![自分は見てません。「エセックス号事件」を事前に知ってたから、見たら鬱になるのはほぼ確実だと思って]

 捕虜虐待を行う渡辺伍長は、「ノーカントリー」におけるハビエル・バルデムさんのごとき不気味さを出しつつ、あの手この手で主人公をいじめ抜くわけですが、先に述べたとおり「個人の悪意」であって、出世できない八つ当たり&嫌がらせでしかない、と描写されるので、どうにもこうにも……。
 描き出したい「気高さ」にたえうるか、と考えたとき、あのクライマックスはまったくクライマックスたりえません。ガタガタ言った右翼さんたちには申し訳ないけど、事実であるかはまったく別問題として、「収容所にいた日本軍人全体が、渡辺伍長の悪意を中心に、集団心理によって人道を外れていく」という描写でないと、この作品は「人間の恐ろしさ」「それに耐え、赦す人間」を描いたとはいえません。そう踏み込めなかった時点で、アンジェリーナ・ジョリーもコーエン兄弟も、とっても優しい人たちだった、と思ったほうがいいです。



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posted by アッシュ at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする